事前市場ニーズ調査では、先行競合品メーカ動向と新規見込みユーザ調査も義務付ける・事例(3-03)

iyoblog (3-03)「設計の働き方改革とDR(設計審査)の具体的取り組み法」設計力向上研究会(伊豫部将三)編

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事例編・第一部「DR組織および事前準備関連取り組み法」

iyoblog (3-03)・事前市場ニーズ調査では、先行競合品メーカ動向と併せ新規見込みユーザ調査も義務付ける

「現状と問題点」

 新商品・製品開発では、先行メーカおよび先行商品・製品が既に存在し、将来の市場拡大が見込める場合に新規参入する目的で行う場合と、他社に無い独自技術から考え出した今まで市場に存在し無い新しい生活様式を提案する形で、ニーズを創り出す形態の新商品開発がある。

 既存市場へ新規参入する例では、パソコンの端末・付属機器に当たる個人向けプリンタ分野では、現在も盛んに新規参入の試みが現実に行われている。

ここで問題は、一般的に多い参入形態が先行メーカー商品・製品より機能を拡充・追加しながらプライス(販売価格)をより安く設定する事で新規参入を成功させようと努力する取組み法がある。

前記過程で筆者が遭遇した中に製造原価が目標販売価格を上回る開発途中段階で経営者が短期間に一定の市場占有率を確保・維持した上で長期的には持続して売上と利益を出せると判断、上市(新商品を市場へ売出す事)を決断し、販売開始後1年で技術的欠陥から全商品回収・交換が必要になり凡そ 100 億円の損害を出すに至った某中堅企業がある。

そこから開発段階から利益が出る取組み法の社員教育支援依頼を受けた事例がある。

このケースの場合に市場ニーズの読みで有る目標数量を短期間に市場で売上げた実績から機能と価格設定に間違いはなかった。

しかし上市前開発品の技術検証に不備が有りこれを事前に見抜けなかった事が、経営判断上の致命傷となった。

幸い内部留保資金を十分保持していたので、この企業は倒産には至らなかった。

今まで市場に先行商品として存在し無いが、提案する形で新しいニーズを創り出す形態の新商品開発する取組み法では、電卓(電気卓上計算器)が最初に上市された時、機能と価格設定を異分野先行商品であるカメラに当て嵌め置換え市場ニーズの拡大予測を行い成功した事例は余りにも有名である。

この分野ではその企業が今日も引続いて拡大している実態例から見ると、勿論開発時に商品回収が伴う技術的欠陥とクレーム発生が殆どなかった事が幸いしたと言える。

「着眼点・分析と評価法」

 既存市場へ新規参入する例では、市場ニーズが商品の機能と価格設定で拡大が見込める場合と、市場の拡大は見込めないが末端ユーザーが既存メーカーの商品機能と価格に不満が有り、新しいコンセプト設定による機能と価格で置換え需要掘起しの形で参入を果たせる場合がある。

一般消費者・個人向けパソコン付属機器のプリンタ分野では、現在でも本件がまだ該当する状態に有ると思われる。

また市場の拡大は見込めないがユーザーが既存先行メーカーの商品機能と価格設定上に不満が有り、新しいコンセプト設定による機能と価格の置換え需要で参入を果たす場合では、現在市場に出回っている既存の価格が高い大型家電商品類は殆どが対象と成り得る可能性がある。

一般消費者・個人向け商品では、中国・東南アジアの価格が安い発展途上国製の電化製品類、家具日用品類、衣類・雑貨品類、等置換え得る例を上げると暇がない。

只寿命と信頼度等の品質面でまだ日本が一部の機械・電機製品面で若干先行している様に見えるが、果たして何処まで持ち堪えられるか? 心配でならない状態と言える。

「改善点と取組み実施法」

 既存市場へ新規参入する例では、下駄が靴へ、番傘が洋傘へ、和式が洋式トイレへ、和服が洋服へ、それぞれ置換って来たのは、多世代多人数世帯の生活様式から少人数個人中心世帯の生活様式へ時代が大きく変化している流れで、個体重視に因るコンセプトの変化と捉える必要がある。

筆者がここで強調したい事は、市場ニーズは絶えず大きな流れで変化している事を見逃さない様に、開発着手前の市場ニーズ調査に当っては、既存商品・製品に対しエンドユーザーが持つ不満をキチンと事前にモニター面談とアンケートを中心とする調査・把握の必要がある。

筆者は発展途上国側から見ると、日本市場は多くの既存商品・製品分野で現状非常に参入し易い状態に置かれている様に思える。

既存市場へ新規参入する商品開発例では、単純に既存品の機能をそのままに途上国で造る事で価格面を国内競合メーカー品より安く設定して置換え需要を図り国内シェアを高める事が目標にするニーズ調査でなく、新しいコンセプト設定による新規の需要層を掘起すニーズ調査にも重点を置く取組みが望まれる。

