市場クレームの手戻り予防では、DRの役割を点検会から事前指導会へ重点を転換する・事例(3-01)

iyoblog (3-01)「設計の働き方改革とDR(設計審査)の具体的取り組み法」設計力向上研究会(伊豫部将三)編

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事例編・第一部「DR組織および事前準備関連取り組み法」

iyoblog (3-01)・市場クレームの手戻り予防では、DRの主要目的を点検会から事前指導会へ重点を転換する

「現状と問題点」

 筆者がコンサルタントとして関与する機会があった多数の製造業開発・設計技術部門で蒐集したDATA(その概要は、総論で紹介)では、多くの開発・設計技術部門投入時間の30%で手戻り・後処理時間を消失している現状実態がある。その主たる原因を辿ると、DR(Design Review=設計審査)による事前・途中指導が殆ど機能していない現実がある。(注・総論編添付図3-1「製造業技術部門投入時間調査結果実態例」および同添付図3-2「手戻り・後処理発生時間作業内容実態例」を参照)

 その結果多くの製造企業に於いて市場クレーム対策費が売上の2 %を超え、主要因が開発・設計に起因する部分が略70 %を占める共通の現実がある。

また表には公表されない造り直しが伴う製造時仕損費用も売上の1 %を超える共通の現実と、その主要因も図面不備が略70 %を占める各社の共通実態がある。

前記対策は、図面に全て書き表されていると言う間違った共通認識による誤解から各社出図前の検図作業を強化することで対応している実態がある。

特に機械・電機製品分野では市場クレーム原因の80 %は、開発・設計時に寿命値と信頼度値把握の現物検証を事前にキチンと行わないため発生する ① 「振動・衝撃劣化」、② 「疲労劣化」、③ 「腐食劣化」、④ 「摩擦・摩耗劣化」、⑤ 「揺動・ねじり劣化」、⑥ 「熱衝撃劣化」の六要因が故障原因を占める現状がある。

また機械装置付属の制御・計装系では同様に略90 %が ⑦ 「落雷・高圧サージ電圧損傷」、⑧ 「水滴付着繰返し絶縁劣化短絡」、⑨ 「静電気放電発火・引火」、⑩ 「電磁ノイズ誘導・誤作動」、⑪ 「過負荷発熱焼損」、⑫ 「部品ワイヤ断線」、⑬ 「膨張・収縮半田剥離で機能停止」の七要因が主故障原因を占める共通実態がある。

これらの故障に繫がる不具合要因は出図用設計図書の検図段階では見付け得ることは事実上困難で、試作品または現物購入品段階で機器採用決定前にDR指導の許で故障予測しながら検証実施が避けられない。

これへ関係者は早期に気付く必要がある。

「着眼点・分析と評価法」

 前掲DATA(総論添付図3-3参照)から手戻り発生ステージ別で見ると、

① DRと出図前検図指摘時による手戻り時間 = 24 %(内訳 = DR時の指摘、内容別ではDR-0「仕様書と構想図」作成時の指摘、DR-1時の指摘合計、(内訳DR-1-⑴「試作品設計および検証」時の指摘、DR-1-(2)「試作品と既存設計品組合せの基本設計」時の指摘)、DR-2時の指摘と出図前検図時の指摘)、

② 出図後製造部門からの出図図書差替え要求等による手戻り時間計 = 23 %(本来DR-2対応時の事前・途中指導不備の着払いで発生に至ると置換えの理解が必要)、

③ 出荷前客先立会い時の仕様洩れ指摘による手戻り・手直し時間 = 8 %(本来DR-0対応時の仕様書作成時と構想図作成時の事前・途中指導不備の着払いで発生に至ると置換えの理解が必要)、

④ 出荷後市場クレーム対応で発生する手戻り時間 = 45 %(本来DR-1-(2)試作品設計時と検証実施時の対応が、故障予測による検証実施時の事前・途中指導不備の着払いで発生に至ると置換えの理解が必要)等である。

(総論添付図3-3「手戻り・後処理発生ステージ別実態例」を参照)

「改善点と取組み実施法」

 現在筆者の知る範囲では、DRを開発・設計時の必須要件と理解し実施している製造企業開発・設計技術部門が殆どである。

但しDRの実施形態、取組み法には、大きく二種類で行われている現状がある。

一つの実施形態は、全社DR会、担当部門DR会、担当課・チームDR会と呼ぶ形式で推進する方式である。

もう一つの実施形態は、DR担当専門組織と選任担当者を設け開発プロセスの各ステージ毎に複数有る商品・製品グループ・事業部門毎のプロセスへ横断・串刺し方式的に併行指導関与する方式である。

