開発仕様書の要求機能設定では、ニーズ調査から従来品に無い特徴機能設定を義務付ける・事例(3-05)

iyoblog (3-05)「設計の働き方改革とDR(設計審査)の具体的取り組み法」設計力向上研究会(伊豫部将三)編

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事例編・第一部「DR組織および事前準備関連取り組み法」

iyoblog (3-05)・開発仕様書の要求機能設定では、市場ニーズ調査から従来品に無い特徴機能設定を義務付ける

「現状と問題点」

 新商品・製品開発テーマを考える際に市場に無い新商品・製品で考えるか? 既存商品・製品へ機能追加・拡充で考えるか? 性能向上・改良で考えるか? など方法は色々ある。

判り易い言葉で言えば、小型化するか? 軽量化するか? 低価格化するか? 高齢者や子供でも扱える様にするか? などである。

その際周囲に理解を得るには、新規提案品と既存商品・製品との違いを機能系統図に書いて比較して示すのが最も分り易く理解させる方法と言える。

参考までに図 3-5 へ「乗用車用ドアハンドルの二次機能までの機能系統図例(固有・特有機能の一部のみを示す。)」を示す。

 開発テーマを決める際大切な事は、市場に類似先行商品がある分野へ後発メーカとして参入する場合には、先行商品と機能上の違いを明確に際立たせ購入見込みユーザへ強力な印象着けが最終的に要求される。

これを機能系統図で最初に社内関係者へ示し、先ず認知して貰う必要がある。

デザイン性を強調するか? 安全性を強調するか? 保安性を強調するか? 価格の廉価性を強調するか? 品質(寿命と信頼度)の良さを強調するか? は、担当者に執って色々と悩む所である。

最良の選択法は、市場調査を通して既存品ユーザへモニタリングし先行既存品に対する直接面談や電話アンケートで改良要望点や使用上の不満および好みを聞き出すことである。

これを許に、既存商品をどう変えたらより多くのユーザ支持が得られるか? 新しいユーザを獲得できるか? の傾向を分析・評価する。

「着眼点・分析と評価法」

 開発テーマを決める市場調査で一番大切な事は、開発商品が先ず売れなければならない。

開発商品が売れなければ、市場と企業から開発は失敗したと評価される。

時には、企業の存続に影響を与える場合もある。

社内でも担当者の力量・能力が疑われ評価が下がる。

そうしない為には、市場に於けるエンドユーザの開発要望に対する関心の程度を丁寧に事前把握する必要がある。

 既に先行類似商品が市場に存在している場合には、実際のユーザと開発商品の購入見込みユーザを訪ね直接面談するか? 電話アンケートで聞き取りするか? を行わねばならない。

この場合に注意することは、統計学的に真面目に答えて呉れる人達の比率は、50%前後しかいない。

従って通常有効回答数を2千件以上確保する為には、倍の4千人以上を対象に調べる(DATAを集める)必要がある。

 またもう一つの注意点は、市場には二種類の客層が存在する。

一つは、先行既存商品の機能と品質(寿命と信頼度)がそこそこ同じ程度ならできるだけ廉価(安さ)を求める客層と、価格は二の次にして機能と品質(寿命と信頼度)が既存品より極めて良い物(明確に違いを感ずる)ならお金は少し高くても受け入れる客層である。

従って市場調査では、どちらの客層へ面談またはアンケートしているか? を明確に区別して DATA を集計する必要がある。

その上で機能を多少改良しながら廉価版の開発品着手とするか? 機能を大幅に追加・改良付加すると共に品質面(寿命と信頼度)を飛躍的に高める商品開発とするか? の最終選択を行うと良い。

「改善点と取組み実施法」

 開発テーマの最終選択として先行既存品の機能と品質(寿命と信頼度)を同程度にして廉価版で行くと言う選択で有れば、製造コスト低減を徹底的に追及する設計へ取組めば良い。

その為には、1・材料費の節減、2・システム構成部品点数の節減、3・組立と調整コスト(工数)の節減などが、設計上主要取組みテーマとなる。

1・材料費の節減では、金属切削部品を板金プレス部品へ。板金プレス部品を樹脂射出成型部品へ変更などが主な改良テーマとなる。

2・部品点数の節減では、主としてボルトやねじ締結部品類の一体化を念頭に変更が主テーマとなる。

3・組立調整コスト(工数)の節減では、人手による組立作業の自動化(ロボット化)推進と調整作業の廃止が主な改良テーマとなる。

また開発テーマの最終選択として先行既存品に無い際立つ機能の追加と品質(寿命と信頼度)向上を図るテーマの場合には、全てゼロからの積りで開発テーマへ取組む必要がある。

