設計力向上 実務 管理 事例 基礎知識 自己啓発シリーズ(1-1)
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「総論・第1章・設計部門の現状実態・目次」
設計・開発技術部門でなぜ働き方改革が必要なのか
1・現状実態と問題点
2・着眼点と働き方改革実現の取組み法
3・増やすべき業務(1)「価値形成業務」
4・増やすべき業務(2)「基盤整備業務」
5・減らすべき業務(1)「手戻り・後処理業務」
6・減らすべき業務(2)「補助業務」
7・改革の目的(1)「手戻り・後処理を減らす」
8・改革の目的(2)「判断と不注意間違いを減らす」
9・改革の目的(3)「勤務時間を減らす」
10・改革の目的(4)「設計寿命と信頼度を高める」
11・人の問題「未熟なベテランを減らす」
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設計・開発技術部門で何故働き方改革が必要か?
1・現状実態と問題点および実現法
設計業務の働き方改革の実現は、現状効率面の実態調査DATAから見て十分に可能である。
以下に掲げた 図・1-1 から 図・1-34 および 表・1-1 ~ 表・1-4 までへ、筆者が過去関与先企業30社で収集した現状「設計・開発技術部門」業務投入時間実態調査分析結果事例を示す。
この中 図・1-1 から 図・1-6 までは、業務効率把握 4指標の全体および部・課長職の管理者層、係長・主任職などのチームリーダー層、勤務年数 4年以上のベテラン層、入社 3年以内の新人層、派遣者と構内外注設計者などの協力者層別の業務投入時間実態例を示す。
図・1-7 から図・1-10 までは、4指標(価値形成業務、基盤整備業務、手戻り・後処理業務、補助業務)別の各階層別時間占有例と投入時間実態例を示す。
図・1-11 から 図・1-14 までは、全体的に見た場合の 4指標業務別に構成する作業内容詳細と投入時間実態例を示す。
図・1-15 から 図・1-18 までは、管理者層の 4指標業務別作業内容詳細と投入時間実態例を示す。
図・1-19 から図・1-22 までは、リーダー層の 4指標業務別作業内容詳細と投入時間実態例を示す。
図・1-23 から図・1-26 までは、ベテラン層の 4指標業務別作業内容詳細と投入時間実態例を示す。
図・1-27 から図・1-30 までは、新人層の 4指標業務別作業内容詳細と投入時間実態例を示す。
更に 表・1-1 から 表・1-4 までは、4指標業務別全体時間上位 10項目作業の階層別詳細内容実態例を示す。
表中各枠内に示す投入時間比率と実時間値は、技術部門100人規模へ置き直した場合の年間投入時間実態例で示す。
2・着眼点と働き方改革実現の取組み法
前述図表では、筆者が関与した企業で集計した業務実態調査結果を参考値までに示した。
読者諸兄がこれから働き方改革へ実際に取組む上で「増やすべき業務改革必要作業部分」と「減らすべき業務改革必要作業部分」を明確に区別すべき事と、着手順位、改革実現取組みで達成すべき目標数値と所要期間設定する必要がある。
最初に本稿で示した実態調査例は、あくまで参考値として活用して欲しい。
従って取組みに対し明確な成果を期待したい場合は、各企業で実態調査を丁寧且つ詳細に取組んで欲しい。
筆者の場合設計・開発技術部門(企画職、研究職、実験職、生産技術職、製造・保全技術職を含め)人員が何れも100名を超える企業の診断で実態調査へ着手する場合では、誤差を極力少なくする事と、季節変動がある場合を考慮して分単位で原則10万時間以上のDATAを集計した。
この場合対象人員が100名の場合には、DATA集計のみで残業時間を含めて正味1年間を必要とする。従って200名の場合には、6ケ月間が必要となる。
業務に季節変動が少ない企業では、調査開始から1ケ月毎のDATA集計結果を分析し、最終累計調査DATAとの誤差(バラツキ)を確認する。
関与企業DATA採取結果で判る事は、大きい所でも当初1ケ月間のDATAと最終集計DATAとの間に5%を超える変動事例は存在し無い。何れの場合も、結果は±2%以内に収まっていた。
現状実態調査(DATA採取)期間は、100名を下回る場合でも、最短6ケ月間以上の確保をお勧めしている。
この期間DATA採取のみに費やすだけで無く、改革実現準備期間として併行した設計ツール(手順書、基準書、模範図または手本図、他参考資料)類の作成を「働き方改革PJT(プロジェクトチーム)」で開始する。
その際に各階層別対象者に対し、不足していると思われる技術基礎教育としての勉強会も月 2回(2週間に1回2~ 4時間程度ずつ)か 4回(毎週1回 2時間程度ずつ)併行して実施開催を開始する。
