開発品の構想図作成では、従来品に無い特徴ある原理・方式・構造組合せを義務付ける・事例(3-10)

iyoblog (3-10)「設計の働き方改革とDR(設計審査)の具体的取り組み法」設計力向上研究会(伊豫部将三)編

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

事例編・第一部「DR組織および事前準備関連取り組み法」

iyoblog (3-10)・「開発品の構想図作成では、従来品に無い特徴ある原理・方式・構造組合せを義務付ける」

「現状と問題点」

 開発仕様書案が確定したら、構想図案の作成に着手する。

開発品の構想図案作成では、一案に絞込まず原理・方式(一つの原理案のみでは、目標性能達成が難しい場合に複数の原理組合せで実現を目指す。)・構造組合せの複数案で段階を追って取りまとめる。

できる丈多くの複数案の作成を推奨するのは、要求仕様書項目内には、売れる条件としての当然市場販売価格を睨んだ要求目標製造原価がある。

これを開発日程都合などの理由で無視すると、量産試作段階へ至ってからコスト見直しの遣直しとして手戻り・後処理が避けられない。

その時間は、多くの開発・設計技術部門で平均手戻り・後処理時間の 6 %、100 名規模の開発・設計技術部門では年 3,930 時間に及ぶ実態がある。

構想図案作成をできるだけ数多くの複数案で本来取組む意味は、目標コストを確実にクリアするため丈でなく、できる丈試作数と試験・検証回数を減らす目的と開発期間を短縮する目的も含まれる。

それは、従来取組んだ事のない特徴ある原理・方式・構造案で取りまとめ様とすると、当初の原理試作案数を多く用意試作して最も良いと思われる物を複数見付けて置く必要に迫られる事に由来する。

一つの原理案丈で目標性能を達成できない場合に、次の方式試作案で複数の良い原理案同士組合せによる目標性能達成へ取組む必要に迫られる。続けて要求出力性能と強度確保面から大きさとコスト制約を受けながら複数による構造試作案で目標性能達成へ取組む必要に迫られる。

これらの過程を経て量産試作前に目標性能を確保しながら最終的に目標コストも確実に実現させる必要がある。

そのためそれぞれの試作検証段階で複数案を同時並行的に確認し、手戻りしないで済む取組み法が必須要件となる。

「着眼点・分析と評価法」

 開発品で特徴ある原理・方式・構造で取組むとは、例えば腕時計がゼンマイ・テンプ・歯車組合せのメカニカルムーブメント方式構造から音叉型クオーツ(水晶)へコイルを巻いて振動させ、電池駆動の電子式ムーブメントへ変換して実現する様な開発事例を参考にして欲しいと言う意味である。

他にレーザー光によるコピー機、青色発光ダイオード、CD(コンパクトディスク)プレイヤー、ブルーレイDVD、プラズマディスプレイ、デジカメ、ファックス、フラッシュメモリ、液晶ディスプレイ、魚群探知機、自動車用エアバック、ソーラシステム、使い捨てカメラ、電気炊飯器、電波時計、留守番電話、など日本人と日本企業が発明・開発した商品・製品が沢山有る。

これらの特許を見て、是非参考にして欲しい。

また開発した技術の特許化に当たっては、基本特許を抑える丈でなく周辺の応用技術面についても周到に抑えて置く事が大切である。

特徴ある技術である程、後から技術料収入と言う大きな果実を齎す事は、幾つかのメーカーが先例を示して呉れている。これを、是非参考にして置きたい。

「改善点と取組み実施法」

 通常ゼロからの商品・製品開発では、市場調査による仕様書案作成、構想図案作成、開発案着手確定後試作品設計および原理試作による試験・検証、方式試作による試験・検証、構造試作による試験・検証、基本設計・詳細設計を経て量産試作による最終試験・検証を終えてから量産開始・出荷・販売開始へ移行する。

その際、それぞれの試作・検証過程で手戻り・後処理が発生しない様に取組まないと全開発期間が延び、上市(発売開始)時期が遅れる。

当初予定した開発期間を守ろうと必要な試験・検証で手抜きをすると、上市後市場クレームが多発し、全品回収・交換に至ったりする事例が多い。

そのための対策費用は、多くの企業で恒常的に年売上げの 2 %を超え、筆者の関与した企業でも 5.5 %と言う事例も実在した。

この事からそれぞれ試験・検証が伴う原理試作、方式試作、構造試作、量産試作過程では、手抜きせず仕様書へ記載した目標性能項目と数値達成に必要な確認事項はクリアするまでキチンと実施する事が大切である。