新規の需要層を掘起すニーズ調査とは、既存商品にはなかったコンセプトを付加する事である。

電動アシスト自転車は、その代表的な一例と言える。

今まで体力弱者の高齢者層・病弱者層・低年齢者層には、長い坂道を自転車で登るには耐えられなかった。

これを安易に使える様に代えた。そのため平地が少なく山間地が多い日本では、需要層が飛躍的且つ急速に拡大中である。

「実施による改善効果」

 ここで既存市場へ新規参入する場合の市場ニーズ調査では、新しいコンセプト設定による先行商品に無い新機能付加と付加価値の高い価格設定で参入を果たす考え方で、既存品との置換えユーザーを対象とするだけでなく、既存商品に無い新しい市場ニーズを開拓する考え方で既存ユーザー以外を販売対象とする調査に当たる事が望ましい。

 そのためのコンセプトの一つとして、65 歳以上の高齢者層が今年度中に全人口の凡そ四分の一(2014年国勢調査時点で老年人口は26.0%、3000万人を超える)を占めるに至ったと厚生労働省が人口動態統計調査(2016年度9月版)で発表している。

また同時に百歳以上の高齢者数が、三万六千人を超えたと発表があった。

これらの人達は、自分達に合った新しいニーズ市場を創り出すと考える必要がある。

従ってこれらに応える新商品開発が望まれる。

同じ傾向は、日本だけでなく、先進国も、また中国などの発展途上国でも問題視されている。

個人単位の家庭内の日常生活で必要時に安くて簡易に使える歩行困難者向けの介護者支援を必要としないロボットや生活支援ロボットがニーズとして普及が脚光を浴びる事は容易に想像が可能である。

図「厚生労働省・人口動態統計調査・2020年推計人口ピラミッド表より抜粋」-1
図 「厚生労働省・人口動態統計調査・2030年推計人口ピラミッド表より抜粋」-2

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「引用文献」

・本稿は筆者(伊豫部将三)が執筆し、日刊工業新聞社月刊「機械設計」誌2017年3月号臨時増刊号へ投稿掲載した「設計の品質保証に必須のDR実施法 50 事例」部分へ今回ブログ掲載に当りタイトルを「設計の働き方改革とDRの具体的取り組み法」へ変更し、加筆し不備部は訂正した。

なお原本入手ご希望の方は、出版元(日刊工業新聞社・出版局)へお問い合わせを給わりたく、何分宜しくお願い申し上げます。

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「全体目次」

「総論 」

iyoblog (3-0-1)・(はじめに) 設計の品質保証を左右するDR(Design Review = 設計審査)

