要求設計条件設定では、従来品に無い寿命値設定を義務付ける・事例(3-08)

iyoblog (3-08)「設計の働き方改革とDR(設計審査)の具体的取り組み法」設計力向上研究会(伊豫部将三)編

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事例編・第一部「DR組織および事前準備関連取り組み法」

iyoblog (3-08)・要求設計条件設定では、従来品に無い寿命値設定を義務付ける

「現状と問題点」

 開発品を市場で売れる商品にするには、特徴ある機能・性能・特性を持つだけではない。

競合他社製品とは、異なる特徴ある要求設計条件値としての寿命性能値を競合他社製品と異なる点を明確に表示する事も大切である。

ここで特徴ある寿命性能値とは、例えばAプレハブ住宅メーカが競合他社製品に無い60年寿命保証を公表した。

この例の様に、競合他社が表示しない明確な違いを特徴点として強調する事を言う。

 プレハブ住宅メーカの集まりである工業化住宅協会と云う業界団体を結成しているのは、日本だけの独自組織と言われている。

つまりプレハブ工法は欧米で開発され広く各国に知られているが、プレハブ住宅工業会は日本丈の他の国には無い独自組織となる。

その工業化住宅協会の技術基準で型式認証登録制度を運用し、住宅寿命を決定づける躯体部分で最低 40 年寿命確保を義務付けている実態がある。

 型式認証登録制度とは、自動車の例で見ると国土交通省の陸運局で各メーカが新規モデルとして販売用に開発した量産試作(販売用量産製造設備で製造した)車を必要な安全項目試験等で合格した場合のみ認証して販売を許可する登録制度である。

この制度の特徴は、型式認証登録を受けていない物は、原則販売できない仕組みである。

(注・但し大工が個人的に注文住宅を請負うのは、都道府県へ建築申請する中で法令に定める必要用件を満たせば原則許可されている。)

 プレハブ住宅で工業化住宅協会が、自動車と同じ様に型式認証登録制度を実施運用している。

つまり安全確保などの必要な各種試験を実施した上で、型式認証登録が行われている。

その型式認証試験を行う量産試作住宅が、各地域の住宅展示場に展示されているモデル住宅である。

つまり展示場に有るモデル住宅の現物とカタログを見て、購入希望者がメーカと契約する形態である。

購入見込み客が、カタログ丈でなく現物モデルを直接触ったり見たり確認できる特徴がある。

「現状と問題点」

 開発品を市場で売れる商品へするには、特徴ある機能・性能・特性を持つだけではない。

競合他社製品とは、異なる特徴ある要求設計条件値としての寿命性能値を競合他社製品と異なる点を明確に表示する事も大切である。

ここで特徴ある寿命性能値とは、例えばAプレハブ住宅メーカーが競合他社製品に無い 60 年寿命保証を公表した。

この例の様に、競合他社が表示しない明確な違いを特徴点として強調する事を言う。

 プレハブ住宅メーカの集まりである工業化住宅協会と云う業界団体を結成しているのは、日本だけの独自組織と言われている。

つまりプレハブ工法は欧米で開発され広く各国に知られているが、プレハブ住宅工業会は日本丈の他の国には無い独自組織となる。

その工業化住宅協会の技術基準で型式認証登録制度を運用し、住宅寿命を決定づける躯体部分で最低 40 年寿命確保を義務付けている実態がある。

 型式認証登録制度とは、自動車の例で見ると国土交通省の陸運局で各メーカーが新規モデルとして販売用に開発した量産試作(販売用量産製造設備で製造した)車を必要な安全項目試験等で合格した場合のみ認証して販売を許可する登録制度である。

この制度の特徴は、型式認証登録を受けていない物は、原則販売できない仕組みである。

(注・但し大工が個人的に注文住宅を請負うのは、都道府県へ建築申請する中で法令に定める必要用件を満たせば原則許可されている。)

 プレハブ住宅で工業化住宅協会が、自動車と同じ様に型式認証登録制度を実施運用している。

つまり安全確保などの必要な各種試験を実施した上で、型式認証登録が行われている。

その型式認証試験を行う量産試作住宅が、各地域の住宅展示場に展示されているモデル住宅である。

つまり展示場に有るモデル住宅の現物とカタログを見て、購入希望者がメーカと契約する形態である。

購入見込み客が、カタログ丈でなく現物モデルを直接触ったり見たり確認できる特徴がある。

「着眼点・分析と評価法」

 また別のBプレハブ住宅メーカでは、神戸型の直下型震度7の地震(衝撃)に対して 60 回以上繰返しても倒壊しない試験実施例を映像で宣伝している。

2016 年夏に発生した熊本地震では、強い 2 度の連続地震で頑丈そうに見えた家屋が 1 回目に倒壊を免れたが続けて起きた 2 回目に倒壊する様子を現地報道で写し出された映像を見た人も多い。

この宣伝効果は住宅を新規に購入しようとする人には、非常に大きな影響力がある。

 A社は、60年寿命保証と言う。B社は、寿命には触れず 60 回の直下型震度 7 の衝撃にも耐えると言う。

新規に住宅を購入しようとする人には、展示場でA社の住宅を選択するか? B社の住宅を選択するか? 必ず迷うに違いない。

日本では、何処の地域に住んで居ても原則地震から免れない。さて何方を選ぶか? 深刻に考える事になる。

 ここで冷静に考えて見る。A社の 60 年寿命とは、どの範囲までが対象になるのか? 詳細に調べ比較する事になる。

屋内電気配線系は、60 年間修理交換せずに維持できるのか? 水回り配管系は、60 年間修理交換せずに維持できるのか? また震度 7 の地震(衝撃)に対して何回持ち応え得る事ができるのか? など丁寧にメーカー側へ確認する。

そこでA社メーカ側が、「B社と同じ 60 回の震度 7 の地震にも耐えられます。」と保証すれば、間違い無くA社の住宅が選択される。

しかしこれを保証できない状態の場合には、B社へ確認に向かう。そこでB社メーカー側が、「 60 年寿命で、且つ 60 回の震度 7 地震に対して保証します。」と答えれば、間違い無くB社の住宅が選択される。

但しB社が、60 年寿命を保証できますと答えなければ、購入希望者は再び考え悩む事になる。

 プレハブ住宅メーカーの集まりである工業化住宅協会規格では、主要構造部である躯体部分について 40 年寿命確保を規定している。

この事から一般ユーザは、簡単に取替えと修復が可能なインテリアやエクステリア部分を除く本体主要構造部分について寿命は 40 年持つと信じ購入している。

「改善点と取組み実施法」

 筆者なら何方を選ぶか? 60 年寿命は魅力で有る。しかし熊本地震の例を思い出し、震度 7 以上の地震が短期間の間に 2 回3回と続けて起きる場合を想定し、無条件でB社を選択する。

その理由は、金属材料の S-N(疲れ)線図を思い出し震度 7 の衝撃に 60 回耐え得る事は、回数が減れば震度 7 以上の衝撃にも充分耐え得る衝撃強度がある事に気付く。

この意味は、震度 8 でも大丈夫かも知れない? と考える。つまり、住む人の生命・財産の安全確保を最優先した選択結果となる。

しかし同時に震度 7 の様な大きな地震回数が多く発生しなければ、寿命は 40 年を大幅に上回るに違いないと容易に連想できる。

この点が、選択のポイントになる。

多くの場合商品価格は、安い程歓迎される。

しかし安かろう!悪かろう!は、日本および先進国と言われる国の成熟社会では通用しない。

安くても品質が良い事が大切となる。

その品質を決めているのは、寿命値と信頼度値の高さである。

寿命値と信頼度値が高ければ、費用対効果で評価した時に住宅の場合では、ライフサイクルコスト(入手時の金額と買替え期間まで使い続けた場合に掛る総経費)で年間毎に掛る費用が結果として幾ら得になるか? を、他のメーカーと比較する事である。

つまり寿命値が長ければ安くなり、信頼度値が高ければ安くなる訳である。

その意味で特に寿命値の長さは、競合品が有る場合に競争力確保上で大事な比較項目の一つとなる。

そのため購入時金額が大きい住宅の様な商品の場合には、寿命は 40 年より 60 年、60 年より 100 年とできる丈長い程喜ばれる。

地震が少ないヨーロッパでは、石造りで 100 年以上の建造物も多い。

しかし日本の場合には、地震が多く、気候も亜熱帯と温帯に跨り湿度も高い。

またこれらの自然環境が価格と入手し易さから木造住宅に適したため、住宅と言えば木造で普及が進んで来た経緯がある。

但し木質材でも国産檜(ひのき)・ぶな等の材種を選べば、伐採時より100年、150年経過しても強度は落ちず、寧ろ強くなる材種も存在する。

木質住宅でも 100 年以上の寿命確保は、十分実現可能である。

「実施による改善効果」

 開発商品を市場でエンドユーザーに優先して選択して貰うためには、競合製品が多数ある中から寿命性能値が飛び抜けて良い事を判って貰う工夫が必要となる。

プレハブ住宅メーカA社が 60 年寿命保証を打出した狙いは、表向き販売価格が多少高めでも年間当りの償却費が少なくて済む割安感・徳用感を購入希望者へ持って買って貰えると理解した為と思われる。

また熊本地震で震度 7 クラスが立て続けに発生し 1 回目では倒壊せず一見頑丈そうに見えた家屋が 2 回目の地震で倒壊する現地の報道映像を見た人達に与えたインパクトは非常に大きい影響がある。

プレハブ住宅メーカB社が、震度 7 の地震衝撃に 60 回も耐え得る実験映像の宣伝効果は、これも新規の購入希望者へ与える動機は極めて大きいと推測される。

プレハブ住宅メーカA社の 60 年寿命保証宣伝効果は、新規の購入希望者が建替えまで 40 年持つと思っていた寿命が 60 年に延びる意味は、寿命が1.5倍へ延びる事で年間当りの償却費が低減する事に対する割安感とお徳用感が強い。

これに対しプレハブ住宅メーカB社の震度 7 の地震衝撃に 60 回も耐え得る実験映像の宣伝効果は、先ず生命・財産保護第一に対する安心感を先に与える効果が大きい。

その上で震度 7 の地震衝撃に 60 回も耐え得る事は、実際に地震回数が少なければ住宅寿命はもっと延びるだろうと言う期待感に代わる効果がある。

これも購入者が、商品選択上で差別化を図る大きな効果が得られる影響力の一つとなる事は間違いない。

ここで大事な違いは、B 社は 60 回に及ぶ震度 7 の地震に耐えている事を実証試験で直接見せている事で有る。

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「引用文献」

・本稿は筆者(伊豫部将三)が執筆し、日刊工業新聞社月刊「機械設計」誌2017年3月号臨時増刊号へ投稿掲載した「設計の品質保証に必須のDR実施法 50 事例」部分へ今回ブログ掲載に当りタイトルを「設計の働き方改革とDRの具体的取り組み法」へ変更し、加筆し不備部は訂正した。

なお原本入手ご希望の方は、出版元(日刊工業新聞社・出版局)へお問い合わせを給わりたく、何分宜しくお願い申し上げます。

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「全体目次」

「総論 」

iyoblog (3-0-1)・(はじめに) 設計の品質保証を左右するDR(Design Review = 設計審査)

「解説」

iyoblog (3-0-2)・第1章・DR-0(商品開発企画の仕様書と構想図作成段階)の取組み法と現状実態

iyoblog (3-0-3)・第2章・DR-1(開発試作品設計・検証および基本設計段階)の取組み法と現状実態

iyoblog (3-0-4)・第3章・DR-2(詳細組立図と部品設計・出図図書作成段階)の取組み法と現状実態

事例編・第一部「DR組織および事前準備関連取り組み法」

iyoblog (3-01)・市場クレームの手戻り予防では、DRの主要目的を点検会から事前指導会へ重点を転換する

iyoblog (3-02)・客先指摘仕様洩れ手戻り予防では、基本仕様項目の主要部はDR会が作成する

iyoblog (3-03)・事前市場ニーズ調査では、先行競合品と併せ、新規見込み購買層調査も義務付ける

iyoblog (3-04)・先行技術調査では、先行メーカー動向と併せ、新規参入見込みメーカー有無動向調査も義務付ける

iyoblog (3-05)・開発仕様書の要求機能設定では、市場ニーズ調査から従来品に無い特徴機能設定を義務付ける

iyoblog (3-06)・開発品の要求性能設定では、市場ニーズ調査から従来品に無い特徴性能設定を義務付ける

iyoblog (3-07)・開発品の要求特性設定では、従来品に無い特徴有る特性設定を義務付ける

iyoblog (3-08)・要求設計条件設定では、従来品に無い寿命値設定を義務付ける

iyoblog (3-09)・要求設計条件設定では、従来品に無い信頼度値設定を義務付ける

iyoblog (3-10)・開発品の構想図作成では、従来品に無い原理・方式・構造選択を義務付ける

事例編・第二部「DR-0 ・商品企画・関連仕様作成取り組み法」

iyoblog (3-11)・開発仕様書と構想図作成段階で確認すべき項目

iyoblog (3-12)・開発仕様書案で確認すべき項目

iyoblog (3-13)・構想図案で確認すべき項目

iyoblog (3-14)・メカ系構想設計部位案で確認すべき項目

iyoblog (3-15)・制御・実装系構想設計部位案で確認すべき項目

iyoblog (3-16)・計測器系構想設計部位案で確認すべき項目

iyoblog (3-17)・メカ系構想設計部位案で検証前に確認すべき項目

iyoblog (3-18)・制御・実装系構想設計部位案で検証前に確認すべき項目

iyoblog (3-19)・計測器系構想設計部位案で検証前に確認すべき項目

iyoblog (3-20)・構想設計案作成図書で確認すべき項目

「事例編・第三部・DR-1(1) ・ 商品企画・関連仕様作成実施取り組み法」

iyoblog (3-21)・試作品設計段階で事前確認すべき項目

iyoblog (3-22)・メカ系部位試作品設計案で事前確認すべき項目

iyoblog (3-23)・制御・実装系部位試作品設計案で事前確認すべき項目

iyoblog (3-24)・計測器系部位試作品設計案で事前確認すべき項目

iyoblog (3-25)・メカ系部位試作品案の検証で事前確認すべき項目

iyoblog (3-26)・制御・実装系部位試作品案の検証前に確認すべき項目

iyoblog (3-27)・計測器系部位試作品案の検証前に確認すべき項目

iyoblog (3-28)・メカ系部位試作品案の検証結果評価法で事前確認すべき項目

iyoblog (3-29)・制御・実装系部位試作品案の検証結果評価法で確認すべき項目

iyoblog (3-30)・計測器系部位試作品案の検証結果評価法で確認すべき項目

「事例編・第四部・DR-1(2) ・ 基本設計着手時の不具合予防取り組み法」

iyoblog (3-31)・基本設計で開発品と既存品組合せ部位の確認項目

iyoblog (3-32)・基本設計で環境条件の確認項目・その1

iyoblog (3-33)・基本設計で環境条件の確認項目・その2

iyoblog (3-34)・基本設計で環境条件の確認項目・その3

iyoblog (3-35)・基本設計で鉄系材料使用部位の確認項目・その1

iyoblog (3-36)・基本設計で鉄系材料使用部位の確認項目・その2

iyoblog (3-37)・基本設計で非鉄系材料使用部位の確認項目・その1

iyoblog (3-38)・基本設計で非鉄系材料使用部位の確認項目・その2

iyoblog (3-39)・基本設計で非金属系材料使用部位の確認項目・その1

iyoblog (3-40)・基本設計で非金属系材料使用部位の確認項目・その2

「事例編・第五部・DR-2 ・ 詳細設計着手時の不具合予防取り組み法」

iyoblog (3-41)・詳細設計で炭素鋼熱処理部品の確認項目

iyoblog (3-42)・詳細設計で部品形状の確認項目

iyoblog (3-43)・詳細設計で衝撃強さ確保の確認項目

iyoblog (3-44)・詳細設計で摩耗強さ確保の確認項目

iyoblog (3-45)・詳細設計でねじ締結部の確認項目

iyoblog (3-46)・詳細設計で部品素材選択の確認項目

iyoblog (3-47)・詳細設計でステンレス鋼選択の確認項目

iyoblog (3-48)・詳細設計で深絞り品置き割れ防止の確認項目

iyoblog (3-49)・詳細設計で溶接品質確保の確認項目

iyoblog (3-50)・詳細設計で異種金属接触による腐食防止の確認項目

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「筆者略歴」

 1957年4月~1974年3月の17年間・富士重工業㈱(注・現社名スバル)三鷹製作所(現・群馬県大泉町へ移転)生産技術部門に勤務。乗用車用エンジン・ミッション製造の工場自動化機器・専用機設計業務へ従事。1974年技術士(機械部門・第7916号)登録、伊豫部技術士事務所を開設。開発・設計および生産技術部門の技術コンサルタントとして現在に至る。この間、上場および中堅企業100社以上で社員教育や業務改善支援業務に従事。現在までに、社団法人日本技術士会理事、りそな中小企業振興財団「中小企業庁長官新技術・新製品賞」贈賞の専門審査委員、東大和市商工会理事、等を歴任。

 著書「設計の故障解析51(CD-ROM付)」、「設計の基本仕様51(CD-ROM付)」、「設計のマネジメント101」、「設計者の心得と実務101」、「設計の経験則101」、「設計の凡ミス退治101」、「設計のムダ退治101」、「ハンドリング簡易自動化201」、「設計審査(DR=Design Review)支援ツール集・Ⅰ(事前審査編)」以上日刊工業新聞社から刊行。月刊「機械設計」誌へ長期連載等あり。「品質機能展開50事例(CD-ROM付)」、「MC選定資料マニアル」、熊谷卓氏と共著「組立・ハンドリング自動化実例図集」、以上新技術開発センターから刊行などが有る。

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開発仕様書の要求特性設定では、ニーズ調査から従来品に無い特徴有る特性設定を義務付ける・事例(3-07)

iyoblog (3-07)「設計の働き方改革とDR(設計審査)の具体的取り組み法」設計力向上研究会(伊豫部将三)編

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事例編・第一部「DR組織および事前準備関連取り組み法」

iyoblog (3-07)・開発仕様書の要求特性設定では、市場ニーズ調査から従来品に無い特徴有る特性設定を義務付ける

「現状と問題点」

 国内の商品・製品市場では、それぞれ十社前後の複数メーカーが競り合っている中で販売優位性を確保する上では、機能面、性能面だけでなく特性面でも明確に他メーカと差別化できる特徴ある優位性を持つ事が大切である。

総論編で欧米先進国のエンドユーザー間で理解されている日本製工業製品に対する品質の高さの意味を説明した。

自動車の例で彼らは、寿命年数経過後の信頼度値の高さの違い(欧米では 10 年寿命経過値に対し信頼度値 90 %。これに対し日本車では同じ 10 年寿命経過値に対し信頼度値 99.5 %を確保)、即ち残存寿命値( = 寿命年数経過後の使用し続けられる残存数の多さ )を一番品質が良いと評価しているのである。

裏返して表現すれば、欧米先進国メーカー商品・製品と同じ信頼度値に至る迄の実寿命年数・期間を比較すれば、日本製工業製品の実寿命年数が大幅に長くなる事を意味し、その違いを現物で確認して充分知っている。

従って関税分で最終取得価格が購入時に多少割高感に成っても、長期的には割安感が大きくお徳用だと言う事をしっかり理解している。

だから日本製工業製品が売れる。つまり買って頂ける、貰えるのである。

発展途上国の国民一人当たりの GNP(所得) が低い所では、少しでも安い価格に設定しなければ物は売れない。

買う人達には、毎日の生活が優先する為一部の富裕層を除けば手が出せない高値なのである。

衣食が或る程度満ち足りるまでは、機能とか品質まで余りユーザーの考えが及ばない。

幾ら PR しても、それを考え受け入れる余裕がない。また考えない。

しかし或る程度の GNP (所得)の水準または一人当たりの所得に達し豊かに成ると、長期的に物を見て出来る丈割安感と少しでもお得な物を手に入れ様と冷静に見て考える様になる。

これがメーカー間の競争力へ直接影響を及ぼす事に成る。

そのため日本製工業製品は、発展途上国の国民には高級品と見做され一部の余裕有る富裕な階層の人達にしか売れない。

しかし欧米先進国の一人当たり GNP(所得)平均値は高く、日本製品は割安感と長期的にはお徳用だと思われ買って貰える。

これが、競争力を考える場合の原点・出発点である。

「着眼点・分析と評価法」

 ここで筆者が言いたい事は、特性値を代表する管理値の一つとして信頼度値を挙げ、寿命値と必ず一緒に記載する事を薦めたい。

例えば、この商品・製品の「保証寿命値は 10 年で、保証信頼度値は 99.7 %( = 3 σ 確率分布値 )」と表示する。

この意味は、耐久 10 年寿命経過時点に於ける信頼度値は 99.7 % 以上有る事を保証すると言う意味である。

これを判り易く表現すれば、「 10 年前に製造販売された 1000 台中の 997 台が、まだ使い続けられる状態で稼働・使用できます。」である。

 筆者は、商品・製品に於けるメーカーが開発・設計時点で管理すべき寿命値には原則三点有ると考えている。

第一は、無償保障期間寿命値である。第二は、耐久寿命値である。第三は、安全寿命値である。

 第一の無償保障期間寿命値とは、現在多くの一般消費者向け耐久消費財の範疇に入るテレビ・冷蔵庫・洗濯機などの家庭電化製品類、パソコンやその端末プリンタなどの OA 機器製品類、家庭用軽・普通乗用車・トラック類、家具(箪笥・テーブル・椅子・机・書棚・食器棚など木製および金属製)家財類、一般工場用機械・電機設備機器類、医療用機器類、などでは、 1 年の無償保障期間を設定している場合が多い実態がある。

業務用では、前掲機器(ホテルやレストランで使用する業務用冷蔵庫などの電機機器製品類)の一部構成部品(コンプレッサなど)に対して 3 ~ 5 年の無償保障期間を設けている事例も存在する。

 第二の耐久寿命値とは、前掲第一項で列挙した一般消費者向け耐久消費財の範疇に入る家庭電化製品類、OA 機器製品類、軽・普通乗用車類、家具(箪笥・テーブル・椅子・机・書棚・食器棚など)の家財類、一般工場用機械・電機設備装置機器類、医療用設備機器類、などでは、10 年保証の耐久寿命期間を設定している場合が多い実態がある。

