予め決められる技術基準を前以って決めていないため、その都度判断を加えるムダ・事例(4-05)

iyoblog (4-05)「設計の働き方改革とムダ退治法101事例」設計力向上研究会(伊豫部将三)編

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「現状と問題点」

 経験の乏しいテーマへ取り組む場合に、設計者が一番戸惑う事は、判断が伴う設計基準などの数値を決定する事である。例えば、衝撃強さの設定値(疲れ強さの限界値を基準に何倍に設定すべきか?また信頼度値は、幾らに設定すべきか?)などである。設定数値を間違えれば、そのまま市場・客先でのクレーム・トラブル、製造・ラインでのクレーム・トラブルなどに直結する場合も多いからである。従って経験の乏しい設計者は、先輩・上司へその都度相談しながら判断を仰ぐ必要が生ずる。本人と先輩・上司のこのための対応繰り返しは、時間のムダの一つとして考える必要がある。

 また既成設計品の中に取り組むテーマの類似設計品が有れば、これを参考事例として設計値を推定しながら進める事が基本的に可能である。しかし、どの様な機能条件項目と製造条件項目が作り込まれ、またその設計値としての数値が設定されているか?が、参考にした図面上に記載されていない場合には、判らない場合も多い。従って適切に事前指導・教育が行われず、本人も先輩・上司へ相談せず設計が行われる場合には、勝手な判断による間違いが作り込まれる可能性が高い。そのため、先輩・上司は、要所々々で点検としての検図が避けられなくなり、そのための対応も時間のムダとなる。この様な状態は、事前に必要な技術基準や判断基準が与えられて居ない場合に発生する。現実には、この様なケースが多いのが実情である。

 経験が乏しい設計者に対しては、設計時に必要な技術基準や判断基準などを事前に与えてから設計に取り組ませる事により、このムダを避ける事が可能となる。

「着眼点・分析と評価法」

 判断が伴う設計値の設定では、商品・製品機能の4値と、その製造条件を決定着ける4値がある。製造条件を決定着ける4値とは、中央値(製造目標値)、製造許容値(工作基準値)、機能許容値(設計基準値)、製造限界値(客先規格値または要求値)の四つを言う。

 製造4値設定では、商品・製品機能確保のための工作上の絶対値と品質値が存在する。

 絶対値とは、図-51の「製造条件設定値データベース例」で寸法公差に置き換え表現すると、或る部品強度を確保する製造上の目標値は、工作上の寸法中央値となる。例えば中央値が直径50.000粍、製造許容公差は±15μ、機能許容値は±20μ、製造限界値は±40μへそれぞれ設定されているなどを示す。

 品質値決定とは、図-51では中央値はバラツキの平均値 x、製造許容値は±3σ、機能許容値は±4σ、製造限界値は±8σにそれぞれ設定されている例を示す。

 この製造目標値に対して製造許容値・機能許容値・製造限界値をそれぞれどの様な関連で決定付ければ良いか?の判断基準、ルールを作って置く事が大切である。判断法の基準・ルールが設計者に前以って与えられて居れば、その都度の先輩・上司に対する相談と後からの点検を省略する事が可能となる。

「改善点と取り組み法」

 改善点の第一は、図-51中に示す製造条件項目の下側でデータベース(DATA-BASE)記載表例の様に、設計時に作り込むアイテムとそれぞれの中央値・製造許容値・機能許容値・製造限界値の絶対値を幾らで設定したか?の設計思想の根拠が判る様、明確に示して図面と一緒に保存して置く事が大切である。

 改善点の第二は、中央値・製造許容値・機能許容値・製造限界値のそれぞれの品質値を幾らに設定したか、特記事項欄に試作時の検証結果で1σの絶対値が幾らに相当するか?を同時に示して置く事が大切である。これにより、それそれの間の絶対値と品質値を幾らに設定して設計すれば良いかの基準が明確となる。また設計思想の点検が容易となる。

「改善による効果」

 製造条件項目で作り込みが必要なアイテムと設計値の設定条件・方法・考え方が明確化される事により、判断基準が与えられ、経験の乏しい設計者でも、その都度先輩・上司へ相談・確認しないでも、安心して設計が進められる様に任せる事が可能となる。これにより、先輩・上司ががその都度判断を加えるムダが少なくなる事が可能となる。

 また設計思想が事前に明確になっている部分については、設計審査と検図を省略する事も可能となる。

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「引用文献」

・本稿は筆者(伊豫部将三)が執筆し、日刊工業新聞社から1995年3月単行本として刊行され、2020年3月廃刊処理された機会に「設計のムダ退治101」へ掲載した内容を、今回ブログ掲載に当りタイトルを「設計の働き方改革とムダ退治法101事例」へ変更し、内容の見直しと不足部分を加筆し、不備部は訂正した。

 念の為、原本で入手ご希望の方は、出版元(日刊工業新聞社・出版局)へお問い合わせを給わりたく、何分宜しくお願い申し上げます。

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「ムダ退治法101事例・全体目次」

「日常業務に於けるムダ」

iyoblog (4-01)・事例・01「設計で類似内容を繰り返し新規創出しているムダ」

iyoblog (4-02)・事例・02「社内蓄積保管資料探索にその都度時間を掛けるムダ」

iyoblog (4-03)・事例・03「同一仕様技術資料を繰り返し新規出図するムダ」

iyoblog (4-04)・事例・04「類似仕様決定のため、その都度繰り返し新規試作・試験するムダ」

iyoblog (4-05)・事例・05「予め決められる技術基準を前以って決めていないため、その都度判断を加えるムダ」

iyoblog (4-06)・事例・06「気付かず負(マイナス)の付加価値形成をしているムダ」

iyoblog (4-07)・事例・07「フリーハンド・メモ・ポンチ絵(マンガ)・イラストで済む情報を定規で製図・清書するムダ」

iyoblog (4-08)・事例・08「事前・途中の指導を疎かにし、完成してから点検・手直しを行わせるムダ」

iyoblog (4-09)・事例・09「関係部署・担当者間での連絡不備、調整が無い為、類似製品での機種を増加させているムダ」

iyoblog (4-10)・事例・10「先行技術を調査確認しないで、知らずに公知技術を新規開発しているムダ」

iyoblog (4-11)・事例・11「「理由なく雑誌や資料を何でもコピー私蔵するムダ」

iyoblog (4-12)・事例・12「勘と記憶を頼りに旧式の設計を繰り返し、何時も過剰品質とするムダ」

iyoblog (4-13)・事例・13「安い市販規格品に気付かず、コストの高い物を知らずに新規設計するムダ」

iyoblog (4-14)・事例・14「ルールと分担が明確にされていないため、同じ内容を何人もで繰り返し点検・審査するムダ」

iyoblog (4-15)・事例・15「設計担当者の技術情報創出時間が少なくなっているムダ」

iyoblog (4-16)・事例・16「既存・現用品を活用せず、安易な新規設計で保管図面・資料を増加させるムダ」

iyoblog (4-17)・事例・17「裏付け根拠もなく、適当に見当で作った守れない出図日程(設計期間)となるムダ」

iyoblog (4-18)・事例・18「設計品質が、担当者個人の能力・資質・適性(キャラクタ)に左右されるムダ」

「設計変更を発生させるムダ」

iyoblog (4-19)・事例・19「間違いを作り込ませておいて、上司・先輩が後から捜すムダ」

iyoblog (4-20)・事例・20「本人の注意で防げる間違いを、他人が検図するムダ」

iyoblog (4-21)・事例・21「いきなり実物TRYして失敗するムダ」

iyoblog (4-22)・事例・22「取扱い時の注意を明確に仕様に組み込まないため、市場でクレーム・トラブルとなるムダ」

iyoblog (4-23)・事例・23「施工時の注意を明確に指示しないため、製造でラインクレーム・トラブルとなるムダ」

iyoblog (4-24)・事例・24「製品仕様の範囲を明確に表示しないため、ユーザーでクレームを発生させているムダ」

iyoblog (4-25)・事例・25「関連個所を同時に決め、記入点検すれば防げる間違いを出しているムダ」

iyoblog (4-26)・事例・26「再発防止とならない対策繰り返しのムダ」

iyoblog (4-27)・事例・27「残業・休日出勤を繰り返し、新しい知識と感覚のチャージを怠り、疲労した頭で間違いを繰り返すムダ」

iyoblog (4-28)・事例・28「日程優先から点検不備で出図して、トラブルのため結果として納期遅れを発生させるムダ」

iyoblog (4-29)・事例・29「トラブル履歴、メンテナンス有無を確かめず、出図した再生図でクレームが出てから対応するムダ」

iyoblog (4-30)・事例・30「ライバル品を物真似し、クレームが出てから慌てて確認テストするムダ」

iyoblog (4-31)・事例・31「上司への事前了解と事後報告をキチント行わず、トラブルを発生させているムダ」

iyoblog (4-32)・事例・32「安易な妥協で、結局トラブルとなる点検・審査のムダ」

iyoblog (4-33)・事例・33「点検せず出図して、後から差し替えを繰り返すムダ」

iyoblog (4-34)・事例・34「エラーによるトラブル内容をその都度周知徹底しないため、類似トラブルを繰り返し発生させているムダ」

iyoblog (4-35)・事例・35「作ってもその場だけしか使わないチェクリスト作成のムダ」

「資料整備・活用面に於けるムダ」

iyoblog (4-36)・事例・36「資料を全員にCOPY配布して活用されないムダ」

iyoblog (4-37)・事例・37JISや業界規格を丸写しにした社内規格を制定するムダ」

iyoblog (4-38)・事例・38「キーワード登録・整理しないため、検索出来ず活用されない資料保管のムダ」

iyoblog (4-39)・事例・39「実験・試験DATAグラフ化・定式(数式)化整理しないため、他の担当者が活用できないムダ」

iyoblog (4-40)・事例・40「活用は二の次で、保管する為だけにマイクロフィルム化するムダ」

iyoblog (4-41)・事例・41「設計参考資料・設計規格を見ながら、その都度新規に設計着手を繰り返すムダ」

iyoblog (4-42)・事例・42「仕様書・図面・試験(検証)報告書・クレーム報告書・調査報告書・手配表など別々に台帳分類・登録保管としているため相互の関連付け、活用を妨げているムダ」

iyoblog (4-43)・事例・43「整理・整頓を疎かにし、その都度資料捜しに時間を掛けるムダ」

iyoblog (4-44)・事例・44「メンテナンスがキチンと行われないため、活用されない資料のムダ」

「機械化面に於けるムダ」

iyoblog (4-45)・事例・45「設計者が技術情報を創出して機械へ入力しなければ、プリントアウト出来ない設計機械化のムダ」

iyoblog (4-46)・事例・46「機械化出来る所を、手作業で行っているムダ」

iyoblog (4-47)・事例・47「技術情報創出に関係無い製図の機械化に多くの費用と人員を投入しているムダ」

iyoblog (4-48)・事例・48「訂正箇所を検図者へ明示しないため、全体を再検図させているムダ」

iyoblog (4-49)・事例・49「電子ファイルを技術情報創出時間短縮手段として活用しないムダ」

iyoblog (4-50)・事例・50「パソコンを蓄積保管資料(技術情報)検索手段として活用しないムダ」

iyoblog (4-51)・事例・51「類似設計の繰り返しが多いのに、CADを有効に活用しきれないムダ」

iyoblog (4-52)・事例・52CAD導入で、出図が検図で手戻りが増え従来より遅れるムダ」

iyoblog (4-53)・事例・53CAD端末の前に設計者が居ると、仕事をしていると周囲が錯覚するムダ」

iyoblog (4-54)・事例・54「CADを導入しながら、既存図面のデジタル化が進まず流用設計に活用しきれないムダ」※

iyoblog (4-55)・事例・55「設備稼働率を高めるため、CADで二直を行わせるムダ」

iyoblog (4-56)・事例・56CAD導入後DATA-BASE構築まで、長期間活用開始を手待ちするムダ」

iyoblog (4-57)・事例・57「設計のCAD-DATAを、後の生産工程へ生かせられないムダ」

iyoblog (4-58)・事例・58CADKEY-WORD検索機能を組み入れ活用しないムダ」

iyoblog (4-59)・事例・59「製図のため、設計者がCAD端末から技術情報を入力するムダ」

iyoblog (4-60)・事例・60「パソコンをシュミレーション手段として活用しないムダ」

iyoblog (4-61)・事例・61「CAD化のため上司・先輩が途中に介入出来ず、プリント、訂正を繰り返させるムダ」

iyoblog (4-62)・事例・62「電子ファイルの編集機能を活用しないムダ」

iyoblog (4-63)・事例・63「CAD を設計時間節約手段として役立てられないムダ」

「外注活用面に於けるムダ」

iyoblog (4-64)・事例・64「事前・途中の指導を疎かにし、受け入れ後の確認と手直しに時間を掛ける外注活用のムダ」

iyoblog (4-65)・事例・65「研修条件が曖昧なため、間違いを依頼者が手直しするムダ」

iyoblog (4-66)・事例・66「外注を猫の手としてしか活用しないムダ」

iyoblog (4-67)・事例・67「付加価値獲得を高める手段として設計外注を活用出来ないムダ」

「補助者活用面に於けるムダ」

iyoblog (4-68)・事例・68「経験が無くても出来る設計部分をベテランが行うムダ」

iyoblog (4-69)・事例・69「補助者に雑用(非付加価値作業)を行わせるムダ」

iyoblog (4-70)・事例・70「類似設計の手引書化を疎かにし、設計業務を単純作業対応化出来ないムダ」

iyoblog (4-71)・事例・71「補助者を使いきれず、遊ばせているムダ」

iyoblog (4-72)・事例・72「補助者を技術情報創出に充てられないムダ」

iyoblog (4-73)・事例・73「手本図・手引書などが無いため補助者・外注へその都度説明を繰り返すムダ」

iyoblog (4-74)・事例・74「担当者が手を着けるべき範囲と補助者化出来る範囲を明確に区分出来ないため、補助者を活用出来ないムダ」

「教育面に於けるムダ」

iyoblog (4-75)・事例・75「教えないため任せられず、上司・ベテランだけが忙しさに追われているムダ」

iyoblog (4-76)・事例・76「手伝わせるだけで教えないため、技術知識の修得にならないOJT教育のムダ」

iyoblog (4-77)・事例・77「演習・実習が伴わないため、実際の設計が行えない教育のムダ」

iyoblog (4-78)・事例・78「知っているかどうかを確かめないで、一方的に行う教育のムダ」

iyoblog (4-79)・事例・79「教えたことが、修得されたかどうか確認しないで終わっている教育のムダ」

iyoblog (4-80)・事例・80「参考資料を与えれば、教えないでも設計が出来ると錯覚しているムダ」

「その他の面に於けるムダ」

iyoblog (4-81)・事例・81「部下・後輩を指導出来ず自主性に任せ、やきもきするムダ」

iyoblog (4-82)・事例・82「複数案を並行試験確認で進めないために、開発・設計期間を延ばしているムダ」

iyoblog (4-83)・事例・83「理念が無いため評価・判断基準が定まらず、担当者を困惑・混乱させているムダ」

iyoblog (4-84)・事例・84「専門化を進め過ぎ、ノウハウ経験が私物化して会社に蓄積されないムダ」

iyoblog (4-85)・事例・85「内容の検索に役立たない保管だけに図番分類する台帳分類方法のムダ」

iyoblog (4-86)・事例・86「中味(実)に関係無く、件数だけ多く申請する特許のムダ」

iyoblog (4-87)・事例・87「不良品でテストして、結果として使えない試験DATAとなるムダ」

iyoblog (4-88)・事例・88「相見積もりで安さだけ追求し、後で手直しの多い外部製作手配のムダ」

iyoblog (4-89)・事例・89「特許申請を怠り、市場で係争に成ってから慌てて対応するムダ」

iyoblog (4-90)・事例・90「何でも直接自分で手を付けないと気がすまず、自分だけ忙しくするムダ」

iyoblog (4-91)・事例・91「上司・先輩同士の見解違いから、調整に時間を掛けるムダ」

iyoblog (4-92)・事例・92「判断基準が与えられないため、その都度上司に相談・了解を得なければならないムダ」

iyoblog (4-93)・事例・93「内容が曖昧で要領の悪い、頁数の多いレポート作成のムダ」

iyoblog (4-94)・事例・94「過剰手配で持つ、部品購入と保管のムダ」

iyoblog (4-95)・事例・95「技術情報創出時間比率が30%以下なのに、慢性的工数不足に陥っているムダ」

iyoblog (4-96)・事例・96「出図枚数を管理項目とするムダ」

iyoblog (4-97)・事例・97「途中の状況把握を細目に行わず、納期が来てから遅れを知るムダ」

iyoblog (4-98)・事例・98「購入品入手までのリードタイム把握を疎かにし、手待ちとなるムダ」

iyoblog (4-99)・事例・99「ベテランが付加価値増加に寄与する業務に専念出来ないため、付加価値獲得時間を大きく出来ないムダ」

iyoblog (4-100)・事例・100「結論の出ない対策会議開催のムダ」

iyoblog (4-101)・事例・101「設計管理で生産技術的観点を持たないため、設計業務での改善が行われないムダ」

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「筆者略歴」

 1957年4月~1974年3月の17年間・富士重工業㈱(注・現社名スバル)三鷹製作所(現・群馬県大泉町へ移転)生産技術部門に勤務。乗用車用エンジン・ミッション製造の工場自動化機器・専用機設計業務へ従事。1974年技術士(機械部門・第7916号)登録、伊豫部技術士事務所を開設。開発・設計および生産技術部門の技術コンサルタントとして現在に至る。この間、上場および中堅企業100社以上で社員教育や業務改善支援業務に従事。現在までに、社団法人日本技術士会理事、りそな中小企業振興財団「中小企業庁長官新技術・新製品賞」贈賞の専門審査委員、東大和市商工会理事、等を歴任。

