開発品の要求性能設定では、ニーズ調査から従来品に無い特徴性能設定を義務付ける・事例(3-06)

iyoblog (3-06)「設計の働き方改革とDR(設計審査)の具体的取り組み法」設計力向上研究会(伊豫部将三)編

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事例編・第一部「DR組織および事前準備関連取り組み法」

iyoblog (3-06)・開発品の要求性能設定では、市場ニーズ調査から従来品に無い特徴性能設定を義務付ける

「現状と問題点」

 開発品を市場で売れる商品にするには、特徴ある機能だけでなく競合他社製品とは異なる特徴ある性能を持つ事も大切となる。

ここで特徴ある性能とは、例えばマシニングセンタテーブルなどの繰返し位置決め精度は工作機械メーカーの集まりで有る日本工作機械工業会・技術基準で±10μ(ミクロン)以下と定めている。

これに対し同工業会所属某社は、当社の繰返し位置決め精度を ± 1 μ 以下を保証するとカタログに違いを表示して販売している。

この様に性能上の違いを仕様書上で強調できる様に、商品・製品開発に着手する事を言う。

 乗用車分野では、一時期0~4(零四)加速性が争われた事が有った。

0 ~ 4 加速とは、スタートしてから 400 M(メートル)通過時間が如何に短いか? の加速性能を争うものである。

エレベータでは、高層ビルが多くなるに連れて60 階までの上下移動時間、75 階までの上下移動時間が如何に短いか? を、現在も各社が技術力として性能上の違いを見せ着けながら争われている。

また先に記したマシニングセンタ分野では、工具交換に伴う前の切削終わりから次の切粉出し(Tip to Tip time = 非切削)時間までが如何に短いか? 多色刷り印刷機分野では、原版交換(印刷停止)時間が如何に短いか? が争われている。

これらは、何れも機能の違い丈でなく性能の違いも市場競争力を争う上で商品開発上では、大切な開発テーマ項目と捉えていると理解する必要がある。

つまりエンドユーザーが、性能面の違いを充分意識して買っている事をメーカー側として認知している証拠である。

「着眼点・分析と評価法」

 特徴ある性能の違いとは、競合他社が技術的にまだ実現していない例えば、各種工業会などの業界団体へ加盟している企業は、加盟団体が定める技術基準などを遵守している旨カタログなどで表示する場合が多い。

安全基準などでは一見望ましい様に映るが、所属団体が定める技術基準値を表示し当社製品ではその数値に対し 1/10 以下であるとか、1/100 以下で有るとか、或いは 10 倍で有るとか、50 %増しで有るとか、の数値の違いを明確に表示する事が望ましい。

エンドユーザ側の目で見ると業界団体へ加盟し団体の定める技術基準が守られているから良い製品と認知する訳ではない。

寧ろ団体の定める最大または最小許容値で有る基準値しか守れない程レベルが低いのか? とメーカー側を疑う場合も有り得る。

それは、業界規格値と異なる数値を強調して表示し売り物にするメーカーが存在する為である。

生鮮食品を扱う盛り土がない新豊洲市場建物地下空間で湧出した地下水から本来検出されてはならない物質が検出され、基準値より低いから安全だ! と言い張る主張を一般市民は納得しない。

同じ事が開発商品または製品の種類に依っては、厚生労働省が定める環境ホルモンに影響するダイオキシン、PCB、クロルデン、トリブチル、DDT、ディルドリン、シマジン、アトラジン、DES、ビスフェノール、フタル酸エステル、ノニルフェノール、エチレンなど規制された物質が一切使用されてない事を公的機関の証明書付で表示する事もエンドユーザーへ製品の安全・安心感を与える上では大切である。

「改善点と取組み実施法」

 開発商品を市場でエンドユーザに優先して選択して貰うためには、望む機能に対し競合製品が多数ある中から性能が飛び抜けて良い事を判って貰う工夫が必要となる。

例えば、乗用車で当社製では燃費性能が 20 %良いなどの表示は、エンドユーザへ割安感、お徳用感で大きなインパクトを与える程の効果がある。

この場合に効果の程を具体例で示す事が、特に重要となる。

10 年間使う場合のライフサイクルコスト(買替え期間まで使い続けた場合に掛る経費)で、年 2 万キロ走行すると仮定した場合のトータル金額は、1 リットルで 20 km 走行しガソリン代が 1 リットル 120 円と仮定すれば、( 20,000 km / 年÷ 20 km/L×10 年 × 24 円/L=)240,000 の差額効果となる。

この金額は、ユーザは他に代え難い。

ならばこの車種にしよう!と決断する。

この徳用感に訴える力は、特に大きなものがある。

ここで性能の違いをエンドユーザーの経費節減感に結び着け表示すると、その効果が大きい。

燃費が他メーカ車種より 20 % 良いですよ!