 第三の安全寿命値とは、PL(製造者責任法)制定に伴う耐久寿命期間を過ぎても基本的に使用者が使い続けられる可能な期間(筆者は公的設備やプレハブ住宅等で設けている最低 40 年間)は安全が保証されていなければならないと考える必要がある。

ここで 40 年以上安全に使い続けられる商品・製品材料については,個々に試験・検証しながら慎重に選択が必要になる。注意が必要である。

「改善点と取組み実施法」

 総論編で市場クレーム予防取組みでは、開発品または購入品採用決定前に試作品または購入予定現品で寿命値と信頼度値および故障前兆候把握の試験検証が必ず必要である旨を説明した。

従って前掲項目中で上げた第一の無償保障期間寿命値経過時点に於ける信頼度値の把握、第二の耐久寿命値経過時点に於ける信頼度値の把握、第三の安全寿命値経過時点に於ける信頼度値の把握をキチンと手抜きせず実施し、その数値をエンドユーザーへアナウンスする事が望ましい。

無償保障期間で確保すべき信頼度値は、筆者は最低 4 σ 値( ± 4 σ の確率分布値 = 99.994 % )で設定を推奨している。

強度確保が必要な製品類では、-4 σ 値(不具合確率では、3/10万 = 1/3.3 万の発生確率以下へ抑える)側へ設定する。

応答速度確保の場合では、+4 σ 値側へ設定する。

なお数量が非常に多い商品・製品では、管理点を年間生産数量分の 1 以下とする事を薦めている。

加速試験で期間短縮を図る場合には、無償保障期間が 1 年で、閏年でも 366 日で 100 の 1 へ短縮すれば、4日間で済む。

耐久寿命 10 年間の寿命値と信頼度値試験は大変だと言っても加速試験で 100 倍に加速すれば試験期間を 100 分の 1 へ短縮が可能となる。

閏年の1年を 366 日で 100 の 1 へ短縮すれば、4 日間で済む。

10 年分を 3660 日間とすれば、40 日間で済む。

ここで耐久寿命値試験の確保すべき信頼度値は、筆者は 10 年後最低 3 σ 値( ± 3 σ の確率分布値 = 99.7 %)以上で設定を推奨している。

強度確保が必要な場合では、- 3 σ 値(不具合確率では、1.5/1000 = 1/667 の発生確率以下に抑える)側へ設定する。

応答速度確保の場合では、+ 3 σ 値側へ設定する。

なお数量が非常に多い商品・製品やプレハブ住宅などでは、不具合確率を - 4 σ 値以下で設定する様を薦めている。

安全寿命 40 年間の寿命値と信頼度値試験は大変だと言っても加速試験で 100 倍に加速すれば試験期間を 100 分の 1 へ短縮が可能となる。

40 年分を 14,640 日間とすれば、150 日間で済む。つまり 5 ケ月間で済む。

現在多くの商品・製品各分野の主要構成部品では、連続 5,000 時間(実質約 7 ケ月間)の耐久試験を実施している企業での実態例が多い。

従って実質的には、これより短期間に実施可能である。

その意味でできない理由は、何もない。

それを実施しないのは、加速試験方法を知らないか? 何かと理由を着け面倒臭がって只さぼっている丈の事である。

ここで安全寿命値試験の確保すべき信頼度値は、筆者は 40 年後最低 2 σ 値( ± 2 σ の確率分布値 = 95.45 % )以上で設定を推奨している。

強度確保が必要な場合では、- 2 σ 値(不具合確率では、2.5% = 1/40 以下の発生確率に抑える)へ設定する。

この数値は不具合確率的に非常に大きいが、住宅や建物などの構築物を除く一般耐久消費財では実質エンドユーザーの許で 40 年間使い続けられる確率は非常に低くなる実態がある。

これは、時代の変化に合わせて新しい代替品へ買い替えが進む為である。

そのため実際値は、確率的に非常に小さな数値となる現実がある。

従って住宅や構築物へこの数値をそのまま当て嵌めてはいけない。

応答速度確保の場合では、+ 2 σ 値側へ設定する。

なお数量が非常に多い商品・製品やプレハブ住宅などでは、3 σ 値以上で設定する様に薦めている。

「実施による改善効果」

 現在寿命値を商品・製品で表示するメーカーが多く成って来た。

例えば、照明器具用ランプの蛍光灯や液晶テレビ用ディスプレイなどでである。

これは、機能だけでなく性能と特性の違いを特徴着ける事で市場での競争力として差別化できる事も商品・製品開発に取組む企業側に理解されて来た為と思われる。

同時に次の競争力差別化の手段として信頼度値も有効である事に気付いて貰えれば、無償保障期間寿命、保証耐久期間寿命、保証安全期間寿命として三つの保証値設定の試験時に信頼度値を把握し、エンドユーザーにアナウンスする事が可能となり大変喜ばしい事である。。

色々な商品・製品分野でメーカーが保証寿命値と一緒に保証信頼度値を普通に表示する様になれば、エンドユーザーである消費者も工業製品の本当の品質の意味を理解し、より高い信頼度値の商品・製品を選別して購入する様に意識が変わって行くと思われる。

つまり製造業各メーカの競争力を一層高める手段として理解され、是非信頼度値把握へより積極的に取組む必要がある。

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「引用文献」

・本稿は筆者(伊豫部将三)が執筆し、日刊工業新聞社月刊「機械設計」誌2017年3月号臨時増刊号へ投稿掲載した「設計の品質保証に必須のDR実施法 50 事例」部分へ今回ブログ掲載に当りタイトルを「設計の働き方改革とDRの具体的取り組み法」へ変更し、加筆し不備部は訂正した。

なお原本入手ご希望の方は、出版元(日刊工業新聞社・出版局)へお問い合わせを給わりたく、何分宜しくお願い申し上げます。

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「検索キーワード」

「市場ニーズ調査」 「先行技術調査」 「開発仕様書」 「要求機能」 「要求性能」 「要求特性」 「要求設計条件」 「目標寿命値」 「目標信頼度値」 「構想図」 「原理選択」 「方式選択」 「構造選択」 「材料選択」 「表面処理選択」「熱処理選択」「工作選択」 「形状選択」 「組合せ選択」 「締結法選択」 「結合法選択」 「動作制御法選択」 「回転・摺動部・間隙部・潤滑法選択」 「疲れ強さ設定」 「振動・衝撃強さ設定」 「耐食性設定」 「摩擦・摩耗強さ設定」 「揺動・ねじれ強さ設定」 「熱衝撃強さ設定」 「切欠き効果劣化防止法」「穴明き効果劣化防止法」 「溝付き効果劣化防止法」 「段付き効果劣化防止法」 「落雷・高圧サージ電圧損傷防止法」 「水滴付着絶縁劣化防止法」 「静電気放電発火・引火防止法」 「電磁ノイズ誘導誤作動防止法」 「過負荷発熱焼損防止法」 「ワイヤ断線防止法」 「膨張収縮半田剝離防止法」 「検証試験実施法基準」 「試験サンプル数基準」 「部品加工基準」 「部品測定基準」 「設計・試験工数見積り法基準」「日程計画法基準」 「コスト見積り実施法基準」 「耐久試験実施法基準」 「破壊・損傷試験実施法基準」 「基本仕様作成法基準」 「寿命試験実施法基準」 「信頼度確認試験実施法基準」 「故障予測実施法基準」 「工程能力指数達成法基準」 「客先クレーム措置法基準」 「苦情処理回答実施法基準」 「市場モニタリング実施法基準」 「耐圧試験実施法基準」 「機密漏洩試験実施法基準」 「プログラムデバック試験実施法基準」 他、などがある。

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「全体目次」

「総論 」

iyoblog (3-0-1)・(はじめに) 設計の品質保証を左右するDR(Design Review = 設計審査)

「解説」

iyoblog (3-0-2)・第1章・DR-0(商品開発企画の仕様書と構想図作成段階)の取組み法と現状実態

iyoblog (3-0-3)・第2章・DR-1(開発試作品設計・検証および基本設計段階)の取組み法と現状実態

iyoblog (3-0-4)・第3章・DR-2(詳細組立図と部品設計・出図図書作成段階)の取組み法と現状実態

事例編・第一部「DR組織および事前準備関連取り組み法」

iyoblog (3-01)・市場クレームの手戻り予防では、DRの主要目的を点検会から事前指導会へ重点を転換する

iyoblog (3-02)・客先指摘仕様洩れ手戻り予防では、基本仕様項目の主要部はDR会が作成する

iyoblog (3-03)・事前市場ニーズ調査では、先行競合品と併せ、新規見込み購買層調査も義務付ける

iyoblog (3-04)・先行技術調査では、先行メーカー動向と併せ、新規参入見込みメーカー有無動向調査も義務付ける

iyoblog (3-05)・開発仕様書の要求機能設定では、市場ニーズ調査から従来品に無い特徴機能設定を義務付ける

iyoblog (3-06)・開発品の要求性能設定では、市場ニーズ調査から従来品に無い特徴性能設定を義務付ける

iyoblog (3-07)・開発品の要求特性設定では、従来品に無い特徴有る特性設定を義務付ける

iyoblog (3-08)・要求設計条件設定では、従来品に無い寿命値設定を義務付ける

iyoblog (3-09)・要求設計条件設定では、従来品に無い信頼度値設定を義務付ける

iyoblog (3-10)・開発品の構想図作成では、従来品に無い原理・方式・構造選択を義務付ける

事例編・第二部「DR-0 ・商品企画・関連仕様作成取り組み法」

iyoblog (3-11)・開発仕様書と構想図作成段階で確認すべき項目

iyoblog (3-12)・開発仕様書案で確認すべき項目

iyoblog (3-13)・構想図案で確認すべき項目

iyoblog (3-14)・メカ系構想設計部位案で確認すべき項目

iyoblog (3-15)・制御・実装系構想設計部位案で確認すべき項目

iyoblog (3-16)・計測器系構想設計部位案で確認すべき項目

iyoblog (3-17)・メカ系構想設計部位案で検証前に確認すべき項目

iyoblog (3-18)・制御・実装系構想設計部位案で検証前に確認すべき項目

iyoblog (3-19)・計測器系構想設計部位案で検証前に確認すべき項目

iyoblog (3-20)・構想設計案作成図書で確認すべき項目

「事例編・第三部・DR-1(1) ・ 商品企画・関連仕様作成実施取り組み法」

iyoblog (3-21)・試作品設計段階で事前確認すべき項目

iyoblog (3-22)・メカ系部位試作品設計案で事前確認すべき項目

iyoblog (3-23)・制御・実装系部位試作品設計案で事前確認すべき項目

iyoblog (3-24)・計測器系部位試作品設計案で事前確認すべき項目

iyoblog (3-25)・メカ系部位試作品案の検証で事前確認すべき項目

iyoblog (3-26)・制御・実装系部位試作品案の検証前に確認すべき項目

iyoblog (3-27)・計測器系部位試作品案の検証前に確認すべき項目

iyoblog (3-28)・メカ系部位試作品案の検証結果評価法で事前確認すべき項目

iyoblog (3-29)・制御・実装系部位試作品案の検証結果評価法で確認すべき項目

iyoblog (3-30)・計測器系部位試作品案の検証結果評価法で確認すべき項目

「事例編・第四部・DR-1(2) ・ 基本設計着手時の不具合予防取り組み法」

iyoblog (3-31)・基本設計で開発品と既存品組合せ部位の確認項目

iyoblog (3-32)・基本設計で環境条件の確認項目・その1

iyoblog (3-33)・基本設計で環境条件の確認項目・その2

iyoblog (3-34)・基本設計で環境条件の確認項目・その3

iyoblog (3-35)・基本設計で鉄系材料使用部位の確認項目・その1

iyoblog (3-36)・基本設計で鉄系材料使用部位の確認項目・その2

iyoblog (3-37)・基本設計で非鉄系材料使用部位の確認項目・その1

iyoblog (3-38)・基本設計で非鉄系材料使用部位の確認項目・その2

iyoblog (3-39)・基本設計で非金属系材料使用部位の確認項目・その1

iyoblog (3-40)・基本設計で非金属系材料使用部位の確認項目・その2

「事例編・第五部・DR-2 ・ 詳細設計着手時の不具合予防取り組み法」

iyoblog (3-41)・詳細設計で炭素鋼熱処理部品の確認項目

iyoblog (3-42)・詳細設計で部品形状の確認項目

iyoblog (3-43)・詳細設計で衝撃強さ確保の確認項目

iyoblog (3-44)・詳細設計で摩耗強さ確保の確認項目

iyoblog (3-45)・詳細設計でねじ締結部の確認項目

iyoblog (3-46)・詳細設計で部品素材選択の確認項目

iyoblog (3-47)・詳細設計でステンレス鋼選択の確認項目

iyoblog (3-48)・詳細設計で深絞り品置き割れ防止の確認項目

iyoblog (3-49)・詳細設計で溶接品質確保の確認項目

iyoblog (3-50)・詳細設計で異種金属接触による腐食防止の確認項目

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「筆者略歴」

 1957年4月~1974年3月の17年間・富士重工業㈱(注・現社名スバル)三鷹製作所(現・群馬県大泉町へ移転)生産技術部門に勤務。乗用車用エンジン・ミッション製造の工場自動化機器・専用機設計業務へ従事。1974年技術士(機械部門・第7916号)登録、伊豫部技術士事務所を開設。開発・設計および生産技術部門の技術コンサルタントとして現在に至る。この間、上場および中堅企業100社以上で社員教育や業務改善支援業務に従事。現在までに、社団法人日本技術士会理事、りそな中小企業振興財団「中小企業庁長官新技術・新製品賞」贈賞の専門審査委員、東大和市商工会理事、等を歴任。

 著書「設計の故障解析51(CD-ROM付)」、「設計の基本仕様51(CD-ROM付)」、「設計のマネジメント101」、「設計者の心得と実務101」、「設計の経験則101」、「設計の凡ミス退治101」、「設計のムダ退治101」、「ハンドリング簡易自動化201」、「設計審査(DR=Design Review)支援ツール集・Ⅰ(事前審査編)」以上日刊工業新聞社から刊行。月刊「機械設計」誌へ長期連載等あり。「品質機能展開50事例(CD-ROM付)」、「MC選定資料マニアル」、熊谷卓氏と共著「組立・ハンドリング自動化実例図集」、以上新技術開発センターから刊行などが有る。

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開発品の要求性能設定では、ニーズ調査から従来品に無い特徴性能設定を義務付ける・事例(3-06)

iyoblog (3-06)「設計の働き方改革とDR(設計審査)の具体的取り組み法」設計力向上研究会(伊豫部将三)編

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事例編・第一部「DR組織および事前準備関連取り組み法」

iyoblog (3-06)・開発品の要求性能設定では、市場ニーズ調査から従来品に無い特徴性能設定を義務付ける

「現状と問題点」

 開発品を市場で売れる商品にするには、特徴ある機能だけでなく競合他社製品とは異なる特徴ある性能を持つ事も大切となる。

ここで特徴ある性能とは、例えばマシニングセンタテーブルなどの繰返し位置決め精度は工作機械メーカーの集まりで有る日本工作機械工業会・技術基準で±10μ(ミクロン)以下と定めている。

これに対し同工業会所属某社は、当社の繰返し位置決め精度を ± 1 μ 以下を保証するとカタログに違いを表示して販売している。

この様に性能上の違いを仕様書上で強調できる様に、商品・製品開発に着手する事を言う。

 乗用車分野では、一時期0~4(零四)加速性が争われた事が有った。

0 ~ 4 加速とは、スタートしてから 400 M(メートル)通過時間が如何に短いか? の加速性能を争うものである。

エレベータでは、高層ビルが多くなるに連れて60 階までの上下移動時間、75 階までの上下移動時間が如何に短いか? を、現在も各社が技術力として性能上の違いを見せ着けながら争われている。

また先に記したマシニングセンタ分野では、工具交換に伴う前の切削終わりから次の切粉出し(Tip to Tip time = 非切削)時間までが如何に短いか? 多色刷り印刷機分野では、原版交換(印刷停止)時間が如何に短いか? が争われている。

これらは、何れも機能の違い丈でなく性能の違いも市場競争力を争う上で商品開発上では、大切な開発テーマ項目と捉えていると理解する必要がある。

つまりエンドユーザーが、性能面の違いを充分意識して買っている事をメーカー側として認知している証拠である。

「着眼点・分析と評価法」

 特徴ある性能の違いとは、競合他社が技術的にまだ実現していない例えば、各種工業会などの業界団体へ加盟している企業は、加盟団体が定める技術基準などを遵守している旨カタログなどで表示する場合が多い。

安全基準などでは一見望ましい様に映るが、所属団体が定める技術基準値を表示し当社製品ではその数値に対し 1/10 以下であるとか、1/100 以下で有るとか、或いは 10 倍で有るとか、50 %増しで有るとか、の数値の違いを明確に表示する事が望ましい。

エンドユーザ側の目で見ると業界団体へ加盟し団体の定める技術基準が守られているから良い製品と認知する訳ではない。

寧ろ団体の定める最大または最小許容値で有る基準値しか守れない程レベルが低いのか? とメーカー側を疑う場合も有り得る。

それは、業界規格値と異なる数値を強調して表示し売り物にするメーカーが存在する為である。

生鮮食品を扱う盛り土がない新豊洲市場建物地下空間で湧出した地下水から本来検出されてはならない物質が検出され、基準値より低いから安全だ! と言い張る主張を一般市民は納得しない。

同じ事が開発商品または製品の種類に依っては、厚生労働省が定める環境ホルモンに影響するダイオキシン、PCB、クロルデン、トリブチル、DDT、ディルドリン、シマジン、アトラジン、DES、ビスフェノール、フタル酸エステル、ノニルフェノール、エチレンなど規制された物質が一切使用されてない事を公的機関の証明書付で表示する事もエンドユーザーへ製品の安全・安心感を与える上では大切である。

「改善点と取組み実施法」

 開発商品を市場でエンドユーザに優先して選択して貰うためには、望む機能に対し競合製品が多数ある中から性能が飛び抜けて良い事を判って貰う工夫が必要となる。

例えば、乗用車で当社製では燃費性能が 20 %良いなどの表示は、エンドユーザへ割安感、お徳用感で大きなインパクトを与える程の効果がある。

この場合に効果の程を具体例で示す事が、特に重要となる。

10 年間使う場合のライフサイクルコスト(買替え期間まで使い続けた場合に掛る経費)で、年 2 万キロ走行すると仮定した場合のトータル金額は、1 リットルで 20 km 走行しガソリン代が 1 リットル 120 円と仮定すれば、( 20,000 km / 年÷ 20 km/L×10 年 × 24 円/L=)240,000 の差額効果となる。

この金額は、ユーザは他に代え難い。

ならばこの車種にしよう!と決断する。

この徳用感に訴える力は、特に大きなものがある。

ここで性能の違いをエンドユーザーの経費節減感に結び着け表示すると、その効果が大きい。

燃費が他メーカ車種より 20 % 良いですよ!