 著書「設計の故障解析51(CD-ROM付)」、「設計の基本仕様51(CD-ROM付)」、「設計のマネジメント101」、「設計者の心得と実務101」、「設計の経験則101」、「設計の凡ミス退治101」、「設計のムダ退治101」、「ハンドリング簡易自動化201」、「設計審査(DR=Design Review)支援ツール集・Ⅰ(事前審査編)」以上日刊工業新聞社から刊行。月刊「機械設計」誌へ長期連載等あり。「品質機能展開50事例(CD-ROM付)」、「MC選定資料マニアル」、熊谷卓氏と共著「組立・ハンドリング自動化実例図集」、以上新技術開発センターから刊行などが有る。

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類似仕様決定のため、その都度繰り返し新規試作・試験するムダ・事例(4-04)

iyoblog (4-04)「設計の働き方改革とムダ退治法101事例」設計力向上研究会(伊豫部将三)編

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「現状と問題点」

 経験の無い新規テーマへ取り組む場合とか、商品・製品開発では、モデル試作による事前の試験・検証は、品質保証のためには避けられない大事な業務の一つである。しかし類似設計品への着手では、これを出来るだけ省略出来るよう、日頃の設計法と試験DATAの有効活用法を工夫し、繰り返しをしない様にして置く事が望ましい。現実には、これを繰り返すムダをしている設計部門が多い。

 類似仕様に係わらず、何故その都度モデル試作による試験・検証が必要に成るか?と言えば、作り込む機能条件に対する設計値の設定法と試験・検証法が適切に行われデータを後で再利用できる様に残し、管理しないためである。これは、設計値の設定法をルール化する事と、その設計思想を明確に既成設計品に対してデータベースとして保存して居ない事が挙げられる。その為、類似設計品にも係わらず、その都度仕様決定の為モデル試作と試験・検証を繰り返すムダが発生する。これをムダとして、類似試験・検証繰り返しを減らす観点が大切である。

「着眼点・分析と評価法」

 設計値の設定法とは、商品・製品機能を決定着ける機能4値と、製造条件を決定着ける製造4値の設定法の事である。設計上設定が必要な商品・製品機能の4値とは、通常業界規格値(客先要望の最低管理値)、機能保証値(メーカー側設計基準値)、機能限界値(試験・検証時の管理値)、設計目標値(真の設計値=材料強度中央値)の四つを言う。

 機能4値設定では、機能確保上の絶対値と品質値が存在する。絶対値とは、図-41の例で説明すると、機能としての時間寿命が業界規格値は、例えば仮に4000時間、保証値は8000時間、限界値は9000時間、目標値(=材料強度値)は1万2000時間にそれぞれ設定されている場合の例を示す。

 また品質値設定とは、図-41の例では、業界規格値は不良の発生頻度が正規分布でー8σ(シグマ)、保証値はー4σ(シグマ)、限界値はー3σ(シグマ)、目標値はバラツキの平均値(中央値)にそれぞれ設定されている場合の例を示す。

 類似品モデル試作による試験・検証繰り返しを減らそうとする場合には、それぞれの設計品で性能・特性・物性条件として作り込んだ機能条件アイテムについて、4値がどの様に設定され、また試験・検証で確認されて有るかを一覧表として設計思想をデータベース(DATA-BASE)化して残して置く事が必要である。

 機能条件各アイテムの4値に於ける絶対値と品質値が、それぞれどの様な間隔で設定して有るかの設定思想を試験・検証の裏付けで示され、且つ分かり易く残されている事が大切である。これが明確となって居ないと、再利用出来る物が再利用出来ず、試作・検証の繰り返しへ繋がるものとなる。

「改善点と取り組み法」

 改善点の第一は、図-41中下側の記載欄で示す機能条件項目のデータベース記載表例の様に、設計時に作り込んだアイテムとそれぞれの目標値(=材料強度の中央値)・限界値(=不良が急激に立ち上がる管理点としての注意すべき数値)・保証値(エンドユーザーが安心して使用出来る不具合の発生頻度値)・業界規格値(業界で申し合わせた最低げ限確保すべき数値)を幾らで設定したかの設計思想が判る様に明確に示して図面と一緒に保存して置く事が大切である。

 改善点の第二は、目標値・限界値・保証値・業界規格値のそれぞれの品質値を幾らに設定したか、特性事項欄に検証結果1σ(シグマ)が絶対値幾らに相当するか?を同時に示して置く事が大切である。これにより既成設計品から類似設計品を捜し出した際、設計思想と試験検証の裏付け有無の関連が明確となり、再試験・検証の必要が無い再利用が可能となる。この設計思想のデータベースは、図面に一緒に記載するか、企業機密(外部流出防止)ノウハウとして別途作成した資料を図面と同一図番で管理する事が大切となる。

「改善による効果」

 既成設計品の機能設定条件・設計思想のデータベースが活用出来る様保存管理される事により、類似設計品でその都度仕様決定の為の繰り返し新規試作・試験を省略する事が可能となる。活用出来るデータが残されていない場合の、試験用モデル試作と試験・検証に必要な費用と時間が節約される事になる。モデルに因っては、金型製作が伴う試作が有ったり、試験項目に依っては車載部品類の様に連続5000時間の振動・衝撃耐久試験(実質7ケ月間を必要がとする)実施でデータを採取しなければならないケースも有り、この節約は極めて大きな財産となる。

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「引用文献」

・本稿は筆者(伊豫部将三)が執筆し、日刊工業新聞社から1995年3月単行本として刊行され、2020年3月廃刊処理された機会に「設計のムダ退治101」へ掲載した内容を、今回ブログ掲載に当りタイトルを「設計の働き方改革とムダ退治法事例」へ変更し、内容の見直しと不足部分を加筆し、不備部は訂正した。

 念の為、原本で入手ご希望の方は、出版元(日刊工業新聞社・出版局)へお問い合わせを給わりたく、何分宜しくお願い申し上げます。

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「ムダ退治法101事例・全体目次」

「日常業務に於けるムダ」

iyoblog (4-01)・事例・01「設計で類似内容を繰り返し新規創出しているムダ」

iyoblog (4-02)・事例・02「社内蓄積保管資料探索にその都度時間を掛けるムダ」

iyoblog (4-03)・事例・03「同一仕様技術資料を繰り返し新規出図するムダ」

iyoblog (4-04)・事例・04「類似仕様決定のため、その都度繰り返し新規試作・試験するムダ」

iyoblog (4-05)・事例・05「予め決められる技術基準を前以って決めていないため、その都度判断を加えるムダ」

iyoblog (4-06)・事例・06「気付かず負(マイナス)の付加価値形成をしているムダ」

iyoblog (4-07)・事例・07「フリーハンド・メモ・ポンチ絵(マンガ)・イラストで済む情報を定規で製図・清書するムダ」

iyoblog (4-08)・事例・08「事前・途中の指導を疎かにし、完成してから点検・手直しを行わせるムダ」

iyoblog (4-09)・事例・09「関係部署・担当者間での連絡不備、調整が無い為、類似製品での機種を増加させているムダ」

iyoblog (4-10)・事例・10「先行技術を調査確認しないで、知らずに公知技術を新規開発しているムダ」

iyoblog (4-11)・事例・11「「理由なく雑誌や資料を何でもコピー私蔵するムダ」

iyoblog (4-12)・事例・12「勘と記憶を頼りに旧式の設計を繰り返し、何時も過剰品質とするムダ」

iyoblog (4-13)・事例・13「安い市販規格品に気付かず、コストの高い物を知らずに新規設計するムダ」

iyoblog (4-14)・事例・14「ルールと分担が明確にされていないため、同じ内容を何人もで繰り返し点検・審査するムダ」

iyoblog (4-15)・事例・15「設計担当者の技術情報創出時間が少なくなっているムダ」

iyoblog (4-16)・事例・16「既存・現用品を活用せず、安易な新規設計で保管図面・資料を増加させるムダ」

iyoblog (4-17)・事例・17「裏付け根拠もなく、適当に見当で作った守れない出図日程(設計期間)となるムダ」

iyoblog (4-18)・事例・18「設計品質が、担当者個人の能力・資質・適性(キャラクタ)に左右されるムダ」

「設計変更を発生させるムダ」

iyoblog (4-19)・事例・19「間違いを作り込ませておいて、上司・先輩が後から捜すムダ」

iyoblog (4-20)・事例・20「本人の注意で防げる間違いを、他人が検図するムダ」

iyoblog (4-21)・事例・21「いきなり実物TRYして失敗するムダ」

iyoblog (4-22)・事例・22「取扱い時の注意を明確に仕様に組み込まないため、市場でクレーム・トラブルとなるムダ」

iyoblog (4-23)・事例・23「施工時の注意を明確に指示しないため、製造でラインクレーム・トラブルとなるムダ」

iyoblog (4-24)・事例・24「製品仕様の範囲を明確に表示しないため、ユーザーでクレームを発生させているムダ」

iyoblog (4-25)・事例・25「関連個所を同時に決め、記入点検すれば防げる間違いを出しているムダ」

iyoblog (4-26)・事例・26「再発防止とならない対策繰り返しのムダ」

iyoblog (4-27)・事例・27「残業・休日出勤を繰り返し、新しい知識と感覚のチャージを怠り、疲労した頭で間違いを繰り返すムダ」

iyoblog (4-28)・事例・28「日程優先から点検不備で出図して、トラブルのため結果として納期遅れを発生させるムダ」

iyoblog (4-29)・事例・29「トラブル履歴、メンテナンス有無を確かめず、出図した再生図でクレームが出てから対応するムダ」

iyoblog (4-30)・事例・30「ライバル品を物真似し、クレームが出てから慌てて確認テストするムダ」

iyoblog (4-31)・事例・31「上司への事前了解と事後報告をキチント行わず、トラブルを発生させているムダ」

iyoblog (4-32)・事例・32「安易な妥協で、結局トラブルとなる点検・審査のムダ」

iyoblog (4-33)・事例・33「点検せず出図して、後から差し替えを繰り返すムダ」

iyoblog (4-34)・事例・34「エラーによるトラブル内容をその都度周知徹底しないため、類似トラブルを繰り返し発生させているムダ」

iyoblog (4-35)・事例・35「作ってもその場だけしか使わないチェクリスト作成のムダ」

「資料整備・活用面に於けるムダ」

iyoblog (4-36)・事例・36「資料を全員にCOPY配布して活用されないムダ」

iyoblog (4-37)・事例・37JISや業界規格を丸写しにした社内規格を制定するムダ」

iyoblog (4-38)・事例・38「キーワード登録・整理しないため、検索出来ず活用されない資料保管のムダ」

iyoblog (4-39)・事例・39「実験・試験DATAグラフ化・定式(数式)化整理しないため、他の担当者が活用できないムダ」

iyoblog (4-40)・事例・40「活用は二の次で、保管する為だけにマイクロフィルム化するムダ」

iyoblog (4-41)・事例・41「設計参考資料・設計規格を見ながら、その都度新規に設計着手を繰り返すムダ」

iyoblog (4-42)・事例・42「仕様書・図面・試験(検証)報告書・クレーム報告書・調査報告書・手配表など別々に台帳分類・登録保管としているため相互の関連付け、活用を妨げているムダ」

iyoblog (4-43)・事例・43「整理・整頓を疎かにし、その都度資料捜しに時間を掛けるムダ」

iyoblog (4-44)・事例・44「メンテナンスがキチンと行われないため、活用されない資料のムダ」

「機械化面に於けるムダ」

iyoblog (4-45)・事例・45「設計者が技術情報を創出して機械へ入力しなければ、プリントアウト出来ない設計機械化のムダ」

iyoblog (4-46)・事例・46「機械化出来る所を、手作業で行っているムダ」

iyoblog (4-47)・事例・47「技術情報創出に関係無い製図の機械化に多くの費用と人員を投入しているムダ」

iyoblog (4-48)・事例・48「訂正箇所を検図者へ明示しないため、全体を再検図させているムダ」

iyoblog (4-49)・事例・49「電子ファイルを技術情報創出時間短縮手段として活用しないムダ」

iyoblog (4-50)・事例・50「パソコンを蓄積保管資料(技術情報)検索手段として活用しないムダ」

iyoblog (4-51)・事例・51「類似設計の繰り返しが多いのに、CADを有効に活用しきれないムダ」

iyoblog (4-52)・事例・52CAD導入で、出図が検図で手戻りが増え従来より遅れるムダ」

iyoblog (4-53)・事例・53CAD端末の前に設計者が居ると、仕事をしていると周囲が錯覚するムダ」

iyoblog (4-54)・事例・54「CADを導入しながら、既存図面のデジタル化が進まず流用設計に活用しきれないムダ」※

iyoblog (4-55)・事例・55「設備稼働率を高めるため、CADで二直を行わせるムダ」

iyoblog (4-56)・事例・56CAD導入後DATA-BASE構築まで、長期間活用開始を手待ちするムダ」

iyoblog (4-57)・事例・57「設計のCAD-DATAを、後の生産工程へ生かせられないムダ」

iyoblog (4-58)・事例・58CADKEY-WORD検索機能を組み入れ活用しないムダ」

iyoblog (4-59)・事例・59「製図のため、設計者がCAD端末から技術情報を入力するムダ」

iyoblog (4-60)・事例・60「パソコンをシュミレーション手段として活用しないムダ」

iyoblog (4-61)・事例・61CAD化のため上司・先輩が途中に介入出来ず、プリント、訂正を繰り返させるムダ」

iyoblog (4-62)・事例・62「電子ファイルの編集機能を活用しないムダ」

iyoblog (4-63)・事例・63「CAD を設計時間節約手段として役立てられないムダ」

「外注活用面に於けるムダ」

iyoblog (4-64)・事例・64「事前・途中の指導を疎かにし、受け入れ後の確認と手直しに時間を掛ける外注活用のムダ」

iyoblog (4-65)・事例・65「研修条件が曖昧なため、間違いを依頼者が手直しするムダ」

iyoblog (4-66)・事例・66「外注を猫の手としてしか活用しないムダ」

iyoblog (4-67)・事例・67「付加価値獲得を高める手段として設計外注を活用出来ないムダ」

「補助者活用面に於けるムダ」

iyoblog (4-68)・事例・68「経験が無くても出来る設計部分をベテランが行うムダ」

iyoblog (4-69)・事例・69「補助者に雑用(非付加価値作業)を行わせるムダ」

iyoblog (4-70)・事例・70「類似設計の手引書化を疎かにし、設計業務を単純作業対応化出来ないムダ」

iyoblog (4-71)・事例・71「補助者を使いきれず、遊ばせているムダ」

iyoblog (4-72)・事例・72「補助者を技術情報創出に充てられないムダ」

iyoblog (4-73)・事例・73「手本図・手引書などが無いため補助者・外注へその都度説明を繰り返すムダ」

iyoblog (4-74)・事例・74「担当者が手を着けるべき範囲と補助者化出来る範囲を明確に区分出来ないため、補助者を活用出来ないムダ」

「教育面に於けるムダ」

iyoblog (4-75)・事例・75「教えないため任せられず、上司・ベテランだけが忙しさに追われているムダ」

iyoblog (4-76)・事例・76「手伝わせるだけで教えないため、技術知識の修得にならないOJT教育のムダ」

iyoblog (4-77)・事例・77「演習・実習が伴わないため、実際の設計が行えない教育のムダ」

iyoblog (4-78)・事例・78「知っているかどうかを確かめないで、一方的に行う教育のムダ」

iyoblog (4-79)・事例・79「教えたことが、修得されたかどうか確認しないで終わっている教育のムダ」

iyoblog (4-80)・事例・80「参考資料を与えれば、教えないでも設計が出来ると錯覚しているムダ」

「その他の面に於けるムダ」

iyoblog (4-81)・事例・81「部下・後輩を指導出来ず自主性に任せ、やきもきするムダ」

iyoblog (4-82)・事例・82「複数案を並行試験確認で進めないために、開発・設計期間を延ばしているムダ」

iyoblog (4-83)・事例・83「理念が無いため評価・判断基準が定まらず、担当者を困惑・混乱させているムダ」

iyoblog (4-84)・事例・84「専門化を進め過ぎ、ノウハウ経験が私物化して会社に蓄積されないムダ」

iyoblog (4-85)・事例・85「内容の検索に役立たない保管だけに図番分類する台帳分類方法のムダ」

iyoblog (4-86)・事例・86「中味(実)に関係無く、件数だけ多く申請する特許のムダ」

iyoblog (4-87)・事例・87「不良品でテストして、結果として使えない試験DATAとなるムダ」

iyoblog (4-88)・事例・88「相見積もりで安さだけ追求し、後で手直しの多い外部製作手配のムダ」

iyoblog (4-89)・事例・89「特許申請を怠り、市場で係争に成ってから慌てて対応するムダ」

iyoblog (4-90)・事例・90「何でも直接自分で手を付けないと気がすまず、自分だけ忙しくするムダ」

iyoblog (4-91)・事例・91「上司・先輩同士の見解違いから、調整に時間を掛けるムダ」

iyoblog (4-92)・事例・92「判断基準が与えられないため、その都度上司に相談・了解を得なければならないムダ」

iyoblog (4-93)・事例・93「内容が曖昧で要領の悪い、頁数の多いレポート作成のムダ」

iyoblog (4-94)・事例・94「過剰手配で持つ、部品購入と保管のムダ」

iyoblog (4-95)・事例・95「技術情報創出時間比率が30%以下なのに、慢性的工数不足に陥っているムダ」

iyoblog (4-96)・事例・96「出図枚数を管理項目とするムダ」

iyoblog (4-97)・事例・97「途中の状況把握を細目に行わず、納期が来てから遅れを知るムダ」

iyoblog (4-98)・事例・98「購入品入手までのリードタイム把握を疎かにし、手待ちとなるムダ」

iyoblog (4-99)・事例・99「ベテランが付加価値増加に寄与する業務に専念出来ないため、付加価値獲得時間を大きく出来ないムダ」

iyoblog (4-100)・事例・100「結論の出ない対策会議開催のムダ」

iyoblog (4-101)・事例・101「設計管理で生産技術的観点を持たないため、設計業務での改善が行われないムダ」

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「筆者略歴」

 1957年4月~1974年3月の17年間・富士重工業㈱(注・現社名スバル)三鷹製作所(現・群馬県大泉町へ移転)生産技術部門に勤務。乗用車用エンジン・ミッション製造の工場自動化機器・専用機設計業務へ従事。1974年技術士(機械部門・第7916号)登録、伊豫部技術士事務所を開設。開発・設計および生産技術部門の技術コンサルタントとして現在に至る。この間、上場および中堅企業100社以上で社員教育や業務改善支援業務に従事。現在までに、社団法人日本技術士会理事、りそな中小企業振興財団「中小企業庁長官新技術・新製品賞」贈賞の専門審査委員、東大和市商工会理事、等を歴任。

