詳細設計で部品素材選択の確認項目・事例(3-46)

iyoblog (3-46)「設計の働き方改革とDR(設計審査)の具体的取り組み法」設計力向上研究会(伊豫部将三)編

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iyoblog (3-46)・「詳細設計で部品素材選択の確認項目」

事例編・第五部「DR- 2(詳細設計着手時の不具合予防)実施法編」

「現状と問題点」

 添付図 へ「詳細設計で部品素材選択の確認項目」を示す。

 機械・電機装置類設計時に部品材料を選定する際には、大きさはできればコンパクトにまとめたい。

その希望に叶う強くて安い材料はないか? と云う気持ちが働く。

そのためどうしても市場で入手し易い使い慣れた鉄系(炭素鋼)材料から選択する場合が多い。

 炭素鋼材料の特徴は、鉄と何か他の元素との合金材料である。

その合金成分の種類と含有量(重量比 %)で、略機械的性質が確定する。

 添付図 で示す合金元素は、一種類で組合せ使用する場合もあるが、要求機能(注・求められる働き)により二種類以上を組合わせて使用する場合も多い。

「着眼点・分析と評価法」

 図の表題に「切欠き靭性」と表現するのは、粘り強さ(脆さの反対)に与える影響面から分類すると云う意味である。

 切欠き靭性を損なう元素には、C(炭素)、P(燐)、Cr(クローム)、Mo(モリブデン)、V(バナジウム)、S(硫黄)、As(ヒ素)、Sn(錫)、N2(窒素)、O2(酸素)である。

 前記の図中でC(炭素)は、炭素鋼として一番使われている。

その理由は、製鋼時にコークスを燃やし溶解する為どうしても多く混入が避けられない。

またC(炭素)は、混入量を調整し熱処理(焼入れ・焼戻し)で硬さを高め強さを出す主な成分としての役割がある。

言い換えれば、強さはC(炭素)含有%でコントロールする。

 切欠き靭性を損なう元素であるCr(クロム)が良く使われる理由は、鋼材の焼入れ性を向上する性質が求める場合に効果がある。

また耐高温酸化性が良いためである。

焼入れ性を向上するとは、合金成分が C(炭素)丈の場合に素材径が太くなると焼入れ時に表面から近い部分へ焼入れされるが、内部まで深く焼入れ効果が及ばない。

この場合に Cr(クロム)含有%を多くすると、内部まで深く焼入れ効果が及ぶ。

ここで焼入れ効果とは、マルテンサイト組織が内部まで生成される事を云う。

通常焼きが入っているか? どうか? の判定は、マルテンサイト組織が 50 % 以上を占めているか? どうか? で判断する。

或る部材で焼入れ後、部材を切断し磨いてエッチング(断面を腐食)し顕微鏡で覗き表面からの距離を測定しマルテンサイト組織が 50 % 以上を占めている距離が 5 mm で有れば焼入れ深さを 5 mm と評価する。

 また Cr(クロム)含有 % を多くすると、耐高温酸化性が、良くなるためである。

蒸気機関が開発された当初炭素鋼丈ではボイラーが直ぐボロボロになり、寿命が短い素材であった。

この寿命を延ばすため最初の高 Cr 含有 % のステンレス(マルテンサイト系)が、開発された。

しかし Cr は基本的に塩素イオンに対する抵抗力(耐食性)が弱い。

このため、ボイラーを海洋船舶へ搭載できなかった。

そこへ Ni(ニッケル)を合金成分として付加する事で、海水にも強い 18 Cr – 8 Ni(SUS304)に代表されるオーステナイト系ステンレス鋼が開発された。

現在では、耐高温酸化性を確保しながら耐食性の高い各種素材が登場するに至った経緯がある。

今日では耐食性寿命を更に延ばしたスーパーステンレス鋼が、海上埋立地の空港設備(大阪の関西国際空港と名古屋の中部国際空港および羽田空港滑走路の地下支柱として)へ多量に使われている。

「改善点と取組み実施法」

 切欠き靭性を高める元素には、Mn(マンガン)、Ni(ニッケル)、Al(アルミニウム)、Ti(チタン)がある。

常時強い衝撃力が掛り続ける岩石を砕いて砂利を造るクラッシャーの圧迫板には、衝撃破壊を防ぐため高マンガン鋼が使われている。

またマイナス 40 ℃ 以下の寒冷地で、構造部材の衝撃破壊を防ぐため多くの場合高マンガン鋼が使われる。

切欠き靭性にあまり影響しない元素としては、Si(シリコン)、Cu(銅)がある。

添付図へ記載していないが、Mo(モリブデン)は、第二次大戦中に経済封鎖を受けたドイツが W(タングステン)の入手ができなくなり、W(タングステン)の代用品としてMo(モリブデン)を用いたのが初めと言われている。