これは、現在のガソリン価格に換算すると年 2 万 km 10 年間乗る場合には、24 万円お得に成りますよ! と具体的に伝える事が大切になる。

「実施による改善効果」

 全ての商品・製品で性能値テーマ項目を費用対効果で表現が可能か? は、一つずつ具体例で検討の余地があるが、例えば現実にプレハブ住宅メーカーで60年寿命保証を表示している企業がある。

プレハブ住宅では、旧建設省(現・国土交通省)が住宅性能表示制度を制定する前にプレハブ住宅メーカーと関連製品メーカーを取りまとめ工業化住宅協会を結成し技術基準で躯体部分(注・鉄骨系住宅では鉄骨部分・木質系住宅では柱と壁面部分)について最低 40 年以上の寿命確保を義務付けた。

従ってプレハブ住宅では、基準法で定める震度 7 の直下型地震で倒壊してはならない規定と躯体部分の 40 年以上の寿命確保条件から容易に交換・取替え可能なインテリアとエクステリア部品類を除けば、寿命は修理・交換無しで 40 年間維持できると一般には思われている。

これが現実にメーカーで 60 年寿命保証を表示されると、40 年と思われている物が 60 年へ変わると、購入見込み客は価格が殆ど変わらず 50 %長い寿命に置換わると理解される。

つまり価格が約 3 分の 1 程度(約 33 %)安く取得できると単純に判断する。

すごい割安感・お徳用感を与えるインパクトが大きい。

一度に数千万円を支払う買物だけにこの宣伝効果は非常に大きいと言える。

当然実価格は若干高くなると推測されるが、33 %と言わず少し位(凡そ半分の 15 %程度)位まで抑えられるなら、こちらを選択したいと望む顧客が増えることに間違いない。

つまり性能が向上する事で 15 %とか、20 %とかの差違から費用対効果に置換えてエンドユーザーは割安感・お徳用感を強く意識する可能性が高い。

このことから先行競合メーカー品に対して開発品の性能面でエンドユーザーに対する差別化を設計担当者に意識させるには、最低でも 15 %から 20 %程度の割安感またはお得用感を感じさせる仕様書開発目標性能値設定を考えて取り組む必要がある。

 例えば、乗用車の場合多くの車種で強度確保上から内装や電装系を除けば殆どの部品が鉄系で有る鋼材で造られ重量は略 1 頓を超える。

これをアルミ・マグネシウム 100 %系材料と樹脂(プラスチック)系部品へ代え、重量を 20 %軽くすれば燃費を 20 %軽減したのと同じ効果を出す事が可能となる。

鉄系部品重量を 20 %軽減した事で代替え材料費が 20 %値上がりし製造原価が同じで済むなら、重量が 20 %軽減されているので燃費は 20 %確実に節減される。

これは、エンドユーザから見れば大変大きな性能向上と見做される。

これらは、性能面で特徴着ける意味と取組み法の一つとして理解できる。

自動車メーカが、何故軽量化に熱心か? 理由の一端が以上から充分理解される。

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「引用文献」

・本稿は筆者(伊豫部将三)が執筆し、日刊工業新聞社月刊「機械設計」誌2017年3月号臨時増刊号へ投稿掲載した「設計の品質保証に必須のDR実施法 50 事例」部分へ今回ブログ掲載に当りタイトルを「設計の働き方改革とDRの具体的取り組み法」へ変更し、加筆し不備部は訂正した。

なお原本入手ご希望の方は、出版元(日刊工業新聞社・出版局)へお問い合わせを給わりたく、何分宜しくお願い申し上げます。

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「検索キーワード」

「市場ニーズ調査」 「先行技術調査」 「開発仕様書」 「要求機能」 「要求性能」 「要求特性」 「要求設計条件」 「目標寿命値」 「目標信頼度値」 「構想図」 「原理選択」 「方式選択」 「構造選択」 「材料選択」 「表面処理選択」「熱処理選択」「工作選択」 「形状選択」 「組合せ選択」 「締結法選択」 「結合法選択」 「動作制御法選択」 「回転・摺動部・間隙部・潤滑法選択」 「疲れ強さ設定」 「振動・衝撃強さ設定」 「耐食性設定」 「摩擦・摩耗強さ設定」 「揺動・ねじれ強さ設定」 「熱衝撃強さ設定」 「切欠き効果劣化防止法」「穴明き効果劣化防止法」 「溝付き効果劣化防止法」 「段付き効果劣化防止法」 「落雷・高圧サージ電圧損傷防止法」 「水滴付着絶縁劣化防止法」 「静電気放電発火・引火防止法」 「電磁ノイズ誘導誤作動防止法」 「過負荷発熱焼損防止法」 「ワイヤ断線防止法」 「膨張収縮半田剝離防止法」 「検証試験実施法基準」 「試験サンプル数基準」 「部品加工基準」 「部品測定基準」 「設計・試験工数見積り法基準」「日程計画法基準」 「コスト見積り実施法基準」 「耐久試験実施法基準」 「破壊・損傷試験実施法基準」 「基本仕様作成法基準」 「寿命試験実施法基準」 「信頼度確認試験実施法基準」 「故障予測実施法基準」 「工程能力指数達成法基準」 「客先クレーム措置法基準」 「苦情処理回答実施法基準」 「市場モニタリング実施法基準」 「耐圧試験実施法基準」 「機密漏洩試験実施法基準」 「プログラムデバック試験実施法基準」 他、などがある。

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「全体目次」

「総論 」

iyoblog (3-0-1)・(はじめに) 設計の品質保証を左右するDR(Design Review = 設計審査)

「解説」

iyoblog (3-0-2)・第1章・DR-0(商品開発企画の仕様書と構想図作成段階)の取組み法と現状実態

iyoblog (3-0-3)・第2章・DR-1(開発試作品設計・検証および基本設計段階)の取組み法と現状実態

iyoblog (3-0-4)・第3章・DR-2(詳細組立図と部品設計・出図図書作成段階)の取組み法と現状実態

事例編・第一部「DR組織および事前準備関連取り組み法」

iyoblog (3-01)・市場クレームの手戻り予防では、DRの主要目的を点検会から事前指導会へ重点を転換する

iyoblog (3-02)・客先指摘仕様洩れ手戻り予防では、基本仕様項目の主要部はDR会が作成する

iyoblog (3-03)・事前市場ニーズ調査では、先行競合品と併せ、新規見込み購買層調査も義務付ける

iyoblog (3-04)・先行技術調査では、先行メーカー動向と併せ、新規参入見込みメーカー有無動向調査も義務付ける

iyoblog (3-05)・開発仕様書の要求機能設定では、市場ニーズ調査から従来品に無い特徴機能設定を義務付ける

iyoblog (3-06)・開発品の要求性能設定では、市場ニーズ調査から従来品に無い特徴性能設定を義務付ける

iyoblog (3-07)・開発品の要求特性設定では、従来品に無い特徴特性設定を義務付ける

iyoblog (3-08)・要求設計条件設定では、従来品に無い寿命値設定を義務付ける

iyoblog (3-09)・要求設計条件設定では、従来品に無い信頼度値設定を義務付ける

iyoblog (3-10)・開発品の構想図作成では、従来品に無い原理・方式・構造選択を義務付ける

事例編・第二部「DR-0 ・商品企画・関連仕様作成取り組み法」

iyoblog (3-11)・開発仕様書と構想図作成段階で確認すべき項目

iyoblog (3-12)・開発仕様書案で確認すべき項目

iyoblog (3-13)・構想図案で確認すべき項目

iyoblog (3-14)・メカ系構想設計部位案で確認すべき項目

iyoblog (3-15)・制御・実装系構想設計部位案で確認すべき項目

iyoblog (3-16)・計測器系構想設計部位案で確認すべき項目

iyoblog (3-17)・メカ系構想設計部位案で検証前に確認すべき項目

iyoblog (3-18)・制御・実装系構想設計部位案で検証前に確認すべき項目

iyoblog (3-19)・計測器系構想設計部位案で検証前に確認すべき項目

iyoblog (3-20)・構想設計案作成図書で確認すべき項目

「事例編・第三部・DR-1(1) ・ 商品企画・関連仕様作成実施取り組み法」

iyoblog (3-21)・試作品設計段階で事前確認すべき項目

iyoblog (3-22)・メカ系部位試作品設計案で事前確認すべき項目

iyoblog (3-23)・制御・実装系部位試作品設計案で事前確認すべき項目

iyoblog (3-24)・計測器系部位試作品設計案で事前確認すべき項目

iyoblog (3-25)・メカ系部位試作品案の検証で事前確認すべき項目

iyoblog (3-26)・制御・実装系部位試作品案の検証前に確認すべき項目

iyoblog (3-27)・計測器系部位試作品案の検証前に確認すべき項目

iyoblog (3-28)・メカ系部位試作品案の検証結果評価法で事前確認すべき項目

iyoblog (3-29)・制御・実装系部位試作品案の検証結果評価法で確認すべき項目

iyoblog (3-30)・計測器系部位試作品案の検証結果評価法で確認すべき項目

「事例編・第四部・DR-1(2) ・ 基本設計着手時の不具合予防取り組み法」

iyoblog (3-31)・基本設計で開発品と既存品組合せ部位の確認項目

iyoblog (3-32)・基本設計で環境条件の確認項目・その1

iyoblog (3-33)・基本設計で環境条件の確認項目・その2

iyoblog (3-34)・基本設計で環境条件の確認項目・その3

iyoblog (3-35)・基本設計で鉄系材料使用部位の確認項目・その1

iyoblog (3-36)・基本設計で鉄系材料使用部位の確認項目・その2

iyoblog (3-37)・基本設計で非鉄系材料使用部位の確認項目・その1

iyoblog (3-38)・基本設計で非鉄系材料使用部位の確認項目・その2

iyoblog (3-39)・基本設計で非金属系材料使用部位の確認項目・その1

iyoblog (3-40)・基本設計で非金属系材料使用部位の確認項目・その2

「事例編・第五部・DR-2 ・ 詳細設計着手時の不具合予防取り組み法」

iyoblog (3-41)・詳細設計で炭素鋼熱処理部品の確認項目

iyoblog (3-42)・詳細設計で部品形状の確認項目

iyoblog (3-43)・詳細設計で衝撃強さ確保の確認項目

iyoblog (3-44)・詳細設計で摩耗強さ確保の確認項目

iyoblog (3-45)・詳細設計でねじ締結部の確認項目

iyoblog (3-46)・詳細設計で部品素材選択の確認項目

iyoblog (3-47)・詳細設計でステンレス鋼選択の確認項目

iyoblog (3-48)・詳細設計で深絞り品置き割れ防止の確認項目

iyoblog (3-49)・詳細設計で溶接品質確保の確認項目

iyoblog (3-50)・詳細設計で異種金属接触による腐食防止の確認項目

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「筆者略歴」

 1957年4月~1974年3月の17年間・富士重工業㈱(注・現社名スバル)三鷹製作所(現・群馬県大泉町へ移転)生産技術部門に勤務。乗用車用エンジン・ミッション製造の工場自動化機器・専用機設計業務へ従事。1974年技術士(機械部門・第7916号)登録、伊豫部技術士事務所を開設。開発・設計および生産技術部門の技術コンサルタントとして現在に至る。この間、上場および中堅企業100社以上で社員教育や業務改善支援業務に従事。現在までに、社団法人日本技術士会理事、りそな中小企業振興財団「中小企業庁長官新技術・新製品賞」贈賞の専門審査委員、東大和市商工会理事、等を歴任。

 著書「設計の故障解析51(CD-ROM付)」、「設計の基本仕様51(CD-ROM付)」、「設計のマネジメント101」、「設計者の心得と実務101」、「設計の経験則101」、「設計の凡ミス退治101」、「設計のムダ退治101」、「ハンドリング簡易自動化201」、「設計審査(DR=Design Review)支援ツール集・Ⅰ(事前審査編)」以上日刊工業新聞社から刊行。月刊「機械設計」誌へ長期連載等あり。「品質機能展開50事例(CD-ROM付)」、「MC選定資料マニアル」、熊谷卓氏と共著「組立・ハンドリング自動化実例図集」、以上新技術開発センターから刊行などが有る。

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開発仕様書の要求機能設定では、ニーズ調査から従来品に無い特徴機能設定を義務付ける・事例(3-05)

iyoblog (3-05)「設計の働き方改革とDR(設計審査)の具体的取り組み法」設計力向上研究会(伊豫部将三)編

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事例編・第一部「DR組織および事前準備関連取り組み法」

iyoblog (3-05)・開発仕様書の要求機能設定では、市場ニーズ調査から従来品に無い特徴機能設定を義務付ける

「現状と問題点」

 新商品・製品開発テーマを考える際に市場に無い新商品・製品で考えるか? 既存商品・製品へ機能追加・拡充で考えるか? 性能向上・改良で考えるか? など方法は色々ある。

判り易い言葉で言えば、小型化するか? 軽量化するか? 低価格化するか? 高齢者や子供でも扱える様にするか? などである。

その際周囲に理解を得るには、新規提案品と既存商品・製品との違いを機能系統図に書いて比較して示すのが最も分り易く理解させる方法と言える。

参考までに図 3-5 へ「乗用車用ドアハンドルの二次機能までの機能系統図例(固有・特有機能の一部のみを示す。)」を示す。

 開発テーマを決める際大切な事は、市場に類似先行商品がある分野へ後発メーカとして参入する場合には、先行商品と機能上の違いを明確に際立たせ購入見込みユーザへ強力な印象着けが最終的に要求される。

これを機能系統図で最初に社内関係者へ示し、先ず認知して貰う必要がある。

デザイン性を強調するか? 安全性を強調するか? 保安性を強調するか? 価格の廉価性を強調するか? 品質(寿命と信頼度)の良さを強調するか? は、担当者に執って色々と悩む所である。

最良の選択法は、市場調査を通して既存品ユーザへモニタリングし先行既存品に対する直接面談や電話アンケートで改良要望点や使用上の不満および好みを聞き出すことである。

これを許に、既存商品をどう変えたらより多くのユーザ支持が得られるか? 新しいユーザを獲得できるか? の傾向を分析・評価する。

「着眼点・分析と評価法」

 開発テーマを決める市場調査で一番大切な事は、開発商品が先ず売れなければならない。

開発商品が売れなければ、市場と企業から開発は失敗したと評価される。

時には、企業の存続に影響を与える場合もある。

社内でも担当者の力量・能力が疑われ評価が下がる。

そうしない為には、市場に於けるエンドユーザの開発要望に対する関心の程度を丁寧に事前把握する必要がある。

 既に先行類似商品が市場に存在している場合には、実際のユーザと開発商品の購入見込みユーザを訪ね直接面談するか? 電話アンケートで聞き取りするか? を行わねばならない。

この場合に注意することは、統計学的に真面目に答えて呉れる人達の比率は、50%前後しかいない。

従って通常有効回答数を2千件以上確保する為には、倍の4千人以上を対象に調べる(DATAを集める)必要がある。

 またもう一つの注意点は、市場には二種類の客層が存在する。

一つは、先行既存商品の機能と品質(寿命と信頼度)がそこそこ同じ程度ならできるだけ廉価(安さ)を求める客層と、価格は二の次にして機能と品質(寿命と信頼度)が既存品より極めて良い物(明確に違いを感ずる)ならお金は少し高くても受け入れる客層である。

従って市場調査では、どちらの客層へ面談またはアンケートしているか? を明確に区別して DATA を集計する必要がある。

その上で機能を多少改良しながら廉価版の開発品着手とするか? 機能を大幅に追加・改良付加すると共に品質面(寿命と信頼度)を飛躍的に高める商品開発とするか? の最終選択を行うと良い。

「改善点と取組み実施法」

 開発テーマの最終選択として先行既存品の機能と品質(寿命と信頼度)を同程度にして廉価版で行くと言う選択で有れば、製造コスト低減を徹底的に追及する設計へ取組めば良い。

その為には、1・材料費の節減、2・システム構成部品点数の節減、3・組立と調整コスト(工数)の節減などが、設計上主要取組みテーマとなる。

1・材料費の節減では、金属切削部品を板金プレス部品へ。板金プレス部品を樹脂射出成型部品へ変更などが主な改良テーマとなる。

2・部品点数の節減では、主としてボルトやねじ締結部品類の一体化を念頭に変更が主テーマとなる。

3・組立調整コスト(工数)の節減では、人手による組立作業の自動化(ロボット化)推進と調整作業の廃止が主な改良テーマとなる。

また開発テーマの最終選択として先行既存品に無い際立つ機能の追加と品質(寿命と信頼度)向上を図るテーマの場合には、全てゼロからの積りで開発テーマへ取組む必要がある。

この場合に何方の選択が良いかについて筆者は、後者を薦めたい。

その理由は、前者の場合に先行既存品メーカが直ぐ後を追掛け半年と優位性を確保できず、その後激しい廉価販売競争の渦中に飛込む結果を招く。

その為長い体力消耗戦に晒され利益も出ず投資資金の回収も困難に成る事が予想される。

その例として安い労働力を求め発展途上国へ生産拠点を移動し廉価競争に巻込まれ現実に国内拠点も失う大手が複数出ている事は、記憶へ留めるに値する。

「実施による改善効果」

 先行既存商品へ特徴ある新機能を追加する改良設計は、内容的には新商品開発と同じく新しい製造プロセス開発へ取組む事である。

例えば現在の国内市場で需要が急拡大中の電動アシスト自転車や大人用倒れ難い三輪自転車の開発で考えて見れば判る。

商品開発は、新しい製造プロセス開発そのものである。

先行既存品として自転車は存在している。

しかし高齢者や身体弱者には、筆者を含め急な坂道を登るのが現実に困難で有る。

また身体弱者で平衡感覚が鈍い人達には、漕ぎ始めのヨロヨロ低速走行時には倒れる危険と心配も有る。

これを倒れ難く安心して乗れる様に機能見直しで改良した結果の大人用三輪自転車が新商品として登場した。

電動アシスト装置を付加する自転車製造のプロセスと大人用前輪二輪へ改良した三輪自転車製造のプロセスを新たに設計した事である。

当然品質(寿命と信頼度)を十分検証しなければならない。

これをクリアした結果として、上市された商品である。

廉価版の追及ではなく、先行既存商品ではまだ着手されていなかった機能付加による改良でより付加価値を高める参考事例として推奨したい。

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「引用文献」

・本稿は筆者(伊豫部将三)が執筆し、日刊工業新聞社月刊「機械設計」誌2017年3月号臨時増刊号へ投稿掲載した「設計の品質保証に必須のDR実施法 50 事例」部分へ今回ブログ掲載に当りタイトルを「設計の働き方改革とDRの具体的取り組み法」へ変更し、加筆し不備部は訂正した。

なお原本入手ご希望の方は、出版元(日刊工業新聞社・出版局)へお問い合わせを給わりたく、何分宜しくお願い申し上げます。

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「検索キーワード」

「市場ニーズ調査」 「先行技術調査」 「開発仕様書」 「要求機能」 「要求性能」 「要求特性」 「要求設計条件」 「目標寿命値」 「目標信頼度値」 「構想図」 「原理選択」 「方式選択」 「構造選択」 「材料選択」 「表面処理選択」「熱処理選択」「工作選択」 「形状選択」 「組合せ選択」 「締結法選択」 「結合法選択」 「動作制御法選択」 「回転・摺動部・間隙部・潤滑法選択」 「疲れ強さ設定」 「振動・衝撃強さ設定」 「耐食性設定」 「摩擦・摩耗強さ設定」 「揺動・ねじれ強さ設定」 「熱衝撃強さ設定」 「切欠き効果劣化防止法」「穴明き効果劣化防止法」 「溝付き効果劣化防止法」 「段付き効果劣化防止法」 「落雷・高圧サージ電圧損傷防止法」 「水滴付着絶縁劣化防止法」 「静電気放電発火・引火防止法」 「電磁ノイズ誘導誤作動防止法」 「過負荷発熱焼損防止法」 「ワイヤ断線防止法」 「膨張収縮半田剝離防止法」 「検証試験実施法基準」 「試験サンプル数基準」 「部品加工基準」 「部品測定基準」 「設計・試験工数見積り法基準」「日程計画法基準」 「コスト見積り実施法基準」 「耐久試験実施法基準」 「破壊・損傷試験実施法基準」 「基本仕様作成法基準」 「寿命試験実施法基準」 「信頼度確認試験実施法基準」 「故障予測実施法基準」 「工程能力指数達成法基準」 「客先クレーム措置法基準」 「苦情処理回答実施法基準」 「市場モニタリング実施法基準」 「耐圧試験実施法基準」 「機密漏洩試験実施法基準」 「プログラムデバック試験実施法基準」 他、などがある。

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「全体目次」

「総論 」

iyoblog (3-0-1)・(はじめに) 設計の品質保証を左右するDR(Design Review = 設計審査)

「解説」

iyoblog (3-0-2)・第1章・DR-0(商品開発企画の仕様書と構想図作成段階)の取組み法と現状実態

iyoblog (3-0-3)・第2章・DR-1(開発試作品設計・検証および基本設計段階)の取組み法と現状実態

iyoblog (3-0-4)・第3章・DR-2(詳細組立図と部品設計・出図図書作成段階)の取組み法と現状実態

事例編・第一部「DR組織および事前準備関連取り組み法」

iyoblog (3-01)・市場クレームの手戻り予防では、DRの主要目的を点検会から事前指導会へ重点を転換する

iyoblog (3-02)・客先指摘仕様洩れ手戻り予防では、基本仕様項目の主要部はDR会が作成する

iyoblog (3-03)・事前市場ニーズ調査では、先行競合品と併せ、新規見込み購買層調査も義務付ける

iyoblog (3-04)・先行技術調査では、先行メーカー動向と併せ、新規参入見込みメーカー有無動向調査も義務付ける

iyoblog (3-05)・開発仕様書の要求機能設定では、市場ニーズ調査から従来品に無い特徴機能設定を義務付ける

iyoblog (3-06)・開発品の要求性能設定では、市場ニーズ調査から従来品に無い特徴性能設定を義務付ける

iyoblog (3-07)・開発品の要求特性設定では、従来品に無い特徴特性設定を義務付ける

iyoblog (3-08)・要求設計条件設定では、従来品に無い寿命値設定を義務付ける

iyoblog (3-09)・要求設計条件設定では、従来品に無い信頼度値設定を義務付ける

iyoblog (3-10)・開発品の構想図作成では、従来品に無い原理・方式・構造選択を義務付ける

事例編・第二部「DR-0 ・商品企画・関連仕様作成取り組み法」

iyoblog (3-11)・開発仕様書と構想図作成段階で確認すべき項目

iyoblog (3-12)・開発仕様書案で確認すべき項目

iyoblog (3-13)・構想図案で確認すべき項目

iyoblog (3-14)・メカ系構想設計部位案で確認すべき項目

iyoblog (3-15)・制御・実装系構想設計部位案で確認すべき項目

iyoblog (3-16)・計測器系構想設計部位案で確認すべき項目

iyoblog (3-17)・メカ系構想設計部位案で検証前に確認すべき項目

iyoblog (3-18)・制御・実装系構想設計部位案で検証前に確認すべき項目

iyoblog (3-19)・計測器系構想設計部位案で検証前に確認すべき項目

iyoblog (3-20)・構想設計案作成図書で確認すべき項目

「事例編・第三部・DR-1(1) ・ 商品企画・関連仕様作成実施取り組み法」

iyoblog (3-21)・試作品設計段階で事前確認すべき項目

iyoblog (3-22)・メカ系部位試作品設計案で事前確認すべき項目

iyoblog (3-23)・制御・実装系部位試作品設計案で事前確認すべき項目

iyoblog (3-24)・計測器系部位試作品設計案で事前確認すべき項目

iyoblog (3-25)・メカ系部位試作品案の検証で事前確認すべき項目

iyoblog (3-26)・制御・実装系部位試作品案の検証前に確認すべき項目

iyoblog (3-27)・計測器系部位試作品案の検証前に確認すべき項目

iyoblog (3-28)・メカ系部位試作品案の検証結果評価法で事前確認すべき項目

iyoblog (3-29)・制御・実装系部位試作品案の検証結果評価法で確認すべき項目

iyoblog (3-30)・計測器系部位試作品案の検証結果評価法で確認すべき項目

「事例編・第四部・DR-1(2) ・ 基本設計着手時の不具合予防取り組み法」

iyoblog (3-31)・基本設計で開発品と既存品組合せ部位の確認項目

iyoblog (3-32)・基本設計で環境条件の確認項目・その1

iyoblog (3-33)・基本設計で環境条件の確認項目・その2

iyoblog (3-34)・基本設計で環境条件の確認項目・その3

iyoblog (3-35)・基本設計で鉄系材料使用部位の確認項目・その1

iyoblog (3-36)・基本設計で鉄系材料使用部位の確認項目・その2

iyoblog (3-37)・基本設計で非鉄系材料使用部位の確認項目・その1

iyoblog (3-38)・基本設計で非鉄系材料使用部位の確認項目・その2

iyoblog (3-39)・基本設計で非金属系材料使用部位の確認項目・その1

iyoblog (3-40)・基本設計で非金属系材料使用部位の確認項目・その2

「事例編・第五部・DR-2 ・ 詳細設計着手時の不具合予防取り組み法」

iyoblog (3-41)・詳細設計で炭素鋼熱処理部品の確認項目

iyoblog (3-42)・詳細設計で部品形状の確認項目

iyoblog (3-43)・詳細設計で衝撃強さ確保の確認項目

iyoblog (3-44)・詳細設計で摩耗強さ確保の確認項目

iyoblog (3-45)・詳細設計でねじ締結部の確認項目

iyoblog (3-46)・詳細設計で部品素材選択の確認項目

iyoblog (3-47)・詳細設計でステンレス鋼選択の確認項目

iyoblog (3-48)・詳細設計で深絞り品置き割れ防止の確認項目

iyoblog (3-49)・詳細設計で溶接品質確保の確認項目

iyoblog (3-50)・詳細設計で異種金属接触による腐食防止の確認項目

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「筆者略歴」

 1957年4月~1974年3月の17年間・富士重工業㈱(注・現社名スバル)三鷹製作所(現・群馬県大泉町へ移転)生産技術部門に勤務。乗用車用エンジン・ミッション製造の工場自動化機器・専用機設計業務へ従事。1974年技術士(機械部門・第7916号)登録、伊豫部技術士事務所を開設。開発・設計および生産技術部門の技術コンサルタントとして現在に至る。この間、上場および中堅企業100社以上で社員教育や業務改善支援業務に従事。現在までに、社団法人日本技術士会理事、りそな中小企業振興財団「中小企業庁長官新技術・新製品賞」贈賞の専門審査委員、東大和市商工会理事、等を歴任。