前記理由は、改革実現を必要とする現状を造り出した背景が以下に挙げる 5項目不備に対する着け払いの結果と見做す為である。
その原因とは、
(1)設計担当者へ基礎技術知識教育の不備、不足、欠如、欠陥などが有る
(2)活用すべき基礎技術知識資料類に不備、不足、欠如、欠陥などが有る。
(3)テーマ着手時に上司、先輩が事前途中巡回指導の不備、不足、欠如、欠陥などが有る。
(4)担当者へ業務責任感(マナー・モラル)自覚の醸成、育成の不備、不足、欠如、欠陥などが有る。
(5)部門責任者の改革実現へ強い意志と常時問題点有無把握の不備、不足、欠如、欠陥などが有ると見做す為である。
3・増やすべき業務(1)「価値形成業務」
先ず是非増やさなければならない働き方改革実現で対象業務・作業部分の 1は、「価値形成業務(平均 15%前後を占める表・1-1 で示す)」部分である。
増やしたい業務部分 1の「価値形成業務」全階層投入時間上位 10テーマ作業は下記に示す。
(1)「デザイン検討および構想図作成作業」
(2)「個別ユニット・モジュール・部品デザイン検討作業」
(3)「作業指示書および指示のための資料作成・持帰り設計と打合せ作業」
(4)「取説原稿(オペレーテイングマニアル・メンテナンスマニアル・トラブルシューテイング類)作成作業」
(5)「仕様変更による先行手配作業」
(6)「仕様決め商品・製品設計コンセプト作成作業」
(7)「試験・評価報告書作成作業」
(8)「強度計算書作成作業」
(9)「市場・顧客要望調査・仕様確認作業」
(10)「コスト試算作業」(以下省略)などである。
これらは何れも短期的(目標期間は、準備が終了し正式着手後 3~ 4年以内に設定)には、50%以上の増加(15%→+7.5% UP = 22.5%以上)を目指す。
また長期的(目標期間 5年以上で設定)には、倍増化(15%→ +15% UP = 30%以上)を目指す。
これを階層別に分解して見た優先的に取り組むべき投入時間上位 10テーマ作業は、下記の
(1)・協力者層の「デザイン検討および構想図作成作業」
(2)・ベテラン層の「デザイン検討および構想図作成作業」
(3)・ベテラン層の「作業指示書および指示のための資料作成・持帰り設計と打合せ作業」
(4)・ベテラン層の「個別ユニット・モジュール・部品デザイン検討作業」
(5)・新人層の「デザイン検討および構想図作成作業」
(6)・協力者層の「個別ユニット・モジュール・部品デザイン検討作業」
(7)・ベテラン層の「取説原稿(オペレーティングマニュアル・メンテナンスマニュアル・トラブルシューティング類作成作業」
(8)・ベテラン層の「試験・評価報告書作成作業」
(9)・協力者層の「取説原稿(オペレーテイングマニアル・メンテナンスマニアル・トラブルシューテイング類)作成作業」
(10)・リーダー層の「デザイン検討および構想図作成作業」(以下省略)などである。
4・増やすべき業務(2)「基盤整備業務」
また可能なら少しでも増やしたい働き方改革実現の対象業務・作業部分 2は、「基盤整備業務(平均10%前後を占める表・1-2で示す)」部分である。
少しでも増やしたい業務部分 1の「基盤整備業務」全階層投入時間上位 10テーマ作業は、全体的には下記である。
(1)「設計・製図・裏付試験時の事前・途中指導作業」
(2)「WG(ワーキンググループ活動)作業」
(3) 「加工・組立時の事前・途中指導作業」
(4)「展示会・商品PR準備対応作業」
(5)「委託先・取引先と事前・途中打合対応作業」
(6)「研修・展示会見学対応作業」
(7)「設計着手前関係部署打合せ対応作業」
(8)「予算・実績評価作業」
(9)「標準化・業務効率化委員会対応作業」
(10)「施工・据付事前・途中指導」(以下省略)などである。
これを階層別に見た優先的に取り組むべき投入時間上位10テーマ作業は、下記である。
(1)ベテラン層の「設計・製図・裏付試験時の事前・途中指導作業」
(2)協力者層の「設計・製図・裏付試験時の事前・途中指導作業」
(3) ベテラン層の「WG(ワーキンググループ活動)作業」
(4) ベテラン層の「加工・組立時の事前・途中指導作業」
(5)ベテラン層の「展示会・商品PR準備対応作業」
(6)リーダー層の「WG(ワーキンググループ活動)作業」
(7)リーダー層の「設計・製図・裏付試験時の事前・途中指導作業」
(8)ベテラン層の「委託先・取引先と事前・途中打合対応作業」
(9)ベテラン層の「研修・展示会見学対応作業」
(10)ベテラン層の「設計着手前関係部署打合せ対応作業」(以下省略)などである。