筆者の知る処では、国内企業の 95 %以上が、最初に記載したDR会方式で実施している現実がある。

DR会方式の特徴は、開発テーマが発生した際に必要の都度開催する方式のため一見効率性が良い。

しかし選任担当組織と専門担当者を置かないため、事後確認へ重点を置く点検会として運用する場合が多い。

そのため事前および途中指導が殆ど行き届かず、主要な手戻り発生要因となる場合が多い。

このため開発・設計技術部門に手戻り・後処理時間を繰返し多く発生させ、多くの製造業開発・設計技術部門で極端な業務効率低下を招いている現実がある。

DR専門組織・開発プロセス・ステージ毎に選任の専門テーマ別担当者を置く運用方式では、商品・製品グループ・事業部間を横断・串刺し状態で事前・途中指導へ適切関与できる特徴があり、類似商品・製品グループ・事業部間のムダを少なく効率的に品質保証を実現し易い特徴がある。

国内では、有力な自動車メーカや医療薬品メーカで一部実施している実態がある。

「実施による改善効果」

 筆者は、事業部間の類似商品・製品グループが10品種以下で、技術部門人員が200名以下の場合には、DR 会運用方式でも良いがムダを少なく効率的に品質保証を実現し易くする上では、開発・設計プロセス・ステージ毎の実施・運用規定をキチンと定め、これを各部門長がキチンと実現・運用指導する事を薦めたい。

 DR 運用・実施面で最も大切なことは、手戻り・後処理多発に繫がる事後点検会にならない様に必要な事項が確実に実施できる事前・途中指導会として運用する様に機能させる事である。

そのため事前 DR(Before-DR)会、中間 DR(Middle-DR)会、事後 DR(After-DR)会の形態で 3 回ずつ実施する事が望ましい。

事前 DR-0(Before-DR-0)会では、例えば開発仕様書を担当者任せとせず DR 会メンバーが作成する。新規着手するテーマの開発品コンセプトである要求機能で重点を置くテーマは何か?と、達成すべき目標性能、要求特性と要求設計条件の数値などを細かくキチンと設定し担当者へ実現・達成すべき目標を明確に事前指導する。

中間 DR-0(Middle-DR-0)会では、担当者が作成した構想図へ開発仕様書に記載した要求機能、要求性能、要求特性、要求設計条件が反映されているか? を確認指導する。

事後 DR-0(After-DR-0)会では、担当者が作成した開発仕様書に記載した要求機能、要求性能、要求特性、要求設計条件が構想図へ適切に反映されているか? を念のため確認の場として運用する。

事前 DR-1(1)(Before-DR-1(1))会では、例えば試作品設計に対しできるだけ多数案を作成用意させ、同時にコスト見積り試算も行い、それらの中から目標コストを試作段階からクリアした物の中から原理・方式・構造案の異なる最低 3 案以上で併行して技術検証に取組める様に作成法を指導する。

また実施する確認すべき試験項目も担当者任せとせず DR 会メンバーが

① 振動・衝撃劣化、② 疲労劣化、③ 腐食劣化、④ 摩擦・摩耗劣化、⑤ 揺動・ねじり劣化、⑥ 熱衝撃劣化、⑦ 落雷・高圧サージ電圧損傷、⑧ 水滴付着繰り返し絶縁劣化短絡、⑨ 静電気放電発火・引火、⑩ 電磁ノイズ誘導・誤作動、⑪ 過負荷発熱焼損、⑫ 部品ワイヤ断線、⑬ 膨張・収縮半田剥離で機能停止に至る最低 13 項目の加速試験実施取組み方法と必要なサンプル数準備の計画表を作成し担当者へ取組み法を指導する。

また中間 DR-1(1)(Middle-DR-1(1))会では、試作品検証に対し、指示通りに試験内容と取組みがキチンと計画表通りに行われているか? の進捗も現場を確認・指導する。

その中では、故障予測に基づく故障前兆候把握もキチントと併行して行われているかの確認を忘れてはならない。

更に事後 DR-1(1)(After-DR-1(1))会では、試作品検証結果に対し、指示通りに実寿命値確認の耐久試験と経過期間別信頼度値確認 DATA の採取と解析・評価が適切に行われたか?を確認する。

