客先指摘仕様洩れ手戻り予防では、基本仕様の主要項目部はDR会で作成する・事例(3-02)

iyoblog (3-02)「設計の働き方改革とDR(設計審査)の具体的取り組み法」設計力向上研究会(伊豫部将三)編

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事例編・第一部「DR組織および事前準備関連取り組み法」

iyoblog (3-02)・客先指摘仕様洩れ手戻り予防では、基本仕様の主要項目部はDR会で作成する

「現状と問題点」

 受注製品完成引渡し前の客先立会い仮検収試運転時に、客先から仕様洩れ指摘による手戻り・後処理発生予防では、仕様書主要項目の作成をDR会で行う事が大切である。

 客先が受入仕様である要求機能、性能、特性、設計条件項目等の引合い時打合せでは、客先が事細かに全ての要求項目を提示して呉れない場合も多い。

これには、「専門メーカーなら話さなくても当然造り込みを実施して呉れる筈」と想っている機能項目も多い理由がある。

特に製品を特長付ける固有・特有機能を除く、共通・共有機能の

①安全・安心機能、

②快適・便利機能、

③耐久機能、

④保守・保全機能、

⑤保安・いたずら防御機能、

⑥環境保護・省エネ機能および、

⑦納品時のオペレータ事前訓練及び、

⑧設置・据付方法面等に関しては、打合せ時に十分な注意と仕様項目抽出上の洩れを出さない細心の注意が特に必要である。

 これには客先との受注仕様打合せ前にDR会の指導の許で丁寧・詳細に作成した標準仕様書案を準備の上で、客先へ事前送付または持参して、完成した後の立会い時に追加仕様項目の発生や仕様洩れ指摘を受けずに済む取組みが大切である。

そのためには、受注仕様打合せおよび開発用の標準仕様書案作成では、原則DR会で行う事を是非お薦めしたい。

特に新規開発が伴い実機検証を事前に必要とする場合には、検証・試験方法・評価条件を含め達成すべき目標寿命数値と信頼度値等の要求設計条件まで明確に検収条件へ設定の上で取組む事が望ましい。

これらが日頃から習慣的にキチンと行われていないと、客先立会い時に仕様洩れ指摘の形で準備不足結果が着け払いとして発覚する。

「着眼点・分析と評価法」

 仕様洩れ指摘の中でも特に安全・安心機能面に於ける仕様洩れ指摘は致命的で、小手先の改造で済まない設計遣り直しに至る場合も発生する。

近年ヨーロッパ(EU圏内)向け機械装置設備類では、簡単なカバーで覆うベルトやチェン剝出しの増・減速装置取付けは受取りを拒絶され、素人では簡単に取外しできない頑丈なケースで囲う内臓型ギァ装置へ交換を要求されている。

これは難民移住者の中に、わざとカバー類を取外し手・足を無理遣り挿入、怪我で賠償を請求する事例発生の報道が出た事による。

そのため絶対安全の考え方が要求される状態が広い範囲で定着しつつある。

また国内でも機械装置動作部に設置した金網カバーの目粗さと変形し易さが問題となり、工場見学に来た子供達の手・指が入らない目の大きさと寄り掛っても簡単に変形しない頑丈な構造のカバーへ取替えを要求された事例へ筆者が遭遇した経験も有る。

 耐久機能面では、装置構成機器部品個々の保証可能な寿命時間数値、寿命年数経過後の信頼度数値、故障前兆候の内容と特徴を事細かに仕様書上で表示義務付けを要望する客先も広がる現実がある。

これらは、担当者へそのまま開発・設計時の達成すべき要求設計条件の達成目標数値となり、実機または試作品による裏付け検証試験実施を義務付ける結果となる。

また客先には、予期せぬ不意の故障停止によるクレーム発生予防の有力な手段となる。

保守・保全機能面では、予期せぬ突然の地震や風水害による被災でメーカーが短期間に客先対応できない場合に、現地オペレータでも日常周囲に有る工具で簡単に機能回復対策可能な措置方法を取扱説明書上に分り易く明記義務付けが仕様書へ記載が望まれる。

 保安機能面では、操作・制御面でパソコンが多用されて久しいが、外部電話回線等から不法侵入による故意の妨害・破壊行為で機器暴走や制御不能となる事は、絶対に避け得る様に仕様設定上の注意記載が必要である。