必要な事を実施せず手抜きすれば、市場クレームと言う形で後から遣直しが要求される。その場合には、当初実施する場合の凡そ 10 倍以上の金額がクレーム対策費と言う形で追加となって支払わされる。

また対策のための手戻り・後処理時間が発生する。心してキチンとした取組みが、必要である。

「実施による改善効果」

 構想図案取りまとめの注意点は、仕様書記載機能テーマ項目毎にできればユニット化、モジュール化、機能要素の単品化できる様に進める事が望ましい。

この意味は、試作品設計と試験・検証を行い且つ試験結果を評価する場合の事と、および後日販売先エンドユーザーの許で現地保守・保全と修理必要対応時の工数節減を考えての事である。

 試作品設計案をできれば多数用意し、複数図面案作成段階でコスト試算による横並び評価で試験・検証すべき試作品案を決定する。

その際に横並び評価の目的は、試作品案を絞込む事ではなく、目標コストをクリアしている試作品案は全て試験・検証する事が望ましい。

最終目的は、多数の原理試作・方式試作・構造試作案の中から性能・特性・設計条件麺から技術的に優れた試作品案を多数残したい為である。その意味でも原理試作・方式試作・構造試作と順次進めて行く途中過程で機能単位の試験・検証による目標性能・特性・設計条件を確実にクリアして行く事が大切である。

筆者が機能単位に拘るのは、バッチタイプの電子ビーム溶接機で乗用車用ミッション(変速機)へ組込む歯車とシンクロナイザリングを一体化自動溶接する内臓治具設計を担当した際、治具駆動装置をチャンバー外下部へ設置した。

その際に真空シール装置は、チャンバー部を貫通して取付けた。

問題は駆動装置と治具側結合部の心出しが難しく稼働中に時々ずれて真空洩れ事故を多発させた。

そのたびに心出し調整が発生し、溶接機の稼働率低下を起こす結果となった。

その度に筆者は呼出され、心出し調整に付き合わねばならなかった。つまり手戻りが頻繁に発生する状態になった。

その後途中段階で気付き、シール部をユニット化する事で根本的に解決する事ができた。

シール機能部をユニット化する事でシール部洩れ有無を事前に別途単品として試験・検証してから取付ければ良い事が判り、その後シール洩れ事故を完全に無くす事ができた。

間違いの原因は、全体を一体の装置と見做し設計した事にあった。

当初装置として長期稼働する場合の保守・保全を考え維持管理の有り方を機能毎にどうあるべきか? の考え方がなかった結果である。

 前記教訓から着手前に仕様書をキチンと作成し、必要な長期稼働時の維持管理方法と保守・保全を考えて個々の機能要素はどうあるべきか? をキチンと考え方としての方針を整理した上で取組む事が大切である。

 筆者は、その後の自動化設備設計へ取組む際は、機能要素毎に独立したユニット化、モジュール化、単品化を進めて設計へ着手する様にした。

以後手戻りが目に見えて減少した事は、言うまでもない。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「引用文献」

・本稿は筆者(伊豫部将三)が執筆し、日刊工業新聞社月刊「機械設計」誌2017年3月号臨時増刊号へ投稿掲載した「設計の品質保証に必須のDR実施法 50 事例」部分へ今回ブログ掲載に当りタイトルを「設計の働き方改革とDRの具体的取り組み法」へ変更し、加筆し不備部は訂正した。

なお原本入手ご希望の方は、出版元(日刊工業新聞社・出版局)へお問い合わせを給わりたく、何分宜しくお願い申し上げます。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「検索キーワード」