事前 DR-1(2)(Before-DR-1(2))会では、試作検証済み開発品と既存設計品を組合わせる基本設計案作成へ取組む方法について、取合い、結合、組合せ、嵌合せ、締結法についてそれぞれ複数試案を作成し、横並びのコスト比較および耐久試験を実施した上で最終案作成を行う様に指導する。

また中間 DR-1(2)(Middle-DR-1(2))会では、検証済み開発試作品と既存設計品の組合せの複数基本設計案に対し横並びコスト比較と結合部の耐久試験と信頼度試験 DATA 結果の横並び評価をキチンと行える様に取組み整理法を指導する。

更に事後 DR-1(2)(After-DR-1(2))会では、当初の指示通りに結合部の実寿命値確認の耐久試験と経過期間別信頼度値確認 DATA および故障前兆候把握の観察・採取と解析・評価が適切に行われたか?を確認・指導する。

 以上をキチンと実施することで後から大きな市場クレーム発生による莫大な損害発生要因を回避する上で顕著な効果がある。

真剣に DR 改革に取組めば、三年有ればクレーム対策費半減化実現も可能となる。

(注・総論添付表 3-1「DR実施規定事例」参照)

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「引用文献」

・本稿は筆者(伊豫部将三)が執筆し、日刊工業新聞社月刊「機械設計」誌2017年3月号臨時増刊号へ投稿掲載した「設計の品質保証に必須のDR実施法 50 事例」部分へ今回ブログ掲載に当りタイトルを「設計の働き方改革とDRの具体的取り組み法」へ変更し、加筆し不備部は訂正した。

なお原本入手ご希望の方は、出版元(日刊工業新聞社・出版局)へお問い合わせを給わりたく、何分宜しくお願い申し上げます。

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「全体目次」

「総論 」

iyoblog (3-0-1)・(はじめに) 設計の品質保証を左右するDR(Design Review = 設計審査)