 著書「設計の故障解析51(CD-ROM付)」、「設計の基本仕様51(CD-ROM付)」、「設計のマネジメント101」、「設計者の心得と実務101」、「設計の経験則101」、「設計の凡ミス退治101」、「設計のムダ退治101」、「ハンドリング簡易自動化201」、「設計審査(DR=Design Review)支援ツール集・Ⅰ(事前審査編)」以上日刊工業新聞社から刊行。月刊「機械設計」誌へ長期連載等あり。「品質機能展開50事例(CD-ROM付)」、「MC選定資料マニアル」、熊谷卓氏と共著「組立・ハンドリング自動化実例図集」、以上新技術開発センターから刊行などが有る。

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同一仕様技術資料を繰り返し新規出図するムダ・事例(4-03)

iyoblog (4-03)「設計の働き方改革とムダ退治法101事例」設計力向上研究会(伊豫部将三)編

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「現状と問題点」

 設計した後の設計資料、図面管理と出図業務は、設計部門の大事な業務と看做されている所が多い。しかしこれは、取り除く事が可能であり、ムダの一つである。

 設計時に標準設計化を進め、設計したものは原則全て標準図化して、これを原図ごと生産技術部門または製造部門へ移管すれば、設計部門が資料と図面管理を軽減出来ると共に、出図業務を取り除くか、軽減する事が可能となる。

 設計時に作成した資料および図面類は、何処でも設計部門が直接保管、管理している所が多い。また出図業務も同様である。歴史の永い企業では、設計資料、図面類も膨大な量となり、中には100名以下の一部署(グループ)で100万枚以上の図面を保管している所も存在する。この場合には、図面を保管する書庫も大きな物が必要になり、維持管理のために専任者を何人か置くなどの事を行っている場合もある。

 また資料、図面を設計部門が管理する都合から、出図業務も設計部門の大事な業務と看做されている所が多い。そのための出図業務のための専任者を更に別途配置して対応している例も同様に多い。しかしこれら業務を設計部門から取り除くか軽減する手段が有る事から、ムダとしての観点から対応する事が大切である。図-31は、「標準図の一例」を示す。



「着眼点・分析と評価法」

 設計時に作成する資料、図面の中、製造用の工作図面およびその関連資料は、必ずしも設計で管理する必要は無い。設計する際に全て標準設計化の考え方で標準図化してしまい、その保管は、生産技術部門または製造部門へ移管する事を考えると良い。設計で作成し製造が決まった図面および関連資料については、生産技術部門または製造部門で管理する様に移管すれば、出図業務をその都度設計部門で行う必要が無くなるからである。

 製造で必要が生じた際、生産技術部門または製造部門が必要に応じて保管図面からコピーして出図すれば良い。製造上工作し易くするとか、コスト引き下げへの対応理由で設計変更したい場合など、商品、製品機能の仕様、性能、特性に影響を与えない場合には、生産技術部門または製造部門が直接対応出来る様にする訳である。但し商品、製品機能の仕様、性能、特性に直接影響、変更をもたらす設計変更は、設計部門の了解を得て確保すべき条件を試験、検証して行うルールを決めて対応して貰えば良い。現実に設計資料、図面を製造部門へ管理を移管し、出図業務などを軽減している企業が存在する。

「改善点と取り組み法」

 改善法の第一点は、設計するものは、原則全て標準図化してしまう。標準図化とは、標準機能設計品として図面化して置く事を言う。

 改善法の第二点は、製造が確定し標準図化したものは、原則全て生産技術部門または製造部門へ図面ごと移管してしまう。

 改善法の第三点は、標準図として移管したものは、設計部門からあらゆる出図業務を廃止する。その必要がある場合には、製作依頼伝票へ図面番号のみを記載する。

 改善法の第四点は、製造上コスト低減法の改善を行う、工作上の変更を行いたい設計変更は、商品、製品機能、性能、特性に影響しない範囲で自由に行えるルールとする。但し設計変更に当たり必要な試験、検証を義務付け、設計部門へ結果をフィードバックし承認を受けるルールとして置く事が大切となる。

「改善による効果」

 生産移行した標準図を生産技術部門または製造部門が直接資料、図面管理することで、従来設計部門が行わなければならなかった資料、図面管理と出図業務が軽減、省略が可能となる。また同じ図面を何回も設計部門から繰り返し出図するムダも併せて省略も可能となる。同時に生産技術部門または製造部門も必要な製造技術上の設計変更へ、対応し易くなる。

 従来、資料、図面管理のための場所確保と出図業務を行うための専任者を置く負担が、軽減または削減可能となる。これは、出図などに伴う設計部門の付帯業務、特に非付加価値業務を顕著(5%以上)に削減する効果が有る。

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「引用文献」

・本稿は筆者(伊豫部将三)が執筆し、日刊工業新聞社から1995年3月単行本として刊行され、2020年3月廃刊処理された機会に「設計のムダ退治101」へ掲載した内容を、今回ブログ掲載に当りタイトルを「設計の働き方改革とムダ退治法事例」へ変更し、内容の見直しと不足部分を加筆し、不備部は訂正した。

 念の為、原本で入手ご希望の方は、出版元(日刊工業新聞社・出版局)へお問い合わせを給わりたく、何分宜しくお願い申し上げます。

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「ムダ退治法101事例・全体目次」

「日常業務に於けるムダ」

iyoblog (4-01)・事例・01「設計で類似内容を繰り返し新規創出しているムダ」

iyoblog (4-02)・事例・02「社内蓄積保管資料探索にその都度時間を掛けるムダ」

iyoblog (4-03)・事例・03「同一仕様技術資料を繰り返し新規出図するムダ」

iyoblog (4-04)・事例・04「類似仕様決定のため、その都度繰り返し新規試作・試験するムダ」

iyoblog (4-05)・事例・05「予め決められる技術基準を前以って決めていないため、その都度判断を加えるムダ」

iyoblog (4-06)・事例・06「気付かず負(マイナス)の付加価値形成をしているムダ」

iyoblog (4-07)・事例・07「フリーハンド・メモ・ポンチ絵(マンガ)・イラストで済む情報を定規で製図・清書するムダ」

iyoblog (4-08)・事例・08「事前・途中の指導を疎かにし、完成してから点検・手直しを行わせるムダ」

iyoblog (4-09)・事例・09「関係部署・担当者間での連絡不備、調整が無い為、類似製品での機種を増加させているムダ」

iyoblog (4-10)・事例・10「先行技術を調査確認しないで、知らずに公知技術を新規開発しているムダ」

iyoblog (4-11)・事例・11「「理由なく雑誌や資料を何でもコピー私蔵するムダ」

iyoblog (4-12)・事例・12「勘と記憶を頼りに旧式の設計を繰り返し、何時も過剰品質とするムダ」

iyoblog (4-13)・事例・13「安い市販規格品に気付かず、コストの高い物を知らずに新規設計するムダ」

iyoblog (4-14)・事例・14「ルールと分担が明確にされていないため、同じ内容を何人もで繰り返し点検・審査するムダ」

iyoblog (4-15)・事例・15「設計担当者の技術情報創出時間が少なくなっているムダ」

iyoblog (4-16)・事例・16「既存・現用品を活用せず、安易な新規設計で保管図面・資料を増加させるムダ」

iyoblog (4-17)・事例・17「裏付け根拠もなく、適当に見当で作った守れない出図日程(設計期間)となるムダ」

iyoblog (4-18)・事例・18「設計品質が、担当者個人の能力・資質・適性(キャラクタ)に左右されるムダ」

「設計変更を発生させるムダ」

iyoblog (4-19)・事例・19「間違いを作り込ませておいて、上司・先輩が後から捜すムダ」

iyoblog (4-20)・事例・20「本人の注意で防げる間違いを、他人が検図するムダ」

iyoblog (4-21)・事例・21「いきなり実物TRYして失敗するムダ」

iyoblog (4-22)・事例・22「取扱い時の注意を明確に仕様に組み込まないため、市場でクレーム・トラブルとなるムダ」

iyoblog (4-23)・事例・23「施工時の注意を明確に指示しないため、製造でラインクレーム・トラブルとなるムダ」

iyoblog (4-24)・事例・24「製品仕様の範囲を明確に表示しないため、ユーザーでクレームを発生させているムダ」

iyoblog (4-25)・事例・25「関連個所を同時に決め、記入点検すれば防げる間違いを出しているムダ」

iyoblog (4-26)・事例・26「再発防止とならない対策繰り返しのムダ」

iyoblog (4-27)・事例・27「残業・休日出勤を繰り返し、新しい知識と感覚のチャージを怠り、疲労した頭で間違いを繰り返すムダ」

iyoblog (4-28)・事例・28「日程優先から点検不備で出図して、トラブルのため結果として納期遅れを発生させるムダ」

iyoblog (4-29)・事例・29「トラブル履歴、メンテナンス有無を確かめず、出図した再生図でクレームが出てから対応するムダ」

iyoblog (4-30)・事例・30「ライバル品を物真似し、クレームが出てから慌てて確認テストするムダ」

iyoblog (4-31)・事例・31「上司への事前了解と事後報告をキチント行わず、トラブルを発生させているムダ」

iyoblog (4-32)・事例・32「安易な妥協で、結局トラブルとなる点検・審査のムダ」

iyoblog (4-33)・事例・33「点検せず出図して、後から差し替えを繰り返すムダ」

iyoblog (4-34)・事例・34「エラーによるトラブル内容をその都度周知徹底しないため、類似トラブルを繰り返し発生させているムダ」

iyoblog (4-35)・事例・35「作ってもその場だけしか使わないチェクリスト作成のムダ」

「資料整備・活用面に於けるムダ」

iyoblog (4-36)・事例・36「資料を全員にCOPY配布して活用されないムダ」

iyoblog (4-37)・事例・37JISや業界規格を丸写しにした社内規格を制定するムダ」

iyoblog (4-38)・事例・38「キーワード登録・整理しないため、検索出来ず活用されない資料保管のムダ」

iyoblog (4-39)・事例・39「実験・試験DATAグラフ化・定式(数式)化整理しないため、他の担当者が活用できないムダ」

iyoblog (4-40)・事例・40「活用は二の次で、保管する為だけにマイクロフィルム化するムダ」

iyoblog (4-41)・事例・41「設計参考資料・設計規格を見ながら、その都度新規に設計着手を繰り返すムダ」

iyoblog (4-42)・事例・42「仕様書・図面・試験(検証)報告書・クレーム報告書・調査報告書・手配表など別々に台帳分類・登録保管としているため相互の関連付け、活用を妨げているムダ」