これらは何れも短期的(目標期間は、準備が終了し着手開始後 3~ 4年以内に設定し)には、25%以上の増加
( 10%→ +2.5% UP = 12.5 %以上)を目指す。
また長期的(目標期間5年以上で設定)には、50%以上増化( 10%→ +5% = 15%以上)を目指す。
5・減らすべき業務(1)「手戻り・後処理業務」
前記 2項目で挙げた増やすべき時間を何処で捻出するか? つまり何処で減らして埋め合わせすべきか? を先ず解決する必要がある。
最初に大幅に減らさねばならない働き方改革実現の対象業務部分1は、「手戻り・後処理業務(各社平均 30%前後を占める表・1-3で示す)」部分である。
減らしたい業務部分 1の「手戻りおよび後処理業務」全階層投入時間上位 10テーマ作業は、
(1)「部下・同僚・外注設計作成図書の事後検図、出図前の点検・確認作業」
(2)「客先クレーム処理作業」
(3)「検図による図面修正、手戻り、手直し作業」
(4)「設計仕様・設計内容事後チェック作業」
(5)「現場からのクレーム処理作業」
(6)「量試後のコスチダウン再検討作業」
(7)「設計案再検討、図面修正、再試作・再試験依頼作業」
(8)「苦情処理回答、フォロー作業」
(9)「追加出図作業」
(10)「DR指摘による仕様書・図面修正・手戻り・後処理作業」(以下省略)などである。
これを階層別に見た優先的に取り組むべき投入時間上位 10テーマ作業は、
(1)ベテラン層の「客先クレーム処理作業」
(2)ベテラン層の「部下・同僚・外注設計作成図書の事後点検、出図前の点検・確認作業」
(3) リーダー層の「部下・同僚・外注設計作成図書の事後点検、出図の前の点検・確認作業」
(4)ベテラン層の「現場からのクレーム処理作業」
(5)ベテラン層の「検図による図面修正、手戻り、手直し作業」
(6)協力者層の「検図による図面修正、手戻り、手直し作業」
(7)ベテラン層の「設計仕様・設計内容事後チェック作業」
(8)リーダー層の「客先クレーム処理作業」
(9)ベテラン層の「設計案再検討、図面修正、再試作・再試験依頼作業」
(10)ベテラン層の「量試後のコストダウン再検討作業」(以下省略)などである。
これらは、何れも短期的(目標期間は、準備が終了し着手開始後3~4年以内に設定)には1/4以上の削減化(30%→-7.5%=22.5%以下へ削減)を目指す。また長期的(目標期間5年以上で設定)には、1/2削減化(30%→ -15%削減 = 15%以下)を目指す。
6・減らすべき業務(2)「補助業務」
可能なら少しでも減らしたい働き方改革実現の対象業務部分 2は、「補助業務(平均 45%前後を占める表・1-4 で示す)」部分である。
減らしたい業務部分 2の「補助業務」全階層投入時間上位 10テーマ作業は、
(1)「部品図製図(CAD入力)作業」
(2)「製品・部品手配CODE割当てとチェック修正作業」
(3)「仕様図、基礎図作成作業」
(4)「業務外(朝礼、組合活動、診療所、私用外出、トイレ、喫煙休憩)」
(5)「図面改定(送付状作成)作業」
(6)「自己検図、承認手続き作業」
(7)「社内連絡(メール)文書作成作業」
(8)「組立手順書作成作業」
(9)「資料(電子DATA)捜し作業」
(10)「CAD出力、リスト出力作業」(以下省略)などである。
これを階層別に見た優先的に取り組むべき投入時間上位 10テーマ作業は、下記の
(1)協力者層の「部品図製図(CAD入力)作業」
(2)協力者層の「仕様図、基礎図作成作業」
(3)ベテラン層の「業務外(朝礼、組合活動、診療所、私用外出、トイレ、喫煙休憩)」注・本テーマは、作業で無い 為除外する。
(4)ベテラン層の「製品・部品手配CODE割当てとチェック修正作業」
(5)ベテラン層の「部品図製図(CAD入力)作業」
(6)協力者層の「製品・部品手配CODE割当てとチェック修正作業」
(7)新人層の「製品・部品手配CODE割当てとチェック修正作業」
(8)ベテラン層の「社内連絡(メール)文書作成作業」
(9)ベテラン層の「自己検図、承認手続き作業」
(10)新人層の「部品図(CAD入力)製図作業」(以下省略)などである。
これらは、何れも短期的(目標期間は、準備が終了し着手開始後 3~ 4年以内に設定)には 1/8 以下を削減化
( 45%→ -5.5% = 39.5% 以下)を目指す。
また長期(目標期間 5年以上で設定)には、1/4 以上削減化( 45%→ -11% = 34% 以下)を目指す。
7・改革の目的(1)「手戻り・後処理を減らす」
何故各製造業設計・開発技術部門では、業務効率の悪い多くの時間が繰り返し投入され続ける必要があるのか?