「市場ニーズ調査」 「先行技術調査」 「開発仕様書」 「要求機能」 「要求性能」 「要求特性」 「要求設計条件」 「目標寿命値」 「目標信頼度値」 「構想図」 「原理選択」 「方式選択」 「構造選択」 「材料選択」 「表面処理選択」「熱処理選択」「工作選択」 「形状選択」 「組合せ選択」 「締結法選択」 「結合法選択」 「動作制御法選択」 「回転・摺動部・間隙部・潤滑法選択」 「疲れ強さ設定」 「振動・衝撃強さ設定」 「耐食性設定」 「摩擦・摩耗強さ設定」 「揺動・ねじれ強さ設定」 「熱衝撃強さ設定」 「切欠き効果劣化防止法」「穴明き効果劣化防止法」 「溝付き効果劣化防止法」 「段付き効果劣化防止法」 「落雷・高圧サージ電圧損傷防止法」 「水滴付着絶縁劣化防止法」 「静電気放電発火・引火防止法」 「電磁ノイズ誘導誤作動防止法」 「過負荷発熱焼損防止法」 「ワイヤ断線防止法」 「膨張収縮半田剝離防止法」 「検証試験実施法基準」 「試験サンプル数基準」 「部品加工基準」 「部品測定基準」 「設計・試験工数見積り法基準」「日程計画法基準」 「コスト見積り実施法基準」 「耐久試験実施法基準」 「破壊・損傷試験実施法基準」 「基本仕様作成法基準」 「寿命試験実施法基準」 「信頼度確認試験実施法基準」 「故障予測実施法基準」 「工程能力指数達成法基準」 「客先クレーム措置法基準」 「苦情処理回答実施法基準」 「市場モニタリング実施法基準」 「耐圧試験実施法基準」 「機密漏洩試験実施法基準」 「プログラムデバック試験実施法基準」 他、などがある。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「全体目次」

「総論 」

iyoblog (3-0-1)・(はじめに) 設計の品質保証を左右するDR(Design Review = 設計審査)