これは、現在のガソリン価格に換算すると年 2 万 km 10 年間乗る場合には、24 万円お得に成りますよ! と具体的に伝える事が大切になる。

「実施による改善効果」

 全ての商品・製品で性能値テーマ項目を費用対効果で表現が可能か? は、一つずつ具体例で検討の余地があるが、例えば現実にプレハブ住宅メーカーで60年寿命保証を表示している企業がある。

プレハブ住宅では、旧建設省(現・国土交通省)が住宅性能表示制度を制定する前にプレハブ住宅メーカーと関連製品メーカーを取りまとめ工業化住宅協会を結成し技術基準で躯体部分(注・鉄骨系住宅では鉄骨部分・木質系住宅では柱と壁面部分)について最低 40 年以上の寿命確保を義務付けた。

従ってプレハブ住宅では、基準法で定める震度 7 の直下型地震で倒壊してはならない規定と躯体部分の 40 年以上の寿命確保条件から容易に交換・取替え可能なインテリアとエクステリア部品類を除けば、寿命は修理・交換無しで 40 年間維持できると一般には思われている。

これが現実にメーカーで 60 年寿命保証を表示されると、40 年と思われている物が 60 年へ変わると、購入見込み客は価格が殆ど変わらず 50 %長い寿命に置換わると理解される。

つまり価格が約 3 分の 1 程度(約 33 %)安く取得できると単純に判断する。

すごい割安感・お徳用感を与えるインパクトが大きい。

一度に数千万円を支払う買物だけにこの宣伝効果は非常に大きいと言える。

当然実価格は若干高くなると推測されるが、33 %と言わず少し位(凡そ半分の 15 %程度)位まで抑えられるなら、こちらを選択したいと望む顧客が増えることに間違いない。

つまり性能が向上する事で 15 %とか、20 %とかの差違から費用対効果に置換えてエンドユーザーは割安感・お徳用感を強く意識する可能性が高い。

このことから先行競合メーカー品に対して開発品の性能面でエンドユーザーに対する差別化を設計担当者に意識させるには、最低でも 15 %から 20 %程度の割安感またはお得用感を感じさせる仕様書開発目標性能値設定を考えて取り組む必要がある。

 例えば、乗用車の場合多くの車種で強度確保上から内装や電装系を除けば殆どの部品が鉄系で有る鋼材で造られ重量は略 1 頓を超える。

これをアルミ・マグネシウム 100 %系材料と樹脂(プラスチック)系部品へ代え、重量を 20 %軽くすれば燃費を 20 %軽減したのと同じ効果を出す事が可能となる。

鉄系部品重量を 20 %軽減した事で代替え材料費が 20 %値上がりし製造原価が同じで済むなら、重量が 20 %軽減されているので燃費は 20 %確実に節減される。

これは、エンドユーザから見れば大変大きな性能向上と見做される。

これらは、性能面で特徴着ける意味と取組み法の一つとして理解できる。

自動車メーカが、何故軽量化に熱心か? 理由の一端が以上から充分理解される。

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「引用文献」

・本稿は筆者(伊豫部将三)が執筆し、日刊工業新聞社月刊「機械設計」誌2017年3月号臨時増刊号へ投稿掲載した「設計の品質保証に必須のDR実施法 50 事例」部分へ今回ブログ掲載に当りタイトルを「設計の働き方改革とDRの具体的取り組み法」へ変更し、加筆し不備部は訂正した。

なお原本入手ご希望の方は、出版元(日刊工業新聞社・出版局)へお問い合わせを給わりたく、何分宜しくお願い申し上げます。

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「全体目次」

「総論 」

iyoblog (3-0-1)・(はじめに) 設計の品質保証を左右するDR(Design Review = 設計審査)