 著書「設計の故障解析51(CD-ROM付)」、「設計の基本仕様51(CD-ROM付)」、「設計のマネジメント101」、「設計者の心得と実務101」、「設計の経験則101」、「設計の凡ミス退治101」、「設計のムダ退治101」、「ハンドリング簡易自動化201」、「設計審査(DR=Design Review)支援ツール集・Ⅰ(事前審査編)」以上日刊工業新聞社から刊行。月刊「機械設計」誌へ長期連載等あり。「品質機能展開50事例(CD-ROM付)」、「MC選定資料マニアル」、熊谷卓氏と共著「組立・ハンドリング自動化実例図集」、以上新技術開発センターから刊行などが有る。

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先行技術調査では、先行メーカ動向と併せ新規参入見込みメーカ有無動向調査も義務付ける・事例(3-04)

iyoblog (3-04)「設計の働き方改革とDR(設計審査)の具体的取り組み法」設計力向上研究会(伊豫部将三)編

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事例編・第一部「DR組織および事前準備関連取り組み法」

iyoblog (3-04)・先行技術調査では、先行メーカ動向と併せ新規参入見込みメーカ有無動向調査も義務付ける

「現状と問題点」

 開発テーマを確定するための先行技術調査では、先行商品メーカが引続き次の商品改良・開発へ取組んでいる関連技術開発動向調査のみだけで無く、新しく参入を目指しているメーカにも注視して技術動向調査へ併行的に取組む事を薦めたい。

これは筆者の経験した受託業務の中にガス流量計測機器の新製品開発へ取組んでいる所から自分達が取組み中の製品が市場へ出る前に、機能・性能が良く且つ価格の安い新商品または製品が市場に出回る可能性を持つメーカーが技術開発へ取組んでいるか? どうか? を特許面から有り得るか? どうか? を調べて欲しいと依頼が有り取組んだ事がある。

筆者は報告書提出まで 6 ケ月の期間を貰い、10 年分の約一万件を超える特許調査から着手した。

その際 10 年以内には、調査結果と内容を外部公開しない約束で契約した。

最初に取組んだのは、季節(夏冬の気候寒暖温度差と外気の気圧変動差)に影響を受けない流量計にはどんな原理が存在するか? と、誰(メーカーと個人)が出願して競合メーカーと成り得る可能性が有るか? を、10 年分の出願特許から調査して報告する事である。

当初から関連する出願書類全文を取寄せ通読する事は、時間的・量的にも難しいので抄録(A4 版で3件分掲載された請求範囲の要約・代表する原理・機構の添付図・出願者名)を先ず知合い弁理士に頼んで取寄せ、整理・分類した。

この段階で関連有ると思われる出願を約 1000 件程度に絞込み、次に絞込んだ凡そ 1000 件分の全出願文を取寄せた。

ここでは、要求範囲全文と原理・機構添付図の中味を良く通読して約 200 件程度に絞込んだ。

更に次の段階では、200 件の全文を詳細に通読し、委託者が開発中製品の原理・機構と価格面で競合製品と成得るか? どうか? を、簡単にコスト試算・評価して可能性の高い出願を 50 件以内に絞込み報告書にまとめ提出した。

添付図 3-4 は、当時依頼者へ提出した報告書に添付した出願されている「ガス流量計の原理・機構抽出例」をまとめた参考図の一部分である。

「着眼点・分析と評価法」

 筆者は、前記経験を通し技術面で既存商品・製品市場へ事前の特許出願抜きで開発着手・上市するのは容易では無いと痛感した。

特許調査から判る事は、多くの企業が開発商品・製品を上市する前に、開発着手の早い段階から特許出願するのを当り前と心得て出願している実態がある。

 同じ様な案件調査を何回か引受けている内に、新規参入の積りで今までに無い独自の新商品・製品開発に取組んでいると思っていても、先行市場を持つ商品・製品メーカーが新規参入の形態で特許面から技術調査による他社動向へ注視している様子も手に取る様に判ったと言える。

 或る企業が新商品・製品を開発、上市前に念のため特徴技術を特許出願する。

するとあまり時を経ずに市場で競合している複数の同業者が周辺技術の異なる類似原理・機構の出願が一斉に行われる。

更に驚く事に、1年以内に多くの競合メーカーから機能を追加した低価格で一斉に同種の類似商品・製品が市場に溢れるのである。

業界に寄っては、半年以内に同じ事が起きる分野もある。

つまり一つの商品・製品分野に 10 社以上存在しながら競合している多くの日本市場では、現在創業者利益、開発者利益が 1 年程度しか得られない状態が起きている実態がある。

その意味で競合メーカー間に於ける技術調査では、開発品のライバルとなり得るメーカーや個人動向に常に注視が必要である。

「改善点と取組み実施法」

 第二次大戦直後エサキダイオードの開発でソニーが小型ラジオの商品化へ着手したら、周辺技術の多くを複数の先行する欧米企業に周辺特許を抑えられ苦労した話しは有名である。

ここで創業者利益、開発者利益を長く獲得・維持したいと望む場合には、基本特許を抑えるだけでなく、商品・製品化する場合の周辺技術を広く同時に申請し、同業者の後発割込みをできるだけ防ぐ手立てとしての技術調査と特許戦略を持つ必要がある。

ソニーは前の経験を活かしビデオ開発時の商品化では、基本特許だけでなく、周辺技術の特許を幅広く出願し他社からの新規割込みを抑えることで、開発後世界中の同業者から莫大な特許料収入を長年に渡り得たと言う元大賀社長が話した事は余りにも有名である。

 或る会社の先行開発した技術が、後発メーカーが新規市場参入しようとする際に周辺技術を幅広く特許で抑えられると、莫大な特許使用料を払わされる事を知る必要がある。

つまり開発品の基本特許と一緒に周辺技術(製造設備技術を含む)の動向調査にも併行した注視が必要である。

新商品開発に着手する際には、特許出願では、基本特許と周辺技術特許を幅広く一緒に併行出願する事が最も望ましい。

「実施による改善効果」

 ソニーのビデオ開発、その後のCD、ブルーレイ開発で見られる様に、競合製品とメーカーが多い日本では、同業の競合メーカーの類似品開発動向調査を特許出願面から注視する。

併せて他分野メーカーや個人の新規参入の可能性がある出願動向にも注視する。

筆者が個人の出願動向にも目を配れと言う意味は、現在では携帯電話にも着いているマイクロレンズによるカメラ機能とフラッシュ機能は、日本の某企業社長が有用な発明をできる人物は世の中にざらにはいないので、過去に世界中で有用な発明をした人物を探し、名前を特定し、その人物が引続きどんなテーマの開発に取組んで特許出願しているか? に着目し、時系列的に追跡し、次の商品開発テーマを先取りすることが可能と明かした事である。

その社長は、「写ルンです」で有名になった使い捨てカメラに着けたフラッシュランプ開発で大成功を納めた。

なお特許調査で誰かが一度目を通した文献については、一々出願文全文を読まずに理解できる様に誰にも判易くまとめて置くことが後々大切である。

図 3-4 へ、特許出願調査で見た「容積式流体流量計原理抽出事例(部分)」を参考までに示す。

図 3-4 ・「容積式流体流量計原理抽出事例(部分)」

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「引用文献」

・本稿は筆者(伊豫部将三)が執筆し、日刊工業新聞社月刊「機械設計」誌2017年3月号臨時増刊号へ投稿掲載した「設計の品質保証に必須のDR実施法 50 事例」部分へ今回ブログ掲載に当りタイトルを「設計の働き方改革とDRの具体的取り組み法」へ変更し、加筆し不備部は訂正した。

なお原本入手ご希望の方は、出版元(日刊工業新聞社・出版局)へお問い合わせを給わりたく、何分宜しくお願い申し上げます。

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「検索キーワード」

「市場ニーズ調査」 「先行技術調査」 「開発仕様書」 「要求機能」 「要求性能」 「要求特性」 「要求設計条件」 「目標寿命値」 「目標信頼度値」 「構想図」 「原理選択」 「方式選択」 「構造選択」 「材料選択」 「表面処理選択」「熱処理選択」「工作選択」 「形状選択」 「組合せ選択」 「締結法選択」 「結合法選択」 「動作制御法選択」 「回転・摺動部・間隙部・潤滑法選択」 「疲れ強さ設定」 「振動・衝撃強さ設定」 「耐食性設定」 「摩擦・摩耗強さ設定」 「揺動・ねじれ強さ設定」 「熱衝撃強さ設定」 「切欠き効果劣化防止法」「穴明き効果劣化防止法」 「溝付き効果劣化防止法」 「段付き効果劣化防止法」 「落雷・高圧サージ電圧損傷防止法」 「水滴付着絶縁劣化防止法」 「静電気放電発火・引火防止法」 「電磁ノイズ誘導誤作動防止法」 「過負荷発熱焼損防止法」 「ワイヤ断線防止法」 「膨張収縮半田剝離防止法」 「検証試験実施法基準」 「試験サンプル数基準」 「部品加工基準」 「部品測定基準」 「設計・試験工数見積り法基準」「日程計画法基準」 「コスト見積り実施法基準」 「耐久試験実施法基準」 「破壊・損傷試験実施法基準」 「基本仕様作成法基準」 「寿命試験実施法基準」 「信頼度確認試験実施法基準」 「故障予測実施法基準」 「工程能力指数達成法基準」 「客先クレーム措置法基準」 「苦情処理回答実施法基準」 「市場モニタリング実施法基準」 「耐圧試験実施法基準」 「機密漏洩試験実施法基準」 「プログラムデバック試験実施法基準」 他、などがある。

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「全体目次」

「総論 」

iyoblog (3-0-1)・(はじめに) 設計の品質保証を左右するDR(Design Review = 設計審査)

「解説」

iyoblog (3-0-2)・第1章・DR-0(商品開発企画の仕様書と構想図作成段階)の取組み法と現状実態

iyoblog (3-0-3)・第2章・DR-1(開発試作品設計・検証および基本設計段階)の取組み法と現状実態

iyoblog (3-0-4)・第3章・DR-2(詳細組立図と部品設計・出図図書作成段階)の取組み法と現状実態

事例編・第一部「DR組織および事前準備関連取り組み法」

iyoblog (3-01)・市場クレームの手戻り予防では、DRの主要目的を点検会から事前指導会へ重点を転換する

iyoblog (3-02)・客先指摘仕様洩れ手戻り予防では、基本仕様項目の主要部はDR会が作成する

iyoblog (3-03)・事前市場ニーズ調査では、先行競合品と併せ、新規見込み購買層調査も義務付ける

iyoblog (3-04)・先行技術調査では、先行メーカー動向と併せ、新規参入見込みメーカー有無動向調査も義務付ける

iyoblog (3-05)・開発仕様書の要求機能設定では、市場ニーズ調査から従来品に無い特徴機能設定を義務付ける

iyoblog (3-06)・開発品の要求性能設定では、市場ニーズ調査から従来品に無い特徴性能設定を義務付ける

iyoblog (3-07)・開発品の要求特性設定では、従来品に無い特徴特性設定を義務付ける

iyoblog (3-08)・要求設計条件設定では、従来品に無い寿命値設定を義務付ける

iyoblog (3-09)・要求設計条件設定では、従来品に無い信頼度値設定を義務付ける

iyoblog (3-10)・開発品の構想図作成では、従来品に無い原理・方式・構造選択を義務付ける

事例編・第二部「DR-0 ・商品企画・関連仕様作成取り組み法」

iyoblog (3-11)・開発仕様書と構想図作成段階で確認すべき項目

iyoblog (3-12)・開発仕様書案で確認すべき項目

iyoblog (3-13)・構想図案で確認すべき項目

iyoblog (3-14)・メカ系構想設計部位案で確認すべき項目

iyoblog (3-15)・制御・実装系構想設計部位案で確認すべき項目

iyoblog (3-16)・計測器系構想設計部位案で確認すべき項目

iyoblog (3-17)・メカ系構想設計部位案で検証前に確認すべき項目

iyoblog (3-18)・制御・実装系構想設計部位案で検証前に確認すべき項目

iyoblog (3-19)・計測器系構想設計部位案で検証前に確認すべき項目

iyoblog (3-20)・構想設計案作成図書で確認すべき項目

「事例編・第三部・DR-1(1) ・ 商品企画・関連仕様作成実施取り組み法」

iyoblog (3-21)・試作品設計段階で事前確認すべき項目

iyoblog (3-22)・メカ系部位試作品設計案で事前確認すべき項目

iyoblog (3-23)・制御・実装系部位試作品設計案で事前確認すべき項目

iyoblog (3-24)・計測器系部位試作品設計案で事前確認すべき項目

iyoblog (3-25)・メカ系部位試作品案の検証で事前確認すべき項目

iyoblog (3-26)・制御・実装系部位試作品案の検証前に確認すべき項目

iyoblog (3-27)・計測器系部位試作品案の検証前に確認すべき項目

iyoblog (3-28)・メカ系部位試作品案の検証結果評価法で事前確認すべき項目

iyoblog (3-29)・制御・実装系部位試作品案の検証結果評価法で確認すべき項目

iyoblog (3-30)・計測器系部位試作品案の検証結果評価法で確認すべき項目

「事例編・第四部・DR-1(2) ・ 基本設計着手時の不具合予防取り組み法」

iyoblog (3-31)・基本設計で開発品と既存品組合せ部位の確認項目

iyoblog (3-32)・基本設計で環境条件の確認項目・その1

iyoblog (3-33)・基本設計で環境条件の確認項目・その2

iyoblog (3-34)・基本設計で環境条件の確認項目・その3

iyoblog (3-35)・基本設計で鉄系材料使用部位の確認項目・その1

iyoblog (3-36)・基本設計で鉄系材料使用部位の確認項目・その2

iyoblog (3-37)・基本設計で非鉄系材料使用部位の確認項目・その1

iyoblog (3-38)・基本設計で非鉄系材料使用部位の確認項目・その2

iyoblog (3-39)・基本設計で非金属系材料使用部位の確認項目・その1

iyoblog (3-40)・基本設計で非金属系材料使用部位の確認項目・その2

「事例編・第五部・DR-2 ・ 詳細設計着手時の不具合予防取り組み法」

iyoblog (3-41)・詳細設計で炭素鋼熱処理部品の確認項目

iyoblog (3-42)・詳細設計で部品形状の確認項目

iyoblog (3-43)・詳細設計で衝撃強さ確保の確認項目

iyoblog (3-44)・詳細設計で摩耗強さ確保の確認項目

iyoblog (3-45)・詳細設計でねじ締結部の確認項目

iyoblog (3-46)・詳細設計で部品素材選択の確認項目

iyoblog (3-47)・詳細設計でステンレス鋼選択の確認項目

iyoblog (3-48)・詳細設計で深絞り品置き割れ防止の確認項目

iyoblog (3-49)・詳細設計で溶接品質確保の確認項目

iyoblog (3-50)・詳細設計で異種金属接触による腐食防止の確認項目

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「筆者略歴」

 1957年4月~1974年3月の17年間・富士重工業㈱(注・現社名スバル)三鷹製作所(現・群馬県大泉町へ移転)生産技術部門に勤務。乗用車用エンジン・ミッション製造の工場自動化機器・専用機設計業務へ従事。1974年技術士(機械部門・第7916号)登録、伊豫部技術士事務所を開設。開発・設計および生産技術部門の技術コンサルタントとして現在に至る。この間、上場および中堅企業100社以上で社員教育や業務改善支援業務に従事。現在までに、社団法人日本技術士会理事、りそな中小企業振興財団「中小企業庁長官新技術・新製品賞」贈賞の専門審査委員、東大和市商工会理事、等を歴任。

 著書「設計の故障解析51(CD-ROM付)」、「設計の基本仕様51(CD-ROM付)」、「設計のマネジメント101」、「設計者の心得と実務101」、「設計の経験則101」、「設計の凡ミス退治101」、「設計のムダ退治101」、「ハンドリング簡易自動化201」、「設計審査(DR=Design Review)支援ツール集・Ⅰ(事前審査編)」以上日刊工業新聞社から刊行。月刊「機械設計」誌へ長期連載等あり。「品質機能展開50事例(CD-ROM付)」、「MC選定資料マニアル」、熊谷卓氏と共著「組立・ハンドリング自動化実例図集」、以上新技術開発センターから刊行などが有る。

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事前市場ニーズ調査では、先行競合品メーカ動向と新規見込みユーザ調査も義務付ける・事例(3-03)

iyoblog (3-03)「設計の働き方改革とDR(設計審査)の具体的取り組み法」設計力向上研究会(伊豫部将三)編

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事例編・第一部「DR組織および事前準備関連取り組み法」

iyoblog (3-03)・事前市場ニーズ調査では、先行競合品メーカ動向と併せ新規見込みユーザ調査も義務付ける

「現状と問題点」

 新商品・製品開発では、先行メーカおよび先行商品・製品が既に存在し、将来の市場拡大が見込める場合に新規参入する目的で行う場合と、他社に無い独自技術から考え出した今まで市場に存在し無い新しい生活様式を提案する形で、ニーズを創り出す形態の新商品開発がある。

 既存市場へ新規参入する例では、パソコンの端末・付属機器に当たる個人向けプリンタ分野では、現在も盛んに新規参入の試みが現実に行われている。

ここで問題は、一般的に多い参入形態が先行メーカー商品・製品より機能を拡充・追加しながらプライス(販売価格)をより安く設定する事で新規参入を成功させようと努力する取組み法がある。

前記過程で筆者が遭遇した中に製造原価が目標販売価格を上回る開発途中段階で経営者が短期間に一定の市場占有率を確保・維持した上で長期的には持続して売上と利益を出せると判断、上市(新商品を市場へ売出す事)を決断し、販売開始後1年で技術的欠陥から全商品回収・交換が必要になり凡そ 100 億円の損害を出すに至った某中堅企業がある。

そこから開発段階から利益が出る取組み法の社員教育支援依頼を受けた事例がある。

このケースの場合に市場ニーズの読みで有る目標数量を短期間に市場で売上げた実績から機能と価格設定に間違いはなかった。

しかし上市前開発品の技術検証に不備が有りこれを事前に見抜けなかった事が、経営判断上の致命傷となった。

幸い内部留保資金を十分保持していたので、この企業は倒産には至らなかった。

今まで市場に先行商品として存在し無いが、提案する形で新しいニーズを創り出す形態の新商品開発する取組み法では、電卓(電気卓上計算器)が最初に上市された時、機能と価格設定を異分野先行商品であるカメラに当て嵌め置換え市場ニーズの拡大予測を行い成功した事例は余りにも有名である。

この分野ではその企業が今日も引続いて拡大している実態例から見ると、勿論開発時に商品回収が伴う技術的欠陥とクレーム発生が殆どなかった事が幸いしたと言える。

「着眼点・分析と評価法」

 既存市場へ新規参入する例では、市場ニーズが商品の機能と価格設定で拡大が見込める場合と、市場の拡大は見込めないが末端ユーザーが既存メーカーの商品機能と価格に不満が有り、新しいコンセプト設定による機能と価格で置換え需要掘起しの形で参入を果たせる場合がある。

一般消費者・個人向けパソコン付属機器のプリンタ分野では、現在でも本件がまだ該当する状態に有ると思われる。

また市場の拡大は見込めないがユーザーが既存先行メーカーの商品機能と価格設定上に不満が有り、新しいコンセプト設定による機能と価格の置換え需要で参入を果たす場合では、現在市場に出回っている既存の価格が高い大型家電商品類は殆どが対象と成り得る可能性がある。

一般消費者・個人向け商品では、中国・東南アジアの価格が安い発展途上国製の電化製品類、家具日用品類、衣類・雑貨品類、等置換え得る例を上げると暇がない。

只寿命と信頼度等の品質面でまだ日本が一部の機械・電機製品面で若干先行している様に見えるが、果たして何処まで持ち堪えられるか? 心配でならない状態と言える。

「改善点と取組み実施法」

 既存市場へ新規参入する例では、下駄が靴へ、番傘が洋傘へ、和式が洋式トイレへ、和服が洋服へ、それぞれ置換って来たのは、多世代多人数世帯の生活様式から少人数個人中心世帯の生活様式へ時代が大きく変化している流れで、個体重視に因るコンセプトの変化と捉える必要がある。

筆者がここで強調したい事は、市場ニーズは絶えず大きな流れで変化している事を見逃さない様に、開発着手前の市場ニーズ調査に当っては、既存商品・製品に対しエンドユーザーが持つ不満をキチンと事前にモニター面談とアンケートを中心とする調査・把握の必要がある。

筆者は発展途上国側から見ると、日本市場は多くの既存商品・製品分野で現状非常に参入し易い状態に置かれている様に思える。

既存市場へ新規参入する商品開発例では、単純に既存品の機能をそのままに途上国で造る事で価格面を国内競合メーカー品より安く設定して置換え需要を図り国内シェアを高める事が目標にするニーズ調査でなく、新しいコンセプト設定による新規の需要層を掘起すニーズ調査にも重点を置く取組みが望まれる。