iyoblog (4-43)・事例・43「整理・整頓を疎かにし、その都度資料捜しに時間を掛けるムダ」

iyoblog (4-44)・事例・44「メンテナンスがキチンと行われないため、活用されない資料のムダ」

「機械化面に於けるムダ」

iyoblog (4-45)・事例・45「設計者が技術情報を創出して機械へ入力しなければ、プリントアウト出来ない設計機械化のムダ」

iyoblog (4-46)・事例・46「機械化出来る所を、手作業で行っているムダ」

iyoblog (4-47)・事例・47「技術情報創出に関係無い製図の機械化に多くの費用と人員を投入しているムダ」

iyoblog (4-48)・事例・48「訂正箇所を検図者へ明示しないため、全体を再検図させているムダ」

iyoblog (4-49)・事例・49「電子ファイルを技術情報創出時間短縮手段として活用しないムダ」

iyoblog (4-50)・事例・50「パソコンを蓄積保管資料(技術情報)検索手段として活用しないムダ」

iyoblog (4-51)・事例・51「類似設計の繰り返しが多いのに、CADを有効に活用しきれないムダ」

iyoblog (4-52)・事例・52CAD導入で、出図が検図で手戻りが増え従来より遅れるムダ」

iyoblog (4-53)・事例・53CAD端末の前に設計者が居ると、仕事をしていると周囲が錯覚するムダ」

iyoblog (4-54)・事例・54CADを導入しながら、既存図面のデジタル化が進まず流用設計に活用しきれないムダ」

iyoblog (4-55)・事例・55「設備稼働率を高めるため、CADで二直を行わせるムダ」

iyoblog (4-56)・事例・56CAD導入後DATA-BASE構築まで、長期間活用開始を手待ちするムダ」

iyoblog (4-57)・事例・57「設計のCAD-DATAを、後の生産工程へ生かせられないムダ」

iyoblog (4-58)・事例・58CADKEY-WORD検索機能を組み入れ活用しないムダ」

iyoblog (4-59)・事例・59「製図のため、設計者がCAD端末から技術情報を入力するムダ」

iyoblog (4-60)・事例・60「パソコンをシュミレーション手段として活用しないムダ」

iyoblog (4-61)・事例・61CAD化のため上司・先輩が途中に介入出来ず、プリント、訂正を繰り返させるムダ」

iyoblog (4-62)・事例・62「電子ファイルの編集機能を活用しないムダ」

iyoblog (4-63)・事例・63「CAD を設計時間節約手段として役立てられないムダ」

「外注活用面に於けるムダ」

iyoblog (4-64)・事例・64「事前・途中の指導を疎かにし、受け入れ後の確認と手直しに時間を掛ける外注活用のムダ」

iyoblog (4-65)・事例・65「研修条件が曖昧なため、間違いを依頼者が手直しするムダ」

iyoblog (4-66)・事例・66「外注を猫の手としてしか活用しないムダ」

iyoblog (4-67)・事例・67「付加価値獲得を高める手段として設計外注を活用出来ないムダ」

「補助者活用面に於けるムダ」

iyoblog (4-68)・事例・68「経験が無くても出来る設計部分をベテランが行うムダ」

iyoblog (4-69)・事例・69「補助者に雑用(非付加価値作業)を行わせるムダ」

iyoblog (4-70)・事例・70「類似設計の手引書化を疎かにし、設計業務を単純作業対応化出来ないムダ」

iyoblog (4-71)・事例・71「補助者を使いきれず、遊ばせているムダ」

iyoblog (4-72)・事例・72「補助者を技術情報創出に充てられないムダ」

iyoblog (4-73)・事例・73「手本図・手引書などが無いため補助者・外注へその都度説明を繰り返すムダ」

iyoblog (4-74)・事例・74「担当者が手を着けるべき範囲と補助者化出来る範囲を明確に区分出来ないため、補助者を活用出来ないムダ」

「教育面に於けるムダ」

iyoblog (4-75)・事例・75「教えないため任せられず、上司・ベテランだけが忙しさに追われているムダ」

iyoblog (4-76)・事例・76「手伝わせるだけで教えないため、技術知識の修得にならないOJT教育のムダ」

iyoblog (4-77)・事例・77「演習・実習が伴わないため、実際の設計が行えない教育のムダ」

iyoblog (4-78)・事例・78「知っているかどうかを確かめないで、一方的に行う教育のムダ」

iyoblog (4-79)・事例・79「教えたことが、修得されたかどうか確認しないで終わっている教育のムダ」

iyoblog (4-80)・事例・80「参考資料を与えれば、教えないでも設計が出来ると錯覚しているムダ」

「その他の面に於けるムダ」

iyoblog (4-81)・事例・81「部下・後輩を指導出来ず自主性に任せ、やきもきするムダ」

iyoblog (4-82)・事例・82「複数案を並行試験確認で進めないために、開発・設計期間を延ばしているムダ」

iyoblog (4-83)・事例・83「理念が無いため評価・判断基準が定まらず、担当者を困惑・混乱させているムダ」

iyoblog (4-84)・事例・84「専門化を進め過ぎ、ノウハウ経験が私物化して会社に蓄積されないムダ」

iyoblog (4-85)・事例・85「内容の検索に役立たない保管だけに図番分類する台帳分類方法のムダ」

iyoblog (4-86)・事例・86「中味(実)に関係無く、件数だけ多く申請する特許のムダ」

iyoblog (4-87)・事例・87「不良品でテストして、結果として使えない試験DATAとなるムダ」

iyoblog (4-88)・事例・88「相見積もりで安さだけ追求し、後で手直しの多い外部製作手配のムダ」

iyoblog (4-89)・事例・89「特許申請を怠り、市場で係争に成ってから慌てて対応するムダ」

iyoblog (4-90)・事例・90「何でも直接自分で手を付けないと気がすまず、自分だけ忙しくするムダ」

iyoblog (4-91)・事例・91「上司・先輩同士の見解違いから、調整に時間を掛けるムダ」

iyoblog (4-92)・事例・92「判断基準が与えられないため、その都度上司に相談・了解を得なければならないムダ」

iyoblog (4-93)・事例・93「内容が曖昧で要領の悪い、頁数の多いレポート作成のムダ」

iyoblog (4-94)・事例・94「過剰手配で持つ、部品購入と保管のムダ」

iyoblog (4-95)・事例・95「技術情報創出時間比率が30%以下なのに、慢性的工数不足に陥っているムダ」

iyoblog (4-96)・事例・96「出図枚数を管理項目とするムダ」

iyoblog (4-97)・事例・97「途中の状況把握を細目に行わず、納期が来てから遅れを知るムダ」

iyoblog (4-98)・事例・98「購入品入手までのリードタイム把握を疎かにし、手待ちとなるムダ」

iyoblog (4-99)・事例・99「ベテランが付加価値増加に寄与する業務に専念出来ないため、付加価値獲得時間を大きく出来ないムダ」

iyoblog (4-100)・事例・100「結論の出ない対策会議開催のムダ」

iyoblog (4-101)・事例・101「設計管理で生産技術的観点を持たないため、設計業務での改善が行われないムダ」

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「筆者略歴」

 1957年4月~1974年3月の17年間・富士重工業㈱(注・現社名スバル)三鷹製作所(現・群馬県大泉町へ移転)生産技術部門に勤務。乗用車用エンジン・ミッション製造の工場自動化機器・専用機設計業務へ従事。1974年技術士(機械部門・第7916号)登録、伊豫部技術士事務所を開設。開発・設計および生産技術部門の技術コンサルタントとして現在に至る。この間、上場および中堅企業100社以上で社員教育や業務改善支援業務に従事。現在までに、社団法人日本技術士会理事、りそな中小企業振興財団「中小企業庁長官新技術・新製品賞」贈賞の専門審査委員、東大和市商工会理事、等を歴任。

 著書「設計の故障解析51(CD-ROM付)」、「設計の基本仕様51(CD-ROM付)」、「設計のマネジメント101」、「設計者の心得と実務101」、「設計の経験則101」、「設計の凡ミス退治101」、「設計のムダ退治101」、「ハンドリング簡易自動化201」、「設計審査(DR=Design Review)支援ツール集・Ⅰ(事前審査編)」以上日刊工業新聞社から刊行。月刊「機械設計」誌へ長期連載等あり。「品質機能展開50事例(CD-ROM付)」、「MC選定資料マニアル」、熊谷卓氏と共著「組立・ハンドリング自動化実例図集」、以上新技術開発センターから刊行などが有る。

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社内蓄積保管資料探索にその都度時間を掛けるムダ・事例(4-02)

iyoblog (4-02)「設計の働き方改革とムダ退治法101事例」設計力向上研究会(伊豫部将三)編

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「現状と問題点」

 設計者が経験の乏しい新規テーマに着手する必要が生じた場合には、参考事例調べとしての既成設計品とその関連資料捜しが、最初に行われる。この資料捜しに於いてその都度繰り返し必要以上の時間が掛かるなどのムダが発生する。

 何故参考事例調べが必要か?と言えば、担当者に経験が少ない・乏しい分野の商品・製品の対象市場(主なユーザー)情報と実際の使われ方、そのために必要なニーズを実現する原理、方式、構造の選択と、要求仕様としての機能、性能、特性、設計条件などの設定法・設計思想などを先行する既成設計品で実成功事例を知りたいためである。

 従って最初は、計画、構想へ取り組むに当たって、先行する既成設計品で実現している仕様としての機能、性能、特性、設計条件などの設計思想の細目設定面に重点を置いた関連資料捜しが目的となる。

 社内に先行事例が豊富に有る場合には、現物と既存図面や試験報告書を含め関連資料捜しが中心となる。またその過程で必要に応じて現物とカタログ、関連特許の有無と出願書類、外部雑誌などの紹介記事入手なども行われる。

 何故その都度資料捜しが必要になるか?と言えば、担当者は失敗を恐れるためである。自分は、失敗したくないと思う気持ちが強く働くためである。

 捜し方は、図番と各種報告書へ登録の管理台帳から調べ、原紙またはコピーを収集、閲覧する。筆者が関与した企業の殆どでは、施工や製造に必要で作成された図面類や試験報告書類では分類(CODE)番号を着け台帳登録・保管している所は多いが、仕様書(要求機能・性能・特性・設計条件などの設定細目)を設計思想が判る様にまとめ、内容を具体的にKEYWORD登録や分類(CODE)の上保管している所が少ない実態がある。

 従って既存品の設計担当者が社内に居る場合には、設計思想や注意点を直接聞く事を出来るが、居ない場合には資料類が無い部分的について現物を試験確認して見ないと判らないことに成り、思わぬ失敗に繋がる場合が発生する。

「着眼点・分析と評価法」

 図-21へ「設計着手時に繰り返し資料捜しの対象となるテーマ例」を系統図で示す。

 最初に図中の1枠側で示す商品・製品機能をまとめる構想・基本設計時に必要な技術情報の有無を捜す事が行われる。その中味は四つ有り、第一は図中1-(1)枠で示す「システム構成、構造、原理構築法、特性・保証性能設定法、設計思想、設計法」などの参考事例資料が対象である。第二は、図中1-(2)枠で示す「ユーザー規格、法・条例規制、機能限界」などの参考事例資料である。第三は、図中1-(3)枠で示す「同等ライバル品仕様・性能・販売コスト・設計特徴」などの参考事例資料参考事例資料である。第四は、図中1-(4)で示す「市場クレーム・トラブル情報、それに対するユーザーの改善要求事項」などの参考事例資料が対象である。

 次に図中の2枠側で示す製造条件をまとめる詳細設計時に必要な情報の有無を捜す事が行われる。その中味は同様に四つ有り、第一は、図中2-(1)枠で示す「構造、方式、部品、構成、組立・調整法、点数・使用材料」などの参考事例資料である。第二は、図中2-(2)枠で示す「同等既成類似品の信頼性・製造品質・製造コストなどの参考事例資料である。第三は、図中2-(3)枠で示す「製造工場における製造規格、ライン能力、工作限界」などの参考事例資料である。第四は、図中2-(4)枠で示す「ラインクレーム・トラブル情報、それに対するラインからの改善要求事項」などの参考事例資料である。

 前記設計時に必要な参考事例資料を捜す必要が生じた際、現状において簡単且つ短時間に誰にでも捜せる仕組みが出来ているか?どうか?が大切となる。

「改善点と取り組み法」

 改善法の第一点は、図面その他の資料に記載されている内容・情報項目から直接検索出来る様にする事が大切となる。このため保管してある図面や資料に記載されている情報を直接KEYWORD(キーワード)検索できる様に仕組みを構築する事が大切となる。

 改善法の第二点は、仕様(要求機能・性能・特性・設計条件細目)・設計思想を文書化して図面などと一緒に台帳登録保管して再利用出来る様にして置く事が望ましい。但し外部へ出図する事による機密保持が難しい場合には、工作図面類と設計思想をまとめた仕様書類は、分類(CODE)を別管理して置く事を勧めたい。

「改善による効果」

 参考事例を調べるに当たり、設計担当者がイメージした言語KEYWORD(キーワード)と設定条件、設計思想から既成設計品資料の検索が可能となれば、従来資料捜しに掛けていた時間を大幅に節約する事が可能となる。

 設計者担当者が設計初期に構想・基本設計案をまとめる為に資料捜しに投入している時間は、内容解読に要する時間を含めて10~25%、平均で15%前後を占める。特に経験の無いテーマへの取り組みでは、この比率が高くなる傾向が有る。この時間は、設定条件、設計思想を確立するために殆どが費やされる場合が多い。資料検索の仕組みが適切に構築されれば、従来資料捜しに投入した実時間を1/5~1/10化する事が可能となる。

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「引用文献」

・本稿は筆者(伊豫部将三)が執筆し、日刊工業新聞社から1995年3月単行本として刊行され、2020年3月廃刊処理された機会に「設計のムダ退治101」へ掲載した内容を、今回ブログ掲載に当りタイトルを「設計の働き方改革とムダ退治法事例」へ変更し、内容の見直しと不足部分を加筆し、不備部は訂正した。

 念の為、原本で入手ご希望の方は、出版元(日刊工業新聞社・出版局)へお問い合わせを給わりたく、何分宜しくお願い申し上げます。

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「ムダ退治法101事例・全体目次」

「日常業務に於けるムダ」

iyoblog (4-01)・事例・01「設計で類似内容を繰り返し新規創出しているムダ」

iyoblog (4-02)・事例・02「社内蓄積保管資料探索にその都度時間を掛けるムダ」

iyoblog (4-03)・事例・03「同一仕様技術資料を繰り返し新規出図するムダ」

iyoblog (4-04)・事例・04「類似資料決定のため、その都度繰り返し新規試作・試験するムダ」

iyoblog (4-05)・事例・05「予め決められる技術基準を前以って決めていないため、その都度判断を加えるムダ」

iyoblog (4-06)・事例・06「気付かず負(マイナス)の付加価値形成をしているムダ」

iyoblog (4-07)・事例・07「フリーハンド・メモ・ポンチ絵(マンガ)・イラストで済む情報を定規で製図・清書するムダ」

iyoblog (4-08)・事例・08「事前・途中の指導を疎かにし、完成してから点検・手直しを行わせるムダ」

iyoblog (4-09)・事例・09「関係部署・担当者間での連絡不備、調整が無い為、類似製品での機種を増加させているムダ」

iyoblog (4-10)・事例・10「先行技術を調査確認しないで、知らずに公知技術を新規開発しているムダ」

iyoblog (4-11)・事例・11「「理由なく雑誌や資料を何でもコピー私蔵するムダ」

iyoblog (4-12)・事例・12「勘と記憶を頼りに旧式の設計を繰り返し、何時も過剰品質とするムダ」

iyoblog (4-13)・事例・13「安い市販規格品に気付かず、コストの高い物を知らずに新規設計するムダ」

iyoblog (4-14)・事例・14「ルールと分担が明確にされていないため、同じ内容を何人もで繰り返し点検・審査するムダ」

iyoblog (4-15)・事例・15「設計担当者の技術情報創出時間が少なくなっているムダ」

iyoblog (4-16)・事例・16「既存・現用品を活用せず、安易な新規設計で保管図面・資料を増加させるムダ」

iyoblog (4-17)・事例・17「裏付け根拠もなく、適当に見当で作った守れない出図日程(設計期間)となるムダ」

iyoblog (4-18)・事例・18「設計品質が、担当者個人の能力・資質・適性(キャラクタ)に左右されるムダ」

「設計変更を発生させるムダ」

iyoblog (4-19)・事例・19「間違いを作り込ませておいて、上司・先輩が後から捜すムダ」

iyoblog (4-20)・事例・20「本人の注意で防げる間違いを、他人が検図するムダ」

iyoblog (4-21)・事例・21「いきなり実物TRYして失敗するムダ」

iyoblog (4-22)・事例・22「取扱い時の注意を明確に仕様に組み込まないため、市場でクレーム・トラブルとなるムダ」

iyoblog (4-23)・事例・23「施工時の注意を明確に指示しないため、製造でラインクレーム・トラブルとなるムダ」

iyoblog (4-24)・事例・24「製品仕様の範囲を明確に表示しないため、ユーザーでクレームを発生させているムダ」

iyoblog (4-25)・事例・25「関連個所を同時に決め、記入点検すれば防げる間違いを出しているムダ」

iyoblog (4-26)・事例・26「再発防止とならない対策繰り返しのムダ」

iyoblog (4-27)・事例・27「残業・休日出勤を繰り返し、新しい知識と感覚のチャージを怠り、疲労した頭で間違いを繰り返すムダ」

iyoblog (4-28)・事例・28「日程優先から点検不備で出図して、トラブルのため結果として納期遅れを発生させるムダ」

iyoblog (4-29)・事例・29「トラブル履歴、メンテナンス有無を確かめず、出図した再生図でクレームが出てから対応するムダ」

iyoblog (4-30)・事例・30「ライバル品を物真似し、クレームが出てから慌てて確認テストするムダ」

iyoblog (4-31)・事例・31「上司への事前了解と事後報告をキチント行わず、トラブルを発生させているムダ」

iyoblog (4-32)・事例・32「安易な妥協で、結局トラブルとなる点検・審査のムダ」

iyoblog (4-33)・事例・33「点検せず出図して、後から差し替えを繰り返すムダ」

iyoblog (4-34)・事例・34「エラーによるトラブル内容をその都度周知徹底しないため、類似トラブルを繰り返し発生させているムダ」

iyoblog (4-35)・事例・35「作ってもその場だけしか使わないチェクリスト作成のムダ」

「資料整備・活用面に於けるムダ」

iyoblog (4-36)・事例・36「資料を全員にCOPY配布して活用されないムダ」

iyoblog (4-37)・事例・37JISや業界規格を丸写しにした社内規格を制定するムダ」

iyoblog (4-38)・事例・38「キーワード登録・整理しないため、検索出来ず活用されない資料保管のムダ」

iyoblog (4-39)・事例・39「実験・試験DATAグラフ化・定式(数式)化整理しないため、他の担当者が活用できないムダ」

iyoblog (4-40)・事例・40「活用は二の次で、保管する為だけにマイクロフィルム化するムダ」

iyoblog (4-41)・事例・41「設計参考資料・設計規格を見ながら、その都度新規に設計着手を繰り返すムダ」

iyoblog (4-42)・事例・42「仕様書・図面・試験(検証)報告書・クレーム報告書・調査報告書・手配表など別々に台帳分類・登録保管としているため相互の関連付け、活用を妨げているムダ」

iyoblog (4-43)・事例・43「整理・整頓を疎かにし、その都度資料捜しに時間を掛けるムダ」

iyoblog (4-44)・事例・44「メンテナンスがキチンと行われないため、活用されない資料のムダ」

「機械化面に於けるムダ」

iyoblog (4-45)・事例・45「設計者が技術情報を創出して機械へ入力しなければ、プリントアウト出来ない設計機械化のムダ」

iyoblog (4-46)・事例・46「機械化出来る所を、手作業で行っているムダ」

iyoblog (4-47)・事例・47「技術情報創出に関係無い製図の機械化に多くの費用と人員を投入しているムダ」

iyoblog (4-48)・事例・48「訂正箇所を検図者へ明示しないため、全体を再検図させているムダ」

iyoblog (4-49)・事例・49「電子ファイルを技術情報創出時間短縮手段として活用しないムダ」

iyoblog (4-50)・事例・50「パソコンを蓄積保管資料(技術情報)検索手段として活用しないムダ」

iyoblog (4-51)・事例・51「類似設計の繰り返しが多いのに、CADを有効に活用しきれないムダ」

iyoblog (4-52)・事例・52CAD導入で、出図が検図で手戻りが増え従来より遅れるムダ」

iyoblog (4-53)・事例・53CAD端末の前に設計者が居ると、仕事をしていると周囲が錯覚するムダ」

iyoblog (4-54)・事例・54CADを導入しながら、既存図面のデジタル化が進まず流用設計に活用しきれないムダ」

iyoblog (4-55)・事例・55「設備稼働率を高めるため、CADで二直を行わせるムダ」

iyoblog (4-56)・事例・56CAD導入後DATA-BASE構築まで、長期間活用開始を手待ちするムダ」

iyoblog (4-57)・事例・57「設計のCAD-DATAを、後の生産工程へ生かせられないムダ」

iyoblog (4-58)・事例・58CADKEY-WORD検索機能を組み入れ活用しないムダ」

iyoblog (4-59)・事例・59「製図のため、設計者がCAD端末から技術情報を入力するムダ」

iyoblog (4-60)・事例・60「パソコンをシュミレーション手段として活用しないムダ」

iyoblog (4-61)・事例・61CAD化のため上司・先輩が途中に介入出来ず、プリント、訂正を繰り返させるムダ」

iyoblog (4-62)・事例・62「電子ファイルの編集機能を活用しないムダ」iyoblog (4-63)・事例・63「CADを設計時間節約手段として役立てられないムダ」