これは、設計・開発時の従来からの品質作り込み方法、特に設計・開発技術部門から製造部門や購買部門等へ出図時の図面品質確保方法に問題があると考え、見直しする必要がある。
筆者は今まで多くの設計・開発技術部門と関わりを持った経験から、設計・開発担当者だけに任せ本人以外の点検なしに製造や購買部門経由製造委託先へ直接出図させると、記載不備(欠陥、洩れ、間違いを含む内容)等で、そのままでは製造できない等で出図図書(ドキュメント)に対する差し替え要求が多発し、設計・開発技術部門幹部へ図面品質向上要求となって跳ね返るためである。
筆者が某企業へ関与した際に、出図図書に対する差替え要求が毎回平均50%を超える実態へ直面した経験がある。
従って同じ部署の同僚、先輩、上司が、出図前点検として手戻り・後処理が伴う検図点検作業がどうしても避け得ないものと思い込む状態に陥った結果と見做される。
そこで検図点検作業の効率化を考え、専任の検図点検担当者を配置し、常時対応している企業も多い現実がある。
しかし出図前に必ず誰かが点検して欠陥や不備の問題点や間違いを指摘して貰えると言う安心感は、設計・開発の直接担当者側から見れば多少手抜きして注意深く取り組まずとも、最終の図面品質確保は検図点検者へ任せれば良いと言う依存心も働き、これが長い期間を通じて定着慢性化し、繰り返され依存症状態に陥ったと見做している。
この悪習を脱却する改革実現が最初に望まれる。
本来、設計・開発担当者が本人以外の出図前検図点検有無に関わらず図面品質は最終製品の品質そのものと考え、日頃自分でしっかり確保する強い自覚を持ち注意深く取り組んでいれば、周囲の出図前の検図点検負担も軽減できる。
これを周囲が助けなければ図面品質が確保できないと言う悪い習慣を長い時間を掛け続けて来たことが、設計・開発担当者が少しでも楽をしたいと言う周囲に頼る依存心を定着させた結果と見做す必要がある。
また多くの企業に於ける出図前検図点検の現状実態は、記載洩れに対する指摘が多くを占める現実がある。
以前の手設計からCAD設計への転換が進んでから、この傾向は特に顕著である。
手設計時には、図板上に貼られた図面用紙へ基本設計、詳細設計共に、組立図の作成、部品図の作成を行っていた。
当時は、上司や先輩が担当者の脇へ立ち、作成中の図面を見て、担当者の考えや問題点を完成前に把握、指摘し、出図前の検図点検負担を軽くしていた。
CAD設計に転換が進んでからは、担当者の作業内容が簡単には見えず、上司、先輩が途中段階へ指導的意味で介入する機会が少なくなり、出図前の段階で検図点検と言う形態で設計内容のすべてを確認する状態が多くなった経緯がある。
つまり設計・開発品質と図面品質の両方を同時一緒に看る点検形態へ転換が進んだと言って良い。
上司、先輩による基本設計時と詳細設計時途中での指導的介入が出来難くなった分、出図前検図点検段階ですべてを看なければならなくなり、検図点検時の役割負担が増えている実態がある。
従ってこれを改革実現するには、上司、先輩が途中へ介入する新たな工夫が求められる。
その詳細実施法は、別個所で記載する。
8・改革の目的(2)「判断と不注意間違いの防止」
設計時に作りこまれる欠陥、不備、間違い等には、担当者の判断の間違いによる場合と、不注意による場合がある。
判断の間違いを予防(未然防止)するには、本人が知らない事へどうしても取り組む必要がある場合には、自分勝手に判断せず、先輩、上司、社外を含め専門に詳しい人に必ず事前相談する。
具体的着手前に社内外の前例、先行事例、裏付け資料を調べる。
判る人がいない、前例、先行事例、裏付け資料が存在しない場合には、仮説を立て、試作、試験による実験DATAを採取、評価して、仮説が確実に使えることが判明してから設計実施案として採用する。
担当者へこれらの手順をきちんと守る。必ず守らせる事が、大切となる。
不注意の間違いを予防するには、基本設計着手時、詳細設計着手時、出図図書(ドキュメント)作成時に、それぞれ必要な注意点を上司、先輩、専門的に詳しい人へ事前に教わってから取り組むことが大切となる。