「解説」

iyoblog (3-0-2)・第1章・DR-0(商品開発企画の仕様書と構想図作成段階)の取組み法と現状実態

iyoblog (3-0-3)・第2章・DR-1(開発試作品設計・検証および基本設計段階)の取組み法と現状実態

iyoblog (3-0-4)・第3章・DR-2(詳細組立図と部品設計・出図図書作成段階)の取組み法と現状実態

事例編・第一部「DR組織および事前準備関連取り組み法」

iyoblog (3-01)・市場クレームの手戻り予防では、DRの主要目的を点検会から事前指導会へ重点を転換する

iyoblog (3-02)・客先指摘仕様洩れ手戻り予防では、基本仕様項目の主要部はDR会が作成する

iyoblog (3-03)・事前市場ニーズ調査では、先行競合品と併せ、新規見込み購買層調査も義務付ける

iyoblog (3-04)・先行技術調査では、先行メーカー動向と併せ、新規参入見込みメーカー有無動向調査も義務付ける

iyoblog (3-05)・開発仕様書の要求機能設定では、市場ニーズ調査から従来品に無い特徴機能設定を義務付ける

iyoblog (3-06)・開発品の要求性能設定では、市場ニーズ調査から従来品に無い特徴性能設定を義務付ける

iyoblog (3-07)・開発品の要求特性設定では、従来品に無い特徴特性設定を義務付ける

iyoblog (3-08)・要求設計条件設定では、従来品に無い寿命値設定を義務付ける

iyoblog (3-09)・要求設計条件設定では、従来品に無い信頼度値設定を義務付ける

iyoblog (3-10)・開発品の構想図作成では、従来品に無い原理・方式・構造選択を義務付ける

事例編・第二部「DR-0 ・商品企画・関連仕様作成取り組み法」

iyoblog (3-11)・開発仕様書と構想図作成段階で確認すべき項目

iyoblog (3-12)・開発仕様書案で確認すべき項目

iyoblog (3-13)・構想図案で確認すべき項目

iyoblog (3-14)・メカ系構想設計部位案で確認すべき項目

iyoblog (3-15)・制御・実装系構想設計部位案で確認すべき項目

iyoblog (3-16)・計測器系構想設計部位案で確認すべき項目

iyoblog (3-17)・メカ系構想設計部位案で検証前に確認すべき項目

iyoblog (3-18)・制御・実装系構想設計部位案で検証前に確認すべき項目

iyoblog (3-19)・計測器系構想設計部位案で検証前に確認すべき項目

iyoblog (3-20)・構想設計案作成図書で確認すべき項目

「事例編・第三部・DR-1(1) ・ 商品企画・関連仕様作成実施取り組み法」

iyoblog (3-21)・試作品設計段階で事前確認すべき項目

iyoblog (3-22)・メカ系部位試作品設計案で事前確認すべき項目

iyoblog (3-23)・制御・実装系部位試作品設計案で事前確認すべき項目

iyoblog (3-24)・計測器系部位試作品設計案で事前確認すべき項目

iyoblog (3-25)・メカ系部位試作品案の検証で事前確認すべき項目

iyoblog (3-26)・制御・実装系部位試作品案の検証前に確認すべき項目

iyoblog (3-27)・計測器系部位試作品案の検証前に確認すべき項目

iyoblog (3-28)・メカ系部位試作品案の検証結果評価法で事前確認すべき項目

iyoblog (3-29)・制御・実装系部位試作品案の検証結果評価法で確認すべき項目

iyoblog (3-30)・計測器系部位試作品案の検証結果評価法で確認すべき項目

「事例編・第四部・DR-1(2) ・ 基本設計着手時の不具合予防取り組み法」

iyoblog (3-31)・基本設計で開発品と既存品組合せ部位の確認項目

iyoblog (3-32)・基本設計で環境条件の確認項目・その1

iyoblog (3-33)・基本設計で環境条件の確認項目・その2

iyoblog (3-34)・基本設計で環境条件の確認項目・その3

iyoblog (3-35)・基本設計で鉄系材料使用部位の確認項目・その1

iyoblog (3-36)・基本設計で鉄系材料使用部位の確認項目・その2

iyoblog (3-37)・基本設計で非鉄系材料使用部位の確認項目・その1

iyoblog (3-38)・基本設計で非鉄系材料使用部位の確認項目・その2

iyoblog (3-39)・基本設計で非金属系材料使用部位の確認項目・その1

iyoblog (3-40)・基本設計で非金属系材料使用部位の確認項目・その2

「事例編・第五部・DR-2 ・ 詳細設計着手時の不具合予防取り組み法」

iyoblog (3-41)・詳細設計で炭素鋼熱処理部品の確認項目

iyoblog (3-42)・詳細設計で部品形状の確認項目

iyoblog (3-43)・詳細設計で衝撃強さ確保の確認項目

iyoblog (3-44)・詳細設計で摩耗強さ確保の確認項目

iyoblog (3-45)・詳細設計でねじ締結部の確認項目

iyoblog (3-46)・詳細設計で部品素材選択の確認項目

iyoblog (3-47)・詳細設計でステンレス鋼選択の確認項目

iyoblog (3-48)・詳細設計で深絞り品置き割れ防止の確認項目

iyoblog (3-49)・詳細設計で溶接品質確保の確認項目

iyoblog (3-50)・詳細設計で異種金属接触による腐食防止の確認項目

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「筆者略歴」

 1957年4月~1974年3月の17年間・富士重工業㈱(注・現社名スバル)三鷹製作所(現・群馬県大泉町へ移転)生産技術部門に勤務。乗用車用エンジン・ミッション製造の工場自動化機器・専用機設計業務へ従事。1974年技術士(機械部門・第7916号)登録、伊豫部技術士事務所を開設。開発・設計および生産技術部門の技術コンサルタントとして現在に至る。この間、上場および中堅企業100社以上で社員教育や業務改善支援業務に従事。現在までに、社団法人日本技術士会理事、りそな中小企業振興財団「中小企業庁長官新技術・新製品賞」贈賞の専門審査委員、東大和市商工会理事、等を歴任。

 著書「設計の故障解析51(CD-ROM付)」、「設計の基本仕様51(CD-ROM付)」、「設計のマネジメント101」、「設計者の心得と実務101」、「設計の経験則101」、「設計の凡ミス退治101」、「設計のムダ退治101」、「ハンドリング簡易自動化201」、「設計審査(DR=Design Review)支援ツール集・Ⅰ(事前審査編)」以上日刊工業新聞社から刊行。月刊「機械設計」誌へ長期連載等あり。「品質機能展開50事例(CD-ROM付)」、「MC選定資料マニアル」、熊谷卓氏と共著「組立・ハンドリング自動化実例図集」、以上新技術開発センターから刊行などが有る。

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