現在では、工具(刃物)材として広く多用されている。

「実施による改善効果」

 部品素材として鋼材を選択する場合には、使用目的に合わせ機能面から合金成分の役割りを考え選ぶ事が大切となる。

 寒冷地で使われる製品・装置で有れば、炭素鋼のみでは – 40 ℃ 以下で衝撃強さを確保できない。

C(炭素)含有 % の 12 倍以上の Mn(マンガン)含有%の鋼材を使用する。

マイナス 60 ℃ 以下では、基本的に炭素鋼のみで構造材としては使えない。

18 Cr – 8 Ni オーステナイトステンレス鋼、18 Cr – 8 Mo オーステナイトステンレスか 100 % Ni 材を使用する必要がある。

 強い衝撃力が常時掛る場合では、高 Mn 鋼を選択する。

直径 100 粍以上の太径部品で中心部まで焼入れを行いたい場合では、マルテンサイト系ステンレスの SUS 403 材、SUS 410材、SUS 420 材から選択するのが望ましい。

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「引用文献」

・本稿は筆者(伊豫部将三)が執筆し、日刊工業新聞社月刊「機械設計」誌2017年3月号臨時増刊号へ投稿掲載した「設計の品質保証に必須のDR実施法 50 事例」部分へ今回ブログ掲載に当りタイトルを「設計の働き方改革とDRの具体的取り組み法」へ変更し、加筆し不備部は訂正した。

なお原本入手ご希望の方は、出版元(日刊工業新聞社・出版局)へお問い合わせを給わりたく、何分宜しくお願い申し上げます。

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「全体目次」

「総論 」

iyoblog (3-0-1)・(はじめに) 設計の品質保証を左右するDR(Design Review = 設計審査)