「解説」

iyoblog (3-0-2)・第1章・DR-0(商品開発企画の仕様書と構想図作成段階)の取組み法と現状実態

iyoblog (3-0-3)・第2章・DR-1(開発試作品設計・検証および基本設計段階)の取組み法と現状実態

iyoblog (3-0-4)・第3章・DR-2(詳細組立図と部品設計・出図図書作成段階)の取組み法と現状実態

事例編・第一部「DR組織および事前準備関連取り組み法」

iyoblog (3-01)・市場クレームの手戻り予防では、DRの主要目的を点検会から事前指導会へ重点を転換する

iyoblog (3-02)・客先指摘仕様洩れ手戻り予防では、基本仕様項目の主要部はDR会が作成する

iyoblog (3-03)・事前市場ニーズ調査では、先行競合品と併せ、新規見込み購買層調査も義務付ける

iyoblog (3-04)・先行技術調査では、先行メーカー動向と併せ、新規参入見込みメーカー有無動向調査も義務付ける

iyoblog (3-05)・開発仕様書の要求機能設定では、市場ニーズ調査から従来品に無い特徴機能設定を義務付ける

iyoblog (3-06)・開発品の要求性能設定では、市場ニーズ調査から従来品に無い特徴性能設定を義務付ける

iyoblog (3-07)・開発品の要求特性設定では、従来品に無い特徴特性設定を義務付ける

iyoblog (3-08)・要求設計条件設定では、従来品に無い寿命値設定を義務付ける

iyoblog (3-09)・要求設計条件設定では、従来品に無い信頼度値設定を義務付ける

iyoblog (3-10)・開発品の構想図作成では、従来品に無い原理・方式・構造選択を義務付ける

事例編・第二部「DR-0 ・商品企画・関連仕様作成取り組み法」

iyoblog (3-11)・開発仕様書と構想図作成段階で確認すべき項目

iyoblog (3-12)・開発仕様書案で確認すべき項目

iyoblog (3-13)・構想図案で確認すべき項目

iyoblog (3-14)・メカ系構想設計部位案で確認すべき項目

iyoblog (3-15)・制御・実装系構想設計部位案で確認すべき項目

iyoblog (3-16)・計測器系構想設計部位案で確認すべき項目

iyoblog (3-17)・メカ系構想設計部位案で検証前に確認すべき項目

iyoblog (3-18)・制御・実装系構想設計部位案で検証前に確認すべき項目

iyoblog (3-19)・計測器系構想設計部位案で検証前に確認すべき項目

iyoblog (3-20)・構想設計案作成図書で確認すべき項目

「事例編・第三部・DR-1(1) ・ 商品企画・関連仕様作成実施取り組み法」

iyoblog (3-21)・試作品設計段階で事前確認すべき項目

iyoblog (3-22)・メカ系部位試作品設計案で事前確認すべき項目

iyoblog (3-23)・制御・実装系部位試作品設計案で事前確認すべき項目

iyoblog (3-24)・計測器系部位試作品設計案で事前確認すべき項目

iyoblog (3-25)・メカ系部位試作品案の検証で事前確認すべき項目

iyoblog (3-26)・制御・実装系部位試作品案の検証前に確認すべき項目

iyoblog (3-27)・計測器系部位試作品案の検証前に確認すべき項目

iyoblog (3-28)・メカ系部位試作品案の検証結果評価法で事前確認すべき項目

iyoblog (3-29)・制御・実装系部位試作品案の検証結果評価法で確認すべき項目

iyoblog (3-30)・計測器系部位試作品案の検証結果評価法で確認すべき項目

「事例編・第四部・DR-1(2) ・ 基本設計着手時の不具合予防取り組み法」

iyoblog (3-31)・基本設計で開発品と既存品組合せ部位の確認項目

iyoblog (3-32)・基本設計で環境条件の確認項目・その1

iyoblog (3-33)・基本設計で環境条件の確認項目・その2

iyoblog (3-34)・基本設計で環境条件の確認項目・その3

iyoblog (3-35)・基本設計で鉄系材料使用部位の確認項目・その1

iyoblog (3-36)・基本設計で鉄系材料使用部位の確認項目・その2

iyoblog (3-37)・基本設計で非鉄系材料使用部位の確認項目・その1

iyoblog (3-38)・基本設計で非鉄系材料使用部位の確認項目・その2

iyoblog (3-39)・基本設計で非金属系材料使用部位の確認項目・その1

iyoblog (3-40)・基本設計で非金属系材料使用部位の確認項目・その2

「事例編・第五部・DR-2 ・ 詳細設計着手時の不具合予防取り組み法」

iyoblog (3-41)・詳細設計で炭素鋼熱処理部品の確認項目

iyoblog (3-42)・詳細設計で部品形状の確認項目

iyoblog (3-43)・詳細設計で衝撃強さ確保の確認項目

iyoblog (3-44)・詳細設計で摩耗強さ確保の確認項目

iyoblog (3-45)・詳細設計でねじ締結部の確認項目

iyoblog (3-46)・詳細設計で部品素材選択の確認項目

iyoblog (3-47)・詳細設計でステンレス鋼選択の確認項目

iyoblog (3-48)・詳細設計で深絞り品置き割れ防止の確認項目

iyoblog (3-49)・詳細設計で溶接品質確保の確認項目

iyoblog (3-50)・詳細設計で異種金属接触による腐食防止の確認項目

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「筆者略歴」

 1957年4月~1974年3月の17年間・富士重工業㈱(注・現社名スバル)三鷹製作所(現・群馬県大泉町へ移転)生産技術部門に勤務。乗用車用エンジン・ミッション製造の工場自動化機器・専用機設計業務へ従事。1974年技術士(機械部門・第7916号)登録、伊豫部技術士事務所を開設。開発・設計および生産技術部門の技術コンサルタントとして現在に至る。この間、上場および中堅企業100社以上で社員教育や業務改善支援業務に従事。現在までに、社団法人日本技術士会理事、りそな中小企業振興財団「中小企業庁長官新技術・新製品賞」贈賞の専門審査委員、東大和市商工会理事、等を歴任。

 著書「設計の故障解析51(CD-ROM付)」、「設計の基本仕様51(CD-ROM付)」、「設計のマネジメント101」、「設計者の心得と実務101」、「設計の経験則101」、「設計の凡ミス退治101」、「設計のムダ退治101」、「ハンドリング簡易自動化201」、「設計審査(DR=Design Review)支援ツール集・Ⅰ(事前審査編)」以上日刊工業新聞社から刊行。月刊「機械設計」誌へ長期連載等あり。「品質機能展開50事例(CD-ROM付)」、「MC選定資料マニアル」、熊谷卓氏と共著「組立・ハンドリング自動化実例図集」、以上新技術開発センターから刊行などが有る。

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