新規の需要層を掘起すニーズ調査とは、既存商品にはなかったコンセプトを付加する事である。

電動アシスト自転車は、その代表的な一例と言える。

今まで体力弱者の高齢者層・病弱者層・低年齢者層には、長い坂道を自転車で登るには耐えられなかった。

これを安易に使える様に代えた。そのため平地が少なく山間地が多い日本では、需要層が飛躍的且つ急速に拡大中である。

「実施による改善効果」

 ここで既存市場へ新規参入する場合の市場ニーズ調査では、新しいコンセプト設定による先行商品に無い新機能付加と付加価値の高い価格設定で参入を果たす考え方で、既存品との置換えユーザーを対象とするだけでなく、既存商品に無い新しい市場ニーズを開拓する考え方で既存ユーザー以外を販売対象とする調査に当たる事が望ましい。

 そのためのコンセプトの一つとして、65 歳以上の高齢者層が今年度中に全人口の凡そ四分の一(2014年国勢調査時点で老年人口は26.0%、3000万人を超える)を占めるに至ったと厚生労働省が人口動態統計調査(2016年度9月版)で発表している。

また同時に百歳以上の高齢者数が、三万六千人を超えたと発表があった。

これらの人達は、自分達に合った新しいニーズ市場を創り出すと考える必要がある。

従ってこれらに応える新商品開発が望まれる。

同じ傾向は、日本だけでなく、先進国も、また中国などの発展途上国でも問題視されている。

個人単位の家庭内の日常生活で必要時に安くて簡易に使える歩行困難者向けの介護者支援を必要としないロボットや生活支援ロボットがニーズとして普及が脚光を浴びる事は容易に想像が可能である。

図「厚生労働省・人口動態統計調査・2020年推計人口ピラミッド表より抜粋」-1
図 「厚生労働省・人口動態統計調査・2030年推計人口ピラミッド表より抜粋」-2

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「引用文献」

・本稿は筆者(伊豫部将三)が執筆し、日刊工業新聞社月刊「機械設計」誌2017年3月号臨時増刊号へ投稿掲載した「設計の品質保証に必須のDR実施法 50 事例」部分へ今回ブログ掲載に当りタイトルを「設計の働き方改革とDRの具体的取り組み法」へ変更し、加筆し不備部は訂正した。

なお原本入手ご希望の方は、出版元(日刊工業新聞社・出版局)へお問い合わせを給わりたく、何分宜しくお願い申し上げます。

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「検索キーワード」

「市場ニーズ調査」 「先行技術調査」 「開発仕様書」 「要求機能」 「要求性能」 「要求特性」 「要求設計条件」 「目標寿命値」 「目標信頼度値」 「構想図」 「原理選択」 「方式選択」 「構造選択」 「材料選択」 「表面処理選択」「熱処理選択」「工作選択」 「形状選択」 「組合せ選択」 「締結法選択」 「結合法選択」 「動作制御法選択」 「回転・摺動部・間隙部・潤滑法選択」 「疲れ強さ設定」 「振動・衝撃強さ設定」 「耐食性設定」 「摩擦・摩耗強さ設定」 「揺動・ねじれ強さ設定」 「熱衝撃強さ設定」 「切欠き効果劣化防止法」「穴明き効果劣化防止法」 「溝付き効果劣化防止法」 「段付き効果劣化防止法」 「落雷・高圧サージ電圧損傷防止法」 「水滴付着絶縁劣化防止法」 「静電気放電発火・引火防止法」 「電磁ノイズ誘導誤作動防止法」 「過負荷発熱焼損防止法」 「ワイヤ断線防止法」 「膨張収縮半田剝離防止法」 「検証試験実施法基準」 「試験サンプル数基準」 「部品加工基準」 「部品測定基準」 「設計・試験工数見積り法基準」「日程計画法基準」 「コスト見積り実施法基準」 「耐久試験実施法基準」 「破壊・損傷試験実施法基準」 「基本仕様作成法基準」 「寿命試験実施法基準」 「信頼度確認試験実施法基準」 「故障予測実施法基準」 「工程能力指数達成法基準」 「客先クレーム措置法基準」 「苦情処理回答実施法基準」 「市場モニタリング実施法基準」 「耐圧試験実施法基準」 「機密漏洩試験実施法基準」 「プログラムデバック試験実施法基準」 他、などがある。

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「全体目次」

「総論 」

iyoblog (3-0-1)・(はじめに) 設計の品質保証を左右するDR(Design Review = 設計審査)

「解説」

iyoblog (3-0-2)・第1章・DR-0(商品開発企画の仕様書と構想図作成段階)の取組み法と現状実態

iyoblog (3-0-3)・第2章・DR-1(開発試作品設計・検証および基本設計段階)の取組み法と現状実態

iyoblog (3-0-4)・第3章・DR-2(詳細組立図と部品設計・出図図書作成段階)の取組み法と現状実態

事例編・第一部「DR組織および事前準備関連取り組み法」

iyoblog (3-01)・市場クレームの手戻り予防では、DRの主要目的を点検会から事前指導会へ重点を転換する

iyoblog (3-02)・客先指摘仕様洩れ手戻り予防では、基本仕様項目の主要部はDR会が作成する

iyoblog (3-03)・事前市場ニーズ調査では、先行競合品と併せ、新規見込み購買層調査も義務付ける

iyoblog (3-04)・先行技術調査では、先行メーカー動向と併せ、新規参入見込みメーカー有無動向調査も義務付ける

iyoblog (3-05)・開発仕様書の要求機能設定では、市場ニーズ調査から従来品に無い特徴機能設定を義務付ける

iyoblog (3-06)・開発品の要求性能設定では、市場ニーズ調査から従来品に無い特徴性能設定を義務付ける

iyoblog (3-07)・開発品の要求特性設定では、従来品に無い特徴特性設定を義務付ける

iyoblog (3-08)・要求設計条件設定では、従来品に無い寿命値設定を義務付ける

iyoblog (3-09)・要求設計条件設定では、従来品に無い信頼度値設定を義務付ける

iyoblog (3-10)・開発品の構想図作成では、従来品に無い原理・方式・構造選択を義務付ける

事例編・第二部「DR-0 ・商品企画・関連仕様作成取り組み法」

iyoblog (3-11)・開発仕様書と構想図作成段階で確認すべき項目

iyoblog (3-12)・開発仕様書案で確認すべき項目

iyoblog (3-13)・構想図案で確認すべき項目

iyoblog (3-14)・メカ系構想設計部位案で確認すべき項目

iyoblog (3-15)・制御・実装系構想設計部位案で確認すべき項目

iyoblog (3-16)・計測器系構想設計部位案で確認すべき項目

iyoblog (3-17)・メカ系構想設計部位案で検証前に確認すべき項目

iyoblog (3-18)・制御・実装系構想設計部位案で検証前に確認すべき項目

iyoblog (3-19)・計測器系構想設計部位案で検証前に確認すべき項目

iyoblog (3-20)・構想設計案作成図書で確認すべき項目

「事例編・第三部・DR-1(1) ・ 商品企画・関連仕様作成実施取り組み法」

iyoblog (3-21)・試作品設計段階で事前確認すべき項目

iyoblog (3-22)・メカ系部位試作品設計案で事前確認すべき項目

iyoblog (3-23)・制御・実装系部位試作品設計案で事前確認すべき項目

iyoblog (3-24)・計測器系部位試作品設計案で事前確認すべき項目

iyoblog (3-25)・メカ系部位試作品案の検証で事前確認すべき項目

iyoblog (3-26)・制御・実装系部位試作品案の検証前に確認すべき項目

iyoblog (3-27)・計測器系部位試作品案の検証前に確認すべき項目

iyoblog (3-28)・メカ系部位試作品案の検証結果評価法で事前確認すべき項目

iyoblog (3-29)・制御・実装系部位試作品案の検証結果評価法で確認すべき項目

iyoblog (3-30)・計測器系部位試作品案の検証結果評価法で確認すべき項目

「事例編・第四部・DR-1(2) ・ 基本設計着手時の不具合予防取り組み法」

iyoblog (3-31)・基本設計で開発品と既存品組合せ部位の確認項目

iyoblog (3-32)・基本設計で環境条件の確認項目・その1

iyoblog (3-33)・基本設計で環境条件の確認項目・その2

iyoblog (3-34)・基本設計で環境条件の確認項目・その3

iyoblog (3-35)・基本設計で鉄系材料使用部位の確認項目・その1

iyoblog (3-36)・基本設計で鉄系材料使用部位の確認項目・その2

iyoblog (3-37)・基本設計で非鉄系材料使用部位の確認項目・その1

iyoblog (3-38)・基本設計で非鉄系材料使用部位の確認項目・その2

iyoblog (3-39)・基本設計で非金属系材料使用部位の確認項目・その1

iyoblog (3-40)・基本設計で非金属系材料使用部位の確認項目・その2

「事例編・第五部・DR-2 ・ 詳細設計着手時の不具合予防取り組み法」

iyoblog (3-41)・詳細設計で炭素鋼熱処理部品の確認項目

iyoblog (3-42)・詳細設計で部品形状の確認項目

iyoblog (3-43)・詳細設計で衝撃強さ確保の確認項目

iyoblog (3-44)・詳細設計で摩耗強さ確保の確認項目

iyoblog (3-45)・詳細設計でねじ締結部の確認項目

iyoblog (3-46)・詳細設計で部品素材選択の確認項目

iyoblog (3-47)・詳細設計でステンレス鋼選択の確認項目

iyoblog (3-48)・詳細設計で深絞り品置き割れ防止の確認項目

iyoblog (3-49)・詳細設計で溶接品質確保の確認項目

iyoblog (3-50)・詳細設計で異種金属接触による腐食防止の確認項目

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「筆者略歴」

 1957年4月~1974年3月の17年間・富士重工業㈱(注・現社名スバル)三鷹製作所(現・群馬県大泉町へ移転)生産技術部門に勤務。乗用車用エンジン・ミッション製造の工場自動化機器・専用機設計業務へ従事。1974年技術士(機械部門・第7916号)登録、伊豫部技術士事務所を開設。開発・設計および生産技術部門の技術コンサルタントとして現在に至る。この間、上場および中堅企業100社以上で社員教育や業務改善支援業務に従事。現在までに、社団法人日本技術士会理事、りそな中小企業振興財団「中小企業庁長官新技術・新製品賞」贈賞の専門審査委員、東大和市商工会理事、等を歴任。

 著書「設計の故障解析51(CD-ROM付)」、「設計の基本仕様51(CD-ROM付)」、「設計のマネジメント101」、「設計者の心得と実務101」、「設計の経験則101」、「設計の凡ミス退治101」、「設計のムダ退治101」、「ハンドリング簡易自動化201」、「設計審査(DR=Design Review)支援ツール集・Ⅰ(事前審査編)」以上日刊工業新聞社から刊行。月刊「機械設計」誌へ長期連載等あり。「品質機能展開50事例(CD-ROM付)」、「MC選定資料マニアル」、熊谷卓氏と共著「組立・ハンドリング自動化実例図集」、以上新技術開発センターから刊行などが有る。

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客先指摘仕様洩れ手戻り予防では、基本仕様の主要項目部はDR会で作成する・事例(3-02)

iyoblog (3-02)「設計の働き方改革とDR(設計審査)の具体的取り組み法」設計力向上研究会(伊豫部将三)編

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事例編・第一部「DR組織および事前準備関連取り組み法」

iyoblog (3-02)・客先指摘仕様洩れ手戻り予防では、基本仕様の主要項目部はDR会で作成する

「現状と問題点」

 受注製品完成引渡し前の客先立会い仮検収試運転時に、客先から仕様洩れ指摘による手戻り・後処理発生予防では、仕様書主要項目の作成をDR会で行う事が大切である。

 客先が受入仕様である要求機能、性能、特性、設計条件項目等の引合い時打合せでは、客先が事細かに全ての要求項目を提示して呉れない場合も多い。

これには、「専門メーカーなら話さなくても当然造り込みを実施して呉れる筈」と想っている機能項目も多い理由がある。

特に製品を特長付ける固有・特有機能を除く、共通・共有機能の

①安全・安心機能、

②快適・便利機能、

③耐久機能、

④保守・保全機能、

⑤保安・いたずら防御機能、

⑥環境保護・省エネ機能および、

⑦納品時のオペレータ事前訓練及び、

⑧設置・据付方法面等に関しては、打合せ時に十分な注意と仕様項目抽出上の洩れを出さない細心の注意が特に必要である。

 これには客先との受注仕様打合せ前にDR会の指導の許で丁寧・詳細に作成した標準仕様書案を準備の上で、客先へ事前送付または持参して、完成した後の立会い時に追加仕様項目の発生や仕様洩れ指摘を受けずに済む取組みが大切である。

そのためには、受注仕様打合せおよび開発用の標準仕様書案作成では、原則DR会で行う事を是非お薦めしたい。

特に新規開発が伴い実機検証を事前に必要とする場合には、検証・試験方法・評価条件を含め達成すべき目標寿命数値と信頼度値等の要求設計条件まで明確に検収条件へ設定の上で取組む事が望ましい。

これらが日頃から習慣的にキチンと行われていないと、客先立会い時に仕様洩れ指摘の形で準備不足結果が着け払いとして発覚する。

「着眼点・分析と評価法」

 仕様洩れ指摘の中でも特に安全・安心機能面に於ける仕様洩れ指摘は致命的で、小手先の改造で済まない設計遣り直しに至る場合も発生する。

近年ヨーロッパ(EU圏内)向け機械装置設備類では、簡単なカバーで覆うベルトやチェン剝出しの増・減速装置取付けは受取りを拒絶され、素人では簡単に取外しできない頑丈なケースで囲う内臓型ギァ装置へ交換を要求されている。

これは難民移住者の中に、わざとカバー類を取外し手・足を無理遣り挿入、怪我で賠償を請求する事例発生の報道が出た事による。

そのため絶対安全の考え方が要求される状態が広い範囲で定着しつつある。

また国内でも機械装置動作部に設置した金網カバーの目粗さと変形し易さが問題となり、工場見学に来た子供達の手・指が入らない目の大きさと寄り掛っても簡単に変形しない頑丈な構造のカバーへ取替えを要求された事例へ筆者が遭遇した経験も有る。

 耐久機能面では、装置構成機器部品個々の保証可能な寿命時間数値、寿命年数経過後の信頼度数値、故障前兆候の内容と特徴を事細かに仕様書上で表示義務付けを要望する客先も広がる現実がある。

これらは、担当者へそのまま開発・設計時の達成すべき要求設計条件の達成目標数値となり、実機または試作品による裏付け検証試験実施を義務付ける結果となる。

また客先には、予期せぬ不意の故障停止によるクレーム発生予防の有力な手段となる。

保守・保全機能面では、予期せぬ突然の地震や風水害による被災でメーカーが短期間に客先対応できない場合に、現地オペレータでも日常周囲に有る工具で簡単に機能回復対策可能な措置方法を取扱説明書上に分り易く明記義務付けが仕様書へ記載が望まれる。

 保安機能面では、操作・制御面でパソコンが多用されて久しいが、外部電話回線等から不法侵入による故意の妨害・破壊行為で機器暴走や制御不能となる事は、絶対に避け得る様に仕様設定上の注意記載が必要である。

 環境保護・省エネ機能面では、捨てられない材料の使用禁止とできるだけ省エネとなる動力の入出力効率の選択を仕様設定面で明記義務付けが望ましい。

「改善点と取組み実施法」

 開発仕様書の作成では、先ず機能系統図の形式で要求機能に洩れが無い様に客先で考え得る項目全てを最低三次機能まで抽出する。(総論添付図 3-4 「自転車の機能系統図例(部分)」参照)

「固有・特有機能」では、対象となる商品・製品でしか持ち得ない特徴的な機能を言う。

総論添付図 3-4「自転車の機能系統図例」では、

一次機能の走行機能、搭載機能、

二次機能の操舵機能、駆動機能、制動機能、走行安定性機能、人員搭載機能、荷物搭載機能、

三次機能の方向操作機能、操作力機能、搭乗者年齢配慮機能、登坂機能、加速機能、搭乗者年齢配慮機能、停止機能、短距離停止機能、横滑り防止機能、保持機能、転倒防止機能、安定性確保機能、疲労防止機能、走行中の乗り心地機能、サドルの感触機能、耐重量機能、荷物保持機能、荷物固定機能、小物入れ機能、等の部分を言う。

「共通・共有機能」では、どんな商品・製品(形ある材料で造られる商品・製品のみだけで無く、コンピュータのソフト、サービス業の接客法でも必要な機能項目)にも共通して必要となる

① 安全・安心機能、

② 快適・便利機能、

③ 耐久機能、

④ 保守・保全機能、

⑤ 保安機能、

⑥ 環境保護・省エネ・その他の機能面の六項目である。

ここで ① 安全・安心機能とは、走行時、停止時、転倒・衝突時、修理・点検時、他の人体接触時の安全確保を言う。

② 快適・便利機能とは、歩くより早く移動できる、重い荷物を楽に運べる、子供や高齢者でも楽に扱える、等を言う。

③ 耐久機能とは、適切に保全・保守すれば風雨や雪等に晒され続けても10年以上の長期間に渡って使用できる、等を言う。

④ 保守・保全機能とは、パンクしても自分で簡単に修理できる、泥などが付着しても簡単に水で洗い流せる、等を言う。

⑤保安機能とは、いたずらで素人では簡単には壊されない、等を言う。

⑥ 環境保護・省エネ機能とは、維持に余り費用を掛けずに済む。メンテナンスフリーである。使い古したら捨てられる、または捨てたい場合に業者が引取って呉れる、等を言う。

「実施による改善効果」

機能系統図へ先ず客先が求めている要求機能を一次機能、二次機能、三次機能として抽出する。

これだけで足りないと思う場合には、補助・副次機能として四次機能、五次機能と順次項目を追加し更に分解の上で抽出・追記する。

また仕様書としてまとめるには、抽出した機能項目のそれぞれへ開発品が持つべき要求性能、特性、設計条件を達成すべき目標数値(例えば、①無償保証期間寿命値、②耐久寿命値、③PL法で要求する安全寿命期間値と前記の期経過毎で確保すべき信頼度値、等)を設定する。

仮検収立会い時に客先から仕様洩れ指摘を予防するには、類似先行商品・製品の開発・設計時に標準基本仕様書を日頃からまとめて置くことが大切で、以前客先から指摘された事項を全て仕様書へ記載して完成させて置く事を薦めたい。

その事で立会い時の追加工事発生の客先指摘を予防できれば、手戻り・後処理時間の 8 %( 100 人規模の技術部門なら年間4,800 時間相当 = 仮に技術部門人員 1 人当り年売上が 1 億円で 2000 時間勤務とすれば、5 万円 / H × 4800 H = 2 億 4 千万円相当の売上げ増加分 )が節約、予防対象となる効果が期待できる。

また客先指摘による仕様洩れでは、追加の材料・部品購入費用と製作・組立工数などが発生する。

一般的には、まだ出荷前のため製造仕損で処理される可能性があるが、設計責任の範囲に組込まれ内部処理される場合が多い。

この費用の節約・予防(製造仕損費の10%程度を占める)効果も大きい。

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「引用文献」

・本稿は筆者(伊豫部将三)が執筆し、日刊工業新聞社月刊「機械設計」誌2017年3月号臨時増刊号へ投稿掲載した「設計の品質保証に必須のDR実施法 50 事例」部分へ今回ブログ掲載に当りタイトルを「設計の働き方改革とDRの具体的取り組み法」へ変更し、加筆し不備部は訂正した。

なお原本入手ご希望の方は、出版元(日刊工業新聞社・出版局)へお問い合わせを給わりたく、何分宜しくお願い申し上げます。

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「検索キーワード」

「市場ニーズ調査」 「先行技術調査」 「開発仕様書」 「要求機能」 「要求性能」 「要求特性」 「要求設計条件」 「目標寿命値」 「目標信頼度値」 「構想図」 「原理選択」 「方式選択」 「構造選択」 「材料選択」 「表面処理選択」「熱処理選択」「工作選択」 「形状選択」 「組合せ選択」 「締結法選択」 「結合法選択」 「動作制御法選択」 「回転・摺動部・間隙部・潤滑法選択」 「疲れ強さ設定」 「振動・衝撃強さ設定」 「耐食性設定」 「摩擦・摩耗強さ設定」 「揺動・ねじれ強さ設定」 「熱衝撃強さ設定」 「切欠き効果劣化防止法」「穴明き効果劣化防止法」 「溝付き効果劣化防止法」 「段付き効果劣化防止法」 「落雷・高圧サージ電圧損傷防止法」 「水滴付着絶縁劣化防止法」 「静電気放電発火・引火防止法」 「電磁ノイズ誘導誤作動防止法」 「過負荷発熱焼損防止法」 「ワイヤ断線防止法」 「膨張収縮半田剝離防止法」 「検証試験実施法基準」 「試験サンプル数基準」 「部品加工基準」 「部品測定基準」 「設計・試験工数見積り法基準」「日程計画法基準」 「コスト見積り実施法基準」 「耐久試験実施法基準」 「破壊・損傷試験実施法基準」 「基本仕様作成法基準」 「寿命試験実施法基準」 「信頼度確認試験実施法基準」 「故障予測実施法基準」 「工程能力指数達成法基準」 「客先クレーム措置法基準」 「苦情処理回答実施法基準」 「市場モニタリング実施法基準」 「耐圧試験実施法基準」 「機密漏洩試験実施法基準」 「プログラムデバック試験実施法基準」 他、などがある。

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「全体目次」

「総論 」

iyoblog (3-0-1)・(はじめに) 設計の品質保証を左右するDR(Design Review = 設計審査)