 環境保護・省エネ機能面では、捨てられない材料の使用禁止とできるだけ省エネとなる動力の入出力効率の選択を仕様設定面で明記義務付けが望ましい。

「改善点と取組み実施法」

 開発仕様書の作成では、先ず機能系統図の形式で要求機能に洩れが無い様に客先で考え得る項目全てを最低三次機能まで抽出する。(総論添付図 3-4 「自転車の機能系統図例(部分)」参照)

「固有・特有機能」では、対象となる商品・製品でしか持ち得ない特徴的な機能を言う。

総論添付図 3-4「自転車の機能系統図例」では、

一次機能の走行機能、搭載機能、

二次機能の操舵機能、駆動機能、制動機能、走行安定性機能、人員搭載機能、荷物搭載機能、

三次機能の方向操作機能、操作力機能、搭乗者年齢配慮機能、登坂機能、加速機能、搭乗者年齢配慮機能、停止機能、短距離停止機能、横滑り防止機能、保持機能、転倒防止機能、安定性確保機能、疲労防止機能、走行中の乗り心地機能、サドルの感触機能、耐重量機能、荷物保持機能、荷物固定機能、小物入れ機能、等の部分を言う。

「共通・共有機能」では、どんな商品・製品(形ある材料で造られる商品・製品のみだけで無く、コンピュータのソフト、サービス業の接客法でも必要な機能項目)にも共通して必要となる

① 安全・安心機能、

② 快適・便利機能、

③ 耐久機能、

④ 保守・保全機能、

⑤ 保安機能、

⑥ 環境保護・省エネ・その他の機能面の六項目である。

ここで ① 安全・安心機能とは、走行時、停止時、転倒・衝突時、修理・点検時、他の人体接触時の安全確保を言う。

② 快適・便利機能とは、歩くより早く移動できる、重い荷物を楽に運べる、子供や高齢者でも楽に扱える、等を言う。

③ 耐久機能とは、適切に保全・保守すれば風雨や雪等に晒され続けても10年以上の長期間に渡って使用できる、等を言う。

④ 保守・保全機能とは、パンクしても自分で簡単に修理できる、泥などが付着しても簡単に水で洗い流せる、等を言う。

⑤保安機能とは、いたずらで素人では簡単には壊されない、等を言う。

⑥ 環境保護・省エネ機能とは、維持に余り費用を掛けずに済む。メンテナンスフリーである。使い古したら捨てられる、または捨てたい場合に業者が引取って呉れる、等を言う。

「実施による改善効果」

機能系統図へ先ず客先が求めている要求機能を一次機能、二次機能、三次機能として抽出する。

これだけで足りないと思う場合には、補助・副次機能として四次機能、五次機能と順次項目を追加し更に分解の上で抽出・追記する。

また仕様書としてまとめるには、抽出した機能項目のそれぞれへ開発品が持つべき要求性能、特性、設計条件を達成すべき目標数値(例えば、①無償保証期間寿命値、②耐久寿命値、③PL法で要求する安全寿命期間値と前記の期経過毎で確保すべき信頼度値、等)を設定する。

仮検収立会い時に客先から仕様洩れ指摘を予防するには、類似先行商品・製品の開発・設計時に標準基本仕様書を日頃からまとめて置くことが大切で、以前客先から指摘された事項を全て仕様書へ記載して完成させて置く事を薦めたい。

その事で立会い時の追加工事発生の客先指摘を予防できれば、手戻り・後処理時間の 8 %( 100 人規模の技術部門なら年間4,800 時間相当 = 仮に技術部門人員 1 人当り年売上が 1 億円で 2000 時間勤務とすれば、5 万円 / H × 4800 H = 2 億 4 千万円相当の売上げ増加分 )が節約、予防対象となる効果が期待できる。

また客先指摘による仕様洩れでは、追加の材料・部品購入費用と製作・組立工数などが発生する。

一般的には、まだ出荷前のため製造仕損で処理される可能性があるが、設計責任の範囲に組込まれ内部処理される場合が多い。

この費用の節約・予防(製造仕損費の10%程度を占める)効果も大きい。

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「引用文献」

・本稿は筆者(伊豫部将三)が執筆し、日刊工業新聞社月刊「機械設計」誌2017年3月号臨時増刊号へ投稿掲載した「設計の品質保証に必須のDR実施法 50 事例」部分へ今回ブログ掲載に当りタイトルを「設計の働き方改革とDRの具体的取り組み法」へ変更し、加筆し不備部は訂正した。