「解説」

iyoblog (3-0-2)・第1章・DR-0(商品開発企画の仕様書と構想図作成段階)の取組み法と現状実態

iyoblog (3-0-3)・第2章・DR-1(開発試作品設計・検証および基本設計段階)の取組み法と現状実態

iyoblog (3-0-4)・第3章・DR-2(詳細組立図と部品設計・出図図書作成段階)の取組み法と現状実態

事例編・第一部「DR組織および事前準備関連取り組み法」

iyoblog (3-01)・市場クレームの手戻り予防では、DRの主要目的を点検会から事前指導会へ重点を転換する

iyoblog (3-02)・客先指摘仕様洩れ手戻り予防では、基本仕様項目の主要部はDR会が作成する

iyoblog (3-03)・事前市場ニーズ調査では、先行競合品と併せ、新規見込み購買層調査も義務付ける

iyoblog (3-04)・先行技術調査では、先行メーカー動向と併せ、新規参入見込みメーカー有無動向調査も義務付ける

iyoblog (3-05)・開発仕様書の要求機能設定では、市場ニーズ調査から従来品に無い特徴機能設定を義務付ける

iyoblog (3-06)・開発品の要求性能設定では、市場ニーズ調査から従来品に無い特徴性能設定を義務付ける

iyoblog (3-07)・開発品の要求特性設定では、従来品に無い特徴有る特性設定を義務付ける

iyoblog (3-08)・要求設計条件設定では、従来品に無い寿命値設定を義務付ける

iyoblog (3-09)・要求設計条件設定では、従来品に無い信頼度値設定を義務付ける

iyoblog (3-10)・開発品の構想図作成では、従来品に無い原理・方式・構造選択を義務付ける

事例編・第二部「DR-0 ・商品企画・関連仕様作成取り組み法」

iyoblog (3-11)・開発仕様書と構想図作成段階で確認すべき項目

iyoblog (3-12)・開発仕様書案で確認すべき項目

iyoblog (3-13)・構想図案で確認すべき項目

iyoblog (3-14)・メカ系構想設計部位案で確認すべき項目

iyoblog (3-15)・制御・実装系構想設計部位案で確認すべき項目

iyoblog (3-16)・計測器系構想設計部位案で確認すべき項目

iyoblog (3-17)・メカ系構想設計部位案で検証前に確認すべき項目

iyoblog (3-18)・制御・実装系構想設計部位案で検証前に確認すべき項目

iyoblog (3-19)・計測器系構想設計部位案で検証前に確認すべき項目

iyoblog (3-20)・構想設計案作成図書で確認すべき項目

「事例編・第三部・DR-1(1) ・ 商品企画・関連仕様作成実施取り組み法」

iyoblog (3-21)・試作品設計段階で事前確認すべき項目

iyoblog (3-22)・メカ系部位試作品設計案で事前確認すべき項目

iyoblog (3-23)・制御・実装系部位試作品設計案で事前確認すべき項目

iyoblog (3-24)・計測器系部位試作品設計案で事前確認すべき項目

iyoblog (3-25)・メカ系部位試作品案の検証で事前確認すべき項目

iyoblog (3-26)・制御・実装系部位試作品案の検証前に確認すべき項目

iyoblog (3-27)・計測器系部位試作品案の検証前に確認すべき項目

iyoblog (3-28)・メカ系部位試作品案の検証結果評価法で事前確認すべき項目

iyoblog (3-29)・制御・実装系部位試作品案の検証結果評価法で確認すべき項目

iyoblog (3-30)・計測器系部位試作品案の検証結果評価法で確認すべき項目

「事例編・第四部・DR-1(2) ・ 基本設計着手時の不具合予防取り組み法」

iyoblog (3-31)・基本設計で開発品と既存品組合せ部位の確認項目

iyoblog (3-32)・基本設計で環境条件の確認項目・その1

iyoblog (3-33)・基本設計で環境条件の確認項目・その2

iyoblog (3-34)・基本設計で環境条件の確認項目・その3

iyoblog (3-35)・基本設計で鉄系材料使用部位の確認項目・その1

iyoblog (3-36)・基本設計で鉄系材料使用部位の確認項目・その2

iyoblog (3-37)・基本設計で非鉄系材料使用部位の確認項目・その1

iyoblog (3-38)・基本設計で非鉄系材料使用部位の確認項目・その2

iyoblog (3-39)・基本設計で非金属系材料使用部位の確認項目・その1

iyoblog (3-40)・基本設計で非金属系材料使用部位の確認項目・その2

「事例編・第五部・DR-2 ・ 詳細設計着手時の不具合予防取り組み法」

iyoblog (3-41)・詳細設計で炭素鋼熱処理部品の確認項目

iyoblog (3-42)・詳細設計で部品形状の確認項目

iyoblog (3-43)・詳細設計で衝撃強さ確保の確認項目

iyoblog (3-44)・詳細設計で摩耗強さ確保の確認項目

iyoblog (3-45)・詳細設計でねじ締結部の確認項目

iyoblog (3-46)・詳細設計で部品素材選択の確認項目

iyoblog (3-47)・詳細設計でステンレス鋼選択の確認項目

iyoblog (3-48)・詳細設計で深絞り品置き割れ防止の確認項目

iyoblog (3-49)・詳細設計で溶接品質確保の確認項目

iyoblog (3-50)・詳細設計で異種金属接触による腐食防止の確認項目

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「筆者略歴」

 1957年4月~1974年3月の17年間・富士重工業㈱(注・現社名スバル)三鷹製作所(現・群馬県大泉町へ移転)生産技術部門に勤務。乗用車用エンジン・ミッション製造の工場自動化機器・専用機設計業務へ従事。1974年技術士(機械部門・第7916号)登録、伊豫部技術士事務所を開設。開発・設計および生産技術部門の技術コンサルタントとして現在に至る。この間、上場および中堅企業100社以上で社員教育や業務改善支援業務に従事。現在までに、社団法人日本技術士会理事、りそな中小企業振興財団「中小企業庁長官新技術・新製品賞」贈賞の専門審査委員、東大和市商工会理事、等を歴任。

 著書「設計の故障解析51(CD-ROM付)」、「設計の基本仕様51(CD-ROM付)」、「設計のマネジメント101」、「設計者の心得と実務101」、「設計の経験則101」、「設計の凡ミス退治101」、「設計のムダ退治101」、「ハンドリング簡易自動化201」、「設計審査(DR=Design Review)支援ツール集・Ⅰ(事前審査編)」以上日刊工業新聞社から刊行。月刊「機械設計」誌へ長期連載等あり。「品質機能展開50事例(CD-ROM付)」、「MC選定資料マニアル」、熊谷卓氏と共著「組立・ハンドリング自動化実例図集」、以上新技術開発センターから刊行などが有る。

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