「解説」

iyoblog (3-0-2)・第1章・DR-0(商品開発企画の仕様書と構想図作成段階)の取組み法と現状実態

iyoblog (3-0-3)・第2章・DR-1(開発試作品設計・検証および基本設計段階)の取組み法と現状実態

iyoblog (3-0-4)・第3章・DR-2(詳細組立図と部品設計・出図図書作成段階)の取組み法と現状実態

事例編・第一部「DR組織および事前準備関連取り組み法」

iyoblog (3-01)・市場クレームの手戻り予防では、DRの主要目的を点検会から事前指導会へ重点を転換する

iyoblog (3-02)・客先指摘仕様洩れ手戻り予防では、基本仕様項目の主要部はDR会が作成する

iyoblog (3-03)・事前市場ニーズ調査では、先行競合品と併せ、新規見込み購買層調査も義務付ける

iyoblog (3-04)・先行技術調査では、先行メーカー動向と併せ、新規参入見込みメーカー有無動向調査も義務付ける

iyoblog (3-05)・開発仕様書の要求機能設定では、市場ニーズ調査から従来品に無い特徴機能設定を義務付ける

iyoblog (3-06)・開発品の要求性能設定では、市場ニーズ調査から従来品に無い特徴性能設定を義務付ける

iyoblog (3-07)・開発品の要求特性設定では、従来品に無い特徴特性設定を義務付ける

iyoblog (3-08)・要求設計条件設定では、従来品に無い寿命値設定を義務付ける

iyoblog (3-09)・要求設計条件設定では、従来品に無い信頼度値設定を義務付ける

iyoblog (3-10)・開発品の構想図作成では、従来品に無い原理・方式・構造選択を義務付ける

事例編・第二部「DR-0 ・商品企画・関連仕様作成取り組み法」

iyoblog (3-11)・開発仕様書と構想図作成段階で確認すべき項目

iyoblog (3-12)・開発仕様書案で確認すべき項目

iyoblog (3-13)・構想図案で確認すべき項目

iyoblog (3-14)・メカ系構想設計部位案で確認すべき項目

iyoblog (3-15)・制御・実装系構想設計部位案で確認すべき項目

iyoblog (3-16)・計測器系構想設計部位案で確認すべき項目

iyoblog (3-17)・メカ系構想設計部位案で検証前に確認すべき項目

iyoblog (3-18)・制御・実装系構想設計部位案で検証前に確認すべき項目

iyoblog (3-19)・計測器系構想設計部位案で検証前に確認すべき項目

iyoblog (3-20)・構想設計案作成図書で確認すべき項目

「事例編・第三部・DR-1(1) ・ 商品企画・関連仕様作成実施取り組み法」

iyoblog (3-21)・試作品設計段階で事前確認すべき項目

iyoblog (3-22)・メカ系部位試作品設計案で事前確認すべき項目

iyoblog (3-23)・制御・実装系部位試作品設計案で事前確認すべき項目

iyoblog (3-24)・計測器系部位試作品設計案で事前確認すべき項目

iyoblog (3-25)・メカ系部位試作品案の検証で事前確認すべき項目

iyoblog (3-26)・制御・実装系部位試作品案の検証前に確認すべき項目

iyoblog (3-27)・計測器系部位試作品案の検証前に確認すべき項目

iyoblog (3-28)・メカ系部位試作品案の検証結果評価法で事前確認すべき項目

iyoblog (3-29)・制御・実装系部位試作品案の検証結果評価法で確認すべき項目

iyoblog (3-30)・計測器系部位試作品案の検証結果評価法で確認すべき項目

「事例編・第四部・DR-1(2) ・ 基本設計着手時の不具合予防取り組み法」

iyoblog (3-31)・基本設計で開発品と既存品組合せ部位の確認項目

iyoblog (3-32)・基本設計で環境条件の確認項目・その1

iyoblog (3-33)・基本設計で環境条件の確認項目・その2

iyoblog (3-34)・基本設計で環境条件の確認項目・その3

iyoblog (3-35)・基本設計で鉄系材料使用部位の確認項目・その1

iyoblog (3-36)・基本設計で鉄系材料使用部位の確認項目・その2

iyoblog (3-37)・基本設計で非鉄系材料使用部位の確認項目・その1

iyoblog (3-38)・基本設計で非鉄系材料使用部位の確認項目・その2

iyoblog (3-39)・基本設計で非金属系材料使用部位の確認項目・その1

iyoblog (3-40)・基本設計で非金属系材料使用部位の確認項目・その2

「事例編・第五部・DR-2 ・ 詳細設計着手時の不具合予防取り組み法」

iyoblog (3-41)・詳細設計で炭素鋼熱処理部品の確認項目

iyoblog (3-42)・詳細設計で部品形状の確認項目

iyoblog (3-43)・詳細設計で衝撃強さ確保の確認項目

iyoblog (3-44)・詳細設計で摩耗強さ確保の確認項目

iyoblog (3-45)・詳細設計でねじ締結部の確認項目

iyoblog (3-46)・詳細設計で部品素材選択の確認項目

iyoblog (3-47)・詳細設計でステンレス鋼選択の確認項目

iyoblog (3-48)・詳細設計で深絞り品置き割れ防止の確認項目

iyoblog (3-49)・詳細設計で溶接品質確保の確認項目

iyoblog (3-50)・詳細設計で異種金属接触による腐食防止の確認項目

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「筆者略歴」

 1957年4月~1974年3月の17年間・富士重工業㈱(注・現社名スバル)三鷹製作所(現・群馬県大泉町へ移転)生産技術部門に勤務。乗用車用エンジン・ミッション製造の工場自動化機器・専用機設計業務へ従事。1974年技術士(機械部門・第7916号)登録、伊豫部技術士事務所を開設。開発・設計および生産技術部門の技術コンサルタントとして現在に至る。この間、上場および中堅企業100社以上で社員教育や業務改善支援業務に従事。現在までに、社団法人日本技術士会理事、りそな中小企業振興財団「中小企業庁長官新技術・新製品賞」贈賞の専門審査委員、東大和市商工会理事、等を歴任。

 著書「設計の故障解析51(CD-ROM付)」、「設計の基本仕様51(CD-ROM付)」、「設計のマネジメント101」、「設計者の心得と実務101」、「設計の経験則101」、「設計の凡ミス退治101」、「設計のムダ退治101」、「ハンドリング簡易自動化201」、「設計審査(DR=Design Review)支援ツール集・Ⅰ(事前審査編)」以上日刊工業新聞社から刊行。月刊「機械設計」誌へ長期連載等あり。「品質機能展開50事例(CD-ROM付)」、「MC選定資料マニアル」、熊谷卓氏と共著「組立・ハンドリング自動化実例図集」、以上新技術開発センターから刊行などが有る。

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市場クレームの手戻り予防では、DRの役割を点検会から事前指導会へ重点を転換する・事例(3-01)

iyoblog (3-01)「設計の働き方改革とDR(設計審査)の具体的取り組み法」設計力向上研究会(伊豫部将三)編

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事例編・第一部「DR組織および事前準備関連取り組み法」

iyoblog (3-01)・市場クレームの手戻り予防では、DRの主要目的を点検会から事前指導会へ重点を転換する

「現状と問題点」

 筆者がコンサルタントとして関与する機会があった多数の製造業開発・設計技術部門で蒐集したDATA(その概要は、総論で紹介)では、多くの開発・設計技術部門投入時間の30%で手戻り・後処理時間を消失している現状実態がある。その主たる原因を辿ると、DR(Design Review=設計審査)による事前・途中指導が殆ど機能していない現実がある。(注・総論編添付図3-1「製造業技術部門投入時間調査結果実態例」および同添付図3-2「手戻り・後処理発生時間作業内容実態例」を参照)

 その結果多くの製造企業に於いて市場クレーム対策費が売上の2 %を超え、主要因が開発・設計に起因する部分が略70 %を占める共通の現実がある。

また表には公表されない造り直しが伴う製造時仕損費用も売上の1 %を超える共通の現実と、その主要因も図面不備が略70 %を占める各社の共通実態がある。

前記対策は、図面に全て書き表されていると言う間違った共通認識による誤解から各社出図前の検図作業を強化することで対応している実態がある。

特に機械・電機製品分野では市場クレーム原因の80 %は、開発・設計時に寿命値と信頼度値把握の現物検証を事前にキチンと行わないため発生する ① 「振動・衝撃劣化」、② 「疲労劣化」、③ 「腐食劣化」、④ 「摩擦・摩耗劣化」、⑤ 「揺動・ねじり劣化」、⑥ 「熱衝撃劣化」の六要因が故障原因を占める現状がある。

また機械装置付属の制御・計装系では同様に略90 %が ⑦ 「落雷・高圧サージ電圧損傷」、⑧ 「水滴付着繰返し絶縁劣化短絡」、⑨ 「静電気放電発火・引火」、⑩ 「電磁ノイズ誘導・誤作動」、⑪ 「過負荷発熱焼損」、⑫ 「部品ワイヤ断線」、⑬ 「膨張・収縮半田剥離で機能停止」の七要因が主故障原因を占める共通実態がある。

これらの故障に繫がる不具合要因は出図用設計図書の検図段階では見付け得ることは事実上困難で、試作品または現物購入品段階で機器採用決定前にDR指導の許で故障予測しながら検証実施が避けられない。

これへ関係者は早期に気付く必要がある。

「着眼点・分析と評価法」

 前掲DATA(総論添付図3-3参照)から手戻り発生ステージ別で見ると、

① DRと出図前検図指摘時による手戻り時間 = 24 %(内訳 = DR時の指摘、内容別ではDR-0「仕様書と構想図」作成時の指摘、DR-1時の指摘合計、(内訳DR-1-⑴「試作品設計および検証」時の指摘、DR-1-(2)「試作品と既存設計品組合せの基本設計」時の指摘)、DR-2時の指摘と出図前検図時の指摘)、

② 出図後製造部門からの出図図書差替え要求等による手戻り時間計 = 23 %(本来DR-2対応時の事前・途中指導不備の着払いで発生に至ると置換えの理解が必要)、

③ 出荷前客先立会い時の仕様洩れ指摘による手戻り・手直し時間 = 8 %(本来DR-0対応時の仕様書作成時と構想図作成時の事前・途中指導不備の着払いで発生に至ると置換えの理解が必要)、

④ 出荷後市場クレーム対応で発生する手戻り時間 = 45 %(本来DR-1-(2)試作品設計時と検証実施時の対応が、故障予測による検証実施時の事前・途中指導不備の着払いで発生に至ると置換えの理解が必要)等である。

(総論添付図3-3「手戻り・後処理発生ステージ別実態例」を参照)

「改善点と取組み実施法」

 現在筆者の知る範囲では、DRを開発・設計時の必須要件と理解し実施している製造企業開発・設計技術部門が殆どである。

但しDRの実施形態、取組み法には、大きく二種類で行われている現状がある。

一つの実施形態は、全社DR会、担当部門DR会、担当課・チームDR会と呼ぶ形式で推進する方式である。

もう一つの実施形態は、DR担当専門組織と選任担当者を設け開発プロセスの各ステージ毎に複数有る商品・製品グループ・事業部門毎のプロセスへ横断・串刺し方式的に併行指導関与する方式である。

筆者の知る処では、国内企業の 95 %以上が、最初に記載したDR会方式で実施している現実がある。

DR会方式の特徴は、開発テーマが発生した際に必要の都度開催する方式のため一見効率性が良い。

しかし選任担当組織と専門担当者を置かないため、事後確認へ重点を置く点検会として運用する場合が多い。

そのため事前および途中指導が殆ど行き届かず、主要な手戻り発生要因となる場合が多い。

このため開発・設計技術部門に手戻り・後処理時間を繰返し多く発生させ、多くの製造業開発・設計技術部門で極端な業務効率低下を招いている現実がある。

DR専門組織・開発プロセス・ステージ毎に選任の専門テーマ別担当者を置く運用方式では、商品・製品グループ・事業部間を横断・串刺し状態で事前・途中指導へ適切関与できる特徴があり、類似商品・製品グループ・事業部間のムダを少なく効率的に品質保証を実現し易い特徴がある。

国内では、有力な自動車メーカや医療薬品メーカで一部実施している実態がある。

「実施による改善効果」

 筆者は、事業部間の類似商品・製品グループが10品種以下で、技術部門人員が200名以下の場合には、DR 会運用方式でも良いがムダを少なく効率的に品質保証を実現し易くする上では、開発・設計プロセス・ステージ毎の実施・運用規定をキチンと定め、これを各部門長がキチンと実現・運用指導する事を薦めたい。

 DR 運用・実施面で最も大切なことは、手戻り・後処理多発に繫がる事後点検会にならない様に必要な事項が確実に実施できる事前・途中指導会として運用する様に機能させる事である。

そのため事前 DR(Before-DR)会、中間 DR(Middle-DR)会、事後 DR(After-DR)会の形態で 3 回ずつ実施する事が望ましい。

事前 DR-0(Before-DR-0)会では、例えば開発仕様書を担当者任せとせず DR 会メンバーが作成する。新規着手するテーマの開発品コンセプトである要求機能で重点を置くテーマは何か?と、達成すべき目標性能、要求特性と要求設計条件の数値などを細かくキチンと設定し担当者へ実現・達成すべき目標を明確に事前指導する。

中間 DR-0(Middle-DR-0)会では、担当者が作成した構想図へ開発仕様書に記載した要求機能、要求性能、要求特性、要求設計条件が反映されているか? を確認指導する。

事後 DR-0(After-DR-0)会では、担当者が作成した開発仕様書に記載した要求機能、要求性能、要求特性、要求設計条件が構想図へ適切に反映されているか? を念のため確認の場として運用する。

事前 DR-1(1)(Before-DR-1(1))会では、例えば試作品設計に対しできるだけ多数案を作成用意させ、同時にコスト見積り試算も行い、それらの中から目標コストを試作段階からクリアした物の中から原理・方式・構造案の異なる最低 3 案以上で併行して技術検証に取組める様に作成法を指導する。

また実施する確認すべき試験項目も担当者任せとせず DR 会メンバーが

① 振動・衝撃劣化、② 疲労劣化、③ 腐食劣化、④ 摩擦・摩耗劣化、⑤ 揺動・ねじり劣化、⑥ 熱衝撃劣化、⑦ 落雷・高圧サージ電圧損傷、⑧ 水滴付着繰り返し絶縁劣化短絡、⑨ 静電気放電発火・引火、⑩ 電磁ノイズ誘導・誤作動、⑪ 過負荷発熱焼損、⑫ 部品ワイヤ断線、⑬ 膨張・収縮半田剥離で機能停止に至る最低 13 項目の加速試験実施取組み方法と必要なサンプル数準備の計画表を作成し担当者へ取組み法を指導する。

また中間 DR-1(1)(Middle-DR-1(1))会では、試作品検証に対し、指示通りに試験内容と取組みがキチンと計画表通りに行われているか? の進捗も現場を確認・指導する。

その中では、故障予測に基づく故障前兆候把握もキチントと併行して行われているかの確認を忘れてはならない。

更に事後 DR-1(1)(After-DR-1(1))会では、試作品検証結果に対し、指示通りに実寿命値確認の耐久試験と経過期間別信頼度値確認 DATA の採取と解析・評価が適切に行われたか?を確認する。

事前 DR-1(2)(Before-DR-1(2))会では、試作検証済み開発品と既存設計品を組合わせる基本設計案作成へ取組む方法について、取合い、結合、組合せ、嵌合せ、締結法についてそれぞれ複数試案を作成し、横並びのコスト比較および耐久試験を実施した上で最終案作成を行う様に指導する。

また中間 DR-1(2)(Middle-DR-1(2))会では、検証済み開発試作品と既存設計品の組合せの複数基本設計案に対し横並びコスト比較と結合部の耐久試験と信頼度試験 DATA 結果の横並び評価をキチンと行える様に取組み整理法を指導する。

更に事後 DR-1(2)(After-DR-1(2))会では、当初の指示通りに結合部の実寿命値確認の耐久試験と経過期間別信頼度値確認 DATA および故障前兆候把握の観察・採取と解析・評価が適切に行われたか?を確認・指導する。

 以上をキチンと実施することで後から大きな市場クレーム発生による莫大な損害発生要因を回避する上で顕著な効果がある。

真剣に DR 改革に取組めば、三年有ればクレーム対策費半減化実現も可能となる。

(注・総論添付表 3-1「DR実施規定事例」参照)

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「引用文献」

・本稿は筆者(伊豫部将三)が執筆し、日刊工業新聞社月刊「機械設計」誌2017年3月号臨時増刊号へ投稿掲載した「設計の品質保証に必須のDR実施法 50 事例」部分へ今回ブログ掲載に当りタイトルを「設計の働き方改革とDRの具体的取り組み法」へ変更し、加筆し不備部は訂正した。

なお原本入手ご希望の方は、出版元(日刊工業新聞社・出版局)へお問い合わせを給わりたく、何分宜しくお願い申し上げます。

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「検索キーワード」

「市場ニーズ調査」 「先行技術調査」 「開発仕様書」 「要求機能」 「要求性能」 「要求特性」 「要求設計条件」 「目標寿命値」 「目標信頼度値」 「構想図」 「原理選択」 「方式選択」 「構造選択」 「材料選択」 「表面処理選択」「熱処理選択」「工作選択」 「形状選択」 「組合せ選択」 「締結法選択」 「結合法選択」 「動作制御法選択」 「回転・摺動部・間隙部・潤滑法選択」 「疲れ強さ設定」 「振動・衝撃強さ設定」 「耐食性設定」 「摩擦・摩耗強さ設定」 「揺動・ねじれ強さ設定」 「熱衝撃強さ設定」 「切欠き効果劣化防止法」「穴明き効果劣化防止法」 「溝付き効果劣化防止法」 「段付き効果劣化防止法」 「落雷・高圧サージ電圧損傷防止法」 「水滴付着絶縁劣化防止法」 「静電気放電発火・引火防止法」 「電磁ノイズ誘導誤作動防止法」 「過負荷発熱焼損防止法」 「ワイヤ断線防止法」 「膨張収縮半田剝離防止法」 「検証試験実施法基準」 「試験サンプル数基準」 「部品加工基準」 「部品測定基準」 「設計・試験工数見積り法基準」「日程計画法基準」 「コスト見積り実施法基準」 「耐久試験実施法基準」 「破壊・損傷試験実施法基準」 「基本仕様作成法基準」 「寿命試験実施法基準」 「信頼度確認試験実施法基準」 「故障予測実施法基準」 「工程能力指数達成法基準」 「客先クレーム措置法基準」 「苦情処理回答実施法基準」 「市場モニタリング実施法基準」 「耐圧試験実施法基準」 「機密漏洩試験実施法基準」 「プログラムデバック試験実施法基準」 他、などがある。

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「全体目次」

「総論 」

iyoblog (3-0-1)・(はじめに) 設計の品質保証を左右するDR(Design Review = 設計審査)

「解説」

iyoblog (3-0-2)・第1章・DR-0(商品開発企画の仕様書と構想図作成段階)の取組み法と現状実態

iyoblog (3-0-3)・第2章・DR-1(開発試作品設計・検証および基本設計段階)の取組み法と現状実態

iyoblog (3-0-4)・第3章・DR-2(詳細組立図と部品設計・出図図書作成段階)の取組み法と現状実態

事例編・第一部「DR組織および事前準備関連取り組み法」

iyoblog (3-01)・市場クレームの手戻り予防では、DRの主要目的を点検会から事前指導会へ重点を転換する

iyoblog (3-02)・客先指摘仕様洩れ手戻り予防では、基本仕様項目の主要部はDR会が作成する

iyoblog (3-03)・事前市場ニーズ調査では、先行競合品と併せ、新規見込み購買層調査も義務付ける

iyoblog (3-04)・先行技術調査では、先行メーカー動向と併せ、新規参入見込みメーカー有無動向調査も義務付ける

iyoblog (3-05)・開発仕様書の要求機能設定では、市場ニーズ調査から従来品に無い特徴機能設定を義務付ける

iyoblog (3-06)・開発品の要求性能設定では、市場ニーズ調査から従来品に無い特徴性能設定を義務付ける

iyoblog (3-07)・開発品の要求特性設定では、従来品に無い特徴特性設定を義務付ける

iyoblog (3-08)・要求設計条件設定では、従来品に無い寿命値設定を義務付ける

iyoblog (3-09)・要求設計条件設定では、従来品に無い信頼度値設定を義務付ける

iyoblog (3-10)・開発品の構想図作成では、従来品に無い原理・方式・構造選択を義務付ける

事例編・第二部「DR-0 ・商品企画・関連仕様作成取り組み法」

iyoblog (3-11)・開発仕様書と構想図作成段階で確認すべき項目

iyoblog (3-12)・開発仕様書案で確認すべき項目

iyoblog (3-13)・構想図案で確認すべき項目

iyoblog (3-14)・メカ系構想設計部位案で確認すべき項目

iyoblog (3-15)・制御・実装系構想設計部位案で確認すべき項目

iyoblog (3-16)・計測器系構想設計部位案で確認すべき項目

iyoblog (3-17)・メカ系構想設計部位案で検証前に確認すべき項目

iyoblog (3-18)・制御・実装系構想設計部位案で検証前に確認すべき項目

iyoblog (3-19)・計測器系構想設計部位案で検証前に確認すべき項目

iyoblog (3-20)・構想設計案作成図書で確認すべき項目

「事例編・第三部・DR-1(1) ・ 商品企画・関連仕様作成実施取り組み法」

iyoblog (3-21)・試作品設計段階で事前確認すべき項目

iyoblog (3-22)・メカ系部位試作品設計案で事前確認すべき項目

iyoblog (3-23)・制御・実装系部位試作品設計案で事前確認すべき項目

iyoblog (3-24)・計測器系部位試作品設計案で事前確認すべき項目

iyoblog (3-25)・メカ系部位試作品案の検証で事前確認すべき項目

iyoblog (3-26)・制御・実装系部位試作品案の検証前に確認すべき項目

iyoblog (3-27)・計測器系部位試作品案の検証前に確認すべき項目

iyoblog (3-28)・メカ系部位試作品案の検証結果評価法で事前確認すべき項目

iyoblog (3-29)・制御・実装系部位試作品案の検証結果評価法で確認すべき項目

iyoblog (3-30)・計測器系部位試作品案の検証結果評価法で確認すべき項目

「事例編・第四部・DR-1(2) ・ 基本設計着手時の不具合予防取り組み法」

iyoblog (3-31)・基本設計で開発品と既存品組合せ部位の確認項目

iyoblog (3-32)・基本設計で環境条件の確認項目・その1

iyoblog (3-33)・基本設計で環境条件の確認項目・その2

iyoblog (3-34)・基本設計で環境条件の確認項目・その3

iyoblog (3-35)・基本設計で鉄系材料使用部位の確認項目・その1

iyoblog (3-36)・基本設計で鉄系材料使用部位の確認項目・その2

iyoblog (3-37)・基本設計で非鉄系材料使用部位の確認項目・その1

iyoblog (3-38)・基本設計で非鉄系材料使用部位の確認項目・その2

iyoblog (3-39)・基本設計で非金属系材料使用部位の確認項目・その1

iyoblog (3-40)・基本設計で非金属系材料使用部位の確認項目・その2

「事例編・第五部・DR-2 ・ 詳細設計着手時の不具合予防取り組み法」

iyoblog (3-41)・詳細設計で炭素鋼熱処理部品の確認項目

iyoblog (3-42)・詳細設計で部品形状の確認項目

iyoblog (3-43)・詳細設計で衝撃強さ確保の確認項目

iyoblog (3-44)・詳細設計で摩耗強さ確保の確認項目

iyoblog (3-45)・詳細設計でねじ締結部の確認項目

iyoblog (3-46)・詳細設計で部品素材選択の確認項目

iyoblog (3-47)・詳細設計でステンレス鋼選択の確認項目

iyoblog (3-48)・詳細設計で深絞り品置き割れ防止の確認項目

iyoblog (3-49)・詳細設計で溶接品質確保の確認項目

iyoblog (3-50)・詳細設計で異種金属接触による腐食防止の確認項目

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「筆者略歴」

 1957年4月~1974年3月の17年間・富士重工業㈱(注・現社名スバル)三鷹製作所(現・群馬県大泉町へ移転)生産技術部門に勤務。乗用車用エンジン・ミッション製造の工場自動化機器・専用機設計業務へ従事。1974年技術士(機械部門・第7916号)登録、伊豫部技術士事務所を開設。開発・設計および生産技術部門の技術コンサルタントとして現在に至る。この間、上場および中堅企業100社以上で社員教育や業務改善支援業務に従事。現在までに、社団法人日本技術士会理事、りそな中小企業振興財団「中小企業庁長官新技術・新製品賞」贈賞の専門審査委員、東大和市商工会理事、等を歴任。