特に記入洩れや資料と照合すれば担当者自身で予防可能な記載項目間違い等の簡単な図面品質は、原則自分で確保させる。
他人を頼らせない。また周囲も助けない。これらをきちんと守り、守らせる習慣を作る。これらは、何れも同時に残業を大幅に減らす効果が期待できる。
9・改革の目的(3)「残業と勤務時間を減らす」
更に年間労働時間をヨーロッパ先進国並み(「要約」へ掲載の 表0-1・鈴木宏昌(早稲田大学名誉教授)著「主要先進国の実総労働時間」を参照)に年 1500H時間以下へ短縮するには、設計・開発技術部門業務の大幅な効率と生産性向上が求められる。
製造部門では、機械化、自動化、無人化への取組みが進み、ラインで多台持ち化、多ライン持ち化が進んでいる。
設計・開発技術部門の機械化とはコンピュータ化で有るが、各社のCAD化、パソコン活用化が進められているとは言え、設計・開発の機械化、自動化は未だ十分取組まれていると言い難い現実がある。
例えば、部品設計の自動化はできているか? 実際にどの程度に行われているか? と言えば、残念ながら殆ど手を着けられていない多く企業の現実がある。
何故未だ出来ていないのか? その理由は、設計・開発の担当者にプログラムが書けないためでは無い。
機械化前にCADやパソコンは使えるが必要な設計・開発取組み方法を知らないパート・アルバイトさん達へ安心して設計・開発作業を委託できる手順書、基準書、模範図または手本図などのツールとなる基礎技術資料化が未だ充分に取組まれていないからに他ならない。
また此の事に気付いていない担当者自身と管理者層も多い現実がある。
業務の中で人の関わる判断と作業部分をできる丈減らす取組みが、求められている事に気付く必要がある。
此れへの着手時間確保も、働き方改革実現の中へ是非組込む必要がある。
つまり設計での働き方改革実現とは、簡単な所から出来る丈社員担当者から簡単作業部分をできる丈多く取り除く取組みである。
その際に活用する設計ツール類をプログラム化し自動設計化へ徐々に展開する進め方が大切となる。
10・改革の目的(4)「設計寿命と信頼度値を高める」
開発面での働き方改革実現では、開発品の耐久性と安全性を裏付け確認する試験・検証期間の大幅短縮化も同時に取組まねばならないテーマの一つとして是非挙げて置きたい。
従来家電品・乗用車等に代表される一般消費者向けの耐久消費財については、現在寿命 10年以上確保と 10年経過後の信頼度値 90%以上確保取組みが多くで行われている。
ここで寿命 10年以上確保とは、消費者に 10年間安心して使って貰える事を言う。また信頼度値 90%以上確保とは、100台出荷したら90台以上は異常なく使えるようにして置く事を言う。
公益性が有る装置・設備・構築物と自治体公共機関向け装置・設備・構築物類(鉄道設備、道路・橋梁・河川設備、港湾・空港・発電所・送電変電所・上下水道設備、等)では、現在 40年寿命確保が要求されている。
原子力発電所では、再審査で追加 20年延長する対応が現実に行われている。
従って商品・製品に対する要求寿命と信頼度の値は、原則伸びる傾向が現実にある。
これには、寿命試験を短縮する加速(劣化を促進する)試験への取組みが欠かせない。
此れには、開発時間と所要期間を大幅且つ顕著に短縮、節約する効果がある。
(注・加速試験への取組み法と許容値設定法については、「機械設計」誌2016年3月臨時増刊号「設計の手戻り・後処理 60例」中に紹介しているので参照されたい。)
11・人の問題「未熟なベテラン層を減らす」
働き方改革実現では、人の問題を避けて通れない。図9中で示す「後処理業務の階層別占有率実態例」を参考までに示す。
実時間集計結果では、協力者層(35%)が一番多く二番目がベテラン層(31%)である。
協力者層が多い理由には、必ずしも直接原因発生者で無く、ベテラン層から委託された原案に欠陥が含まれていたのを指示通りに進めた結果が手戻りに至ったケースの場合も多い。
つまり、これらを少しでも減らしたいと望む場合には、真の原因発生者が誰で有ったかを明確にしてから改善策実施へ取り組む必要がある。