「外注活用面に於けるムダ」

iyoblog (4-64)・事例・64「事前・途中の指導を疎かにし、受け入れ後の確認と手直しに時間を掛ける外注活用のムダ」

iyoblog (4-65)・事例・65「研修条件が曖昧なため、間違いを依頼者が手直しするムダ」

iyoblog (4-66)・事例・66「外注を猫の手としてしか活用しないムダ」

iyoblog (4-67)・事例・67「付加価値獲得を高める手段として設計外注を活用出来ないムダ」

「補助者活用面に於けるムダ」

iyoblog (4-68)・事例・68「経験が無くても出来る設計部分をベテランが行うムダ」

iyoblog (4-69)・事例・69「補助者に雑用(非付加価値作業)を行わせるムダ」

iyoblog (4-70)・事例・70「類似設計の手引書化を疎かにし、設計業務を単純作業対応化出来ないムダ」

iyoblog (4-71)・事例・71「補助者を使いきれず、遊ばせているムダ」

iyoblog (4-72)・事例・72「補助者を技術情報創出に充てられないムダ」

iyoblog (4-73)・事例・73「手本図・手引書などが無いため補助者・外注へその都度説明を繰り返すムダ」

iyoblog (4-74)・事例・74「担当者が手を着けるべき範囲と補助者化出来る範囲を明確に区分出来ないため、補助者を活用出来ないムダ」

「教育面に於けるムダ」

iyoblog (4-75)・事例・75「教えないため任せられず、上司・ベテランだけが忙しさに追われているムダ」

iyoblog (4-76)・事例・76「手伝わせるだけで教えないため、技術知識の修得にならないOJT教育のムダ」

iyoblog (4-77)・事例・77「演習・実習が伴わないため、実際の設計が行えない教育のムダ」

iyoblog (4-78)・事例・78「知っているかどうかを確かめないで、一方的に行う教育のムダ」

iyoblog (4-79)・事例・79「教えたことが、修得されたかどうか確認しないで終わっている教育のムダ」

iyoblog (4-80)・事例・80「参考資料を与えれば、教えないでも設計が出来ると錯覚しているムダ」

「その他の面に於けるムダ」

iyoblog (4-81)・事例・81「部下・後輩を指導出来ず自主性に任せ、やきもきするムダ」

iyoblog (4-82)・事例・82「複数案を並行試験確認で進めないために、開発・設計期間を延ばしているムダ」

iyoblog (4-83)・事例・83「理念が無いため評価・判断基準が定まらず、担当者を困惑・混乱させているムダ」

iyoblog (4-84)・事例・84「専門化を進め過ぎ、ノウハウ経験が私物化して会社に蓄積されないムダ」

iyoblog (4-85)・事例・85「内容の検索に役立たない保管だけに図番分類する台帳分類方法のムダ」

iyoblog (4-86)・事例・86「中味(実)に関係無く、件数だけ多く申請する特許のムダ」

iyoblog (4-87)・事例・87「不良品でテストして、結果として使えない試験DATAとなるムダ」

iyoblog (4-88)・事例・88「相見積もりで安さだけ追求し、後で手直しの多い外部製作手配のムダ」

iyoblog (4-89)・事例・89「特許申請を怠り、市場で係争に成ってから慌てて対応するムダ」

iyoblog (4-90)・事例・90「何でも直接自分で手を付けないと気がすまず、自分だけ忙しくするムダ」

iyoblog (4-91)・事例・91「上司・先輩同士の見解違いから、調整に時間を掛けるムダ」

iyoblog (4-92)・事例・92「判断基準が与えられないため、その都度上司に相談・了解を得なければならないムダ」

iyoblog (4-93)・事例・93「内容が曖昧で要領の悪い、頁数の多いレポート作成のムダ」

iyoblog (4-94)・事例・94「過剰手配で持つ、部品購入と保管のムダ」

iyoblog (4-95)・事例・95「技術情報創出時間比率が30%以下なのに、慢性的工数不足に陥っているムダ」

iyoblog (4-96)・事例・96「出図枚数を管理項目とするムダ」

iyoblog (4-97)・事例・97「途中の状況把握を細目に行わず、納期が来てから遅れを知るムダ」

iyoblog (4-98)・事例・98「購入品入手までのリードタイム把握を疎かにし、手待ちとなるムダ」

iyoblog (4-99)・事例・99「ベテランが付加価値増加に寄与する業務に専念出来ないため、付加価値獲得時間を大きく出来ないムダ」

iyoblog (4-100)・事例・100「結論の出ない対策会議開催のムダ」

iyoblog (4-101)・事例・101「設計管理で生産技術的観点を持たないため、設計業務での改善が行われないムダ」

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「筆者略歴」

 1957年4月~1974年3月の17年間・富士重工業㈱(注・現社名スバル)三鷹製作所(現・群馬県大泉町へ移転)生産技術部門に勤務。乗用車用エンジン・ミッション製造の工場自動化機器・専用機設計業務へ従事。1974年技術士(機械部門・第7916号)登録、伊豫部技術士事務所を開設。開発・設計および生産技術部門の技術コンサルタントとして現在に至る。この間、上場および中堅企業100社以上で社員教育や業務改善支援業務に従事。現在までに、社団法人日本技術士会理事、りそな中小企業振興財団「中小企業庁長官新技術・新製品賞」贈賞の専門審査委員、東大和市商工会理事、等を歴任。

 著書「設計の故障解析51(CD-ROM付)」、「設計の基本仕様51(CD-ROM付)」、「設計のマネジメント101」、「設計者の心得と実務101」、「設計の経験則101」、「設計の凡ミス退治101」、「設計のムダ退治101」、「ハンドリング簡易自動化201」、「設計審査(DR=Design Review)支援ツール集・Ⅰ(事前審査編)」以上日刊工業新聞社から刊行。月刊「機械設計」誌へ長期連載等あり。「品質機能展開50事例(CD-ROM付)」、「MC選定資料マニアル」、熊谷卓氏と共著「組立・ハンドリング自動化実例図集」、以上新技術開発センターから刊行などが有る。

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設計で類似内容を繰り返し新規創出しているムダ・事例(4-01)

iyoblog (4-01)「設計の働き方改革とムダ退治取組法101事例」設計力向上研究会(伊豫部将三)編

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「現状と問題点」

 現在、筆者が関与した製造業の設計部門で、設計者が日常着手している設計の中味・内容を分析して見ると、図-11の三角形で示す様な実態(現状)が多く見られる。それは、類似内容への繰り返し新規着手の頻度が、非常に高くなっている事である。新規着手している中の90%強は、類似内容の繰り返しである。



 類似内容を繰り返し新規着手している状態は、設計者の能力と時間を浪費している「ムダ」以外の何物でも無い。これを行わずに済めば、繰り返しせず済んだ分、設計者の能力と時間を有効活用する事が可能となる。

  その意味で、この様な状態、出来るだけ早く減らすことが設計部門と設計者にとって望ましい。

 図-11の三角形で示す中味・内容は、三つに分類される。一番目は、図中①部分で、新規着手必要部分である。二番目は、図中②部分で、既存設計品修正活用可能部分である。三番目は、図中③部分で、既存図でそのまま対応(既存品へ置き換え)可能部分である。この中、図中②と③で示す部分が、類似着手を設計時に避けられる部分の事を言う。その比率は、全体の中で75%から95%の範囲で、多くの企業で平均的には90%強を占めている。この部分が、改善の対象となる「能力浪費=ムダ」となる。

「着眼点・分析と評価法」

 設計者が類似内容へどの程度繰り返し新規着手しているか?どうか?の調査は、対象とするグループが出図した図書(図面や資料文書類)で期間を定め回収し、分類する事により分析が可能となる。この場合期間を定めるとは、例えば過去6ケ月間、または1ケ年間に新図番登録して出図した図書(図面や資料文書類)を回収して調べる事である。この場合には、図書の一点毎に分類(CODE)記号を着け、同じ(CODE)記号を持つ図書が二点以上有る場合を数え、分析するものである。この時、同じ分類(CODE)記号を持つ図書(図面や資料文書類)が二点以上有る場合には、一点を除き残りは新規着手が避けられた筈の類似設計品と見做して分類する事になる。当然一点しか存在しないものは、新規着手が避けられなかったものとして分類される。これにより調査対象期間中に類似内容への新規着手がどの程度行われているか、発生頻度の実態を見るのである。

「改善点と取り組み法」

 改善法の第一は、出来るだけそのままで使用可能な「標準図」を数多く持つ事である。標準図とは、標準機能品として設計図化して置く事である。

 改善法の第二は、既成設計品、既存図面、既存資料文書類の検索の仕組みを誰にでも簡単に行える様に構築する事である。ここで検索の仕組みとは、設計時に必要な図面・資料文書類などが、商品・製品機能の要求仕様、性能、特性、設計条件など設計思想面を含めた色々な図面記載項目から、KEYWORDで簡単に捜し出せる様にする仕組みの事である。この場合、図面に設定条件など設計思想を事前に必ず記載して置く事が大切となる。

 改善法の第三は、標準図化が困難なものについては、標準設計方法を整備して、誰にでも設計できる「手引き書、手順書、手本図」などを数多く持つ事である。これによって、類似着手が必要な部分をベテラン設計者から取り除く事が可能となる。

「改善による効果」

 図-12へ標準図化の推進と資料検索の仕組み構築によって、既存図面有効活用化を図る事で類似繰り返しの着手頻度を減らし、時間節約化を図った場合の効果例を示す。


 図-12では、目標期間を3年間掛けて1/2化する場合の取り組み例として示す。

 図中「A」の部分は、既存図の標準図化推進と検索システム構築化で従来所要時間を1/4化出来る例として示す。

 図中「B」の部分は、既存図の修正活用化で従来所要時間を1/2化出来る例として示す。

 図中「C」の部分は、新規着手が避けられないで残る部分を示す。この部分は、従来裏付け検証へ十分時間を掛けられなかった所を、全体の時間節約を図る事で納得できる取り組み時間を確保出来る様に変えた事を示す例である。新規着手必要部分には、裏付け根拠としての検証することで従来時間の二倍確保化を進めた例である。

 図中「B」と「A」部分の改善で従来時間を1/3化し、「C」部分を二倍化しても、全体時間の1/2化を可能とさせた例を示す。

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「引用文献」

・本稿は筆者(伊豫部将三)が執筆し、日刊工業新聞社から1995年3月単行本として刊行され、2020年3月廃刊処理された機会に「設計のムダ退治101」へ掲載した内容を、今回ブログ掲載に当りタイトルを「設計の働き方改革とムダ退治法101事例」へ変更し、内容の見直しと不足部分を加筆し、不備部は訂正した。

 念の為、原本で入手ご希望の方は、出版元(日刊工業新聞社・出版局)へお問い合わせを給わりたく、何分宜しくお願い申し上げます。

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「ムダ退治法101事例・全体目次」

「日常業務に於けるムダ」

iyoblog (4-01)・事例・01「設計で類似内容を繰り返し新規創出しているムダ」

iyoblog (4-02)・事例・02「社内蓄積保管資料探索にその都度時間を掛けるムダ」

iyoblog (4-03)・事例・03「同一仕様技術資料を繰り返し新規出図するムダ」

iyoblog (4-04)・事例・04「類似資料決定のため、その都度繰り返し新規試作・試験するムダ」

iyoblog (4-05)・事例・05「予め決められる技術基準を前以って決めていないため、その都度判断を加えるムダ」

iyoblog (4-06)・事例・06「気付かず負(マイナス)の付加価値形成をしているムダ」

iyoblog (4-07)・事例・07「フリーハンド・メモ・ポンチ絵(マンガ)・イラストで済む情報を定規で製図・清書するムダ」

iyoblog (4-08)・事例・08「事前・途中の指導を疎かにし、完成してから点検・手直しを行わせるムダ」

iyoblog (4-09)・事例・09「関係部署・担当者間での連絡不備、調整が無い為、類似製品での機種を増加させているムダ」

iyoblog (4-10)・事例・10「先行技術を調査確認しないで、知らずに公知技術を新規開発しているムダ」

iyoblog (4-11)・事例・11「「理由なく雑誌や資料を何でもコピー私蔵するムダ」

iyoblog (4-12)・事例・12「勘と記憶を頼りに旧式の設計を繰り返し、何時も過剰品質とするムダ」

iyoblog (4-13)・事例・13「安い市販規格品に気付かず、コストの高い物を知らずに新規設計するムダ」

iyoblog (4-14)・事例・14「ルールと分担が明確にされていないため、同じ内容を何人もで繰り返し点検・審査するムダ」

iyoblog (4-15)・事例・15「設計担当者の技術情報創出時間が少なくなっているムダ」

iyoblog (4-16)・事例・16「既存・現用品を活用せず、安易な新規設計で保管図面・資料を増加させるムダ」

iyoblog (4-17)・事例・17「裏付け根拠もなく、適当に見当で作った守れない出図日程(設計期間)となるムダ」

iyoblog (4-18)・事例・18「設計品質が、担当者個人の能力・資質・適性(キャラクタ)に左右されるムダ」

「設計変更を発生させるムダ」

iyoblog (4-19)・事例・19「間違いを作り込ませておいて、上司・先輩が後から捜すムダ」

iyoblog (4-20)・事例・20「本人の注意で防げる間違いを、他人が検図するムダ」

iyoblog (4-21)・事例・21「いきなり実物TRYして失敗するムダ」

iyoblog (4-22)・事例・22「取扱い時の注意を明確に仕様に組み込まないため、市場でクレーム・トラブルとなるムダ」

iyoblog (4-23)・事例・23「施工時の注意を明確に指示しないため、製造でラインクレーム・トラブルとなるムダ」

iyoblog (4-24)・事例・24「製品仕様の範囲を明確に表示しないため、ユーザーでクレームを発生させているムダ」

iyoblog (4-25)・事例・25「関連個所を同時に決め、記入点検すれば防げる間違いを出しているムダ」

iyoblog (4-26)・事例・26「再発防止とならない対策繰り返しのムダ」

iyoblog (4-27)・事例・27「残業・休日出勤を繰り返し、新しい知識と感覚のチャージを怠り、疲労した頭で間違いを繰り返すムダ」

iyoblog (4-28)・事例・28「日程優先から点検不備で出図して、トラブルのため結果として納期遅れを発生させるムダ」

iyoblog (4-29)・事例・29「トラブル履歴、メンテナンス有無を確かめず、出図した再生図でクレームが出てから対応するムダ」

iyoblog (4-30)・事例・30「ライバル品を物真似し、クレームが出てから慌てて確認テストするムダ」

iyoblog (4-31)・事例・31「上司への事前了解と事後報告をキチント行わず、トラブルを発生させているムダ」

iyoblog (4-32)・事例・32「安易な妥協で、結局トラブルとなる点検・審査のムダ」

iyoblog (4-33)・事例・33「点検せず出図して、後から差し替えを繰り返すムダ」

iyoblog (4-34)・事例・34「エラーによるトラブル内容をその都度周知徹底しないため、類似トラブルを繰り返し発生させているムダ」

iyoblog (4-35)・事例・35「作ってもその場だけしか使わないチェクリスト作成のムダ」

「資料整備・活用面に於けるムダ」

iyoblog (4-36)・事例・36「資料を全員にCOPY配布して活用されないムダ」

iyoblog (4-37)・事例・37JISや業界規格を丸写しにした社内規格を制定するムダ」

iyoblog (4-38)・事例・38「キーワード登録・整理しないため、検索出来ず活用されない資料保管のムダ」

iyoblog (4-39)・事例・39「実験・試験DATAグラフ化・定式(数式)化整理しないため、他の担当者が活用できないムダ」

iyoblog (4-40)・事例・40「活用は二の次で、保管する為だけにマイクロフィルム化するムダ」

iyoblog (4-41)・事例・41「設計参考資料・設計規格を見ながら、その都度新規に設計着手を繰り返すムダ」

iyoblog (4-42)・事例・42「仕様書・図面・試験(検証)報告書・クレーム報告書・調査報告書・手配表など別々に台帳分類・登録保管としているため相互の関連付け、活用を妨げているムダ」