なお原本入手ご希望の方は、出版元(日刊工業新聞社・出版局)へお問い合わせを給わりたく、何分宜しくお願い申し上げます。

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「検索キーワード」

「市場ニーズ調査」 「先行技術調査」 「開発仕様書」 「要求機能」 「要求性能」 「要求特性」 「要求設計条件」 「目標寿命値」 「目標信頼度値」 「構想図」 「原理選択」 「方式選択」 「構造選択」 「材料選択」 「表面処理選択」「熱処理選択」「工作選択」 「形状選択」 「組合せ選択」 「締結法選択」 「結合法選択」 「動作制御法選択」 「回転・摺動部・間隙部・潤滑法選択」 「疲れ強さ設定」 「振動・衝撃強さ設定」 「耐食性設定」 「摩擦・摩耗強さ設定」 「揺動・ねじれ強さ設定」 「熱衝撃強さ設定」 「切欠き効果劣化防止法」「穴明き効果劣化防止法」 「溝付き効果劣化防止法」 「段付き効果劣化防止法」 「落雷・高圧サージ電圧損傷防止法」 「水滴付着絶縁劣化防止法」 「静電気放電発火・引火防止法」 「電磁ノイズ誘導誤作動防止法」 「過負荷発熱焼損防止法」 「ワイヤ断線防止法」 「膨張収縮半田剝離防止法」 「検証試験実施法基準」 「試験サンプル数基準」 「部品加工基準」 「部品測定基準」 「設計・試験工数見積り法基準」「日程計画法基準」 「コスト見積り実施法基準」 「耐久試験実施法基準」 「破壊・損傷試験実施法基準」 「基本仕様作成法基準」 「寿命試験実施法基準」 「信頼度確認試験実施法基準」 「故障予測実施法基準」 「工程能力指数達成法基準」 「客先クレーム措置法基準」 「苦情処理回答実施法基準」 「市場モニタリング実施法基準」 「耐圧試験実施法基準」 「機密漏洩試験実施法基準」 「プログラムデバック試験実施法基準」 他、などがある。

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「全体目次」

「総論 」

iyoblog (3-0-1)・(はじめに) 設計の品質保証を左右するDR(Design Review = 設計審査)