「解説」

iyoblog (3-0-2)・第1章・DR-0(商品開発企画の仕様書と構想図作成段階)の取組み法と現状実態

iyoblog (3-0-3)・第2章・DR-1(開発試作品設計・検証および基本設計段階)の取組み法と現状実態

iyoblog (3-0-4)・第3章・DR-2(詳細組立図と部品設計・出図図書作成段階)の取組み法と現状実態

事例編・第一部「DR組織および事前準備関連取り組み法」

iyoblog (3-01)・市場クレームの手戻り予防では、DRの主要目的を点検会から事前指導会へ重点を転換する

iyoblog (3-02)・客先指摘仕様洩れ手戻り予防では、基本仕様項目の主要部はDR会が作成する

iyoblog (3-03)・事前市場ニーズ調査では、先行競合品と併せ、新規見込み購買層調査も義務付ける

iyoblog (3-04)・先行技術調査では、先行メーカー動向と併せ、新規参入見込みメーカー有無動向調査も義務付ける

iyoblog (3-05)・開発仕様書の要求機能設定では、市場ニーズ調査から従来品に無い特徴機能設定を義務付ける

iyoblog (3-06)・開発品の要求性能設定では、市場ニーズ調査から従来品に無い特徴性能設定を義務付ける

iyoblog (3-07)・開発品の要求特性設定では、従来品に無い特徴特性設定を義務付ける

iyoblog (3-08)・要求設計条件設定では、従来品に無い寿命値設定を義務付ける

iyoblog (3-09)・要求設計条件設定では、従来品に無い信頼度値設定を義務付ける

iyoblog (3-10)・開発品の構想図作成では、従来品に無い原理・方式・構造選択を義務付ける

事例編・第二部「DR-0 ・商品企画・関連仕様作成取り組み法」

iyoblog (3-11)・開発仕様書と構想図作成段階で確認すべき項目

iyoblog (3-12)・開発仕様書案で確認すべき項目

iyoblog (3-13)・構想図案で確認すべき項目

iyoblog (3-14)・メカ系構想設計部位案で確認すべき項目

iyoblog (3-15)・制御・実装系構想設計部位案で確認すべき項目

iyoblog (3-16)・計測器系構想設計部位案で確認すべき項目

iyoblog (3-17)・メカ系構想設計部位案で検証前に確認すべき項目

iyoblog (3-18)・制御・実装系構想設計部位案で検証前に確認すべき項目

iyoblog (3-19)・計測器系構想設計部位案で検証前に確認すべき項目

iyoblog (3-20)・構想設計案作成図書で確認すべき項目

「事例編・第三部・DR-1(1) ・ 商品企画・関連仕様作成実施取り組み法」

iyoblog (3-21)・試作品設計段階で事前確認すべき項目

iyoblog (3-22)・メカ系部位試作品設計案で事前確認すべき項目

iyoblog (3-23)・制御・実装系部位試作品設計案で事前確認すべき項目

iyoblog (3-24)・計測器系部位試作品設計案で事前確認すべき項目

iyoblog (3-25)・メカ系部位試作品案の検証で事前確認すべき項目

iyoblog (3-26)・制御・実装系部位試作品案の検証前に確認すべき項目

iyoblog (3-27)・計測器系部位試作品案の検証前に確認すべき項目

iyoblog (3-28)・メカ系部位試作品案の検証結果評価法で事前確認すべき項目

iyoblog (3-29)・制御・実装系部位試作品案の検証結果評価法で確認すべき項目

iyoblog (3-30)・計測器系部位試作品案の検証結果評価法で確認すべき項目

「事例編・第四部・DR-1(2) ・ 基本設計着手時の不具合予防取り組み法」

iyoblog (3-31)・基本設計で開発品と既存品組合せ部位の確認項目

iyoblog (3-32)・基本設計で環境条件の確認項目・その1

iyoblog (3-33)・基本設計で環境条件の確認項目・その2

iyoblog (3-34)・基本設計で環境条件の確認項目・その3

iyoblog (3-35)・基本設計で鉄系材料使用部位の確認項目・その1

iyoblog (3-36)・基本設計で鉄系材料使用部位の確認項目・その2

iyoblog (3-37)・基本設計で非鉄系材料使用部位の確認項目・その1

iyoblog (3-38)・基本設計で非鉄系材料使用部位の確認項目・その2

iyoblog (3-39)・基本設計で非金属系材料使用部位の確認項目・その1

iyoblog (3-40)・基本設計で非金属系材料使用部位の確認項目・その2

「事例編・第五部・DR-2 ・ 詳細設計着手時の不具合予防取り組み法」

iyoblog (3-41)・詳細設計で炭素鋼熱処理部品の確認項目

iyoblog (3-42)・詳細設計で部品形状の確認項目

iyoblog (3-43)・詳細設計で衝撃強さ確保の確認項目

iyoblog (3-44)・詳細設計で摩耗強さ確保の確認項目

iyoblog (3-45)・詳細設計でねじ締結部の確認項目

iyoblog (3-46)・詳細設計で部品素材選択の確認項目

iyoblog (3-47)・詳細設計でステンレス鋼選択の確認項目

iyoblog (3-48)・詳細設計で深絞り品置き割れ防止の確認項目

iyoblog (3-49)・詳細設計で溶接品質確保の確認項目

iyoblog (3-50)・詳細設計で異種金属接触による腐食防止の確認項目

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「筆者略歴」

 1957年4月~1974年3月の17年間・富士重工業㈱(注・現社名スバル)三鷹製作所(現・群馬県大泉町へ移転)生産技術部門に勤務。乗用車用エンジン・ミッション製造の工場自動化機器・専用機設計業務へ従事。1974年技術士(機械部門・第7916号)登録、伊豫部技術士事務所を開設。開発・設計および生産技術部門の技術コンサルタントとして現在に至る。この間、上場および中堅企業100社以上で社員教育や業務改善支援業務に従事。現在までに、社団法人日本技術士会理事、りそな中小企業振興財団「中小企業庁長官新技術・新製品賞」贈賞の専門審査委員、東大和市商工会理事、等を歴任。

 著書「設計の故障解析51(CD-ROM付)」、「設計の基本仕様51(CD-ROM付)」、「設計のマネジメント101」、「設計者の心得と実務101」、「設計の経験則101」、「設計の凡ミス退治101」、「設計のムダ退治101」、「ハンドリング簡易自動化201」、「設計審査(DR=Design Review)支援ツール集・Ⅰ(事前審査編)」以上日刊工業新聞社から刊行。月刊「機械設計」誌へ長期連載等あり。「品質機能展開50事例(CD-ROM付)」、「MC選定資料マニアル」、熊谷卓氏と共著「組立・ハンドリング自動化実例図集」、以上新技術開発センターから刊行などが有る。

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