iyoblog (4-43)・事例・43「整理・整頓を疎かにし、その都度資料捜しに時間を掛けるムダ」

iyoblog (4-44)・事例・44「メンテナンスがキチンと行われないため、活用されない資料のムダ」

「機械化面に於けるムダ」

iyoblog (4-45)・事例・45「設計者が技術情報を創出して機械へ入力しなければ、プリントアウト出来ない設計機械化のムダ」

iyoblog (4-46)・事例・46「機械化出来る所を、手作業で行っているムダ」

iyoblog (4-47)・事例・47「技術情報創出に関係無い製図の機械化に多くの費用と人員を投入しているムダ」

iyoblog (4-48)・事例・48「訂正箇所を検図者へ明示しないため、全体を再検図させているムダ」

iyoblog (4-49)・事例・49「電子ファイルを技術情報創出時間短縮手段として活用しないムダ」

iyoblog (4-50)・事例・50「パソコンを蓄積保管資料(技術情報)検索手段として活用しないムダ」

iyoblog (4-51)・事例・51「類似設計の繰り返しが多いのに、CADを有効に活用しきれないムダ」

iyoblog (4-52)・事例・52CAD導入で、出図が検図で手戻りが増え従来より遅れるムダ」

iyoblog (4-53)・事例・53CAD端末の前に設計者が居ると、仕事をしていると周囲が錯覚するムダ」

iyoblog (4-54)・事例・54CADを導入しながら、既存図面のデジタル化が進まず流用設計に活用しきれないムダ」

iyoblog (4-55)・事例・55「設備稼働率を高めるため、CADで二直を行わせるムダ」

iyoblog (4-56)・事例・56CAD導入後DATA-BASE構築まで、長期間活用開始を手待ちするムダ」

iyoblog (4-57)・事例・57「設計のCAD-DATAを、後の生産工程へ生かせられないムダ」

iyoblog (4-58)・事例・58CADKEY-WORD検索機能を組み入れ活用しないムダ」

iyoblog (4-59)・事例・59「製図のため、設計者がCAD端末から技術情報を入力するムダ」

iyoblog (4-60)・事例・60「パソコンをシュミレーション手段として活用しないムダ」

iyoblog (4-61)・事例・61CAD化のため上司・先輩が途中に介入出来ず、プリント、訂正を繰り返させるムダ」

iyoblog (4-62)・事例・62「電子ファイルの編集機能を活用しないムダ」

iyoblog (4-63)・事例・63「CAD を設計時間節約手段として役立てられないムダ」

「外注活用面に於けるムダ」

iyoblog (4-64)・事例・64「事前・途中の指導を疎かにし、受け入れ後の確認と手直しに時間を掛ける外注活用のムダ」

iyoblog (4-65)・事例・65「研修条件が曖昧なため、間違いを依頼者が手直しするムダ」

iyoblog (4-66)・事例・66「外注を猫の手としてしか活用しないムダ」

iyoblog (4-67)・事例・67「付加価値獲得を高める手段として設計外注を活用出来ないムダ」

「補助者活用面に於けるムダ」

iyoblog (4-68)・事例・68「経験が無くても出来る設計部分をベテランが行うムダ」

iyoblog (4-69)・事例・69「補助者に雑用(非付加価値作業)を行わせるムダ」

iyoblog (4-70)・事例・70「類似設計の手引書化を疎かにし、設計業務を単純作業対応化出来ないムダ」

iyoblog (4-71)・事例・71「補助者を使いきれず、遊ばせているムダ」

iyoblog (4-72)・事例・72「補助者を技術情報創出に充てられないムダ」

iyoblog (4-73)・事例・73「手本図・手引書などが無いため補助者・外注へその都度説明を繰り返すムダ」

iyoblog (4-74)・事例・74「担当者が手を着けるべき範囲と補助者化出来る範囲を明確に区分出来ないため、補助者を活用出来ないムダ」

「教育面に於けるムダ」

iyoblog (4-75)・事例・75「教えないため任せられず、上司・ベテランだけが忙しさに追われているムダ」

iyoblog (4-76)・事例・76「手伝わせるだけで教えないため、技術知識の修得にならないOJT教育のムダ」

iyoblog (4-77)・事例・77「演習・実習が伴わないため、実際の設計が行えない教育のムダ」

iyoblog (4-78)・事例・78「知っているかどうかを確かめないで、一方的に行う教育のムダ」

iyoblog (4-79)・事例・79「教えたことが、修得されたかどうか確認しないで終わっている教育のムダ」

iyoblog (4-80)・事例・80「参考資料を与えれば、教えないでも設計が出来ると錯覚しているムダ」

「その他の面に於けるムダ」

iyoblog (4-81)・事例・81「部下・後輩を指導出来ず自主性に任せ、やきもきするムダ」

iyoblog (4-82)・事例・82「複数案を並行試験確認で進めないために、開発・設計期間を延ばしているムダ」

iyoblog (4-83)・事例・83「理念が無いため評価・判断基準が定まらず、担当者を困惑・混乱させているムダ」

iyoblog (4-84)・事例・84「専門化を進め過ぎ、ノウハウ経験が私物化して会社に蓄積されないムダ」

iyoblog (4-85)・事例・85「内容の検索に役立たない保管だけに図番分類する台帳分類方法のムダ」

iyoblog (4-86)・事例・86「中味(実)に関係無く、件数だけ多く申請する特許のムダ」

iyoblog (4-87)・事例・87「不良品でテストして、結果として使えない試験DATAとなるムダ」

iyoblog (4-88)・事例・88「相見積もりで安さだけ追求し、後で手直しの多い外部製作手配のムダ」

iyoblog (4-89)・事例・89「特許申請を怠り、市場で係争に成ってから慌てて対応するムダ」

iyoblog (4-90)・事例・90「何でも直接自分で手を付けないと気がすまず、自分だけ忙しくするムダ」

iyoblog (4-91)・事例・91「上司・先輩同士の見解違いから、調整に時間を掛けるムダ」

iyoblog (4-92)・事例・92「判断基準が与えられないため、その都度上司に相談・了解を得なければならないムダ」

iyoblog (4-93)・事例・93「内容が曖昧で要領の悪い、頁数の多いレポート作成のムダ」

iyoblog (4-94)・事例・94「過剰手配で持つ、部品購入と保管のムダ」

iyoblog (4-95)・事例・95「技術情報創出時間比率が30%以下なのに、慢性的工数不足に陥っているムダ」

iyoblog (4-96)・事例・96「出図枚数を管理項目とするムダ」

iyoblog (4-97)・事例・97「途中の状況把握を細目に行わず、納期が来てから遅れを知るムダ」

iyoblog (4-98)・事例・98「購入品入手までのリードタイム把握を疎かにし、手待ちとなるムダ」

iyoblog (4-99)・事例・99「ベテランが付加価値増加に寄与する業務に専念出来ないため、付加価値獲得時間を大きく出来ないムダ」

iyoblog (4-100)・事例・100「結論の出ない対策会議開催のムダ」

iyoblog (4-101)・事例・101「設計管理で生産技術的観点を持たないため、設計業務での改善が行われないムダ」

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「筆者略歴」

 1957年4月~1974年3月の17年間・富士重工業㈱(注・現社名スバル)三鷹製作所(現・群馬県大泉町へ移転)生産技術部門に勤務。乗用車用エンジン・ミッション製造の工場自動化機器・専用機設計業務へ従事。1974年技術士(機械部門・第7916号)登録、伊豫部技術士事務所を開設。開発・設計および生産技術部門の技術コンサルタントとして現在に至る。この間、上場および中堅企業100社以上で社員教育や業務改善支援業務に従事。現在までに、社団法人日本技術士会理事、りそな中小企業振興財団「中小企業庁長官新技術・新製品賞」贈賞の専門審査委員、東大和市商工会理事、等を歴任。

 著書「設計の故障解析51(CD-ROM付)」、「設計の基本仕様51(CD-ROM付)」、「設計のマネジメント101」、「設計者の心得と実務101」、「設計の経験則101」、「設計の凡ミス退治101」、「設計のムダ退治101」、「ハンドリング簡易自動化201」、「設計審査(DR=Design Review)支援ツール集・Ⅰ(事前審査編)」以上日刊工業新聞社から刊行。月刊「機械設計」誌へ長期連載等あり。「品質機能展開50事例(CD-ROM付)」、「MC選定資料マニアル」、熊谷卓氏と共著「組立・ハンドリング自動化実例図集」、以上新技術開発センターから刊行などが有る。

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設計の働き方改革・ムダ退治と5S(4-0-2)・解説

iyoblog (4-0-2)「設計の働き方改革とムダ退治法101事例」設計力向上研究会(伊豫部将三)編

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iyoblog (4-0-2)・「ムダ退治と5S」解説

 ムダとは、能力を浪費する事である。ムダ退治とは、能力浪費を防止または予防する事である。

 5Sとは、整理、整頓、清潔、清掃、躾(しつけ)の頭文字を並べたものである。

(注・工場の作業現場などで通常行っている5S運動では、①・整理、②・整頓、③・清掃、④・清潔、⑤・躾の順序が一般化している。筆者は、敢えて③・整頓と④・清潔の順序を入れ替えて本文では説明している。その理由は、頭脳労働で有る設計や開発作業では、清掃が先では何を持って綺麗とすべきか?の基準がはっきりしない。出来ない。その為、清掃へ中々着手出来ない。実際には、清掃で何をすれば良いのか手が着けられない。そこで清潔の基準を先に定義する事が必要となる。その為、③・清潔と④・清掃の順序を入れ替える必要が生じた。これを読者は、最初にご理解頂きたい。)

 設計のムダ退治とは、開発や設計業務周辺で気付かず発生させている能力浪費を防止または予防する事である。開発・設計業務周辺での能力浪費とは、人材、資材、機材、設備、資金、時間、日程、期間などで、浪費部分を見直し、削減し、予防し、望ましい状態へ改善する事である。

 5Sの整理、整頓、清潔、清掃、躾とは、改善する際に取り組む順序、手順である。改善の際に取り組む順序とは、同時に望ましい状態へ改善、または望ましい状態を維持するための管理サイクルでもある。設計のムダ退治と5Sとは、設計の能力浪費防止を5Sの管理サイクルで見直し、絶えず改善へ取り組む事である。

 ムダとなる能力浪費を避けるには、無駄発生の基盤を見直し、原因となるムリ、ムラとなっている職場、作業環境を整備する事が必要である。「はじめに」の項で示した図-1「ムリの樹」図-2「ムラの樹」、図-3「ムダの樹」でそれぞれ示した「根」の部分を改善、削減する事が必要である。その意味で必要な基盤の見直し、環境の整備とは、浪費防止のためのテーマを一つずつ取り組む事に他ならない。

 ムダ退治、能力浪費防止の狙い、目的は、設計力を向上させる事である。設計力の向上とは、開発能力を含めた設計能力の向上の事である。能力浪費防止によって短期開発、短期設計を進め競争力を高める事である。この事を図-4「設計力向上の樹」として示す。iyoblog(4-0-1)で紹介した図-3「ムダの樹」を「設計力向上の樹」へ転換、変換する改善取り組みが大切となる。


(注・1990年以前の戦後回復期の日本で製造業を中心に5S運動が広がった背景には、中国の整風運動の影響がある。1949年中共が政権を取った後、中国では整風運動が毛沢東の指導の下一般庶民を対象に展開された。その主な目的・狙いは、地主などの旧勢力(資本主義勢力)の思想や考え方を一掃することにあった。そこでは、整風(整理・整頓)の名目(口実)で運動が展開された。これを日本の教職員を中心とした組織である某団体が「清掃・清潔」を加え4S運動へ展開し世に広めた。これに某財閥系大手企業の改善活動に着目していた幹部が躾(しつけ)を加え「5S」として展開した。中には、「STANDARD(標準化)」、「SAFTY(安全)」、「SAVING(節約)」を加え「8S運動」にまで展開した企業もある。これが改善活動に取り組んでいた多くの企業に広まり、瞬く間に全国へ広まった経緯がある。

「5Sによる設計のムダ退治」

 ムダ退治を能力浪費防止の観点に立つ時、基盤整備への取り組み法として、5Sの管理サイクルで見直す方法がある。ムダ退治を5Sで取り組む時、整理、整頓、清潔、清掃、躾の用語の意味を明確にする読み替えが大切となる。その読み替えとは、下記である。

 5Sで「整理」とは、「良いものと、悪いものを区別する。必要なものと、不要なものを区別する。」意味と読み替えて理解する。

 5Sで「整頓」とは、「誰にでも、分かり易くする。内容が、見える様にする。」意味と読み替えて理解する。

 5Sで「清潔」とは、「純粋・綺麗にする。安心出来る様にする。基準、限界を明確にする。」意味と読み替えて理解する。

 5Sで「清掃」とは、「汚れを取る。不具合(ムダ)なものを取り除く。異常なものは、修理(メンテナンス)する。」と読み替えて理解する。

 5Sで「躾(しつけ)」とは、「義務付けする。習慣化出来る様に訓練・教育する。標準化する。設計時の基本原則・鉄則(べからず集など)とする。」意味と読み替えて理解する。

 5S用語の意味を、前記読み替え理解する事で図-5「設計環境整備と5Sの対応、管理サイクルの形成図」の形で現すことが可能なる。

(1)設計業務での「整理」とは

 図-6に「設計業務で止めたいもの、不要なもの代表テーマ」整理対象の一例を示す。


 5Sで整理とは、設計業務で取り組み方法、内容で良い事、悪い事を区分する事である。ムダ退治へ取り組む場合は、設計方法、内容で良いことは何か、悪いことは何か、必要なことは何か、止めたいことは何か、を先ず明確に区分することが初めに必要である。悪いこと、止めたいこととは、能力浪費へ繋がることである。

 つまりムダとなっていることを止める。捨てられる様にする事を、明確にする事が大切となる。その意味で図-6で示した類似内容繰り返し新規着手防止は、ムダ退治取り組み、止めたいこと、捨てたいことの代表テーマである。そして類似内容への繰り返し新規着手は、あらゆる所で発生している事に着目する必要がある。

 例えば、類似開発、類似試験、類似設計、類似トラブル、類似調査の繰り返しなどである。これが、それぞれ基本設計、詳細設計、製図時などで繰り返されていないかを明確にする事が必要である。

(2)設計業務での「整頓」とは

図-7に「設計業務で見える様にしたいもの代表テーマ」整頓対象項目の一例を示す。

 5Sで整頓とは、設計業務が誰にでも手が着けられる様に、使える最適な方法、内容、情報、資材、機材、設備、人材、基準などを分かり易くする事である。また設計業務の最適な方法、内容、情報、資材、機材、設備、人材、基準などが何処にあるか、第三者にも良く見える様にして置くことである。その意味で図-7に示した市場(外部)情報、保管蓄積ノウハウ資料、検証用試験機材、保有人材能力、余力、製造(工作)情報などは、分かり易くしたい、見える様にしたぃことの代表テーマである。なお図-7中では、一部しか示していないが、見える様にしなければならないものとして、最適な設計方法、基準なども対象として置くことが大切である。

(3)設計業務での「清潔」とは

 図-8に「設計業務で安心出来る様にしたい代表テーマ」清潔対象項目の一例を示す。

 5Sで清潔とは、基準、情報、機材、人材などを安心して設計時に使用出来る様にする事である。また過去の設計法、内容、手順で発生したクレーム・トラブルなどの原因となった基準が見直しされ、再試験の上、試験法、設計法など再評価され、問題を出さない基準へ再設定し直しする事である。人の不注意や判断間違いなどが発生しない様に対応法が確立されることである。

 その意味で、図-8に示した蓄積資料ノウハウ、機材、経費、人材・能力などは、設計業務で安心出来る様にしたい代表テーマである。なお図-8中では、一部しか示していないが、安心出来る様にしなければならないものとして、設計時の着手・処理手順、設計内容の評価・検証方法(試験確認法)なども対象として置くことが大切である。

(4)設計業務での「清掃」とは

 図-9に「設計業務での汚れを取り除きたい代表テーマ」清掃対象項目の一例を示す。

 5Sで清掃とは、設計時に発生した汚れを取る、不具合なものを取り除く事である。設計時の汚れ、不具合とは、設計が原因で市場、客先でクレーム・トラブルとなった事や、製造、ラインでクレーム・トラブルとなった事などである。汚れを取る、不具合を除くとは、これら過去の設計法、内容、手順で発生したクレーム・トラブルなどを対策し、基準資料などをメンテナンスする事である。

 その意味で図-9に示した機材、試験機、市場情報、蓄積資料、製造情報、人材・能力などは、設計業務で汚れを取り除きたい代表テーマである。また従来問題を出した設計法、設計内容、設計手順なども対象として置くことが大切である。

 つまり先ず綺麗なモデルを用意し、これに倣わせる進め方が大切なためである。従って順序は、設計の5Sでは、清潔、清掃とすることが望ましい。分かり易く言い直すと、掃除をする前に、何を捨てて、何を残すかをはっきりさせてから着手しないと、綺麗にならないと言う事である。

(5)設計業務での「躾」とは

 図-10に「設計業務で義務付けしたい代表テーマ」躾(しつけ)対象項目の一例を示す。

 5Sで躾とは、設計時に守られなければならない事を義務付けする、設計時に必要な事を習慣化出来る様に訓練する。設計原則を何時もきちんと守れる様にする事である。守らなければならない事を義務付けする、習慣化出来る様に訓練するとは、設計品質確保のための不注意防止とか、知らないことを勝手に判断しないことなどを守れる様にする事である。設計時に、約束した設計納期・出図日程を守ることである。設計時に目標とした設計コスト、製品コストを実現する事である。その意味で図-10に示した日程確保、品質確保、コスト確保などは、設計業務で義務付けしたい、習慣化出来る様に訓練しなければならない代表テーマである。また設計内容、手順、設計法なども対象として置くことが大切である。習慣化出来る様に訓練しなければならない代表テーマである。また設計内容、手順、設計法なども対象として置くことが大切である。

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「引用文献」

・本稿は筆者(伊豫部将三)が執筆し、日刊工業新聞社から1995年3月単行本として刊行され、2020年3月廃刊処理された機会に「設計のムダ退治101」へ掲載した内容を、今回ブログ掲載に当りタイトルを「設計の働き方改革とムダ退治法事例」へ変更し、内容の見直しと不足部分を加筆し、不備部は訂正した。