「解説」

iyoblog (3-0-2)・第1章・DR-0(商品開発企画の仕様書と構想図作成段階)の取組み法と現状実態

iyoblog (3-0-3)・第2章・DR-1(開発試作品設計・検証および基本設計段階)の取組み法と現状実態

iyoblog (3-0-4)・第3章・DR-2(詳細組立図と部品設計・出図図書作成段階)の取組み法と現状実態

事例編・第一部「DR組織および事前準備関連取り組み法」

iyoblog (3-01)・市場クレームの手戻り予防では、DRの主要目的を点検会から事前指導会へ重点を転換する

iyoblog (3-02)・客先指摘仕様洩れ手戻り予防では、基本仕様項目の主要部はDR会が作成する

iyoblog (3-03)・事前市場ニーズ調査では、先行競合品と併せ、新規見込み購買層調査も義務付ける

iyoblog (3-04)・先行技術調査では、先行メーカー動向と併せ、新規参入見込みメーカー有無動向調査も義務付ける

iyoblog (3-05)・開発仕様書の要求機能設定では、市場ニーズ調査から従来品に無い特徴機能設定を義務付ける

iyoblog (3-06)・開発品の要求性能設定では、市場ニーズ調査から従来品に無い特徴性能設定を義務付ける

iyoblog (3-07)・開発品の要求特性設定では、従来品に無い特徴有る特性設定を義務付ける

iyoblog (3-08)・要求設計条件設定では、従来品に無い寿命値設定を義務付ける

iyoblog (3-09)・要求設計条件設定では、従来品に無い信頼度値設定を義務付ける

iyoblog (3-10)・開発品の構想図作成では、従来品に無い原理・方式・構造選択を義務付ける

事例編・第二部「DR-0 ・商品企画・関連仕様作成取り組み法」

iyoblog (3-11)・開発仕様書と構想図作成段階で確認すべき項目

iyoblog (3-12)・開発仕様書案で確認すべき項目

iyoblog (3-13)・構想図案で確認すべき項目

iyoblog (3-14)・メカ系構想設計部位案で確認すべき項目

iyoblog (3-15)・制御・実装系構想設計部位案で確認すべき項目

iyoblog (3-16)・計測器系構想設計部位案で確認すべき項目

iyoblog (3-17)・メカ系構想設計部位案で検証前に確認すべき項目

iyoblog (3-18)・制御・実装系構想設計部位案で検証前に確認すべき項目

iyoblog (3-19)・計測器系構想設計部位案で検証前に確認すべき項目

iyoblog (3-20)・構想設計案作成図書で確認すべき項目

「事例編・第三部・DR-1(1) ・ 商品企画・関連仕様作成実施取り組み法」

iyoblog (3-21)・試作品設計段階で事前確認すべき項目

iyoblog (3-22)・メカ系部位試作品設計案で事前確認すべき項目

iyoblog (3-23)・制御・実装系部位試作品設計案で事前確認すべき項目

iyoblog (3-24)・計測器系部位試作品設計案で事前確認すべき項目

iyoblog (3-25)・メカ系部位試作品案の検証で事前確認すべき項目

iyoblog (3-26)・制御・実装系部位試作品案の検証前に確認すべき項目

iyoblog (3-27)・計測器系部位試作品案の検証前に確認すべき項目

iyoblog (3-28)・メカ系部位試作品案の検証結果評価法で事前確認すべき項目

iyoblog (3-29)・制御・実装系部位試作品案の検証結果評価法で確認すべき項目

iyoblog (3-30)・計測器系部位試作品案の検証結果評価法で確認すべき項目

「事例編・第四部・DR-1(2) ・ 基本設計着手時の不具合予防取り組み法」

iyoblog (3-31)・基本設計で開発品と既存品組合せ部位の確認項目

iyoblog (3-32)・基本設計で環境条件の確認項目・その1

iyoblog (3-33)・基本設計で環境条件の確認項目・その2

iyoblog (3-34)・基本設計で環境条件の確認項目・その3

iyoblog (3-35)・基本設計で鉄系材料使用部位の確認項目・その1

iyoblog (3-36)・基本設計で鉄系材料使用部位の確認項目・その2

iyoblog (3-37)・基本設計で非鉄系材料使用部位の確認項目・その1

iyoblog (3-38)・基本設計で非鉄系材料使用部位の確認項目・その2

iyoblog (3-39)・基本設計で非金属系材料使用部位の確認項目・その1

iyoblog (3-40)・基本設計で非金属系材料使用部位の確認項目・その2

「事例編・第五部・DR-2 ・ 詳細設計着手時の不具合予防取り組み法」

iyoblog (3-41)・詳細設計で炭素鋼熱処理部品の確認項目

iyoblog (3-42)・詳細設計で部品形状の確認項目

iyoblog (3-43)・詳細設計で衝撃強さ確保の確認項目

iyoblog (3-44)・詳細設計で摩耗強さ確保の確認項目

iyoblog (3-45)・詳細設計でねじ締結部の確認項目

iyoblog (3-46)・詳細設計で部品素材選択の確認項目

iyoblog (3-47)・詳細設計でステンレス鋼選択の確認項目

iyoblog (3-48)・詳細設計で深絞り品置き割れ防止の確認項目

iyoblog (3-49)・詳細設計で溶接品質確保の確認項目

iyoblog (3-50)・詳細設計で異種金属接触による腐食防止の確認項目

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「筆者略歴」

 1957年4月~1974年3月の17年間・富士重工業㈱(注・現社名スバル)三鷹製作所(現・群馬県大泉町へ移転)生産技術部門に勤務。乗用車用エンジン・ミッション製造の工場自動化機器・専用機設計業務へ従事。1974年技術士(機械部門・第7916号)登録、伊豫部技術士事務所を開設。開発・設計および生産技術部門の技術コンサルタントとして現在に至る。この間、上場および中堅企業100社以上で社員教育や業務改善支援業務に従事。現在までに、社団法人日本技術士会理事、りそな中小企業振興財団「中小企業庁長官新技術・新製品賞」贈賞の専門審査委員、東大和市商工会理事、等を歴任。

 著書「設計の故障解析51(CD-ROM付)」、「設計の基本仕様51(CD-ROM付)」、「設計のマネジメント101」、「設計者の心得と実務101」、「設計の経験則101」、「設計の凡ミス退治101」、「設計のムダ退治101」、「ハンドリング簡易自動化201」、「設計審査(DR=Design Review)支援ツール集・Ⅰ(事前審査編)」以上日刊工業新聞社から刊行。月刊「機械設計」誌へ長期連載等あり。「品質機能展開50事例(CD-ROM付)」、「MC選定資料マニアル」、熊谷卓氏と共著「組立・ハンドリング自動化実例図集」、以上新技術開発センターから刊行などが有る。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です