この場合に何方の選択が良いかについて筆者は、後者を薦めたい。

その理由は、前者の場合に先行既存品メーカが直ぐ後を追掛け半年と優位性を確保できず、その後激しい廉価販売競争の渦中に飛込む結果を招く。

その為長い体力消耗戦に晒され利益も出ず投資資金の回収も困難に成る事が予想される。

その例として安い労働力を求め発展途上国へ生産拠点を移動し廉価競争に巻込まれ現実に国内拠点も失う大手が複数出ている事は、記憶へ留めるに値する。

「実施による改善効果」

 先行既存商品へ特徴ある新機能を追加する改良設計は、内容的には新商品開発と同じく新しい製造プロセス開発へ取組む事である。

例えば現在の国内市場で需要が急拡大中の電動アシスト自転車や大人用倒れ難い三輪自転車の開発で考えて見れば判る。

商品開発は、新しい製造プロセス開発そのものである。

先行既存品として自転車は存在している。

しかし高齢者や身体弱者には、筆者を含め急な坂道を登るのが現実に困難で有る。

また身体弱者で平衡感覚が鈍い人達には、漕ぎ始めのヨロヨロ低速走行時には倒れる危険と心配も有る。

これを倒れ難く安心して乗れる様に機能見直しで改良した結果の大人用三輪自転車が新商品として登場した。

電動アシスト装置を付加する自転車製造のプロセスと大人用前輪二輪へ改良した三輪自転車製造のプロセスを新たに設計した事である。

当然品質(寿命と信頼度)を十分検証しなければならない。

これをクリアした結果として、上市された商品である。

廉価版の追及ではなく、先行既存商品ではまだ着手されていなかった機能付加による改良でより付加価値を高める参考事例として推奨したい。

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「引用文献」

・本稿は筆者(伊豫部将三)が執筆し、日刊工業新聞社月刊「機械設計」誌2017年3月号臨時増刊号へ投稿掲載した「設計の品質保証に必須のDR実施法 50 事例」部分へ今回ブログ掲載に当りタイトルを「設計の働き方改革とDRの具体的取り組み法」へ変更し、加筆し不備部は訂正した。

なお原本入手ご希望の方は、出版元(日刊工業新聞社・出版局)へお問い合わせを給わりたく、何分宜しくお願い申し上げます。

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「全体目次」

「総論 」

iyoblog (3-0-1)・(はじめに) 設計の品質保証を左右するDR(Design Review = 設計審査)