 念の為、原本で入手ご希望の方は、出版元(日刊工業新聞社・出版局)へお問い合わせを給わりたく、何分宜しくお願い申し上げます。

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「ムダ退治法101事例テーマ全目次」

iyoblog (4-0-1)・「はじめに」

iyoblog (4-0-2)・「ムダ退治と5S」解説

「日常業務に於けるムダ」

iyoblog (4-01)・「設計で類似内容を繰り返し新規創出しているムダ」

iyoblog (4-02)・「社内蓄積保管資料探索にその都度時間を掛けるムダ」

iyoblog (4-03)・「同一仕様技術資料を繰り返し新規出図するムダ」

iyoblog (4-04)・「類似資料決定のため、その都度繰り返し新規試作・試験するムダ」

iyoblog (4-05)・「予め決められる技術基準を前以って決めていないため、その都度判断を加えるムダ」

iyoblog (4-06)・「気付かず負(マイナス)の付加価値形成をしているムダ」

iyoblog (4-07)・「フリーハンド・メモ・ポンチ絵(マンガ)・イラストで済む情報を定規で製図・清書するムダ」

iyoblog (4-08)・「事前・途中の指導を疎かにし、完成してから点検・手直しを行わせるムダ」

iyoblog (4-09)・「関係部署・担当者間での連絡不備、調整が無い為、類似製品での機種を増加させているムダ」

iyoblog (4-10)・「先行技術を調査確認しないで、知らずに公知技術を新規開発しているムダ」

iyoblog (4-11)・「理由なく雑誌や資料を何でもコピー私蔵するムダ」

iyoblog (4-12)・「勘と記憶を頼りに旧式の設計を繰り返し、何時も過剰品質とするムダ」

iyoblog (4-13)・「安い市販規格品に気付かず、コストの高い物を知らずに新規設計するムダ」

iyoblog (4-14)・「ルールと分担が明確にされていないため、同じ内容を何人もで繰り返し点検・審査するムダ」

iyoblog (4-15)・「設計担当者の技術情報創出時間が少なくなっているムダ」

iyoblog (4-16)・「既存・現用品を活用せず、安易な新規設計で保管図面・資料を増加させるムダ」

iyoblog (4-17)・「裏付け根拠もなく、適当に見当で作った守れない出図日程(設計期間)となるムダ」

iyoblog (4-18)・「設計品質が、担当者個人の能力・資質・適性(キャラクタ)に左右されるムダ」

「設計変更を発生させるムダ」

iyoblog (4-19)・「間違いを作り込ませておいて、上司・先輩が後から捜すムダ」

iyoblog (4-20)・「本人の注意で防げる間違いを、他人が検図するムダ」

iyoblog (4-21)・「いきなり実物TRYして失敗するムダ」

iyoblog (4-22)・「取扱い時の注意を明確に仕様に組み込まないため、市場でクレーム・トラブルとなるムダ」

iyoblog (4-23)・「施工時の注意を明確に指示しないため、製造でラインクレーム・トラブルとなるムダ」

iyoblog (4-24)・「製品仕様の範囲を明確に表示しないため、ユーザーでクレームを発生させているムダ」

iyoblog (4-25)・「関連個所を同時に決め、記入点検すれば防げる間違いを出しているムダ」

iyoblog (4-26)・「再発防止とならない対策繰り返しのムダ」

iyoblog (4-27)・「残業・休日出勤を繰り返し、新しい知識と感覚のチャージを怠り、疲労した頭で間違いを繰り返すムダ」

iyoblog (4-28)・「日程優先から点検不備で出図して、トラブルのため結果として納期遅れを発生させるムダ」

iyoblog (4-29)・「トラブル履歴、メンテナンス有無を確かめず、出図した再生図でクレームが出てから対応するムダ」

iyoblog (4-30)・「ライバル品を物真似し、クレームが出てから慌てて確認テストするムダ」

iyoblog (4-31)・「上司への事前了解と事後報告をキチント行わず、トラブルを発生させているムダ」

iyoblog (4-32)・「安易な妥協で、結局トラブルとなる点検・審査のムダ」

iyoblog (4-33)・「点検せず出図して、後から差し替えを繰り返すムダ」

iyoblog (4-34)・「エラーによるトラブル内容をその都度周知徹底しないため、類似トラブルを繰り返し発生させているムダ」

iyoblog (4-35)・「作ってもその場だけしか使わないチェクリスト作成のムダ」

「資料整備・活用面に於けるムダ」

iyoblog (4-36)・「資料を全員にCOPY配布して活用されないムダ」

iyoblog (4-37)・「JISや業界規格を丸写しにした社内規格を制定するムダ」

iyoblog (4-38)・「キーワード登録・整理しないため、検索出来ず活用されない資料保管のムダ」

iyoblog (4-39)・「実験・試験DATAグラフ化・定式(数式)化整理しないため、他の担当者が活用できないムダ」

iyoblog (4-40)・「活用は二の次で、保管する為だけにマイクロフィルム化するムダ」

iyoblog (4-41)・「設計参考資料・設計規格を見ながら、その都度新規に設計着手を繰り返すムダ」

iyoblog (4-42)・「仕様書・図面・試験(検証)報告書・クレーム報告書・調査報告書・手配表など別々に台帳分類・登録保管としているため相互の関連付け、活用を妨げているムダ」

iyoblog (4-43)・「整理・整頓を疎かにし、その都度資料捜しに時間を掛けるムダ」

iyoblog (4-44)・「メンテナンスがキチンと行われないため、活用されない資料のムダ」

「機械化面に於けるムダ」

iyoblog (4-45)・「設計者が技術情報を創出して機械へ入力しなければ、プリントアウト出来ない設計機械化のムダ」

iyoblog (4-46)・「機械化出来る所を、手作業で行っているムダ」

iyoblog (4-47)・「技術情報創出に関係無い製図の機械化に多くの費用と人員を投入しているムダ」

iyoblog (4-48)・「訂正箇所を検図者へ明示しないため、全体を再検図させているムダ」

iyoblog (4-49)・「電子ファイルを技術情報創出時間短縮手段として活用しないムダ」

iyoblog (4-50)・「パソコンを蓄積保管資料(技術情報)検索手段として活用しないムダ」

iyoblog (4-51)・「類似設計の繰り返しが多いのに、CADを有効に活用しきれないムダ」

iyoblog (4-52)・「CAD導入で、出図が検図で手戻りが増え従来より遅れるムダ」※

iyoblog (4-53)・「CAD端末の前に設計者が居ると、仕事をしていると周囲が錯覚するムダ」※

iyoblog (4-54)・「CADを導入しながら、既存図面のデジタル化が進まず流用設計に活用しきれないムダ」※

iyoblog (4-55)・「設備稼働率を高めるため、CADで二直を行わせるムダ」

iyoblog (4-56)・「CAD導入後DATA-BASE構築まで、長期間活用開始を手待ちするムダ」

iyoblog (4-57)・「設計のCAD-DATAを、後の生産工程へ生かせられないムダ」※

iyoblog (4-58)・「CADにKEY-WORD検索機能を組み入れ活用しないムダ」※

iyoblog (4-59)・「製図のため、設計者がCAD端末から技術情報を入力するムダ」

iyoblog (4-60)・「パソコンをシュミレーション手段として活用しないムダ」

iyoblog (4-61)・「CAD化のため上司・先輩が途中に介入出来ず、プリント、訂正を繰り返させるムダ」

iyoblog (4-62)・「電子ファイルの編集機能を活用しないムダ」

iyoblog (4-63)・「CAD を設計時間節約手段として役立てられないムダ」

「外注活用面に於けるムダ」

iyoblog (4-64)・「事前・途中の指導を疎かにし、受け入れ後の確認と手直しに時間を掛ける外注活用のムダ」

iyoblog (4-65)・「研修条件が曖昧なため、間違いを依頼者が手直しするムダ」

iyoblog (4-66)・「外注を猫の手としてしか活用しないムダ」

iyoblog (4-67)・「付加価値獲得を高める手段として設計外注を活用出来ないムダ」

「補助者活用面に於けるムダ」

iyoblog (4-68)・「経験が無くても出来る設計部分をベテランが行うムダ」

iyoblog (4-69)・「補助者に雑用(非付加価値作業)を行わせるムダ」

iyoblog (4-70)・「類似設計の手引書化を疎かにし、設計業務を単純作業対応化出来ないムダ」※

iyoblog (4-71)・「補助者を使いきれず、遊ばせているムダ」

iyoblog (4-72)・「補助者を技術情報創出に充てられないムダ」

iyoblog (4-73)・「手本図・手引書などが無いため補助者・外注へその都度説明を繰り返すムダ」

iyoblog (4-74)・「担当者が手を着けるべき範囲と補助者化出来る範囲を明確に区分出来ないため、補助者を活用出来ないムダ」

「教育面に於けるムダ」

iyoblog (4-75)・「教えないため任せられず、上司・ベテランだけが忙しさに追われているムダ」

iyoblog (4-76)・「手伝わせるだけで教えないため、技術知識の修得にならないOJT教育のムダ」

iyoblog (4-77)・「演習・実習が伴わないため、実際の設計が行えない教育のムダ」

iyoblog (4-78)・「知っているかどうかを確かめないで、一方的に行う教育のムダ」

iyoblog (4-79)・「教えたことが、修得されたかどうか確認しないで終わっている教育のムダ」

iyoblog (4-80)・「参考資料を与えれば、教えないでも設計が出来ると錯覚しているムダ」

「その他の面に於けるムダ」

iyoblog (4-81)・「部下・後輩を指導出来ず自主性に任せ、やきもきするムダ」

iyoblog (4-82)・「複数案を並行試験確認で進めないために、開発・設計期間を延ばしているムダ」

iyoblog (4-83)・「理念が無いため評価・判断基準が定まらず、担当者を困惑・混乱させているムダ」

iyoblog (4-84)・「専門化を進め過ぎ、ノウハウ経験が私物化して会社に蓄積されないムダ」

iyoblog (4-85)・「内容の検索に役立たない保管だけに図番分類する台帳分類方法のムダ」

iyoblog (4-86)・「中味(実)に関係無く、件数だけ多く申請する特許のムダ」

iyoblog (4-87)・「不良品でテストして、結果として使えない試験DATAとなるムダ」

iyoblog (4-88)・「相見積もりで安さだけ追求し、後で手直しの多い外部製作手配のムダ」

iyoblog (4-89)・「特許申請を怠り、市場で係争に成ってから慌てて対応するムダ」

iyoblog (4-90)・「何でも直接自分で手を付けないと気がすまず、自分だけ忙しくするムダ」

iyoblog (4-91)・「上司・先輩同士の見解違いから、調整に時間を掛けるムダ」

iyoblog (4-92)・「判断基準が与えられないため、その都度上司に相談・了解を得なければならないムダ」

iyoblog (4-93)・「内容が曖昧で要領の悪い、頁数の多いレポート作成のムダ」

iyoblog (4-94)・「過剰手配で持つ、部品購入と保管のムダ」

iyoblog (4-95)・「技術情報創出時間比率が15%前後なのに、慢性的工数不足に陥っているムダ」※

iyoblog (4-96)・「出図枚数を管理項目とするムダ」

iyoblog (4-97)・「途中の状況把握を細目に行わず、納期が来てから遅れを知るムダ」

iyoblog (4-98)・「購入品入手までのリードタイム把握を疎かにし、手待ちとなるムダ」

iyoblog (4-99)・「ベテランが付加価値増加に寄与する業務に専念出来ないため、付加価値獲得時間を大きく出来ないムダ」

iyoblog (4-100)・「結論の出ない対策会議開催のムダ」

iyoblog (4-101)・「設計管理で生産技術的観点を持たないため、設計業務での改善が行われないムダ」

(注・上記掲載テーマ名の後尾に「」印が付いているテーマは、大幅に書き直した個所を示す。)

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「筆者略歴」

 1957年4月~1974年3月の17年間・富士重工業㈱(注・現社名スバル)三鷹製作所(現・群馬県大泉町へ移転)生産技術部門に勤務。乗用車用エンジン・ミッション製造の工場自動化機器・専用機設計業務へ従事。1974年技術士(機械部門・第7916号)登録、伊豫部技術士事務所を開設。開発・設計および生産技術部門の技術コンサルタントとして現在に至る。この間、上場および中堅企業100社以上で社員教育や業務改善支援業務に従事。現在までに、社団法人日本技術士会理事、りそな中小企業振興財団「中小企業庁長官新技術・新製品賞」贈賞の専門審査委員、東大和市商工会理事、等を歴任。

 著書「設計の故障解析51(CD-ROM付)」、「設計の基本仕様51(CD-ROM付)」、「設計のマネジメント101」、「設計者の心得と実務101」、「設計の経験則101」、「設計の凡ミス退治101」、「設計のムダ退治101」、「ハンドリング簡易自動化201」、「設計審査(DR=Design Review)支援ツール集・Ⅰ(事前審査編)」以上日刊工業新聞社から刊行。月刊「機械設計」誌へ長期連載等あり。「品質機能展開50事例(CD-ROM付)」、「MC選定資料マニアル」、熊谷卓氏と共著「組立・ハンドリング自動化実例図集」、以上新技術開発センターから刊行などが有る。

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設計の働き方改革とムダ退治(4-0-1)・はじめに

iyoblog (4-0-1)「設計の働き方改革とムダ退治法101事例」設計力向上研究会(伊豫部将三)編

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iyoblog (4-0-1)・「はじめに」

 ムリ・ムラ・ムダは、場所と状況を問わず日常身の回りで良く使われる言葉である。その意味で開発・設計などの技術部門業務周辺でも良く見直すと、「この場合には、ムリをしてもムラを生じ、結局ムダになるかも知れない」と思いつつ、止むを得ず周囲の状況からムリを承知で取り組んでいる場合も多い。「ムリを通せば道理引っ込む」の喩えに有る通り、これがやがてムラ・ムダに繋がると考えれば良い。

 筆者は、前述ムリ・ムラ・ムダには順序があって、ムリを通そうとすればムラを生じ、これがムダに繋がる場合が多いと感じている。この場合には、ムリを原理・原則に反する行為、自然法則に反する行為、経験則に反する行為と状態、と理解することにしている。同様にムラは、バランスが崩れた行為、バラツキが大きくなる行為、偏りを生ずる行為、再現性がない行為と状態、と理解することにしている。またムダは、人材・資材・機材・設備・機器・時間・日程・資金などの持つ能力が浪費される行為と状態、と理解することにしている。

 ムリ・ムラ・ムダを前述意味へ読み替えると、身の回りで無意識下に行っているムリ・ムラ・ムダが如何に沢山有るかに気付かされ、また驚かされる。その代表例をそれぞれ幾つか拾い出して見ると、下記の様になる。

「ムリ」の事例

01・標準開発方法・設計方法が確立されていないため、担当者それぞれが自己流で取り組み、クレーム・トラブル発生を繰り返すムリ

02・事前調査・試験確認不足の状態で、新品種開発を繰り返すムリ

03・納期に追われ確認を怠り、製造で不良が判り結果として納期を達成出来ないムリ

04・納期を先に決め、開発途中で目標達成が出来ないと、完成納期が最後まで判らないムリ

05・事前に判断基準を用意せず、着手後に判断に手間取るムリ

06・要素開発・設計法を充分習熟しない内に、完成体をまとめさせるムリ

07・開発着手後に業務が停滞すると、直ぐ担当者を変更させ、やる気をなくさせるムリ

08・所要時間の不足分を残業・休日出勤で行わせなければ納期を確保出来ないムリ

09・訓練・教育法が適切に構築されず、自己流が定着し、標準開発方法・設計方法が確立出来ないムリ

10・上司・先輩の事前指導が充分行き届かず、開発・設計途中で間違い作り込みを見付け切れないムリ

11・開発・設計で間違いが発生すると上司・先輩が、その都度点検を避けられないムリ

12・標準開発方法・設計方法がなく、所要時間が担当者よって変わるムリ

13・開発・設計の手順計画が悪いため、担当者が試行錯誤を繰り返すムリ

14・残業と休日出勤を協力者へ事前の了解なしに、計画で設定するムリ

15・開発・設計所要時間見積りをじょうし・先輩が、勘で設定するムリ

 前述「ムリ」の事例をマンガ風に表現すると、図-1「ムリ」の樹を描くことが出来る。この場合 には、「ムリ」発生の基盤「根」が身の回りに沢山有る結果である。


「ムラ」の事例
01・習熟と能力向上教育を系統的に行わず、担当者が代わると対応できず発生させる所要時間のムラ
02・経験年数に比例しない、間違い発生率のムラ
03・担当者が代わると、同じ開発品質・設計品質を維持出来ないムラ
04・担当者の勘に頼った開発法・設計法の為、間違い発生防止能力を、他の担当者へ適切に伝承出来ないムラ
05・間違い原因を追う度に、発生原因が次々と拡散するムラ・
06・担当者の間違いを、周囲で事前にカバー出来ないムラ
07・テーマごとに事前計画・準備を一定に対応出来ない開発方法・設計方法のムラ
08・着手テーマがその都度変わるため、開発能力・設計能力としての業務習熟が系統的に向上出来ないムラ
09・担当者ごとの業務品質バラツキを、一定範囲に絞り込み出来ないムラ
10・着手テーマのバラツキで、開発・設計コストが絶えず変化するムラ
11・開発時に製品品質が目標値内かどうか確認せず、量産してからクレーム・トラブルを発生させ、生産数量が変わるムラ
12・担当者が休暇予定を事前に提出せず、納期になってから出図日を変えるムラ
13・試験設備・機器の精度管理・較正と点検を定期的に行わず、測定DATAに問題が出てから慌てて試験を止め、修正・修理するムラ
14・計画通りに着手出来ず、当日になってから日程計画を変更するムラ
15・休業者の発生で人手が足りず他部署・外注応援の穴埋めで、実際には直ぐ役立たず、開発と設計期間が変わるムラ