「解説」

iyoblog (3-0-2)・第1章・DR-0(商品開発企画の仕様書と構想図作成段階)の取組み法と現状実態

iyoblog (3-0-3)・第2章・DR-1(開発試作品設計・検証および基本設計段階)の取組み法と現状実態

iyoblog (3-0-4)・第3章・DR-2(詳細組立図と部品設計・出図図書作成段階)の取組み法と現状実態

事例編・第一部「DR組織および事前準備関連取り組み法」

iyoblog (3-01)・市場クレームの手戻り予防では、DRの主要目的を点検会から事前指導会へ重点を転換する

iyoblog (3-02)・客先指摘仕様洩れ手戻り予防では、基本仕様項目の主要部はDR会が作成する

iyoblog (3-03)・事前市場ニーズ調査では、先行競合品と併せ、新規見込み購買層調査も義務付ける

iyoblog (3-04)・先行技術調査では、先行メーカー動向と併せ、新規参入見込みメーカー有無動向調査も義務付ける

iyoblog (3-05)・開発仕様書の要求機能設定では、市場ニーズ調査から従来品に無い特徴機能設定を義務付ける

iyoblog (3-06)・開発品の要求性能設定では、市場ニーズ調査から従来品に無い特徴性能設定を義務付ける

iyoblog (3-07)・開発品の要求特性設定では、従来品に無い特徴特性設定を義務付ける

iyoblog (3-08)・要求設計条件設定では、従来品に無い寿命値設定を義務付ける

iyoblog (3-09)・要求設計条件設定では、従来品に無い信頼度値設定を義務付ける

iyoblog (3-10)・開発品の構想図作成では、従来品に無い原理・方式・構造選択を義務付ける

事例編・第二部「DR-0 ・商品企画・関連仕様作成取り組み法」

iyoblog (3-11)・開発仕様書と構想図作成段階で確認すべき項目

iyoblog (3-12)・開発仕様書案で確認すべき項目

iyoblog (3-13)・構想図案で確認すべき項目

iyoblog (3-14)・メカ系構想設計部位案で確認すべき項目

iyoblog (3-15)・制御・実装系構想設計部位案で確認すべき項目

iyoblog (3-16)・計測器系構想設計部位案で確認すべき項目

iyoblog (3-17)・メカ系構想設計部位案で検証前に確認すべき項目

iyoblog (3-18)・制御・実装系構想設計部位案で検証前に確認すべき項目

iyoblog (3-19)・計測器系構想設計部位案で検証前に確認すべき項目

iyoblog (3-20)・構想設計案作成図書で確認すべき項目

「事例編・第三部・DR-1(1) ・ 商品企画・関連仕様作成実施取り組み法」

iyoblog (3-21)・試作品設計段階で事前確認すべき項目

iyoblog (3-22)・メカ系部位試作品設計案で事前確認すべき項目

iyoblog (3-23)・制御・実装系部位試作品設計案で事前確認すべき項目

iyoblog (3-24)・計測器系部位試作品設計案で事前確認すべき項目

iyoblog (3-25)・メカ系部位試作品案の検証で事前確認すべき項目

iyoblog (3-26)・制御・実装系部位試作品案の検証前に確認すべき項目

iyoblog (3-27)・計測器系部位試作品案の検証前に確認すべき項目

iyoblog (3-28)・メカ系部位試作品案の検証結果評価法で事前確認すべき項目

iyoblog (3-29)・制御・実装系部位試作品案の検証結果評価法で確認すべき項目

iyoblog (3-30)・計測器系部位試作品案の検証結果評価法で確認すべき項目

「事例編・第四部・DR-1(2) ・ 基本設計着手時の不具合予防取り組み法」

iyoblog (3-31)・基本設計で開発品と既存品組合せ部位の確認項目

iyoblog (3-32)・基本設計で環境条件の確認項目・その1

iyoblog (3-33)・基本設計で環境条件の確認項目・その2

iyoblog (3-34)・基本設計で環境条件の確認項目・その3

iyoblog (3-35)・基本設計で鉄系材料使用部位の確認項目・その1

iyoblog (3-36)・基本設計で鉄系材料使用部位の確認項目・その2

iyoblog (3-37)・基本設計で非鉄系材料使用部位の確認項目・その1

iyoblog (3-38)・基本設計で非鉄系材料使用部位の確認項目・その2

iyoblog (3-39)・基本設計で非金属系材料使用部位の確認項目・その1

iyoblog (3-40)・基本設計で非金属系材料使用部位の確認項目・その2

「事例編・第五部・DR-2 ・ 詳細設計着手時の不具合予防取り組み法」

iyoblog (3-41)・詳細設計で炭素鋼熱処理部品の確認項目

iyoblog (3-42)・詳細設計で部品形状の確認項目

iyoblog (3-43)・詳細設計で衝撃強さ確保の確認項目

iyoblog (3-44)・詳細設計で摩耗強さ確保の確認項目

iyoblog (3-45)・詳細設計でねじ締結部の確認項目

iyoblog (3-46)・詳細設計で部品素材選択の確認項目

iyoblog (3-47)・詳細設計でステンレス鋼選択の確認項目

iyoblog (3-48)・詳細設計で深絞り品置き割れ防止の確認項目

iyoblog (3-49)・詳細設計で溶接品質確保の確認項目

iyoblog (3-50)・詳細設計で異種金属接触による腐食防止の確認項目

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「筆者略歴」

 1957年4月~1974年3月の17年間・富士重工業㈱(注・現社名スバル)三鷹製作所(現・群馬県大泉町へ移転)生産技術部門に勤務。乗用車用エンジン・ミッション製造の工場自動化機器・専用機設計業務へ従事。1974年技術士(機械部門・第7916号)登録、伊豫部技術士事務所を開設。開発・設計および生産技術部門の技術コンサルタントとして現在に至る。この間、上場および中堅企業100社以上で社員教育や業務改善支援業務に従事。現在までに、社団法人日本技術士会理事、りそな中小企業振興財団「中小企業庁長官新技術・新製品賞」贈賞の専門審査委員、東大和市商工会理事、等を歴任。

 著書「設計の故障解析51(CD-ROM付)」、「設計の基本仕様51(CD-ROM付)」、「設計のマネジメント101」、「設計者の心得と実務101」、「設計の経験則101」、「設計の凡ミス退治101」、「設計のムダ退治101」、「ハンドリング簡易自動化201」、「設計審査(DR=Design Review)支援ツール集・Ⅰ(事前審査編)」以上日刊工業新聞社から刊行。月刊「機械設計」誌へ長期連載等あり。「品質機能展開50事例(CD-ROM付)」、「MC選定資料マニアル」、熊谷卓氏と共著「組立・ハンドリング自動化実例図集」、以上新技術開発センターから刊行などが有る。

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