「解説」

iyoblog (3-0-2)・第1章・DR-0(商品開発企画の仕様書と構想図作成段階)の取組み法と現状実態

iyoblog (3-0-3)・第2章・DR-1(開発試作品設計・検証および基本設計段階)の取組み法と現状実態

iyoblog (3-0-4)・第3章・DR-2(詳細組立図と部品設計・出図図書作成段階)の取組み法と現状実態

事例編・第一部「DR組織および事前準備関連取り組み法」

iyoblog (3-01)・市場クレームの手戻り予防では、DRの主要目的を点検会から事前指導会へ重点を転換する

iyoblog (3-02)・客先指摘仕様洩れ手戻り予防では、基本仕様項目の主要部はDR会が作成する

iyoblog (3-03)・事前市場ニーズ調査では、先行競合品と併せ、新規見込み購買層調査も義務付ける

iyoblog (3-04)・先行技術調査では、先行メーカー動向と併せ、新規参入見込みメーカー有無動向調査も義務付ける

iyoblog (3-05)・開発仕様書の要求機能設定では、市場ニーズ調査から従来品に無い特徴機能設定を義務付ける

iyoblog (3-06)・開発品の要求性能設定では、市場ニーズ調査から従来品に無い特徴性能設定を義務付ける

iyoblog (3-07)・開発品の要求特性設定では、従来品に無い特徴特性設定を義務付ける

iyoblog (3-08)・要求設計条件設定では、従来品に無い寿命値設定を義務付ける

iyoblog (3-09)・要求設計条件設定では、従来品に無い信頼度値設定を義務付ける

iyoblog (3-10)・開発品の構想図作成では、従来品に無い原理・方式・構造選択を義務付ける

事例編・第二部「DR-0 ・商品企画・関連仕様作成取り組み法」

iyoblog (3-11)・開発仕様書と構想図作成段階で確認すべき項目

iyoblog (3-12)・開発仕様書案で確認すべき項目

iyoblog (3-13)・構想図案で確認すべき項目

iyoblog (3-14)・メカ系構想設計部位案で確認すべき項目

iyoblog (3-15)・制御・実装系構想設計部位案で確認すべき項目

iyoblog (3-16)・計測器系構想設計部位案で確認すべき項目

iyoblog (3-17)・メカ系構想設計部位案で検証前に確認すべき項目

iyoblog (3-18)・制御・実装系構想設計部位案で検証前に確認すべき項目

iyoblog (3-19)・計測器系構想設計部位案で検証前に確認すべき項目

iyoblog (3-20)・構想設計案作成図書で確認すべき項目

「事例編・第三部・DR-1(1) ・ 商品企画・関連仕様作成実施取り組み法」

iyoblog (3-21)・試作品設計段階で事前確認すべき項目

iyoblog (3-22)・メカ系部位試作品設計案で事前確認すべき項目

iyoblog (3-23)・制御・実装系部位試作品設計案で事前確認すべき項目

iyoblog (3-24)・計測器系部位試作品設計案で事前確認すべき項目

iyoblog (3-25)・メカ系部位試作品案の検証で事前確認すべき項目

iyoblog (3-26)・制御・実装系部位試作品案の検証前に確認すべき項目

iyoblog (3-27)・計測器系部位試作品案の検証前に確認すべき項目

iyoblog (3-28)・メカ系部位試作品案の検証結果評価法で事前確認すべき項目

iyoblog (3-29)・制御・実装系部位試作品案の検証結果評価法で確認すべき項目

iyoblog (3-30)・計測器系部位試作品案の検証結果評価法で確認すべき項目

「事例編・第四部・DR-1(2) ・ 基本設計着手時の不具合予防取り組み法」

iyoblog (3-31)・基本設計で開発品と既存品組合せ部位の確認項目

iyoblog (3-32)・基本設計で環境条件の確認項目・その1

iyoblog (3-33)・基本設計で環境条件の確認項目・その2

iyoblog (3-34)・基本設計で環境条件の確認項目・その3

iyoblog (3-35)・基本設計で鉄系材料使用部位の確認項目・その1

iyoblog (3-36)・基本設計で鉄系材料使用部位の確認項目・その2

iyoblog (3-37)・基本設計で非鉄系材料使用部位の確認項目・その1

iyoblog (3-38)・基本設計で非鉄系材料使用部位の確認項目・その2

iyoblog (3-39)・基本設計で非金属系材料使用部位の確認項目・その1

iyoblog (3-40)・基本設計で非金属系材料使用部位の確認項目・その2

「事例編・第五部・DR-2 ・ 詳細設計着手時の不具合予防取り組み法」

iyoblog (3-41)・詳細設計で炭素鋼熱処理部品の確認項目

iyoblog (3-42)・詳細設計で部品形状の確認項目

iyoblog (3-43)・詳細設計で衝撃強さ確保の確認項目

iyoblog (3-44)・詳細設計で摩耗強さ確保の確認項目

iyoblog (3-45)・詳細設計でねじ締結部の確認項目

iyoblog (3-46)・詳細設計で部品素材選択の確認項目

iyoblog (3-47)・詳細設計でステンレス鋼選択の確認項目

iyoblog (3-48)・詳細設計で深絞り品置き割れ防止の確認項目

iyoblog (3-49)・詳細設計で溶接品質確保の確認項目

iyoblog (3-50)・詳細設計で異種金属接触による腐食防止の確認項目

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「筆者略歴」

 1957年4月~1974年3月の17年間・富士重工業㈱(注・現社名スバル)三鷹製作所(現・群馬県大泉町へ移転)生産技術部門に勤務。乗用車用エンジン・ミッション製造の工場自動化機器・専用機設計業務へ従事。1974年技術士(機械部門・第7916号)登録、伊豫部技術士事務所を開設。開発・設計および生産技術部門の技術コンサルタントとして現在に至る。この間、上場および中堅企業100社以上で社員教育や業務改善支援業務に従事。現在までに、社団法人日本技術士会理事、りそな中小企業振興財団「中小企業庁長官新技術・新製品賞」贈賞の専門審査委員、東大和市商工会理事、等を歴任。

 著書「設計の故障解析51(CD-ROM付)」、「設計の基本仕様51(CD-ROM付)」、「設計のマネジメント101」、「設計者の心得と実務101」、「設計の経験則101」、「設計の凡ミス退治101」、「設計のムダ退治101」、「ハンドリング簡易自動化201」、「設計審査(DR=Design Review)支援ツール集・Ⅰ(事前審査編)」以上日刊工業新聞社から刊行。月刊「機械設計」誌へ長期連載等あり。「品質機能展開50事例(CD-ROM付)」、「MC選定資料マニアル」、熊谷卓氏と共著「組立・ハンドリング自動化実例図集」、以上新技術開発センターから刊行などが有る。

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