 著書「設計の故障解析51(CD-ROM付)」、「設計の基本仕様51(CD-ROM付)」、「設計のマネジメント101」、「設計者の心得と実務101」、「設計の経験則101」、「設計の凡ミス退治101」、「設計のムダ退治101」、「ハンドリング簡易自動化201」、「設計審査(DR=Design Review)支援ツール集・Ⅰ(事前審査編)」以上日刊工業新聞社から刊行。月刊「機械設計」誌へ長期連載等あり。「品質機能展開50事例(CD-ROM付)」、「MC選定資料マニアル」、熊谷卓氏と共著「組立・ハンドリング自動化実例図集」、以上新技術開発センターから刊行などが有る。

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DR-2(組立図と部品設計図書作成)の取組み法と現状実態・事例(3-0-4)

iyoblog (3-0-4)「設計の働き方改革とDR(設計審査)の具体的取り組み法」設計力向上研究会(伊豫部将三)編

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iyoblog (3-0-4)  第3章・DR-2(詳細組立図と部品設計・出図図書作成段階)の取組み法と現状実態

1 ・詳細設計(組立図作成)とDR 

 詳細設計では、小物部品や大物構造体または箱物部品が社内または委託取引先で実際に製造(①・材料入手、②・鋳造・溶接・プレス・切削・研削等の加工、③・熱・化成処理、④・部品購入、⑤・組立・調整、⑥・各種精度測定類、⑦・電気配線、油圧・空圧・潤滑・水配管類、⑧・試運転・性能評価、等)ができなければならないので、これらを考慮しながら部品形状・最終精度と寸法決め、材料選択と接合する部品同士の組合せ法を決め組立図の作成に当たる。

組立図作成時の注意点は、

①・動作部品(回転またはスライドに伴う摺動・その他の組合せ動作・動作範囲)と固定部品間の取合い関係、

②・潤滑・冷却の必要有無、

③・各運動・固定部品個々の必要強度を確保する部品断面積に必要な寸法と形状、使用材種選択と熱処理後の硬さ

(注・最終強度は、焼入れ・焼戻しが伴う熱処理後の硬さで決まる。)決め、

④・異種金属間接触によるガルバニック腐食防止方法、

⑤・運動接触する部品間の適切間隔としてのスキマ寸法決めと潤滑方法、

⑥・部品同士で負荷が掛った際の変形有無と他部品の接触または干渉防止方法、

⑦・軸受部等発熱部の冷却必要有無とその方法、

⑧・潤滑油の供給・循環・回収・適切レベル維持監視方法、

⑨・部品同士が嵌合する場合の組合せと組立方法、

⑩・組立時の加工基準と測定基準の設定方法、

⑪・部品不具合時の分解方法、

⑫・固定部品間の締結と位置決め方法、

⑬・スイッチ・センサー類組込み必要時の絶縁保持とリード線端子接続方法、

⑭・圧縮空気・潤滑油・水冷却必要時の配管保持と継手接続および流体圧力検出と供給・循環・回収方法、

⑮・振動発生時の防振対策部品取付け方法、

⑯・熱変形と発熱温度検出各X・Y・Z方向基準センサーの取付け方法、

⑰・回転軸トルク検出センサー取付け方法、

(注・以上に抽出した項目は、工作機械のスピンドルヘッドをイメージした。)等を色々考慮しながら行う必要がある。

これらの検討段階で、個々の部品仕様項目の大筋が決定する。

従ってDR実施時の事前または途中指導では、担当者へ主要構成部品個別の基本仕様書の作成を求め、各部品機能の特徴点、目標寿命値と信頼度値決定理由を明確に説明を求める様に指導対応する事が望ましい。

また部品組合せと形状選択、材種・処理法選択、加工法選択の異なる方法案作成が可能な部分については、必ずコスト試算を含めた横並び評価表を作り、後からコスト見直しせずに済む様に常に最小コスト設計に取組みを義務付ける指導が望ましい。

 参考までに図 3-7 (現状、代替え案 1 ~ 5 まで) の「横並びコスト比較評価事例」を示す。また表 3-5 へ「ガルバニック系列表例」を示す。

            表 3-5 ・「ガルバニック系列の例」

2・詳細部品図作成とDR

 組立図ばらしによる部品図作成に当たっては、一人で行う場合と同時複数の人が分担して行う場合では、着手方法が異なる。

一人で行う場合には、ケース(ハウジング)となる鋳造や溶接構造による箱物で納期が掛る場合には、先行手配する必要から優先着手する例が多い。つまり加工工程数の多い大物部品から小物部品へ順に着手する場合が多い。

また普段あまり使わない特殊鋼などの素材入手が困難な納期の掛る材料部品を優先着手する。

①・特に大きめの鋳造箱物部品設計では、肉厚変化が急な厚肉部、島状突起部、隅コーナー形状部で肉厚差が有り型内で冷却速度が異なる個所では引け巣が発生し易い特徴がある。

この場合なだらかに肉厚を変化させる形状設計を指導する。

また切削加工前に必ず応力除去焼鈍(焼き鈍し)錆落としと防錆塗料塗布を済ませてから加工へ着手を必須条件として義務付ける。

忘れてならない事は、X・Y・Z方向各面に対する加工基準(完成後切削で取除いても良い)の突起部を設ける事と搬送を考慮した引っ掛かり、またはバールなどの通し穴(貫通)部を必ず設ける。

②・鋼板厚肉溶接構造箱物設計では、内部へリブを設ける場合に連続隅肉両面溶接は避ける。

できれば交互とんぼ状に千鳥溶接とする。またどんな大物でも必ず溶接部スケール落としと応力除去焼鈍および防錆塗料塗布の実施を必須条件として実施を義務付ける。

大物厚肉溶接の場合には、ガウジングで初期溶接個所の欠陥を除去する再溶接も実施する。

加工基準と搬送に対する配慮は鋳造品と同じに行う。

③・軸物部品設計では、直径50粍以上となる太物部品の熱処理指定では、材種毎に質量効果の違いから表面から焼きが入る深さ(マルテンサイト組織が50%以上を占める厚み部分)が異なる事に注意させる。

また焼き入れ後長時間放置したままで置くと焼入れ部層がひび割れ剥離する現象が有るので短時間(通常30分以内)で必ず焼戻し処理実施を図面上で指示する

④・軸物部品では、溝付き効果(Oリング溝、C型止め輪溝、キー溝、スプライン溝…など)、穴明き効果(軸方向内部穴、横貫通穴…など)、段付き効果(クランク軸の様な径の太い部分から急激に径が小さくなるコーナー隅部…など)へ応力集中に伴う疲労強度の低下に注意して形状決定を指導する。

DR-2の事前または途中段階に於ける指導効果は、図 3-3 で示す「手戻り・後処理のステージ別時間発生率実態例」中 ②・「出図後の手戻り・後処理23%」の手戻り・後処理時間の節減・予防効果が期待できる。

また多くの製造業で製造仕損は売上げの1%超えの発生実態が有り、原因の70%が図面不備・不適に伴う設計責任が占める現実がある。

このため DR-2 の事前または途中指導効果は、同時に売上の凡そ 0.56 %程度の製造仕損節減・予防効果も期待できる。(注・本数値は、客先指摘仕様不備に伴う改造費・追加購入品発生と追加加工分を引いた残り部分として算出。)

3 ・出図用部品図面作成とDR(出図前検図との関わり)

 筆者の知る限り各社CAD導入後の検図に於ける共通実態は、多くの開発・設計技術部門では専任検図者を置き三段階で出図前検図を行っている実態例が多い。

最初の検図者へ持込まれたプリントアウトした検図用図面を主に同僚クラスか先輩検図者が一通り全体を眺めた上で、例えば記入洩れした部分などが見付かった場合には、赤ペンで追記する形で訂正して欲しい内容を書込み本人へ戻す。

一枚ずつ提出された図面へ検図者がこれを行うため、枚数が多い場合と持込み人数が多い場合には多忙となる。

通常専任検図者と言っても検図だけ専任で行っている訳ではなく、一回目の検図では本来設計者としての自分が取組むテーマも持っている者が同僚や少し先輩格の立場で対応する場合が多い。

このため持込まれた時だけ対応に当たっている現実がある。

二回目は訂正済みの図と一回目に訂正を指摘されたプリント図を、更に格上の主任またはチームリーダクラスへ提出する。

二回目の検図者も一通り眺め、同じ対応を繰返す。最終的には、課長クラスの出図承認者へ提出され一応一通り眺めた上で特に気付いた訂正指摘個所が無ければ承認印が押され、出図手配となる。

検図法についてのルールを定めていない開発・設計技術部門では、一回目の検図者は一通り図面の全体を眺め、気付いた事を先ず指摘する。

結果としてベテランの目で見れば記入洩れは良く目立つので最初に記入洩れを指摘する。

従って多くの設計部門で一回目担当の専任検図者は、記入洩れの指摘に振回される結果となる例が多い。  

これには、二つの理由がある。理由の一つは、出図後製造部門などから図面上の間違いや不備が多く且つ製造仕損発生などが繰替えし伴うと、設計部門へ検図をしっかり遣って欲しいと突上げる。

そのため上司から検図をしっかり遣れと指示が繰返される。

理由の二つ目は、原因の不備・間違い発生要因を突詰めると二つの原因に絞られる。

一つ目の要因は、判断間違いに行着く。二つ目の要因は、担当者本人の不注意間違いである。

 判断の間違い原因は、知らないために発生する。知らないのに、勘と度胸で博打を打つのと同じ気持ちで遣ってしまう結果である。

従って「知らない事を遣ってはならない、遣らせてはならない。」とする大原則が必要である。

従って知らない事へ取組まねばならない時には、判断の裏付けを取る必要がある。

知らない、経験の無い事に取組まねばならない時には、先輩・経験者・専門知識に詳しい人へ教えを乞う。

また社内・外の前例を調べる。

特許や文献を調べて前例が見付からない場合には、仮説を建て試作・試験をして「OK=大丈夫=上司の承認」を確認してから着手する。

 不注意の間違いは、本人が注意深く取組んでいれば発生させずに済んだ間違いである。

この本人が注意しながら取組めば本来発生させずに済んだ間違いを他の検図者が代わりに見付け指摘する第三者検図の習慣へ長い期間で馴染んだ結果、検図者へ強い依存心が働き、注意深く作図する習慣を担当者に放棄させた結果に他ならない。

従って本人が注意すれば発生させずに済む記入洩れの様な簡単な間違いを減らすには、不注意の間違い項目に対し検図者は検図の対象項目から外し、本人が防止できる間違いは原則本人へ注意させ、これを助けず検図しない原則での対応が必要である。

それと作図上の注意点を先輩が作成した幾つかのモデル図面で、例えばA3の白紙へA4のモデル図を中央へ貼付け、それぞれの項目毎に風船玉を挙げ、

①・図番記入の注意点個条書き、

②・図名記入の注意点個条書き、

③・部品形状決定記載方法の注意点個条書き、

④・最終寸法決定と寸法線記載方法の注意点個条書き、

⑤・寸法公差決定と嵌合い隙間決定方法と記載方法の注意点個条書き、

⑥・材種選定と記載方法の注意点個条書き、

⑦・熱処理と焼入れ・焼戻し後の硬さ指定方法記入の注意点個条書き、

⑧・仕上げ面粗さと加工法指定の注意点個条書き、

⑨・形状精度指定方法記入の注意点個条書き、

⑩・加工基準と測定基準決定方法記入の注意点個条書き…など作図上の注意点を記載し手本図として配布。

担当者へこれに基づき指差し点検しながら注意深く作図に当たる事前または途中指導が重要である。

これらを DR 指導の一部として部品機能・形状・素材別に作成し担当者へ配布する。

これは、担当者自身で防止できる不注意の間違いは、必ず本人自身で防止する原則を確立徹底する上で重要なツールとなる。

出図用部品図作成に当たっては、図 3-3 で示す「手戻り・後処理のステージ別時間発生率実態例」中 ①・「DRと出図前検図時の手戻り・後処理 24 %」が直接発生している時間比率実態がある。

この内DR指摘時は 16 %有り、その中の DR-2 による事前または途中指導による実施効果は、3 %と出図前検図時指摘 = 8 %で合計 11 %の手戻り・後処理時間の節減・予防効果が期待できる。

なお出図後の図面不備が見付かる前に加工着手後に例えば鋳造品で巣が見付り、再鋳造するなどで製造仕損も若干発生する場面も有るが、実態では比率が少ないので数値は省略させて頂いた。

参考までに図 3-8 へ自己検図実施指導項目の「管理者による不注意の間違い防止部下指導実施心得127例」として示す。

これらを例えば朝のミィーティング時に作図に当たる担当者へ毎回 10 項目程度ずつ長期間唱和を 40 回以上繰返し、確実に修得させる事が大切である。

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「引用文献」

・本稿は筆者(伊豫部将三)が執筆し、日刊工業新聞社月刊「機械設計」誌2017年3月号臨時増刊号へ投稿掲載した「設計の品質保証に必須のDR実施法 50 事例」部分へ今回ブログ掲載に当りタイトルを「設計の働き方改革とDRの具体的取り組み法」へ変更し、加筆し不備部は訂正した。

なお原本入手ご希望の方は、出版元(日刊工業新聞社・出版局)へお問い合わせを給わりたく、何分宜しくお願い申し上げます。

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「検索キーワード」

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「全体目次」

「総論 」

iyoblog (3-0-1)・(はじめに) 設計の品質保証を左右するDR(Design Review = 設計審査)

「解説」

iyoblog (3-0-2)・第1章・DR-0(商品開発企画の仕様書と構想図作成段階)の取組み法と現状実態

iyoblog (3-0-3)・第2章・DR-1(開発試作品設計・検証および基本設計段階)の取組み法と現状実態

iyoblog (3-0-4)・第3章・DR-2(詳細組立図と部品設計・出図図書作成段階)の取組み法と現状実態

事例編・第一部「DR組織および事前準備関連取り組み法」

iyoblog (3-01)・市場クレームの手戻り予防では、DRの主要目的を点検会から事前指導会へ重点を転換する

iyoblog (3-02)・客先指摘仕様洩れ手戻り予防では、基本仕様項目の主要部はDR会が作成する

iyoblog (3-03)・事前市場ニーズ調査では、先行競合品と併せ、新規見込み購買層調査も義務付ける

iyoblog (3-04)・先行技術調査では、先行メーカー動向と併せ、新規参入見込みメーカー有無動向調査も義務付ける

iyoblog (3-05)・開発仕様書の要求機能設定では、市場ニーズ調査から従来品に無い特徴機能設定を義務付ける

iyoblog (3-06)・開発品の要求性能設定では、市場ニーズ調査から従来品に無い特徴性能設定を義務付ける

iyoblog (3-07)・開発品の要求特性設定では、従来品に無い特徴特性設定を義務付ける

iyoblog (3-08)・要求設計条件設定では、従来品に無い寿命値設定を義務付ける

iyoblog (3-09)・要求設計条件設定では、従来品に無い信頼度値設定を義務付ける

iyoblog (3-10)・開発品の構想図作成では、従来品に無い原理・方式・構造選択を義務付ける

事例編・第二部「DR-0 ・商品企画・関連仕様作成取り組み法」

iyoblog (3-11)・開発仕様書と構想図作成段階で確認すべき項目

iyoblog (3-12)・開発仕様書案で確認すべき項目

iyoblog (3-13)・構想図案で確認すべき項目

iyoblog (3-14)・メカ系構想設計部位案で確認すべき項目

iyoblog (3-15)・制御・実装系構想設計部位案で確認すべき項目

iyoblog (3-16)・計測器系構想設計部位案で確認すべき項目

iyoblog (3-17)・メカ系構想設計部位案で検証前に確認すべき項目

iyoblog (3-18)・制御・実装系構想設計部位案で検証前に確認すべき項目

iyoblog (3-19)・計測器系構想設計部位案で検証前に確認すべき項目

iyoblog (3-20)・構想設計案作成図書で確認すべき項目

「事例編・第三部・DR-1(1) ・ 商品企画・関連仕様作成実施取り組み法」

iyoblog (3-21)・試作品設計段階で事前確認すべき項目

iyoblog (3-22)・メカ系部位試作品設計案で事前確認すべき項目

iyoblog (3-23)・制御・実装系部位試作品設計案で事前確認すべき項目

iyoblog (3-24)・計測器系部位試作品設計案で事前確認すべき項目

iyoblog (3-25)・メカ系部位試作品案の検証で事前確認すべき項目

iyoblog (3-26)・制御・実装系部位試作品案の検証前に確認すべき項目

iyoblog (3-27)・計測器系部位試作品案の検証前に確認すべき項目

iyoblog (3-28)・メカ系部位試作品案の検証結果評価法で事前確認すべき項目

iyoblog (3-29)・制御・実装系部位試作品案の検証結果評価法で確認すべき項目

iyoblog (3-30)・計測器系部位試作品案の検証結果評価法で確認すべき項目

「事例編・第四部・DR-1(2) ・ 基本設計着手時の不具合予防取り組み法」

iyoblog (3-31)・基本設計で開発品と既存品組合せ部位の確認項目

iyoblog (3-32)・基本設計で環境条件の確認項目・その1

iyoblog (3-33)・基本設計で環境条件の確認項目・その2

iyoblog (3-34)・基本設計で環境条件の確認項目・その3

iyoblog (3-35)・基本設計で鉄系材料使用部位の確認項目・その1

iyoblog (3-36)・基本設計で鉄系材料使用部位の確認項目・その2

iyoblog (3-37)・基本設計で非鉄系材料使用部位の確認項目・その1

iyoblog (3-38)・基本設計で非鉄系材料使用部位の確認項目・その2

iyoblog (3-39)・基本設計で非金属系材料使用部位の確認項目・その1

iyoblog (3-40)・基本設計で非金属系材料使用部位の確認項目・その2

「事例編・第五部・DR-2 ・ 詳細設計着手時の不具合予防取り組み法」

iyoblog (3-41)・詳細設計で炭素鋼熱処理部品の確認項目

iyoblog (3-42)・詳細設計で部品形状の確認項目

iyoblog (3-43)・詳細設計で衝撃強さ確保の確認項目

iyoblog (3-44)・詳細設計で摩耗強さ確保の確認項目

iyoblog (3-45)・詳細設計でねじ締結部の確認項目

iyoblog (3-46)・詳細設計で部品素材選択の確認項目

iyoblog (3-47)・詳細設計でステンレス鋼選択の確認項目

iyoblog (3-48)・詳細設計で深絞り品置き割れ防止の確認項目

iyoblog (3-49)・詳細設計で溶接品質確保の確認項目

iyoblog (3-50)・詳細設計で異種金属接触による腐食防止の確認項目

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「筆者略歴」

 1957年4月~1974年3月の17年間・富士重工業㈱(注・現社名スバル)三鷹製作所(現・群馬県大泉町へ移転)生産技術部門に勤務。乗用車用エンジン・ミッション製造の工場自動化機器・専用機設計業務へ従事。1974年技術士(機械部門・第7916号)登録、伊豫部技術士事務所を開設。開発・設計および生産技術部門の技術コンサルタントとして現在に至る。この間、上場および中堅企業100社以上で社員教育や業務改善支援業務に従事。現在までに、社団法人日本技術士会理事、りそな中小企業振興財団「中小企業庁長官新技術・新製品賞」贈賞の専門審査委員、東大和市商工会理事、等を歴任。

 著書「設計の故障解析51(CD-ROM付)」、「設計の基本仕様51(CD-ROM付)」、「設計のマネジメント101」、「設計者の心得と実務101」、「設計の経験則101」、「設計の凡ミス退治101」、「設計のムダ退治101」、「ハンドリング簡易自動化201」、「設計審査(DR=Design Review)支援ツール集・Ⅰ(事前審査編)」以上日刊工業新聞社から刊行。月刊「機械設計」誌へ長期連載等あり。「品質機能展開50事例(CD-ROM付)」、「MC選定資料マニアル」、熊谷卓氏と共著「組立・ハンドリング自動化実例図集」、以上新技術開発センターから刊行などが有る。

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DR-1(開発試作品設計・検証および基本設計段階)の取組み法と現状実態・事例(3-0-3)

iyoblog (3-0-3)「設計の働き方改革とDR(設計審査)の具体的取り組み法」設計力向上研究会(伊豫部将三)編

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iyoblog (3-0-3)  第2章・DR-1(開発試作品設計・検証および基本設計段階)の取組み法と現状実態

「 1・開発品試作設計・検証とDR」

 第 1 章の図 3-3 で示す手戻り・後処理実態例 ④ で示す商品・製品出荷後発生させている「手戻り・後処理 45 %」を節減・予防するには、現実に多くの製造業でクレーム対策費の 70 %が開発・設計原因で占める各社の共通実態がある。