 同様に「ムラ」の事例をマンガ風に表現すると、図-2「ムラ」の樹を描くことができる。この場合には、「ムラ」発生の基盤「根」が身の回りに沢山有る結果である。


「ムダ」の事例
01・着手時にその都度担当者が注意しながら実施すれば、防げる間違いを後から検図で見付けるムダ
02・事前調査・着手時計画不備で、新規テーマごとに所要時間を増加させるムダ
03・間違いの再発を防止できない上司・先輩による指導と点検繰り返しのムダ
04・担当者に先ず間違いを作り込ませて於いて、上司・先輩から設計審査・検図するムダ
05・担当者を信頼せず、仕様変更を途中で発生させ、作業能率を低下させるムダ
06・系統的に習熟と開発設計能力向上教育訓練を行わず、業務能力が中々向上しないムダ
07・点検不備で出図して、間違いで図面差し替えを繰り返し、日程不足で納期を遅らせるムダ
08・クレーム・トラブル原因を着手前に調査せず、出図してから同じ間違いを繰り返すムダ
09・開発と新規設計テーマ着手の事前調査を計画的に行わず、試作・試験回数を増加させている ムダ
10・担当者ごとの習熟と開発・設計能力を考慮せず、テーマに対する配置を適当に行い、納期内に開発・設計を終了出来ないムダ
11・設計資料と試験DATAの蒐集と整理・整頓法をキチンと基準を決めて行わず、その都度捜す
のに時間を掛けるムダ
12・個人保有の資料類を他の人に使える様保管と整理・整頓法をキチンと行わず、担当者が代わる
 とその都度捜すのに時間を発生させるムダ
13・数量間違いによる不足発生分を見込んで何時も素材と標準部品類を余分に手配し、開発・設計
担当者が保管するムダ
14・試験用機材・測定器が故障しても、後で自分で直す積りで直ぐ修理手配しないため、いざと
言う時直ぐ使えず役立たないムダ
15・設計着手時に主要購入品納期を事前確認せず、出図後発注してから製造で日程変更を発生さ
せるムダ

 また前述「ムダ」の事例をマンガ風に表現すると図-3「ムダ」の樹を描くことができる。この場合には、「ムダ」発生の基盤「根」が身の回りに沢山有る結果である。

 本BLOGでは、ムリ・ムラの結果発生するムダの部分に焦点を当て、特に開発・設計技術部門で発生させている日常業務のムダを中心に101例を取り上げ、その原因と解決法を①・現状と問題点、②・着眼点・分析と評価法、③・改善点と取り組み法、④・改善による効果、の形態で簡潔にまとめて解説・紹介したものである。

 本BLOGが、閲覧頂く諸氏の日常気付かず発生させている時間と能力浪費部分を、少しでも節約・改善するヒントとしてお役立て頂ければ、幸いである。

 本テーマのムダ退治法は、当初日刊工業新聞社刊月刊誌「機械設計」誌1993年1月号特集で「設計のムダ退治50例」として取り上げて頂いた。これが好評であった為、更に51例と解説を追加して同じ「機械設計」誌1993年7月別冊特集として「設計のムダ退治101例」として続けて取り上げて頂く栄誉を賜った。さらに1995年3月には単行本化して頂き、2020年3月廃刊に至るまでに10版を超える増し刷りを繰り返して頂いた。廃刊から1年を経過したのを機会に、広く多くの方に中身を見て頂きたいとの想いで、BLOGで紹介させて頂くことにした次第です。

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「引用文献」

・本稿は筆者(伊豫部将三)が執筆し、日刊工業新聞社から1995年3月単行本として刊行され、2020年3月廃刊処理された機会に「設計のムダ退治101」掲載した内容を、今回ブログ掲載に当りタイトルを「設計の働き方改革とムダ退治法事例」へ変更し、内容見直しと加筆し、不備部は訂正した。

 念の為、原本で入手ご希望の方は、出版元(日刊工業新聞社・出版局)へお問い合わせを給わりたく、何分宜しくお願い申し上げます。

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「ムダ退治のテーマ目次」

iyoblog (4-0-1)・「設計の働き方改革とムダ退治・はじめに」

iyoblog (4-0-2)・「解説・ムダ退治と5S」

「日常業務に於けるムダ」

iyoblog (4-01)・「設計で類似内容を繰り返し新規創出しているムダ」

iyoblog (4-02)・「社内蓄積保管資料探索にその都度時間を掛けるムダ」

iyoblog (4-03)・「同一仕様技術資料を繰り返し新規出図するムダ」

iyoblog (4-04)・「類似資料決定のため、その都度繰り返し新規試作・試験するムダ」

iyoblog (4-05)・「予め決められる技術基準を前以って決めていないため、その都度判断を加えるムダ」

iyoblog (4-06)・「気付かず負(マイナス)の付加価値形成をしているムダ」

iyoblog (4-07)・「フリーハンド・メモ・ポンチ絵(マンガ)・イラストで済む情報を定規で製図・清書するムダ」

iyoblog (4-08)・「事前・途中の指導を疎かにし、完成してから点検・手直しを行わせるムダ」

iyoblog (4-09)・「関係部署・担当者間での連絡不備、調整が無い為、類似製品での機種を増加させているムダ」

iyoblog (4-10)・「先行技術を調査確認しないで、知らずに公知技術を新規開発しているムダ」

iyoblog (4-11)・「理由なく雑誌や資料を何でもコピー私蔵するムダ」

iyoblog (4-12)・「勘と記憶を頼りに旧式の設計を繰り返し、何時も過剰品質とするムダ」

iyoblog (4-13)・「安い市販規格品に気付かず、コストの高い物を知らずに新規設計するムダ」

iyoblog (4-14)・「ルールと分担が明確にされていないため、同じ内容を何人もで繰り返し点検・審査するムダ」

iyoblog (4-15)・「設計担当者の技術情報創出時間が少なくなっているムダ」

iyoblog (4-16)・「既存・現用品を活用せず、安易な新規設計で保管図面・資料を増加させるムダ」

iyoblog (4-17)・「裏付け根拠もなく、適当に見当で作った守れない出図日程(設計期間)となるムダ」

iyoblog (4-18)・「設計品質が、担当者個人の能力・資質・適性(キャラクタ)に左右されるムダ」

「設計変更を発生させるムダ」

iyoblog (4-19)・「間違いを作り込ませておいて、上司・先輩が後から捜すムダ」

iyoblog (4-20)・「本人の注意で防げる間違いを、他人が検図するムダ」

iyoblog (4-21)・「いきなり実物TRYして失敗するムダ」

iyoblog (4-22)・「取扱い時の注意を明確に仕様に組み込まないため、市場でクレーム・トラブルとなるムダ」

iyoblog (4-23)・「施工時の注意を明確に指示しないため、製造でラインクレーム・トラブルとなるムダ」

iyoblog (4-24)・「製品仕様の範囲を明確に表示しないため、ユーザーでクレームを発生させているムダ」

iyoblog (4-25)・「関連個所を同時に決め、記入点検すれば防げる間違いを出しているムダ」

iyoblog (4-26)・「再発防止とならない対策繰り返しのムダ」

iyoblog (4-27)・「残業・休日出勤を繰り返し、新しい知識と感覚のチャージを怠り、疲労した頭で間違いを繰り返すムダ」

iyoblog (4-28)・「日程優先から点検不備で出図して、トラブルのため結果として納期遅れを発生させるムダ」

iyoblog (4-29)・「トラブル履歴、メンテナンス有無を確かめず、出図した再生図でクレームが出てから対応するムダ」

iyoblog (4-30)・「ライバル品を物真似し、クレームが出てから慌てて確認テストするムダ」

iyoblog (4-31)・「上司への事前了解と事後報告をキチント行わず、トラブルを発生させているムダ」

iyoblog (4-32)・「安易な妥協で、結局トラブルとなる点検・審査のムダ」

iyoblog (4-33)・「点検せず出図して、後から差し替えを繰り返すムダ」

iyoblog (4-34)・「エラーによるトラブル内容をその都度周知徹底しないため、類似トラブルを繰り返し発生させているムダ」

iyoblog (4-35)・「作ってもその場だけしか使わないチェクリスト作成のムダ」

「資料整備・活用面に於けるムダ」

iyoblog (4-36)・「資料を全員にCOPY配布して活用されないムダ」

iyoblog (4-37)・「JISや業界規格を丸写しにした社内規格を制定するムダ」

iyoblog (4-38)・「キーワード登録・整理しないため、検索出来ず活用されない資料保管のムダ」

iyoblog (4-39)・「実験・試験DATAグラフ化・定式(数式)化整理しないため、他の担当者が活用できないムダ」

iyoblog (4-40)・「活用は二の次で、保管する為だけにマイクロフィルム化するムダ」

iyoblog (4-41)・「設計参考資料・設計規格を見ながら、その都度新規に設計着手を繰り返すムダ」

iyoblog (4-42)・「仕様書・図面・試験(検証)報告書・クレーム報告書・調査報告書・手配表など別々に台帳分類・登録保管としているため相互の関連付け、活用を妨げているムダ」

iyoblog (4-43)・「整理・整頓を疎かにし、その都度資料捜しに時間を掛けるムダ」

iyoblog (4-44)・「メンテナンスがキチンと行われないため、活用されない資料のムダ」

「機械化面に於けるムダ」

iyoblog (4-45)・「設計者が技術情報を創出して機械へ入力しなければ、プリントアウト出来ない設計機械化のムダ」

iyoblog (4-46)・「機械化出来る所を、手作業で行っているムダ」

iyoblog (4-47)・「技術情報創出に関係無い製図の機械化に多くの費用と人員を投入しているムダ」

iyoblog (4-48)・「訂正箇所を検図者へ明示しないため、全体を再検図させているムダ」

iyoblog (4-49)・「電子ファイルを技術情報創出時間短縮手段として活用しないムダ」

iyoblog (4-50)・「パソコンを蓄積保管資料(技術情報)検索手段として活用しないムダ」

iyoblog (4-51)・「類似設計の繰り返しが多いのに、CADを有効に活用しきれないムダ」

iyoblog (4-52)・「CAD導入で、出図が検図で手戻りが増え従来より遅れるムダ」※

iyoblog (4-53)・「CAD端末の前に設計者が居ると、仕事をしていると周囲が錯覚するムダ」※

iyoblog (4-54)・「CADを導入しながら、既存図面のデジタル化が進まず流用設計に活用しきれないムダ」※

iyoblog (4-55)・「設備稼働率を高めるため、CADで二直を行わせるムダ」

iyoblog (4-56)・「CAD導入後DATA-BASE構築まで、長期間活用開始を手待ちするムダ」

iyoblog (4-57)・「設計のCAD-DATAを、後の生産工程へ生かせられないムダ」※

iyoblog (4-58)・「CADにKEY-WORD検索機能を組み入れ活用しないムダ」※

iyoblog (4-59)・「製図のため、設計者がCAD端末から技術情報を入力するムダ」

iyoblog (4-60)・「パソコンをシュミレーション手段として活用しないムダ」

iyoblog (4-61)・「CAD化のため上司・先輩が途中に介入出来ず、プリント、訂正を繰り返させるムダ」

iyoblog (4-62)・「電子ファイルの編集機能を活用しないムダ」

iyoblog (4-63)・「CAD を設計時間節約手段として役立てられないムダ」

「外注活用面に於けるムダ」

iyoblog (4-64)・「事前・途中の指導を疎かにし、受け入れ後の確認と手直しに時間を掛ける外注活用のムダ」

iyoblog (4-65)・「研修条件が曖昧なため、間違いを依頼者が手直しするムダ」

iyoblog (4-66)・「外注を猫の手としてしか活用しないムダ」

iyoblog (4-67)・「付加価値獲得を高める手段として設計外注を活用出来ないムダ」

「補助者活用面に於けるムダ」

iyoblog (4-68)・「経験が無くても出来る設計部分をベテランが行うムダ」

iyoblog (4-69)・「補助者に雑用(非付加価値作業)を行わせるムダ」

iyoblog (4-70)・「類似設計の手引書化を疎かにし、設計業務を単純作業対応化出来ないムダ」※

iyoblog (4-71)・「補助者を使いきれず、遊ばせているムダ」

iyoblog (4-72)・「補助者を技術情報創出に充てられないムダ」

iyoblog (4-73)・「手本図・手引書などが無いため補助者・外注へその都度説明を繰り返すムダ」

iyoblog (4-74)・「担当者が手を着けるべき範囲と補助者化出来る範囲を明確に区分出来ないため、補助者を活用出来ないムダ」

「教育面に於けるムダ」

iyoblog (4-75)・「教えないため任せられず、上司・ベテランだけが忙しさに追われているムダ」

iyoblog (4-76)・「手伝わせるだけで教えないため、技術知識の修得にならないOJT教育のムダ」

iyoblog (4-77)・「演習・実習が伴わないため、実際の設計が行えない教育のムダ」

iyoblog (4-78)・「知っているかどうかを確かめないで、一方的に行う教育のムダ」

iyoblog (4-79)・「教えたことが、修得されたかどうか確認しないで終わっている教育のムダ」

iyoblog (4-80)・「参考資料を与えれば、教えないでも設計が出来ると錯覚しているムダ」

「その他の面に於けるムダ」

iyoblog (4-81)・「部下・後輩を指導出来ず自主性に任せ、やきもきするムダ」

iyoblog (4-82)・「複数案を並行試験確認で進めないために、開発・設計期間を延ばしているムダ」

iyoblog (4-83)・「理念が無いため評価・判断基準が定まらず、担当者を困惑・混乱させているムダ」

iyoblog (4-84)・「専門化を進め過ぎ、ノウハウ経験が私物化して会社に蓄積されないムダ」

iyoblog (4-85)・「内容の検索に役立たない保管だけに図番分類する台帳分類方法のムダ」

iyoblog (4-86)・「中味(実)に関係無く、件数だけ多く申請する特許のムダ」

iyoblog (4-87)・「不良品でテストして、結果として使えない試験DATAとなるムダ」

iyoblog (4-88)・「相見積もりで安さだけ追求し、後で手直しの多い外部製作手配のムダ」

iyoblog (4-89)・「特許申請を怠り、市場で係争に成ってから慌てて対応するムダ」

iyoblog (4-90)・「何でも直接自分で手を付けないと気がすまず、自分だけ忙しくするムダ」

iyoblog (4-91)・「上司・先輩同士の見解違いから、調整に時間を掛けるムダ」

iyoblog (4-92)・「判断基準が与えられないため、その都度上司に相談・了解を得なければならないムダ」

iyoblog (4-93)・「内容が曖昧で要領の悪い、頁数の多いレポート作成のムダ」

iyoblog (4-94)・「過剰手配で持つ、部品購入と保管のムダ」

iyoblog (4-95)・「技術情報創出時間比率が15%前後なのに、慢性的工数不足に陥っているムダ」※

iyoblog (4-96)・「出図枚数を管理項目とするムダ」

iyoblog (4-97)・「途中の状況把握を細目に行わず、納期が来てから遅れを知るムダ」

iyoblog (4-98)・「購入品入手までのリードタイム把握を疎かにし、手待ちとなるムダ」

iyoblog (4-99)・「ベテランが付加価値増加に寄与する業務に専念出来ないため、付加価値獲得時間を大きく出来ないムダ」

iyoblog (4-100)・「結論の出ない対策会議開催のムダ」

iyoblog (4-101)・「設計管理で生産技術的観点を持たないため、設計業務での改善が行われないムダ」

(注・上記掲載テーマ名後尾に「」印が付いているテーマは、大幅に書き直した所を示す。)

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「筆者略歴」

 1957年4月~1974年3月の17年間・富士重工業㈱(注・現社名スバル)三鷹製作所(現・群馬県大泉町へ移転)生産技術部門に勤務。乗用車用エンジン・ミッション製造の工場自動化機器・専用機設計業務へ従事。1974年技術士(機械部門・第7916号)登録、伊豫部技術士事務所を開設。開発・設計および生産技術部門の技術コンサルタントとして現在に至る。この間、上場および中堅企業100社以上で社員教育や業務改善支援業務に従事。現在までに、社団法人日本技術士会理事、りそな中小企業振興財団「中小企業庁長官新技術・新製品賞」贈賞の専門審査委員、東大和市商工会理事、等を歴任。

 著書「設計の故障解析51(CD-ROM付)」、「設計の基本仕様51(CD-ROM付)」、「設計のマネジメント101」、「設計者の心得と実務101」、「設計の経験則101」、「設計の凡ミス退治101」、「設計のムダ退治101」、「ハンドリング簡易自動化201」、「設計審査(DR=Design Review)支援ツール集・Ⅰ(事前審査編)」以上日刊工業新聞社から刊行。月刊「機械設計」誌へ長期連載等あり。「品質機能展開50事例(CD-ROM付)」、「MC選定資料マニアル」、熊谷卓氏と共著「組立・ハンドリング自動化実例図集」、以上新技術開発センターから刊行などが有る。

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