筆者が診断で関与した中で内容分析した結果では、ベテラン層には問題発生の極めて少ない習熟したベテラン層と勤務年数に関係無く5年、10年、15年と長く勤務しながら年に数回ポカミスを継続して繰返すベテラン層の人達の存在が明らかになった。
この人達を筆者は、未熟なベテラン層と名付けている。
未熟なベテラン層の人達は、各社略ベテラン層の 30%存在し、ベテラン層が発生させる手戻り原因の凡そ 60%を占める現実がある。
協力者層の手戻り原因を減らすには、新人層へ対応するのと同じに基礎技術知識教育の実施が必要である。
一方未熟なベテラン層に対しては、凡そ 5年間隔周期位で基礎技術知識の再教育実施を繰返す事が望ましい。
管理者層は、これを肝に命ずべきである。つまり設計の働き方改革実現成功のキーポイントと、心得る事が大切である。
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「引用文献」
・本稿は筆者(伊豫部将三)が執筆し、日刊工業新聞社月刊「機械設計」誌2018年4月号へ掲載した「設計の働き方改革・総論」部分へ今回ブログ掲載に当り大幅に加筆し、不適部は訂正した。
なお原本入手ご希望の方は、出版元へ直接お問合せされる様にお願い申し上げます。
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「全体目次」
(1-0)設計の働き方改革 階層別 実現法「要約・目次」
設計力向上 実務 管理 事例 基礎知識 自己啓発 シリーズ(1-0)
(1-1)設計の働き方改革 階層別 実現法「総論」
設計力向上 実務 管理 事例 基礎知識 自己啓発 シリーズ(1-1)
(1-2)設計の働き方改革 実現法「管理者層の心得」
設計力向上 実務 管理 事例 基礎知識 自己啓発 シリーズ(1-2)
(1-3)設計の働き方改革 実現法「リーダー層の心得」
設計力向上 実務 管理 事例 基礎知識 自己啓発 シリーズ(1-3)
(1-4)設計の働き方改革 実現法「ベテラン層の心得」
設計力向上 実務 管理 事例 基礎知識 自己啓発 シリーズ(1-4)
(1-5)設計の働き方改革 実現法「新人層の心得」
設計 実務 管理 事例 基礎知識 自己啓発 シリーズ(1-5)
(1-6)設計の働き方改革 実現法「協力者層の心得」
設計力向上 実務 管理 事例 基礎知識 自己啓発 シリーズ(1-6)
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「執筆者の略歴」
1957年4月~1974年3月の17年間・富士重工業㈱(注・現社名スバル)三鷹製作所(現・群馬県大泉町へ移転)生産技術部門に勤務。乗用車用エンジン・ミッション製造の工場自動化機器・専用機設計業務へ従事。1974年技術士(機械部門・第7916号)登録、伊豫部技術士事務所を開設。開発・設計および生産技術部門の技術コンサルタントとして現在に至る。この間、上場および中堅企業100社以上で社員教育や業務改善支援業務に従事。現在までに、社団法人日本技術士会理事、りそな中小企業振興財団「中小企業庁長官新技術・新製品賞」贈賞の専門審査委員6年、東大和市商工会理事、等を歴任。
著書「設計の故障解析51(CD-ROM付)」、「設計の基本仕様51(CD-ROM付)」、「設計のマネジメント101」、「設計者の心得と実務101」、「設計の経験則101」、「設計の凡ミス退治101」、「設計のムダ退治101」、「ハンドリング簡易自動化201」、「設計審査(DR=Design Review)支援ツール集・Ⅰ(事前審査編)」以上日刊工業新聞社から刊行。月刊「機械設計」誌へ長期連載等あり。「品質機能展開50事例(CD-ROM付)」、「MC選定資料マニアル」、熊谷卓氏と共著「組立・ハンドリング自動化実例図集」、以上新技術開発センターから刊行などがある。
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