機械製品類では、①・振動・衝撃劣化、②・疲労劣化、③腐食劣化、④・摩擦・摩耗劣化、⑤・揺動・ねじり劣化、⑥・熱 衝撃劣化の6項目で不具合原因の 80 %を占める現実がある。

また機械装置類に組込まれる制御用計装・実装系では、⑦・落雷・高圧サージ電圧損傷、⑧・水滴付着繰返し絶縁劣化短絡、⑨・静電気放電発火・引火、⑩・電磁ノイズ誘導誤作動、⑪・過負荷発熱焼損、⑫・部品ワイヤ断線、⑬・膨張収縮半田剥離で機能停止の7原因で不具合原因の約 90 %を占める現実がある。

実際の寿命年数値確認などの検証試験実施に当たっては、前述計 13 のテーマ項目を先ず劣化耐久試験で確認把握する必要がある。

 本来不具合となる発生原因は、開発・新規設計時に試作品または新規採用予定購入部品による劣化寿命値と信頼度値確認耐久試験を採用決定前にそれぞれ試験確認必要な項目毎にキチンと実施していない結果として発生する。

使用する部品類の劣化寿命値と経過期間毎に信頼度値が事前に把握されていれば、メーカとしてエンドユーザーへ不具合発生前の適切な時期に交換必要な部品を特定してアナウンスできる。

メーカー側は、これを把握していないと交換が必要な時期を適切且つ事前にアナウンスできない。

エンドユーザー側に取って何の予告も無しに稼働中不意の故障停止を受け、メーカーへクレームとして持込む結果となる。

メーカーがクレームの節減・予防を真に図りたいと望む場合には、DR-1 の場で開発品試作設計担当者へ検証実施時に目標寿命値と信頼度値達成確認有無の把握をキチンと義務付けた DR 時の事前または途中指導が必要である。

ここで一般消費者向けに多くの商品類で設定している 10 年耐久寿命値を、10 年掛けて検証する訳には行かない。

この場合には、加速試験で期間短縮して実施すれば良い。

10倍へ加速すれば、試験期間を 10 分の 1 へ短縮が可能になる。

100 倍へ加速すれば、試験期間を 100 分の 1 へ短縮が可能となる。

これは 1 年を(閏年を含め)366 日と見做せば、10 倍に加速すれば、1 年を 37 日へ短縮して劣化による不具合発生の可能性有無を把握できる。

また 100 倍に加速すれば、1 年を 4 日へ短縮して劣化による不具合可能性有無を把握できる。

10 年寿命値であれば、3,660 日分を 100 倍へ加速し 100 分の 1 へ短縮すれば 37 日間で、この間に劣化による不具合発生可能性有無の確認把握が可能となる。

開発商品が通常一般消費者向けの耐久消費財(例えば、家電商品、自家用車、OA機器類、…など)であれば 10 年寿命値を前提に耐久試験を先ず実施し、10 年経過時点に於ける信頼度値を確認する。

ここで 10 年経過時点に於ける信頼度値とは、例えば自家用乗用車の例で説明すると「10 年使用時点で目標信頼度値 90 %以上確保」とする場合の意味は、100 台出荷した場合には 10 年後 90 台以上が使い続けられる残存寿命を保持している事を言う。

この数値は凡そ 100 年前(第一次大戦後の 1920 年代後半)にアメリカで制定した数値として一般に知られている。

約 30 年以前から日本の工業製品は、欧米先進国の消費者間で品質が良いとして知られている。

これは日本の主要メーカ製乗用車の場合では、10 年後の信頼度値は 99.5 %以上で管理されており、200 台の出荷に対し 199台以上が引続き走り続けられる残存寿命を保持している事が欧米先進国間では広く知られている。

この事から先進国の一般消費者は、品質の良し悪しを目標寿命値経過後の信頼度値の高さで評価している事が判る。

つまり品質とは、目標寿命値経過後の信頼度値の高さと考えて商品開発と検証に取組む事が大切となる。

また業務用であれば業種・製品により目標とすべき寿命年数値と信頼度値は個々の業種および商品毎にそれぞれ異なるが、通常一般消費者向け商品に対し 5 ~ 10 倍の寿命管理単位値で設定される場合が多い。

ここで寿命管理単位値とは、①・時間寿命値で管理する場合、②・回数寿命値で管理する場合、③・距離寿命値で管理する場合の 3 通りが多く使われている。

一般消費者が使う乗用車の例ではアメリカ基準が 10 年寿命で走行距離は 20 万マイル( = 32 万KM 相当 )とされ、これを時速 100 KM( 凡そ 60 Mile 強/H )で走行すれば寿命 3,200 時間相当となる。

但し搭載するエンジン等では、市街地等の交差点信号等による停止時間比率が凡そ 40 %を占めるため目標寿命 5,000 時間で設定している場合が多い。

回数寿命では、例えば、ドアの開閉を 10 年間 10 万回等と設定している。

但し業務用では、10 年間 50 万回等に置き代わる商品実態例もある。

一般消費者向け乗用車をタクシーで使用すると、3 年間程度まで実寿命が短縮すると言われている。

この事から商品が一般消費者向けで目標寿命値と信頼度値設定で開発した積りで上市しながら、実際には業務用で使われたりすると、忽ち劣化が進みクレームに継がる可能性が高い。

従って開発時には、事前にモニタリングを行い見込みユーザによる実際の使われ方を注意深く観察してから目標寿命値と信頼度値設定の DR 指導を行う事が大切となる。

望ましい事は、万一業務用に転用して使われても 1 年以内に寿命劣化で回収・交換せずに済む保証すべき目標寿命値と信頼度値設定で DR 指導して開発へ着手する事を薦めたい。

また公共機関(港湾・空港・道路・橋梁・鉄道・建造物と設備や関連装置類…など)向けでは、保証すべき目標寿命値は 40 年以上が要求されている実態がある。

(注・一般消費者向けでも居住用住宅については、日本国内の場合では国土交通省(元建設省)指導の許に主としてプレハブ住宅メーカーと関連する機器メーカーが加盟する工業化住宅協会規格の技術基準で躯体部分は 40 年寿命値で実施されている実態例がある。)

参考までに図 3-5 へ「出荷後経過期間別クレームによる手戻り・後処理時間発生率実態例」を示す。

なお図 3-5 から出荷後経過期間別市場クレームの発生時期が判る。

図 3-5 中の ① ・出荷後 1 ケ月以内 25 %、② ・同 3 ケ月以内 13 %、③ ・同 6 ケ月以内 11 %、④ ・同 1 年以内 21 %、つまり出荷後 3 ケ月以内計 38 %(累計約 40 %)、同 6 ケ月以内計 49 %(累計約 50 %)、同1年以内に累計 70 %の共通したクレーム発生実態と言う現実がある。 

品質工学のバスタブカーブで表現される初期は、不具合期間内にクレームの70 %が発生している現実と置換えて見做すことができる。

また不具合発生前に適切交換する上で実寿命確認把握試験と同時に故障前兆候把握を行う場合には、機能停止(時には破壊)に至るまで試験する事が必要である。

どの様な兆候が見えたら直ちに稼働停止の上、部品交換しなければならないか? をユーザーへ同時にアナウンスして置く事が必要である。

これは、ユーザーに対しメーカーがこの部品は 1 年または 1 万時間経過毎に交換して下さいとアナウンスしても、実際に壊れる迄使い続けるユーザーが出てくるためである。

これはエンドユーザーに対し故障前兆候が出た場合には、直ちに装置稼働を停止させ部品交換措置を実施しないと周囲を巻込む大きな事故に至る可能性がある事を知って貰う必要を理解して頂く上で大切である。

部品破損に至るまで商品を稼働させた場合には、破損部品の交換だけでは済まない周辺機器と装置全体の損傷・破壊に至り、破損部品が飛散り周囲に被害を及ぼす可能性も有り得る事を安全確保上でエンドユーザーへ事前に知らせて置く必要がある。

故障前兆候把握・実寿命値と信頼度値把握試験は、クレーム節減・予防上の DR 指導では担当者の手抜き行為を決して許してはならない。

また故障前兆候把握・実寿命値と信頼度値把握取組み時に必要な試験方法を決めるには、事前に故障予測した上で着手する事を薦めたい。

参考までに表 3-4 へ「自転車の故障予測と前兆候把握の検証法設定例(部分)」を示す。

「 2・基本設計とDR」

最終的に開発仕様書へ目標設定した実寿命値と信頼度値の確保が確認された試作品検証を済ませた開発品部分と既存設計品部分を組合せて行う基本設計案作成段階では、結合部・取合い部・組合せが伴う接合部の検証が残る。

これは、量産試作段階で必ず開発品試験と同じ様に実施して置く必要がある。

また基本設計では、機能面から総合性能確認・工法・製造法確認と達成すべき目標コスト(製造原価)確認がDR指導上の重要課題テーマとなる。

新規開発品部分がユニット化、モジュール化、単品部品化の形態で取組みができれば、既存設計品部分と組合せは非常に簡便化できる。

ユニット化、モジュール化、部品化の形態であれば、単体での検証も行い易い。

またエンドユーザーに引渡し後の保全・保守面からもそのまま現地で単体部品単位での交換対応が容易になるのでアフターサービス面からも短時間対応で済み望ましい。

これができない場合には、現地で故障または不具合個所の診断・確認作業と装置・機器類の分解・再組立・調整が発生し、その工数も多くなり対策費用も嵩む実態がある。

そのため多くの製造企業でクレーム対策費が、年売上の2 %を超える現実となる実態がある。

多くの場合クレーム対策費用の内訳は、現地で不具合を起し交換を必要とした部品費は 10 %以下の現実がある。

これは、メーカーから派遣されたサービスマンの現地への出張旅費と分解・部品交換・再組立・調整に要した工数に対する人件費が合計で 90 %以上を占める現実がある。

従ってクレーム対策費 2 %の意味は、交換部品不具合発生率へ置換えると 0.2 %以下へ置換わる実態がある。

従ってクレーム節減・予防には、交換部品不具合発生率を更に一桁以上引下げる必要がある。

つまり部品の不具合発生確率(即ち部品寿命経過時点の目標信頼度値)は、0.02 %以下へ是非早急に引下げが必要となる。

参考までに図 3-6 へ「正規分布 ±7 σまでの面積分布確率値例」を示す。

              図 3-6 ・「 ± 7 σ ( シグマ ) 値までの正規分布図」

筆者は、金型の様な一品生産品の場合でも ± 4 σ(分布確率 = 99.994 %)値から目標寿命 10 万回経過時の発生確率-4 σ(強度上で弱い側となるマイナス側の確率値 = 0.003 % = 3/10 万 = 1/3 万 3300 )以下の信頼度値確保を最低の必須条件として設定する様に薦めている。

この数値の意味は、平均動作回数 3 万 3300 回毎に1回の不具合動作が生ずる確率となり、1 分に 1 回の動作サイクルでは555 時間の連続動作ができる。

つまり生産設備などへ当て嵌めた場合では 555 時間毎に 1 回の製品不良か、または何らかの不具合停止が発生する確率を持つ。

1 日 8 時間稼働であれば、69 日毎に 1 回の製品不良発生か、または不具合停止する確率を持つ。

仮に 1 秒に 1 回の連続動作であれば、平均 555 分( 9.25 時間)毎に1回ずつ不具合停止の確率がある。

従って-4 σより-5 σ( マイナス側確率値 = 0.000057 % = 2/1000万 = 1/500万 )、または-6 σ(マイナス側確率値 = 0.000 000 2 % = 2/10 億 = 1/5 億 )と設定する方が望ましい。

従って動作回数には、製品不良発生数と一緒に注意して管理する事が望ましい。

この管理値を例えば ± 3 σ( 分布確率値 = 99.73 % )値で設定した場合には、-3 σ( マイナス側確率値 = 0.135 % = 1/741 )と成り平均動作数 741 回毎に1回の製品不良発生か、または不具合動が生ずる結果となり、1 分に1 回の動作サイクルでは 12 時間 21 分しか連続動作ができない。

つまり 12 時間 21 分毎に 1 回の不具合停止が発生する。

1 日 8 時間稼働であれば、1 日半毎に 1 回不具合停止する確率を持つ。

仮に 1 秒に 1 回の連続動作であれば、平均 12 分 35 秒毎に1回ずつ不具合停止を免れない。

どちらにしても生産現場では、まともに使える装置や設備としての数値ではない。

DR 指導では、設計品の不具合発生確率値に十分に注意して管理したい。

以上から DR-1 の事前または途中指導効果は、図 3-3 で示す「手戻り・後処理のステージ別時間発生率実態例」中 ④ ・「納品・検収後の手戻り・後処理 45 %」の手戻り・後処理時間の殆どで時間節減・予防効果が期待できる。

また同時に製造業のクレーム対策費は多くの企業で売上げの 2 %を超える発生実態が有り、原因の 70 %が基本設計時の開発品検証不備と欠如などに伴う開発・設計時の責任が占める現実がある。

このため DR-1 の事前または途中指導実施による期待効果は、同時に売上の凡そ 1.4 %近いクレーム対策費節減・予防効果も期待できる内容を持つ。

なおこの現実に把握される数値は、製品の品質管理が ± 3 σ( 分布確率値 = 99.73 % )で行われる場合に略近い数値である事に注目し見直しする必要がある。

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「引用文献」

・本稿は筆者(伊豫部将三)が執筆し、日刊工業新聞社月刊「機械設計」誌2017年3月号臨時増刊号へ投稿掲載した「設計の品質保証に必須のDR実施法 50 事例」部分へ今回ブログ掲載に当りタイトルを「設計の働き方改革とDRの具体的取り組み法」へ変更し、加筆し不備部は訂正した。

なお原本入手ご希望の方は、出版元(日刊工業新聞社・出版局)へ直接お問い合わせを給わりたく、何分宜しくお願い申し上げます。

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「検索キーワード」

「市場ニーズ調査」 「先行技術調査」 「開発仕様書」 「要求機能」 「要求性能」 「要求特性」 「要求設計条件」 「目標寿命値」 「目標信頼度値」 「構想図」 「原理選択」 「方式選択」 「構造選択」 「材料選択」 「表面処理選択」「熱処理選択」「工作選択」 「形状選択」 「組合せ選択」 「締結法選択」 「結合法選択」 「動作制御法選択」 「回転・摺動部・間隙部・潤滑法選択」 「疲れ強さ設定」 「振動・衝撃強さ設定」 「耐食性設定」 「摩擦・摩耗強さ設定」 「揺動・ねじれ強さ設定」 「熱衝撃強さ設定」 「切欠き効果劣化防止法」「穴明き効果劣化防止法」 「溝付き効果劣化防止法」 「段付き効果劣化防止法」 「落雷・高圧サージ電圧損傷防止法」 「水滴付着絶縁劣化防止法」 「静電気放電発火・引火防止法」 「電磁ノイズ誘導誤作動防止法」 「過負荷発熱焼損防止法」 「ワイヤ断線防止法」 「膨張収縮半田剝離防止法」 「検証試験実施法基準」 「試験サンプル数基準」 「部品加工基準」 「部品測定基準」 「設計・試験工数見積り法基準」「日程計画法基準」 「コスト見積り実施法基準」 「耐久試験実施法基準」 「破壊・損傷試験実施法基準」 「基本仕様作成法基準」 「寿命試験実施法基準」 「信頼度確認試験実施法基準」 「故障予測実施法基準」 「工程能力指数達成法基準」 「客先クレーム措置法基準」 「苦情処理回答実施法基準」 「市場モニタリング実施法基準」 「耐圧試験実施法基準」 「機密漏洩試験実施法基準」 「プログラムデバック試験実施法基準」 他、などがある。

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「全体目次」

「総論 」

iyoblog (3-0-1)・(はじめに) 設計の品質保証を左右するDR(Design Review = 設計審査)

「解説」

iyoblog (3-0-2)・第1章・DR-0(商品開発企画の仕様書と構想図作成段階)の取組み法と現状実態

iyoblog (3-0-3)・第2章・DR-1(開発試作品設計・検証および基本設計段階)の取組み法と現状実態

iyoblog (3-0-4)・第3章・DR-2(詳細組立図と部品設計・出図図書作成段階)の取組み法と現状実態

事例編・第一部「DR組織および事前準備関連取り組み法」

iyoblog (3-01)・市場クレームの手戻り予防では、DRの主要目的を点検会から事前指導会へ重点を転換する

iyoblog (3-02)・客先指摘仕様洩れ手戻り予防では、基本仕様項目の主要部はDR会が作成する

iyoblog (3-03)・事前市場ニーズ調査では、先行競合品と併せ、新規見込み購買層調査も義務付ける

iyoblog (3-04)・先行技術調査では、先行メーカー動向と併せ、新規参入見込みメーカー有無動向調査も義務付ける

iyoblog (3-05)・開発仕様書の要求機能設定では、市場ニーズ調査から従来品に無い特徴機能設定を義務付ける

iyoblog (3-06)・開発品の要求性能設定では、市場ニーズ調査から従来品に無い特徴性能設定を義務付ける

iyoblog (3-07)・開発品の要求特性設定では、従来品に無い特徴特性設定を義務付ける

iyoblog (3-08)・要求設計条件設定では、従来品に無い寿命値設定を義務付ける

iyoblog (3-09)・要求設計条件設定では、従来品に無い信頼度値設定を義務付ける

iyoblog (3-10)・開発品の構想図作成では、従来品に無い原理・方式・構造選択を義務付ける

事例編・第二部「DR-0 ・商品企画・関連仕様作成取り組み法」

iyoblog (3-11)・開発仕様書と構想図作成段階で確認すべき項目

iyoblog (3-12)・開発仕様書案で確認すべき項目

iyoblog (3-13)・構想図案で確認すべき項目

iyoblog (3-14)・メカ系構想設計部位案で確認すべき項目

iyoblog (3-15)・制御・実装系構想設計部位案で確認すべき項目

iyoblog (3-16)・計測器系構想設計部位案で確認すべき項目

iyoblog (3-17)・メカ系構想設計部位案で検証前に確認すべき項目

iyoblog (3-18)・制御・実装系構想設計部位案で検証前に確認すべき項目

iyoblog (3-19)・計測器系構想設計部位案で検証前に確認すべき項目

iyoblog (3-20)・構想設計案作成図書で確認すべき項目

「事例編・第三部・DR-1(1) ・ 商品企画・関連仕様作成実施取り組み法」

iyoblog (3-21)・試作品設計段階で事前確認すべき項目

iyoblog (3-22)・メカ系部位試作品設計案で事前確認すべき項目

iyoblog (3-23)・制御・実装系部位試作品設計案で事前確認すべき項目

iyoblog (3-24)・計測器系部位試作品設計案で事前確認すべき項目

iyoblog (3-25)・メカ系部位試作品案の検証で事前確認すべき項目

iyoblog (3-26)・制御・実装系部位試作品案の検証前に確認すべき項目

iyoblog (3-27)・計測器系部位試作品案の検証前に確認すべき項目

iyoblog (3-28)・メカ系部位試作品案の検証結果評価法で事前確認すべき項目

iyoblog (3-29)・制御・実装系部位試作品案の検証結果評価法で確認すべき項目

iyoblog (3-30)・計測器系部位試作品案の検証結果評価法で確認すべき項目

「事例編・第四部・DR-1(2) ・ 基本設計着手時の不具合予防取り組み法」

iyoblog (3-31)・基本設計で開発品と既存品組合せ部位の確認項目

iyoblog (3-32)・基本設計で環境条件の確認項目・その1

iyoblog (3-33)・基本設計で環境条件の確認項目・その2

iyoblog (3-34)・基本設計で環境条件の確認項目・その3

iyoblog (3-35)・基本設計で鉄系材料使用部位の確認項目・その1

iyoblog (3-36)・基本設計で鉄系材料使用部位の確認項目・その2

iyoblog (3-37)・基本設計で非鉄系材料使用部位の確認項目・その1

iyoblog (3-38)・基本設計で非鉄系材料使用部位の確認項目・その2

iyoblog (3-39)・基本設計で非金属系材料使用部位の確認項目・その1

iyoblog (3-40)・基本設計で非金属系材料使用部位の確認項目・その2

「事例編・第五部・DR-2 ・ 詳細設計着手時の不具合予防取り組み法」

iyoblog (3-41)・詳細設計で炭素鋼熱処理部品の確認項目

iyoblog (3-42)・詳細設計で部品形状の確認項目

iyoblog (3-43)・詳細設計で衝撃強さ確保の確認項目

iyoblog (3-44)・詳細設計で摩耗強さ確保の確認項目

iyoblog (3-45)・詳細設計でねじ締結部の確認項目

iyoblog (3-46)・詳細設計で部品素材選択の確認項目

iyoblog (3-47)・詳細設計でステンレス鋼選択の確認項目

iyoblog (3-48)・詳細設計で深絞り品置き割れ防止の確認項目

iyoblog (3-49)・詳細設計で溶接品質確保の確認項目

iyoblog (3-50)・詳細設計で異種金属接触による腐食防止の確認項目

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「筆者略歴」

 1957年4月~1974年3月の17年間・富士重工業㈱(注・現社名スバル)三鷹製作所(現・群馬県大泉町へ移転)生産技術部門に勤務。乗用車用エンジン・ミッション製造の工場自動化機器・専用機設計業務へ従事。1974年技術士(機械部門・第7916号)登録、伊豫部技術士事務所を開設。開発・設計および生産技術部門の技術コンサルタントとして現在に至る。この間、上場および中堅企業100社以上で社員教育や業務改善支援業務に従事。現在までに、社団法人日本技術士会理事、りそな中小企業振興財団「中小企業庁長官新技術・新製品賞」贈賞の専門審査委員、東大和市商工会理事、等を歴任。

 著書「設計の故障解析51(CD-ROM付)」、「設計の基本仕様51(CD-ROM付)」、「設計のマネジメント101」、「設計者の心得と実務101」、「設計の経験則101」、「設計の凡ミス退治101」、「設計のムダ退治101」、「ハンドリング簡易自動化201」、「設計審査(DR=Design Review)支援ツール集・Ⅰ(事前審査編)」以上日刊工業新聞社から刊行。月刊「機械設計」誌へ長期連載等あり。「品質機能展開50事例(CD-ROM付)」、「MC選定資料マニアル」、熊谷卓氏と共著「組立・ハンドリング自動化実例図集」、以上新技術開発センターから刊行などが有る。

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